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RTK断面図で海岸護岸の越波対策高さを決める6項目

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万能の測量機LRTKの説明

著者: LRTKチーム

海岸護岸の越波対策では、現地の高さ関係をどれだけ正確に把握できるかが判断の土台になります。図面上の天端高や計画高だけを見ていると、局所的な沈下、背後地との高低差、波返し部の摩耗、排水先との取り合いを見落とすことがあります。RTKで取得した横断方向の点群や測点を断面図に整理すると、海側から護岸天端、背後道路、宅地、排水施設までの高さ関係を一連で確認しやすくなります。本記事では、RTK断面図を使って海岸護岸の越波対策高さを検討する際に確認したい6項目を、実務担当者向けに整理します。


目次

RTK断面図が越波対策高さの検討に役立つ理由

項目1 現況天端高と連続性を確認する

項目2 背後地の地盤高と浸水しやすい低所を読む

項目3 波返し部と前面地形の変化を断面で把握する

項目4 既往の越波痕跡と断面位置を照合する

項目5 排水施設や道路勾配との取り合いを確認する

項目6 計画高さを安全側に整理して維持管理につなげる

RTK断面図を作成するときの現場測定の注意点

越波対策高さを決める際に避けたい判断

まとめ


RTK断面図が越波対策高さの検討に役立つ理由

海岸護岸の越波対策高さを考えるとき、まず必要になるのは、海側から陸側までの高さのつながりを具体的に見ることです。護岸の天端だけを単独で測っても、背後の道路や敷地がどれくらい低いのか、越波した水がどこへ流れるのか、局所的に低い箇所がないかは分かりにくいものです。RTK断面図は、現地で取得した位置と標高の情報を横断方向に並べ、護岸周辺の形状を断面として見える化するため、越波対策の検討に向いています。


特に海岸部では、図面上の高さと現況が一致しているとは限りません。長年の波浪、塩害、地盤沈下、舗装の補修、背後地の造成、排水施設の改修などによって、現地の高さ関係は少しずつ変わります。見た目には大きな変化がなくても、断面図にすると天端の一部が下がっていたり、背後道路が海側へ緩く傾いていたり、排水ます周辺だけ低くなっていたりすることがあります。


越波対策高さは、単に護岸を高くすればよいという話ではありません。高くしすぎると、景観、通行、維持管理、背後地利用、排水、避難動線などに影響する場合があります。一方で、必要な高さを見誤ると、荒天時に越波水が背後へ流入し、道路冠水、施設被害、通行障害、塩分を含む水の飛散などにつながるおそれがあります。そのため、現況を丁寧に把握し、波浪条件や施設条件を専門的に検討する前段階として、RTK断面図で高さの弱点を整理しておくことが大切です。


RTK断面図のよいところは、現地説明や関係者協議にも使いやすい点です。平面図だけでは伝わりにくい高低差も、断面図にすると「護岸天端はこの高さで、背後道路はここで下がっている」「越波水が入ると、この低い側へ流れやすい」と説明しやすくなります。補修、かさ上げ、波返し追加、排水改善、立入規制など、複数の対策案を比較するときにも、同じ断面を基準に検討できるため、判断のブレを減らせます。


ただし、RTK断面図は万能ではありません。越波量や必要天端高の最終判断には、対象海岸の設計条件、潮位、波浪、風向、地形、施設形式、背後地の重要度、関連基準、専門技術者による検討が必要です。RTK断面図は、その検討に入る前の現況把握と、対策後の管理を支える資料として使うのが現実的です。


項目1 現況天端高と連続性を確認する

越波対策高さを決める第一歩は、護岸天端の現況高さを正確に把握することです。海岸護岸は、延長方向に長く続く構造物であるため、代表点だけを測ると低い箇所を見落とすことがあります。RTK断面図を作成する際は、越波が懸念される範囲をいくつかの横断位置に分け、各断面で海側、天端、背後側の高さをそろえて確認します。


特に注意したいのは、天端高の連続性です。設計図面では同じ高さで整備されているように見えても、現地では施工時期の違い、補修履歴、沈下、舗装の重ね打ち、構造物の継ぎ目などにより、数値上の差が生じることがあります。越波は必ずしも全区間で均一に起こるわけではなく、わずかに低い箇所、波が集中しやすい箇所、開口部や取り付け部などから始まることがあります。そのため、平均的な高さではなく、連続する護岸の中でどこが相対的に低いのかを見ることが重要です。


RTK断面図では、各断面の天端点を同じ基準で整理します。測定時には、護岸の最も海側の上端、波返しの頂部、背後側の舗装端など、どの点を天端として扱うのかを現場内で統一しておく必要があります。測る人によって点の取り方が変わると、断面図上の差が本当の地形差なのか、測定位置の違いなのか判断しにくくなります。天端幅が広い護岸では、海側端と陸側端で高さが違う場合もあるため、必要に応じて複数点を取ると状況をつかみやすくなります。


また、護岸天端の高さだけでなく、開口部や階段、スロープ、排水口、車両出入口などの高さも確認します。これらは利用上必要な設備ですが、越波時には水の通り道になる場合があります。天端本体は十分に高くても、隣接する取り付け部が低ければ、そこから背後地へ水が入りやすくなります。RTK断面図に開口部周辺の断面を追加しておくと、かさ上げすべき場所、止水板や可動対策を検討すべき場所、排水処理を強化すべき場所を整理しやすくなります。


天端の連続性を見るときは、縦断方向の情報もあわせて扱うと有効です。横断図だけでは各断面の形状は分かりますが、断面同士のつながりは見えにくくなります。複数のRTK断面図を同じ縮尺で並べる、天端高を一覧化して低い箇所を抽出する、平面図上に断面位置と低い区間を重ねるといった整理を行うと、越波対策高さの検討がより実務的になります。


現況天端高の確認で大切なのは、単に数値を測ることではなく、対策上の弱点を探す視点です。どの区間が低いのか、低い理由は沈下なのか構造形式の違いなのか、背後地への影響が大きい場所なのかを整理しておくことで、後の設計検討や協議が進めやすくなります。


項目2 背後地の地盤高と浸水しやすい低所を読む

越波対策高さを決める際には、護岸の海側だけでなく、背後地の高さを必ず確認します。越波した水が背後へ入った場合、どの方向へ流れ、どこにたまり、どの施設に影響するかは、背後地の地盤高によって大きく変わります。RTK断面図では、護岸天端から背後道路、歩道、宅地、倉庫、排水溝、低地部までを一続きで測ることで、浸水しやすい場所を読み取りやすくなります。


海岸護岸の背後には、道路、漁港施設、倉庫、住宅地、観光施設、公園、駐車場など、さまざまな利用があります。見た目には平坦に見える場所でも、実際には海側へ傾いていたり、排水ます周辺が低かったり、舗装の継ぎ目に水が集まりやすかったりします。越波水は一時的な流入でも、低い場所へ集まれば通行障害や施設被害につながることがあります。塩分を含む水が繰り返し入る場所では、舗装、金属部材、設備、植栽への影響も考慮が必要です。


RTK断面図を使うと、護岸天端と背後地盤の比高を把握できます。たとえば、護岸天端が周囲より高くても、背後道路が一段低く、さらに道路端の排水溝が詰まりやすい位置にある場合、越波水が流入した後に水が抜けにくくなる可能性があります。また、背後地に建物の入口や地下へ向かうスロープがある場合は、護岸天端の高さだけでなく、その入口部の高さや水の流下方向も確認しなければなりません。


背後地の低所を読むときは、断面線の取り方が重要です。護岸に直交する単純な横断だけでなく、越波水が流れそうな方向、道路の縦断勾配に沿った方向、排水先へ向かう方向も必要に応じて測ります。海から陸へまっすぐ断面を切っただけでは、水が横方向へ回り込む状況を見落とすことがあります。現地で水の流れを想像しながら、低い場所を結ぶように断面を追加すると、対策高さと排水対策を一体で考えやすくなります。


また、背後地の重要度も整理しておきます。同じ越波水の流入でも、背後が未利用地なのか、主要道路なのか、住宅地なのか、電気設備や通信設備があるのかによって、求められる安全側の考え方は変わります。RTK断面図に施設位置や地盤高を重ねておくと、関係者との説明で「どの高さまで守る必要があるのか」を共有しやすくなります。


背後地盤高の確認では、現況の低さだけでなく、将来の利用変化にも注意が必要です。今は空き地でも、将来的に施設が整備される予定がある場合、現況だけに合わせて対策高さを決めると、後から不足が出ることがあります。反対に、将来的に背後地がかさ上げされる計画がある場合は、護岸側の対策と背後地整備の整合を取る必要があります。RTK断面図は、現在の地形を記録し、将来計画との差を説明する基礎資料としても役立ちます。


項目3 波返し部と前面地形の変化を断面で把握する

越波対策高さを考えるとき、護岸の天端だけでなく、波返し部や前面地形の状態も確認します。波が護岸に当たるときの挙動は、前面の浜、消波施設、根固め、護岸勾配、波返し形状などの影響を受けます。RTK断面図では、測定できる範囲で前面地形と護岸形状を記録し、波がどのように上がってきやすい形になっているかを把握する手掛かりにします。


海岸部では、砂浜や前面地盤の高さが季節や荒天後に変わることがあります。砂が堆積している時期には護岸前面が高く見えても、侵食が進むと護岸基部が露出し、波が当たりやすくなる場合があります。前面の地形変化によって、同じ天端高でも越波のしやすさが変わることがあるため、RTK断面図では護岸本体だけでなく、海側の地盤や斜面の状態も可能な範囲で記録しておくことが大切です。


波返し部については、頂部の高さ、曲面や立ち上がりの状態、欠損や摩耗、ひび割れ、補修跡を確認します。波返しがあるから安全と決めつけるのではなく、実際にどの高さで、どのような形状を保っているかを見る必要があります。波返しの一部が欠けていたり、天端との接合部に段差やすき間があったりすると、そこが越波や飛沫の通り道になることがあります。


RTK断面図で波返し部を表す場合、細かな曲面を完全に再現するのは難しいことがあります。そのため、頂部、海側立ち上がり、天端接続部、背後側の段差など、対策判断に必要な特徴点を意識して測ります。必要に応じて写真記録と併用し、断面図には高さ関係、写真には形状や劣化の状態を残すと、後で状況を確認しやすくなります。


前面地形の変化を見るには、同じ断面位置で定期的に測ることも有効です。荒天前後、台風後、冬季波浪後などに同じ横断位置でRTK測定を行うと、前面の侵食や堆積、護岸基部の露出、消波材周辺の変化を比較できます。越波対策高さを一度決めて終わりにするのではなく、地形変化に応じて見直す運用を考える場合、過去のRTK断面図は貴重な比較資料になります。


ただし、海側の測定は安全確保が最優先です。潮位、波、足元、立入可能範囲、作業員の退避経路を確認し、危険な場所へ無理に入らないことが重要です。測れない範囲は、無理に補完して断定するのではなく、未測定範囲として明示し、必要に応じて別の調査方法や専門的な検討につなげます。


項目4 既往の越波痕跡と断面位置を照合する

RTK断面図を越波対策に活用するなら、過去の越波痕跡や被害記録と照合することが欠かせません。現況の高さだけを見ていても、実際にどこで越波が起きやすいのかは判断しきれない場合があります。現地に残る痕跡、管理者の記録、住民や施設利用者からの聞き取り、荒天後の写真などを断面位置と結びつけることで、対策すべき高さと範囲を具体化しやすくなります。


越波痕跡として確認しやすいものには、舗装上の砂や漂着物、塩分による汚れ、植栽の傷み、金属部のさび、排水溝にたまった砂、壁面や設備の水跡などがあります。荒天後すぐであれば、流れた水の筋や堆積物の分布から、越波水がどの方向へ移動したかを推定できることがあります。これらの位置をRTKで記録し、断面図や平面図に反映すると、単なる印象ではなく、地形と被害の関係として整理できます。


既往の越波箇所と断面図を照合すると、天端高が低い場所だけでなく、背後地の流れやすさが見えてきます。たとえば、護岸天端は周囲と同程度でも、背後道路が局所的に低く、越波水が集まりやすい場所では被害が目立つことがあります。また、階段やスロープ、開口部の近くで痕跡が多い場合は、護岸本体のかさ上げだけでなく、取り付け部の止水や排水改善が必要になることがあります。


この照合で大切なのは、痕跡を一つの原因に決めつけないことです。越波による水なのか、降雨排水の滞留なのか、背後から流れてきた水なのか、排水施設の能力不足なのかを切り分ける必要があります。RTK断面図は、水が低い方へ流れるという基本的な関係を確認する助けになりますが、波浪、降雨、排水、施設劣化が複合している場合もあります。現地の痕跡と断面形状を合わせて見ながら、複数の可能性を残して整理することが安全です。


過去の写真や記録がある場合は、撮影位置と断面位置を合わせると有効です。写真だけでは高さ関係が分かりにくく、断面図だけでは実際の被害感が伝わりにくいことがあります。写真に写っている構造物や舗装端をRTK断面図上の点と対応させることで、「この高さを越えて水が来た可能性がある」「この低い箇所に水が集まった」といった説明がしやすくなります。


越波痕跡の照合は、対策高さを決める前だけでなく、対策後の効果確認にも使えます。かさ上げや波返し改修を行った後、同じ場所で荒天後の確認を続けることで、越波水の到達範囲が変わったか、別の低い箇所へ水が回り込んでいないかを確認できます。RTK断面図を管理資料として蓄積すれば、単年度の対策ではなく、継続的な海岸管理に役立ちます。


項目5 排水施設や道路勾配との取り合いを確認する

越波対策高さを決める際には、排水施設や道路勾配との取り合いを見落としてはいけません。護岸を高くして越波を抑えても、背後地に入った水や降雨を排出できなければ、冠水や滞水の問題が残ります。特に海岸沿いの道路や施設では、越波、降雨、潮位の影響が重なりやすく、排水先の条件によっては水が抜けにくくなることがあります。RTK断面図では、護岸天端だけでなく、側溝、排水ます、道路横断勾配、縦断勾配、放流先の高さ関係を確認します。


道路が護岸背後にある場合、道路の横断勾配が海側へ向いているのか、陸側へ向いているのかを断面で確認します。海側へ傾いている道路では、降雨水が護岸側へ集まりやすく、越波水と混在することがあります。陸側へ傾いている道路では、越波水が背後施設側へ流れやすい場合があります。道路の勾配だけでなく、歩道、縁石、側溝、出入口の段差も水の流れを変える要素になります。


排水施設については、ますの天端高、側溝底高、排水口の高さ、放流先の水位影響を確認します。越波対策として護岸をかさ上げすると、これまで海側へ逃げていた水が背後にたまりやすくなることもあります。逆に、排水口が海側に開いている場合、潮位や波浪の条件によっては排水が効きにくくなる可能性があります。RTK断面図に排水施設の高さを入れておくと、水が自然に流れる経路と、滞留しやすい低所を説明しやすくなります。


特に注意したいのは、護岸と道路、護岸とスロープ、護岸と出入口の接続部です。構造物同士の取り合い部は、高さが不連続になりやすく、補修履歴も残りやすい場所です。局所的な段差や沈下があると、そこに水が集まり、越波時の被害が集中することがあります。RTK断面図では、標準断面だけでなく、取り合い部の断面を別に作成しておくと、対策の抜けを減らせます。


排水施設との関係では、越波対策高さを上げることと、排水能力を確保することを一体で考える必要があります。護岸を高くして外からの水を抑えるだけでは、内側に降った雨をどう逃がすかという問題が残ります。背後地が低い場合や、排水先が潮位の影響を受けやすい場合は、逆流防止、排水経路の確保、ポンプ排水、滞水箇所の解消など、別の対策が必要になることがあります。RTK断面図は、こうした検討の入口として、高さ関係を整理する役割を持ちます。


また、維持管理の視点も重要です。側溝やますが土砂、漂着物、落葉で詰まると、設計上は排水できる場所でも実際には機能しないことがあります。越波後は砂やごみが排水施設に入りやすいため、点検しやすい位置、清掃しやすい構造、記録しやすい管理方法も含めて考える必要があります。RTK断面図に排水施設の位置と高さを記録しておけば、点検時に重点確認すべき場所を共有しやすくなります。


項目6 計画高さを安全側に整理して維持管理につなげる

RTK断面図で現況を把握した後は、計画高さをどのように整理するかが重要です。越波対策高さは、現況天端高に不足分を足すだけで決められるものではありません。対象海岸の波浪条件、潮位、高潮、地形、施設形式、背後地の重要度、既往被害、関連基準、将来の維持管理を総合して検討する必要があります。RTK断面図は、その中で現況地形と弱点を分かりやすく示す資料として使います。


計画高さを整理するときは、まず現況断面と計画断面を重ねて比較できる形にします。現況の護岸天端、背後道路、低所、排水施設の高さに対して、どの範囲をどの程度かさ上げするのか、波返しを追加するのか、局所的な止水対策にするのかを見える化します。断面上で対策後の高さを示すと、背後地との段差、通行への影響、排水の変化、隣接区間とのすり付けが確認しやすくなります。


安全側に整理するというのは、根拠のない大きな余裕を持たせるという意味ではありません。測定誤差、地盤沈下、施工誤差、経年変化、波返し部の摩耗、前面地形の変化、維持管理の難しさなどを考慮し、現地条件に対して不足が出にくいように検討することです。RTK測定で得た高さには一定の精度限界があり、衛星環境や基準点、測定方法によって結果に差が出ることがあります。重要な判断に使う場合は、測定条件を確認し、必要に応じて別の測量方法や既存基準点との照合を行うことが望まれます。


また、かさ上げ範囲の端部処理も重要です。護岸の一部だけを高くすると、対策していない隣接区間から水が回り込む場合があります。RTK断面図を複数位置で作成し、平面上の低い区間と連続性を確認することで、端部のすり付け、接続部、開口部、背後道路との関係を整理できます。越波対策高さは、断面ごとの高さだけでなく、区間全体として水の入り口を残さない視点で検討する必要があります。


計画高さは、施工後の維持管理にも使える形で残しておくことが大切です。完成時の断面、天端高、基準点、測定日、測定者、測定方法、写真位置を記録しておくと、数年後に沈下や損傷が疑われたときに比較できます。海岸護岸は、整備後も波浪、潮風、漂着物、車両荷重、地盤変化の影響を受けます。対策した時点の高さを記録していなければ、後からどれくらい変化したのか判断しにくくなります。


さらに、関係者間で共有しやすい資料にすることも意識します。技術担当者だけでなく、管理者、施設利用者、周辺住民、工事関係者に説明する場面では、断面図の見やすさが重要です。海側と陸側、天端高、背後地盤高、低所、計画高さ、注意箇所が分かるように整理すると、対策の必要性や範囲を理解してもらいやすくなります。RTK断面図は数値資料であると同時に、合意形成のための説明資料としても機能します。


RTK断面図を作成するときの現場測定の注意点

RTK断面図を越波対策に使うためには、測定時の品質管理が欠かせません。どれだけ見やすい断面図を作っても、測定点の取り方や基準が不安定であれば、判断材料としての信頼性が下がります。海岸部は衛星環境が比較的開けている場所も多い一方で、護岸背後の建物、樹木、金属構造物、車両、電線、崖地などの影響を受けることがあります。測定前に衛星受信状況や補正情報の安定性を確認し、必要な精度が得られているかを現場で確認することが大切です。


まず、基準となる高さの扱いを明確にします。既存図面、公共基準点、工事基準点、現場仮点など、どの基準に合わせて断面図を作るのかを整理します。越波対策高さは数値の比較が重要になるため、別々の基準で測ったデータをそのまま混ぜると誤解が生じます。過去の測量成果と比較する場合は、座標系や高さの基準、補正の有無を確認し、同じ条件で比較できるようにします。


次に、断面位置を現地で再現できるように記録します。越波対策の検討では、同じ断面位置を後日再測定する場面があります。測定した断面線の起点、終点、近くの構造物、距離、写真、平面図上の位置を残しておくと、比較がしやすくなります。断面位置が毎回ずれると、地形変化なのか測定位置の違いなのか判断しにくくなります。特に前面地形や背後道路のように横方向の変化がある場所では、断面位置の再現性が重要です。


測点の密度も考えます。護岸天端のように平坦な部分は少ない点数でも形状を把握しやすいですが、波返し、階段、スロープ、側溝、段差、沈下部などは特徴点を細かく拾う必要があります。点数が少ないと、断面図上で低い箇所や段差が平均化され、実際の弱点が見えなくなることがあります。反対に、不要な点を取りすぎると整理が難しくなるため、越波対策の判断に必要な特徴点を意識して測ることが大切です。


海岸部の測定では、安全管理も重要です。波が穏やかに見えても、急な波の打ち上げや足元の滑り、濡れた構造物、藻の付着、強風、潮位変化などの危険があります。測定のために危険な位置へ近づくのではなく、立入可能範囲から取得できる情報を確実に集め、足りない情報は別の方法で補う考え方が必要です。単独作業を避け、天候と潮位を確認し、退避できる動線を確保して作業します。


データ整理では、測定点に分かりやすい名称を付けると後工程が楽になります。天端海側、天端陸側、波返し頂部、背後道路中心、側溝底、ます天端、低所、痕跡位置など、後から見ても意味が分かるように記録しておくと、断面図作成時の手戻りを減らせます。写真番号と測点を対応させると、断面図だけでは分からない現地状況も確認できます。


RTK断面図は、測って終わりではありません。現場で取得した点を断面化し、異常値や取り違えを確認し、必要に応じて現地写真やメモと照合して初めて使える資料になります。高さが不自然に飛んでいる点、位置がずれている点、測定対象を取り違えた点がないかを確認し、疑わしいデータは無理に使わず、再測定や補足確認を検討します。


越波対策高さを決める際に避けたい判断

RTK断面図を使うと高さ関係が分かりやすくなりますが、そこで得た数値だけで越波対策高さを即断するのは避けるべきです。越波は、波高、周期、潮位、風、海底地形、前面施設、護岸形状、背後地条件などが絡む現象です。断面図は重要な資料ですが、それだけで越波量や安全性を保証するものではありません。必要に応じて、関連する設計基準や専門的な検討に基づいて判断することが求められます。


避けたい判断の一つは、最も高い断面だけを見て安心することです。長い護岸では、低い箇所や取り合い部が弱点になりやすく、そこから越波水が入る可能性があります。代表断面だけでなく、低い区間、開口部、背後地が低い区間、過去に被害があった区間を重点的に確認する必要があります。対策高さを決める際は、平均値よりも弱点の把握が重要です。


もう一つは、護岸だけを高くして背後の排水を見ない判断です。越波を抑える対策は重要ですが、背後地の雨水や流入水の逃げ道をふさぐと、別の冠水リスクが生じる場合があります。RTK断面図では、かさ上げ後の水の流れも想定し、道路勾配や排水施設との整合を確認する必要があります。海からの水を止めることと、内側の水を抜くことは、セットで考えるべきです。


また、過去に大きな被害がなかったから今後も問題ないと考えるのも危険です。前面地形の変化、地盤沈下、施設の劣化、周辺利用の変化、気象条件の変動などにより、リスクの現れ方は変わります。過去の記録は重要ですが、それだけに頼らず、現況の断面と将来の維持管理を踏まえて検討します。


反対に、現地の一部だけを見て過大な対策を急ぐことも避けたいところです。護岸のかさ上げは、景観、通行、施工性、費用、隣接区間との整合、排水、利用者の安全に影響します。局所的な止水、波返しの補修、低所の排水改善、開口部対策、維持管理の強化など、複数の選択肢を比較した上で、必要な対策高さと範囲を決めることが望まれます。


RTK断面図は、こうした判断ミスを減らすための現況把握ツールです。数値を見える化し、低い箇所を発見し、関係者と同じ図面を見ながら議論できるようにすることで、感覚的な判断から一歩進んだ検討ができます。最終的な対策高さは専門的な検討を踏まえて決めるとしても、その前段階で現地の高さ関係を整理しておく価値は大きいです。


まとめ

RTK断面図で海岸護岸の越波対策高さを決める際は、護岸天端の高さだけでなく、海側から背後地までの連続した高さ関係を見ることが大切です。現況天端高の連続性、背後地の低所、波返し部と前面地形、既往の越波痕跡、排水施設や道路勾配、計画高さと維持管理のつながりを整理することで、対策の弱点や優先順位が見えやすくなります。


越波対策高さは、単純な現地測定だけで決められるものではありません。波浪や潮位、背後地の重要度、施設形式、関連基準、将来の変化を踏まえた専門的な判断が必要です。しかし、その判断を支える基礎資料として、RTK断面図は有効です。現地の高さを数値と図で共有できれば、低い箇所の見落としを減らし、補修やかさ上げ、排水改善、開口部対策を具体的に検討しやすくなります。


実務では、測定精度、基準高、断面位置の再現性、特徴点の取り方、写真記録、安全管理を丁寧に扱うことが重要です。特に海岸部では、波、潮位、足元、風などの危険があるため、無理な測定は避け、取得できる範囲の情報を確実に整理する姿勢が求められます。断面図は一度作って終わりではなく、荒天後や補修後、定期点検時に比較できる形で残すことで、維持管理にも役立ちます。


RTK断面図を活用すれば、海岸護岸の越波対策を、感覚的な高さ判断ではなく、現況に基づいた説明しやすい検討へ近づけられます。現場で測り、断面で読み、関係者と共有し、対策後も記録を残す流れを作ることが、海岸施設の安全性と管理品質を高める近道です。こうした現場計測と断面確認を日常の管理に取り入れる場合は、測位精度、記録方法、写真とのひも付け、データ共有のしやすさを確認し、現場条件に合うRTK測位機器や記録ツールを選ぶことが大切です。


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