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道路基盤地図情報を交通安全対策に活かす分析方法6選

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この記事は平均7分15秒で読めます
万能の測量機LRTKの説明

著者: LRTKチーム

道路基盤地図情報は、道路構造を位置情報として把握し、道路空間を客観的に整理するための基礎資料として活用できます。交通安全対策では、事故が起きた場所だけを見るのではなく、交差点の形状、歩道や路肩のつながり、見通しの悪い区間、横断が発生しやすい場所、車両と歩行者や自転車が近づきやすい箇所などを、同じ地図上で重ね合わせて考えることが重要です。道路基盤地図情報をうまく使えば、現地調査だけでは見落としやすい危険の偏りを事前に整理し、調査や対策検討の優先順位を決めやすくなります。


ただし、道路基盤地図情報は万能な安全診断データではありません。道路基盤地図情報は道路構造を平面的に表すGISデータとして扱われることが多く、現地の交通量、速度、見通し、路面状態、標識、植栽、駐停車、歩行者や自転車の実際の動きまでを単独で示すものではありません。また、利用できるデータの範囲や更新状況は資料や公開元によって異なります。特に生活道路や通学路まで分析対象にする場合は、道路基盤地図情報だけに頼らず、道路台帳、基盤地図情報、都市計画図、通学路資料、事故記録、現地調査、必要に応じた測量記録などを組み合わせる姿勢が欠かせません。


本記事では、道路基盤地図情報で検索する実務担当者に向けて、交通安全対策に活かしやすい分析方法を6つの視点で整理します。いずれの方法も、地図上で結論を断定するためではなく、現地確認で何を見るべきかを明確にし、関係者間で危険箇所と対策方針を共有しやすくするための使い方として理解してください。


目次

道路基盤地図情報を交通安全対策に使う基本

分析方法一 事故位置と道路形状を重ねて危険箇所を絞り込む

分析方法二 交差点形状から見通しと横断リスクを分析する

分析方法三 歩行者と自転車の動線を道路空間から読み解く

分析方法四 幅員や線形から速度超過と逸脱リスクを考える

分析方法五 生活道路や通学路の危険要因を面で把握する

分析方法六 対策前後の変化を同じ基準で比較する

分析精度を高めるための現地確認とデータ管理

まとめ 道路基盤地図情報を安全対策の判断材料に変える


道路基盤地図情報を交通安全対策に使う基本

道路基盤地図情報を交通安全対策に使うときは、まず道路の位置や形状を正しく読むことが出発点になります。交通事故やヒヤリハットは、単に運転者や歩行者の不注意だけで発生するものではありません。見通しが悪い交差点、車道と歩道の分離が弱い区間、横断需要があるのに安全に渡りにくい場所、曲線部や幅員変化によって速度感覚が乱れやすい場所など、道路構造そのものがリスクを高めていることがあります。道路基盤地図情報は、こうした道路空間の特徴を平面上で整理するための土台になります。


一方で、道路基盤地図情報をそのまま交通安全対策の結論として扱うのは適切ではありません。道路基盤地図情報は、現地の状態を確認するための入口であり、事故記録、交通量、速度実態、歩行者の横断行動、沿道施設、通学路、道路管理者が持つ維持管理情報などと組み合わせて、初めて実務上の判断材料になります。地図上では広く見える道路でも、実際には駐停車車両や植栽、電柱、看板、積雪、排水構造物などによって有効幅が狭くなっている場合があります。反対に、地図上では単純な交差点に見えても、現地では交通規制や路面表示、視認性向上の工夫によって安全性が補われている場合もあります。


交通安全対策における道路基盤地図情報の価値は、複数の危険要因を同じ地図上で見比べられる点にあります。事故地点だけを点で追うのではなく、道路幅、交差角、歩道の連続性、横断箇所、曲線部、沿道出入口などを重ねて見ることで、危険が発生しやすい構造を説明しやすくなります。また、対策を検討する際にも、どの場所で区画線の見直し、注意喚起、横断環境の改善、速度抑制、視認性向上、歩行空間の確保が必要なのかを、関係者間で共有しやすくなります。


実務では、最初に対象範囲を決めることが大切です。幹線道路を中心に分析するのか、事故が多い路線だけを見るのか、学校周辺や生活道路を重点的に見るのかによって、必要なデータの粒度や作業量が大きく変わります。道路基盤地図情報は詳細な道路構造を扱うため、対象範囲を広げすぎると確認作業が膨らみます。さらに、公開データだけでは対象路線を十分にカバーできない場合もあります。その場合は、対象道路ごとに利用できる資料を確認し、不足する部分は道路台帳、現地確認、写真記録、測量成果などで補う前提を置く必要があります。


交通安全対策では、目的を明確にし、次に道路基盤地図情報で道路空間の特徴を整理し、最後に現地確認や関係資料で裏付ける流れが現実的です。地図情報を使うほど分析は精密に見えますが、精密に見えることと正しいことは同じではありません。データの取得時期、対象範囲、地物の定義、座標の扱いを確認しながら、道路基盤地図情報を安全対策の仮説づくりに使うことが重要です。


分析方法一 事故位置と道路形状を重ねて危険箇所を絞り込む

最も基本的な分析方法は、事故位置やヒヤリハット地点を道路基盤地図情報に重ね、道路形状との関係を見ることです。事故情報だけを地図に点で表示しても、なぜその場所で事故が多いのかは分かりません。しかし、道路基盤地図情報の上に重ねると、事故が交差点の手前に集中しているのか、横断部の近くに集中しているのか、曲線部の出口に偏っているのか、沿道施設の出入口付近に集まっているのかが見えやすくなります。


この分析では、事故を単純に件数だけで評価しないことが重要です。件数が多い場所は当然注目すべきですが、交通量が非常に多い場所では事故件数も増えやすくなります。一方で、件数は少なくても、死亡や重傷につながりやすい事故が発生している場所、歩行者や自転車が関係する事故が繰り返されている場所、過去に重大事故が発生した場所は、優先的に確認する必要があります。道路基盤地図情報を使うと、こうした事故の種類と道路形状の関係を整理できます。


たとえば、出会い頭事故が多い交差点では、交差角、道路幅、隅切りの形状、停止位置からの見通し、歩道や建物との位置関係を確認します。追突事故が多い区間では、交差点の間隔、右左折待ちが発生しやすい場所、車線運用、沿道出入口の多さなどを見ます。歩行者事故がある場所では、歩道の有無、横断需要が生じる施設、道路横断のしやすさ、車道幅、路肩の余裕などを確認します。事故分類と道路構造を組み合わせることで、対策が単なる注意喚起で終わらず、構造上の改善点に近づきます。


実務上は、事故位置の精度にも注意が必要です。事故データの位置が住所単位や交差点名単位で管理されている場合、実際の発生位置と地図上の点がずれることがあります。道路基盤地図情報の位置精度が十分でも、重ねる事故データの位置が粗ければ、誤った場所を危険箇所と判断してしまう可能性があります。そのため、分析結果は必ず現地写真、事故概要、警察や道路管理者の記録、住民要望などと照合する必要があります。


この方法の目的は、事故が起きた場所を機械的に並べることではありません。道路基盤地図情報を使って、事故の背後にある道路空間の共通点を見つけることが目的です。複数の地点で同じような形状や見通しの問題が見つかれば、個別地点の対策だけでなく、同種箇所をまとめて点検する方針も立てやすくなります。交通安全対策を属人的な経験だけに頼らず、地図情報をもとに説明できる状態にすることが、この分析の大きな効果です。


分析方法二 交差点形状から見通しと横断リスクを分析する

交通安全対策で特に重要なのが、交差点の分析です。交差点は車両、歩行者、自転車が交錯しやすく、右左折、直進、横断、停止、発進といった動作が重なる場所です。道路基盤地図情報を使うと、交差点の形状、接続する道路の角度、道路幅、歩道の接続状況、角部の形状などを平面上で確認できます。これにより、現地調査に入る前に、注意して見るべき交差点を絞り込めます。


見通しの分析では、停止位置や進入方向から見たときに、交差道路の車両や歩行者を早めに認識できるかを考えます。道路基盤地図情報だけでは建物や植栽の高さ、看板、電柱、停車車両の影響までは分からないことがありますが、道路の接続角度や角部の余裕を見るだけでも、見通しに課題がありそうな場所を抽出できます。鋭角に交差する道路や、主道路に対して斜めに流入する道路では、運転者が確認しにくい場合があります。曲線の直後に交差点がある場合も、接近する車両の発見が遅れやすくなります。


横断リスクの分析では、歩行者がどこを渡りたくなるかを想像することが大切です。横断施設があるかどうかだけでなく、学校、公共施設、商業施設、住宅地、駐車場、停留所などの位置関係によって、自然な横断動線が生まれます。道路基盤地図情報で歩道や道路端の連続性を確認し、そこに沿道施設や通学路などの情報を重ねると、横断需要があるのに安全な横断環境が不足している場所を見つけやすくなります。特に、交差点から少し離れた場所で横断が発生している場合は、地図上の道路構造と実際の人の動きが一致していない可能性があります。


交差点では、車両の内輪差や大型車の通行も安全性に影響します。道路基盤地図情報から角部の形状や道路幅を確認すれば、大型車が曲がるときに歩道や路肩へ近づきやすい場所、歩行者の待機空間が狭い場所、右左折車と横断者が接近しやすい場所を推定できます。ただし、車両軌跡や見通しの最終判断は、現地での確認や別途の検討が必要です。地図上の形状だけで安全性を断定するのではなく、リスクの仮説を立てるために使う姿勢が重要です。


交差点分析の成果は、対策案の整理にも役立ちます。見通しが悪い場所では、障害物の確認、路面表示の見直し、停止位置の適正化、注意喚起、照明や視認性の改善が検討対象になります。横断リスクが高い場所では、歩行者の待機空間、横断位置、車両速度、通行規制、通学路運用などを総合的に見る必要があります。道路基盤地図情報を使えば、対策前の問題点と対策後に期待する変化を同じ地図上で説明しやすくなり、関係者との合意形成が進めやすくなります。


分析方法三 歩行者と自転車の動線を道路空間から読み解く

交通安全対策では、車両の流れだけでなく、歩行者と自転車の動線を把握することが欠かせません。道路基盤地図情報は、車道中心だけでなく、道路の端部、歩道、路肩、交差部などの位置関係を整理する際に役立ちます。歩行者や自転車は、必ずしも道路管理者が想定したとおりに移動するわけではありません。最短経路を選ぶ、見通しのよい側へ寄る、路面状態のよい場所を通る、交通量の少ない裏道を選ぶなど、実際の行動にはさまざまな理由があります。


歩行者動線の分析では、まず歩道の連続性を確認します。歩道が途中で途切れる場所、幅が急に狭くなる場所、横断後に歩行空間がつながらない場所、車道を歩かざるを得ない区間は、事故やヒヤリハットにつながりやすくなります。道路基盤地図情報で歩行空間の位置を確認し、通学路、公共施設、住宅地、商業施設などを重ねることで、歩行者が集中しやすい区間と歩行環境の弱い区間を見つけることができます。


自転車動線の分析では、車道端や路肩の余裕、交差点での進行方向、歩行者との混在状況を見ます。自転車は速度が歩行者より高く、車両より弱い立場にあるため、道路空間の少しの変化でも危険が増えます。幅員に余裕がない区間、路肩が狭い区間、側溝や段差が連続する区間、交差点で進路が分かりにくい場所では、自転車が車道中央寄りに膨らんだり、歩道側へ逃げたりすることがあります。道路基盤地図情報だけで自転車の実際の走行位置を完全に把握することはできませんが、危険が起きやすい構造を抽出するためには有効です。


歩行者と自転車の分析では、道路を線として見るだけでなく、面的に見ることも重要です。たとえば、学校や駅、公共施設の周辺では、特定の交差点だけでなく、周辺の複数道路をまたいで移動が発生します。歩道がある路線とない路線、横断しやすい場所としにくい場所、車両が抜け道として使う道路を一体で見ることで、地域全体の安全課題が見えます。道路基盤地図情報で対象範囲を十分に把握できない場合は、基盤地図情報や道路台帳、現地調査の結果も使い、道路空間のつながりを補完することが大切です。


この分析を現場で活かすには、時間帯の違いも考える必要があります。朝の通学時間帯、夕方の帰宅時間帯、夜間、休日では、人の流れも車両の流れも変わります。地図上では同じ道路でも、時間帯によって危険の種類が変わることがあります。道路基盤地図情報で構造上の弱点を見つけたら、実際に危険が高まる時間帯に現地を確認することで、対策の精度が高まります。歩行者と自転車の安全対策は、道路空間の形だけでなく、人の使い方まで含めて考えることが大切です。


分析方法四 幅員や線形から速度超過と逸脱リスクを考える

道路基盤地図情報は、速度に関係する道路構造の分析にも活用できます。交通安全上、速度は事故の発生確率だけでなく、事故が起きたときの被害の大きさにも影響します。広く直線的な道路では、運転者が無意識に速度を上げやすくなります。一方で、急な曲線、幅員の変化、交差点の連続、見通しの変化がある道路では、速度の選び方を誤ると車線逸脱や接触のリスクが高まります。道路基盤地図情報で道路幅や線形を確認することで、速度に関する課題を事前に整理できます。


幅員の分析では、車道幅が広い場所と狭い場所の変化に注目します。道路幅が急に狭くなる区間では、車両同士のすれ違い、歩行者や自転車との接近、路肩への逸脱が起きやすくなります。逆に、生活道路で幅員が広く見える区間では、実際の規制速度や周辺環境に比べて車両速度が高くなる場合があります。道路基盤地図情報で幅員の変化を把握し、交通量や速度観測の結果と重ねると、速度抑制が必要な区間を見つけやすくなります。


線形の分析では、曲線部、屈曲部、坂道の前後、交差点の接続位置などを確認します。道路基盤地図情報は主に平面情報として扱うため、勾配や高低差は別の資料や現地確認で補う必要がありますが、平面線形だけでも危険の仮説を立てることはできます。曲線の手前で十分に減速できる構造か、曲線の出口に横断箇所や沿道出入口がないか、見通しの悪い場所に歩行者動線が重なっていないかを見ます。特に、曲線と交差点、曲線と横断、幅員変化と沿道出入口が重なる場所は、重点的に確認すべきです。


速度超過や逸脱リスクの分析では、単に道路が広いか狭いかを見るだけでは不十分です。運転者がどのように道路を認識するかを考える必要があります。直線が長く、周辺に視覚的な変化が少ない道路では、実際の速度より遅く感じられることがあります。生活道路であっても、見通しがよく、路面が整い、交差交通が少ないように見えると、通過交通が速度を上げる可能性があります。一方で、狭い道路でも歩行者や自転車の存在が見えやすく、車両が自然に減速する環境であれば、事故リスクは相対的に抑えられることがあります。


道路基盤地図情報を使った速度関連の分析は、対策の方向性を検討するうえで有効です。速度抑制を目的とする場合、注意喚起だけでなく、道路空間の見え方、歩行者空間の明確化、交差点の認識性、路面表示、沿道環境との関係を考える必要があります。道路基盤地図情報で道路の形を把握し、現地で速度実態や運転者の視認状況を確認することで、より現実的な安全対策につながります。


分析方法五 生活道路や通学路の危険要因を面で把握する

生活道路や通学路の交通安全対策では、特定の事故地点だけを見るのではなく、地域全体を面として把握することが重要です。ただし、生活道路や通学路のすべてについて、道路基盤地図情報だけで詳細な道路構造を確認できるとは限りません。そのため、この分析では、道路基盤地図情報を使える範囲で活用しながら、対象外の道路については道路台帳、基盤地図情報、都市計画図、学校や自治体の通学路資料、現地調査結果を補助資料として組み合わせる考え方が現実的です。


生活道路では、歩行者、自転車、地域住民の車両、配送車両、通過交通が混在します。通学路では、子どもが同じ時間帯に集中して移動し、交差点や横断箇所でリスクが高まりやすくなります。道路基盤地図情報や補助的な地図資料を使えば、道路ネットワークのつながり、交差点の密度、歩道の有無、抜け道になりやすい経路などを整理できます。点ではなく面で見ることで、個別地点だけでは分からない危険の連鎖を把握しやすくなります。


面で把握する分析では、まず対象地域の道路を幹線道路、補助的な道路、生活道路のように役割ごとに分けて考えます。幹線道路は交通量が多く、横断や右左折に注意が必要です。生活道路は速度が低いと思われがちですが、抜け道利用があると危険が増えます。通学路は、道路そのものの構造だけでなく、登下校の時間帯、集合場所、横断箇所、見守り位置、沿道の駐車状況などが関係します。道路基盤地図情報を土台に、これらの情報を重ねることで、点ではなく面として危険を整理できます。


通学路の分析では、歩道が連続しているか、横断箇所が適切な位置にあるか、見通しの悪い交差点を避けられるか、車両が速度を出しやすい直線区間を通らないかを確認します。学校の近くでは安全対策が比較的意識されやすい一方で、学校から少し離れた住宅地内の細街路では、危険が見落とされることがあります。地図資料を使って通学路全体を追うと、学校周辺だけでなく、途中の交差点や横断箇所の弱点も把握しやすくなります。


生活道路では、抜け道化の分析も重要です。幹線道路の渋滞を避ける車両が住宅地内を通過すると、歩行者や自転車との接近が増えます。道路基盤地図情報や周辺の地図資料で幹線道路と生活道路の接続関係を確認し、どの経路が通過交通に使われやすいかを推定します。さらに、幅員が比較的広く、直線的で、交差点が少ない生活道路は、抜け道として選ばれやすい傾向があります。こうした場所では、速度実態や交通量を現地で確認し、必要に応じて速度抑制や進入抑制の検討につなげます。


面での分析は、住民説明や関係機関との協議にも役立ちます。個別の地点だけを示すと、なぜその場所を優先するのかが伝わりにくいことがあります。しかし、地図上で通学路、生活道路、事故位置、交通量、危険要望などを重ねると、地域全体のリスク構造を説明しやすくなります。交通安全対策は、単独の施設整備だけで完結するものではありません。地域の移動実態と道路構造を面で捉え、優先順位を明確にすることが、実効性のある対策につながります。


分析方法六 対策前後の変化を同じ基準で比較する

道路基盤地図情報は、交通安全対策を実施する前だけでなく、実施後の効果確認にも活用できます。安全対策は、設置して終わりではありません。対策によって事故やヒヤリハットが減ったのか、歩行者や自転車の動線が改善したのか、車両速度が下がったのか、別の場所に危険が移っていないかを確認する必要があります。道路基盤地図情報を共通の土台として使えば、対策前後の状態を同じ基準で比較しやすくなります。


対策前後の比較では、まず対策前の道路状態を記録しておくことが大切です。交差点形状、歩道や路肩の状況、横断箇所、見通しを妨げる要因、路面表示、交通規制、事故位置、速度実態、交通量、現地写真などを、道路基盤地図情報と関連付けて整理します。対策後には、同じ範囲、同じ観点で再確認します。比較の基準が変わってしまうと、効果があったのかどうかを説明しにくくなります。


たとえば、交差点の視認性を改善した場合、対策前にどこから何が見えにくかったのか、対策後に確認しやすくなったのかを記録します。歩行空間を明確化した場合は、歩行者が車道側へ膨らむ状況が減ったのか、自転車との混在が変わったのかを見ます。速度抑制を目的とした場合は、車両速度の変化だけでなく、歩行者の安心感や横断行動の変化も確認します。道路基盤地図情報は、こうした変化を位置情報として整理するための基盤になります。


注意すべきなのは、対策の効果を事故件数だけで短期間に判断しないことです。事故は発生頻度が低い場合もあり、短い期間では統計的な変化が見えにくいことがあります。そのため、事故件数に加えて、速度、交通量、横断行動、ヒヤリハット、住民の声、現地観察などを組み合わせて評価します。道路基盤地図情報は、これらの情報を場所に結び付けて整理するために使います。


また、対策によって別のリスクが生じていないかも確認が必要です。ある交差点で通過速度が下がっても、周辺の生活道路へ交通が流れる可能性があります。横断位置を変更した結果、歩行者の動線と合わず、別の場所で横断が発生することもあります。道路基盤地図情報を使って周辺道路まで含めて比較すれば、対策の副作用を発見しやすくなります。交通安全対策は、単独地点ではなく道路ネットワーク全体で評価することが大切です。


分析精度を高めるための現地確認とデータ管理

道路基盤地図情報を交通安全対策に活かすうえで、最も避けたいのは、地図上の情報だけで結論を急ぐことです。道路基盤地図情報は有用な基礎資料ですが、現地のすべてを表しているわけではありません。地図では分からない段差、路面の傷み、植栽の繁茂、電柱や標識の位置、夜間の暗さ、雨天時の水たまり、積雪時の有効幅、駐停車の実態などが、安全性に大きく影響することがあります。分析結果は、必ず現地確認で補強する必要があります。


現地確認では、地図上で抽出した危険箇所に対して、なぜ危険と考えたのかを明確にしておくと効率的です。単に現地を歩くだけでは、確認すべき点が曖昧になります。交差点の見通しを確認するのか、歩行者の待機空間を見るのか、車両速度を観察するのか、自転車の走行位置を見るのか、横断需要を確認するのかによって、見るべき時間帯や立つ位置が変わります。道路基盤地図情報で事前に仮説を立て、現地で検証する流れにすると、調査の質が安定します。


データ管理では、座標系や更新時期の確認が重要です。道路基盤地図情報と事故情報、交通量情報、現地写真、点検記録などを重ねる場合、位置がずれると誤った分析につながります。特に、異なる部署や関係機関から集めたデータを使う場合は、座標の扱い、作成時期、更新履歴、取得範囲、精度の違いを確認する必要があります。道路形状が更新されているのに古い地図情報を使うと、現在の現地状況と合わない分析になることがあります。


また、交通安全対策では、個人情報や機微な情報の扱いにも配慮が必要です。事故やヒヤリハット、通学路、住民要望などは、取り扱い方によって関係者に不安を与える可能性があります。公開資料にする場合は、必要以上に個別の人物や詳細な行動が特定されないようにし、目的に応じて情報の粒度を調整します。道路基盤地図情報を使った分析は、関係者の合意形成に役立つ一方で、見せ方を誤ると誤解を招くことがあります。


分析結果を組織内で継続的に使うには、作業ルールを整えることも大切です。どのデータを最新版として扱うのか、現地確認の結果をどのように記録するのか、対策後の写真や測位結果をどの場所に紐づけるのか、誰が更新するのかを決めておくと、次年度以降の安全対策にも活かせます。交通安全対策は一度きりの作業ではなく、道路環境や利用状況の変化に合わせて見直すものです。道路基盤地図情報を継続的な点検と改善の基盤にすることで、分析の価値は高まります。


まとめ 道路基盤地図情報を安全対策の判断材料に変える

道路基盤地図情報は、交通安全対策において、道路空間を客観的に整理するための重要な基礎資料になります。事故位置と道路形状を重ねれば、危険が集中する場所の構造的な特徴を把握しやすくなります。交差点形状を見れば、見通しや横断リスクの仮説を立てられます。歩行者や自転車の動線を道路空間から読み解けば、車両中心では見落としやすい危険に気づけます。幅員や線形を分析すれば、速度超過や逸脱リスクの検討にもつながります。生活道路や通学路を面で把握すれば、地域全体の安全課題を説明しやすくなります。さらに、対策前後を同じ基準で比較すれば、実施した安全対策の効果を検証しやすくなります。


一方で、道路基盤地図情報だけで安全対策の結論を出すことはできません。現地の見通し、路面状態、交通量、速度、歩行者や自転車の行動、時間帯による変化、沿道環境などを合わせて確認する必要があります。また、対象道路によっては道路基盤地図情報だけでは十分にカバーできない場合があります。その場合は、道路台帳、基盤地図情報、都市計画図、通学路資料、現地写真、測位記録などを組み合わせ、分析の前提を明確にしておくことが大切です。


実務では、危険箇所の抽出、現地確認、対策案の検討、関係者説明、施工後の記録、効果確認までを一連の流れで管理することが求められます。そのためには、地図上の位置と現場の実測結果、写真、点検メモを正確に結び付ける仕組みが重要です。道路基盤地図情報で見つけた課題を現場で確認し、対策後の状態を位置情報付きで記録できれば、交通安全対策の説明力と再現性は大きく高まります。


道路基盤地図情報を交通安全対策に活かすポイントは、地図を答えとして扱うのではなく、現地確認の質を高めるための問いとして使うことです。道路形状、事故位置、歩行者動線、速度実態、住民要望を同じ位置情報の上で整理できれば、危険箇所の説明は具体的になります。机上の分析と現場の確認を往復しながら、道路基盤地図情報を安全対策の判断材料として育てていくことが、実務で使える交通安全分析につながります。


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