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鉄道施工の列車接近警報装置設置で作業員退避を守る5手順

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万能の測量機LRTKの説明

著者: LRTKチーム

鉄道施工では、列車運行を継続しながら軌道、電気、土木、建築、通信設備などの工事を進める場面があります。英語ではrailway constructionと表現されるこの領域では、限られた作業時間の中で品質と工程を守ることも重要ですが、それ以上に優先されるべきなのが作業員の退避安全です。列車接近警報装置は、列車の接近を作業員へ速やかに知らせ、退避判断を支えるための重要な安全設備です。ただし、装置を置くだけで安全が成立するわけではありません。設置位置、警報の届き方、作業範囲、退避場所、見張り体制、点検記録までを一体で考えなければ、現場では警報の聞き逃しや退避遅れが起こるおそれがあります。


この記事では、鉄道施工の列車接近警報装置設置で確認したい5手順を、公開前の安全な一般論として整理します。実際の運用では、法令、発注者の安全基準、鉄道事業者の作業規程、現場責任者の指示、使用する機器の取扱説明に従い、現場条件に合わせて判断することが前提です。


目次

列車接近警報装置の目的を作業計画に落とし込む

設置前に線路条件と退避動線を確認する

警報が届く位置と方法を現場で検証する

作業員への周知と退避訓練を施工前に行う

点検記録と改善で警報運用を継続的に強化する

まとめ


列車接近警報装置の目的を作業計画に落とし込む

鉄道施工における列車接近警報装置の役割は、列車の接近を作業員に知らせることだけではありません。より重要なのは、作業員が警報を受けて作業を止め、安全な場所へ退避し、列車通過後に責任者の確認を経て再開するまでの一連の行動を支えることです。そのため、設置計画は単なる機器配置ではなく、作業手順、退避手順、連絡体制、見張り体制、現場責任者の判断基準まで含めた安全計画として整理する必要があります。


まず確認したいのは、警報装置をどの作業に対して使うのかという目的です。線路近接作業、軌道内作業、踏切付近の作業、橋梁や高架下の作業、駅構内の夜間作業など、鉄道施工といっても危険の現れ方は異なります。列車が作業箇所に近づく速度、作業員が線路から離れるまでの距離、工具や材料を残さず退避できる作業状態かどうか、重機や高所作業が絡むかどうかによって、必要な警報の届き方や退避時間は変わります。警報装置の設置を検討する段階では、対象作業ごとの危険を洗い出し、どの場面で列車接近情報が必要になるのかを明確にしておくことが大切です。


次に、警報装置をどの安全対策と組み合わせるのかを整理します。鉄道施工の現場では、一つの装置だけに安全判断を依存させると、機器不具合、騒音、死角、作業員の集中、悪天候などの影響を受けやすくなります。警報装置は有効な安全手段の一つですが、退避場所の確保、作業範囲の明示、列車見張り、作業開始前の点呼、通信手段の確認、作業責任者による全員確認などと組み合わせて運用することが重要です。計画書の中では、警報を聞いたら誰がどのように作業を止め、どの経路でどこへ退避し、誰が全員退避を確認するのかを文章で示しておきます。


また、列車接近警報装置を設置する目的を現場の全員が同じ言葉で理解していることも欠かせません。管理者だけが装置の意義を把握していても、実際に退避する作業員が警報音の意味や行動基準を理解していなければ、安全性は高まりません。たとえば、警報が鳴った時点で直ちに退避を始めるのか、責任者の追加指示を待つのか、どの退避場所へ移動するのかという認識がばらつくと、初動に遅れが生じます。鉄道施工では短い遅れが重大な差になるため、警報の意味は施工前に具体的な行動へ変換しておく必要があります。


計画段階では、列車接近警報装置を導入することで何を防ぐのかを明確にします。警報の聞き逃しを減らす、退避開始を早める、作業員の背後から接近する列車への気付きを補う、夜間や騒音環境での注意喚起を強める、複数班が同時に作業する場合の合図を統一するなど、目的を絞ることで設置条件も決めやすくなります。反対に、目的があいまいなまま設置すると、音量だけを上げて周辺環境に影響を与えたり、不要な警報が多くなって作業員が慣れてしまったりするおそれがあります。安全設備は目立てばよいのではなく、必要な人に、必要なタイミングで、誤解なく伝わることが大切です。


さらに、作業計画には通常時だけでなく、予定外の状況への対応も含めます。列車運行の変更、作業場所の移動、騒音を伴う機械の追加、雨や強風による聞こえ方の変化、照明条件の悪化、通信不良などが起きた場合、警報装置の有効性は変わる可能性があります。施工中に作業範囲を広げる場合や、当初予定していない箇所で短時間作業を行う場合も、既存の警報範囲で安全が保てるとは限りません。計画書には、作業条件が変わったときは警報装置の位置や退避手順を再確認してから作業を再開するという考え方を入れておくと、現場判断の抜けを減らせます。


鉄道施工で安全を守る計画は、書類上の整合性だけでは不十分です。現場に立った作業員が、警報を認識し、危険を理解し、退避場所へ安全に移動できる状態になっていることが必要です。列車接近警報装置の設置は、その状態をつくるための手段です。機器の設置を目的化せず、作業員退避という本来の目的から逆算して計画を組み立てることが、最初の手順になります。


設置前に線路条件と退避動線を確認する

列車接近警報装置の効果は、現場条件の読み取りによって大きく変わります。同じ装置を使っても、直線区間、曲線区間、駅構内、踏切付近、橋梁部、トンネル出入口付近、高架下、複線区間、隣接線がある区間では、警報の必要範囲や退避の難しさが異なります。設置前には、線路条件と作業員の動線を現地で確認し、警報を受けてから安全な位置へ移動するまでの流れを具体的に把握することが重要です。


最初に確認すべきなのは、列車の接近方向と作業員の視認性です。線路が直線で見通しがよい場所でも、作業員が線路に背を向けて作業する場合や、機械音に集中している場合は、列車接近に気付きにくくなります。曲線区間や構造物に囲まれた区間では、列車が近づくまで姿が見えにくいこともあります。駅構内では複数の線路が並び、列車の発着や入換作業が重なるため、どの線から列車が接近しているのかを作業員が判断しにくい場面もあります。こうした条件を踏まえ、警報が必要な範囲と、警報を受けた作業員がどちらへ退避すべきかを先に決めておきます。


退避動線の確認では、単に退避可能な余地や通路があるかを見るだけでなく、作業中の姿勢や持ち物も考慮します。軌道材料を扱っている作業員、測定機器を持っている作業員、ケーブルを敷設している作業員、重い工具を使用している作業員では、警報後の初動が異なります。足元に材料が置かれている場合、夜間で照明が限られる場合、雨で路盤や通路が滑りやすい場合は、退避に必要な時間が長くなる可能性があります。退避場所までの経路に段差、側溝、仮設物、架線柱、信号設備、排水設備、資材置き場がある場合も、実際に歩いて確認しておくことが大切です。


退避場所は、列車が通過しても安全を保てる位置であることに加え、全員が収まる広さと待機しやすさが必要です。作業員が多い現場では、退避場所が一箇所だけでは混雑し、最後の人が安全な位置に入るまで時間がかかることがあります。複数班が分かれて作業する場合は、班ごとの退避場所を決め、警報時に交差や逆走が起きないようにします。退避場所に移動した後、作業責任者が全員の退避を確認できるかも重要です。姿が見えない位置に分かれる場合は、声かけ、合図、無線などの確認方法を決めておきます。


列車接近警報装置の設置位置を考える際は、警報が作業範囲全体に届くかどうかだけでなく、作業員が警報方向を誤解しないかも確認します。警報音が構造物に反射する場所では、音の方向が分かりにくくなることがあります。高架下やトンネル付近では音がこもったり、反響によって聞こえ方が変わったりする場合があります。駅構内では放送、列車音、工事音、利用者の声などが重なるため、警報が埋もれないようにする必要があります。音だけでは伝わりにくい場合は、光や表示による補助を組み合わせるなど、現場条件に応じた伝達方法を検討します。


設置前確認では、電源や固定方法も見落とせません。警報装置が安定して作動するためには、電源の確保、配線の保護、機器の転倒防止、雨水や粉じんへの対策、作業車両や資材との干渉防止が必要です。仮設で設置する場合でも、列車風、振動、人の接触、夜間の視認性を踏まえた固定が求められます。装置本体やケーブルが退避動線をふさいだり、つまずきの原因になったりしては本末転倒です。安全設備を置いたことで新たな危険を生まないよう、設置後の作業空間も確認します。


また、周辺環境への配慮も必要です。住宅地に近い区間、駅利用者が近くを通る場所、夜間作業が多い場所では、警報音が周辺に与える影響を考えなければなりません。ただし、周辺への配慮を優先するあまり、作業員に届かない音量や分かりにくい合図になってはいけません。重要なのは、作業員の安全に必要な警報性能を確保したうえで、不要な鳴動や過度な音量を避けることです。警報の範囲、方向、時間、鳴動条件を調整し、作業員には届きやすく、周辺には必要以上に広がりにくい設置を目指します。


鉄道施工の現場は、作業日ごとに状況が変わります。前日に問題なく使えた退避動線が、翌日は資材搬入や別作業のために狭くなっていることもあります。列車接近警報装置の設置前確認は、一度実施して終わりではなく、作業開始前の現地確認として繰り返す姿勢が大切です。線路条件、退避動線、作業範囲、設置位置を現場で結びつけて確認することで、警報装置は実際に作業員退避を支える設備として機能しやすくなります。


警報が届く位置と方法を現場で検証する

列車接近警報装置は、仕様上の音量や表示性能だけで評価できるものではありません。実際の鉄道施工現場では、列車音、発電機、削孔機、切断機、締固め機械、作業車両、駅放送、風雨、反響、作業員の保護具など、警報の伝わり方に影響する要素が重なります。そのため、設置後には現場で警報が届くかを検証し、作業員が警報を認識して退避行動に移れるかを確認する必要があります。


検証の基本は、実際の作業位置で確認することです。装置の近くで音が聞こえることと、作業員が作業している姿勢で聞こえることは別です。しゃがんで締結装置を確認しているとき、機械を操作しているとき、複数人で声を掛け合っているとき、列車と反対方向を向いているときなど、作業中の状態を想定して聞こえ方を確かめます。ヘルメット、耳栓、防音保護具、雨具、フードなどを着用している場合は、それらを身に着けた状態で確認することが大切です。安全確認だけ普段と違う軽装で行うと、実作業時に警報が聞き取りにくいという見落としが生じます。


警報の届き方は、作業範囲の端部で特に確認します。装置の正面では明確に聞こえても、作業範囲の端、構造物の裏側、仮設物の陰、重機の反対側では聞こえ方が弱くなることがあります。作業員が移動しながら作業する場合は、開始位置だけでなく移動先でも確認します。軌道内の一点作業であれば比較的範囲を把握しやすいですが、ケーブル敷設や排水設備の点検のように線路沿いに長く移動する作業では、作業の進行に合わせて装置の位置を変更する必要があるかもしれません。警報範囲と作業範囲がずれたまま作業を続けないよう、現場責任者が判断できる基準を決めておきます。


音による警報だけで不安がある場合は、視覚的な合図を併用する考え方が有効です。強い騒音がある作業、耳栓などの保護具を必要とする作業、複数の作業班が離れている作業、夜間で列車の接近方向を見誤りやすい作業では、光や表示による補助が警報の理解を助けます。ただし、視覚的な合図にも死角があります。作業員が下を向いている、装置に背を向けている、仮設物の陰にいる、雨や霧で見えにくいといった条件では、光だけに頼ることはできません。音と光のどちらか一方に依存するのではなく、現場の作業姿勢に合わせて組み合わせることが重要です。


警報の意味を誤解しないことも検証の対象です。現場に複数の合図音がある場合、列車接近警報なのか、作業車両の後退警報なのか、駅設備の音なのか、作業員が瞬時に判断できないことがあります。警報音や表示が他の合図と似ている場合は、事前周知を徹底するだけでなく、必要に応じて設置位置や表示方法を調整します。警報を聞いた作業員が一瞬考え込む状態は、退避の遅れにつながります。警報が鳴ったら退避行動へ移るという単純で明確なルールにしておくことが望ましいです。


検証では、警報から退避完了までの時間も確認します。警報が聞こえるだけでは不十分で、作業員が工具から手を離し、姿勢を変え、足元を確認し、退避場所まで移動し、全員確認を受けるまでに必要な時間を見ておきます。特に、重量物を扱う作業、軌道内に仮設ケーブルがある作業、狭い通路を通る作業では、想定より退避に時間がかかる場合があります。退避時間が想定より長い場合は、警報の発報タイミング、設置範囲、退避場所、作業方法を見直します。作業員に急がせるだけでは安全対策になりません。安全に退避できる条件を整えることが管理側の役割です。


列車接近警報装置の検証は、晴天の日中だけでなく、実際の作業条件に近い状態で行うことが理想です。夜間作業であれば照明環境、雨天時に作業を行う可能性があるなら雨具や水音、風が強い場所であれば風向きと風音も考慮します。もちろん危険な条件を無理に再現する必要はありませんが、現場で起こり得る聞こえ方の変化を想定し、余裕を持った設置にしておくことが大切です。特に鉄道施工では、作業時間が短く、列車運行に合わせて段取りが進むため、作業開始後に警報の不備へ気付いても修正時間が限られることがあります。事前検証の精度が、施工中の安全余裕につながります。


また、検証結果は口頭だけで済ませず、記録に残します。どの位置で確認したか、誰が確認したか、聞こえ方に問題がなかったか、退避場所までの移動に支障がなかったか、改善した点は何かを残すことで、次回作業への引き継ぎがしやすくなります。複数日にわたる工事では、担当者が変わっても同じ安全水準を維持する必要があります。記録があれば、設置位置の再現、問題箇所の共有、作業条件変更時の見直しが行いやすくなります。


警報が届くかどうかは、机上の計画だけでは判断できません。実際の作業員、実際の姿勢、実際の騒音、実際の退避経路で確かめることが、列車接近警報装置を安全対策として成立させる中心になります。現場検証を丁寧に行うほど、警報は単なる音ではなく、作業員の安全行動の起点になります。


作業員への周知と退避訓練を施工前に行う

列車接近警報装置を設置しても、作業員が警報の意味を理解していなければ退避行動にはつながりません。鉄道施工の現場では、短時間に多くの作業を進めるため、作業員が自分の持ち場に集中しやすくなります。警報が鳴ったときに、手を止めるべきか、工具や材料をどう扱うべきか、どの退避場所へ移動するべきかをその場で考えるようでは遅れが生じます。施工前の周知と退避訓練は、警報を実際の安全行動へ結びつけるための重要な手順です。


周知では、まず警報の種類と意味を全員に説明します。どの音や表示が列車接近を示すのか、警報が鳴ったら何を中止するのか、誰の指示で退避するのか、退避後はどの合図で作業を再開するのかを確認します。ここで大切なのは、説明を抽象的にしないことです。「注意する」「安全を確認する」といった言葉だけでは、人によって行動が異なります。「警報を確認したら直ちに作業を止める」「決められた退避場所で待機する」「全員確認が終わるまで戻らない」というように、現場で迷わない表現に置き換えます。


退避訓練では、実際に作業員が配置される位置から退避場所まで移動します。図面上では近く見える退避場所でも、現場では足元が悪かったり、資材が置かれていたり、他班と動線が重なったりすることがあります。訓練で実際に歩くことで、危険な段差、狭い通路、見えにくい障害物、すれ違いにくい箇所を発見できます。特に夜間作業では、照明の当たり方によって足元の見え方が変わります。昼間の下見だけで安心せず、実際の作業時間帯に近い条件で確認することが望ましいです。


新人や応援作業員がいる場合は、周知をより丁寧に行います。鉄道施工に慣れた作業員にとっては当然の退避行動でも、初めて現場に入る人には分かりにくいことがあります。線路のどちら側へ退避するのか、隣接線に近づいてよいのか、列車通過後にすぐ戻ってよいのか、作業責任者の確認を待つのかなど、経験者が無意識に理解しているルールを言葉にして伝える必要があります。短期の応援者や別工種の作業員が混在する現場ほど、警報時の行動を統一しておくことが重要です。


周知では、退避の優先順位も明確にします。警報が鳴ったとき、作業員は工具や材料を守ろうとしてしまうことがあります。測定中の機器、未固定の材料、途中まで締めた部材、開いたままの点検口などが気になる場合でも、列車接近時は人の退避を最優先にするという原則を徹底します。一方で、工具や材料が列車運行に支障を与える位置に残らないよう、作業方法そのものを事前に整理する必要があります。警報が鳴ってから慌てて片付けるのではなく、警報が鳴ったらすぐ離れられる作業状態を保つことが重要です。


合図の重複にも注意が必要です。作業責任者の声、見張員の合図、無線連絡、警報装置の音、表示灯など、複数の情報が同時に出る現場では、作業員がどれを優先すべきか迷うことがあります。列車接近を示す警報や合図があった場合の初動を統一し、退避完了の確認、作業再開の判断、異常時の連絡は責任者が行うように役割を分けます。警報、見張り、無線、責任者の指示が互いに矛盾しないように、施工前に運用順序を確認しておくことが大切です。


退避訓練は、一度行っただけで十分とは限りません。作業範囲が変わる、作業員が入れ替わる、施工段階が進んで仮設物が増える、使用機械が変わるといった場合には、退避動線も変わります。朝礼や作業前ミーティングで退避場所を指差し確認し、必要に応じて短時間の再確認を行うことで、周知の形骸化を防げます。特に長期工事では、最初は緊張感があっても、慣れによって警報への反応が鈍くなることがあります。毎日の確認で、警報が鳴ったらすぐ退避するという行動を維持することが大切です。


教育内容は記録として残します。いつ、誰に、どの警報内容と退避手順を説明したかを記録することで、未周知の作業員を把握しやすくなります。口頭で説明したつもりでも、遅れて現場に入った作業員や、途中参加の協力会社が抜けることがあります。入場時教育、作業前確認、班別ミーティングの中で警報装置の説明を組み込み、作業員の入れ替わりに対応できる仕組みにしておくことが重要です。


列車接近警報装置は、作業員の行動と結びついて初めて意味を持ちます。警報を聞いた瞬間に全員が同じ判断をし、同じ方向へ安全に動ける状態をつくるには、施工前の周知と退避訓練が欠かせません。安全設備の性能に頼るだけでなく、人が確実に反応できる運用を整えることが、鉄道施工の現場で退避を守る基本になります。


点検記録と改善で警報運用を継続的に強化する

列車接近警報装置の設置と周知が終わっても、安全管理はそこで完了ではありません。鉄道施工の現場では、天候、作業内容、作業員数、列車運行、仮設物、騒音環境が日々変化します。初日に適切だった設置位置や音量が、数日後も同じように有効とは限りません。作業員退避を継続的に守るためには、点検記録と改善の仕組みを運用に組み込み、現場の変化に合わせて警報装置の使い方を見直すことが必要です。


点検では、作業開始前に装置が正常に作動するかを確認します。電源の状態、警報音や表示の作動、固定状況、配線や接続部の異常、雨水や汚れの影響、周囲の障害物、退避動線への干渉を確認します。仮設で設置している場合は、前回作業後に位置がずれていたり、資材搬入によって音や光が遮られていたりすることがあります。点検は機器そのものだけでなく、警報が作業員に届く状態が保たれているかを見ることが重要です。


点検記録は、単なるチェック済みの印ではなく、現場改善に使える情報として残します。確認した日時、作業範囲、装置の位置、確認者、警報の聞こえ方、退避動線の状態、気付いた問題、実施した対策を記録しておくと、後から振り返りやすくなります。たとえば、特定の作業場所で聞こえにくいという記録が複数回出ていれば、装置の増設や位置変更、視覚合図の追加を検討できます。雨天時に聞き取りにくい、夜間に表示が見えにくい、作業機械の稼働中だけ反応が遅れるといった情報も、記録があることで対策につながります。


ヒヤリとした事例の共有も重要です。警報に気付くのが遅れた、退避場所で人が重なった、作業員が一人だけ別方向へ動いた、工具を片付けようとして退避が遅れそうになった、警報音を別の合図と勘違いしたなど、事故には至らない小さな違和感は、重大なリスクの前触れです。こうした情報を責める材料にするのではなく、現場を良くする材料として扱うことが大切です。作業員が言い出しやすい雰囲気をつくり、次の作業前確認で改善を共有すれば、警報運用の実効性は高まります。


改善では、原因を一つに決めつけない姿勢が必要です。警報に気付くのが遅れた場合、作業員の注意不足だけにしてしまうと、本質的な対策が進みません。音が届きにくかったのか、作業機械の音が大きかったのか、保護具で聞こえにくかったのか、警報の意味が十分に周知されていなかったのか、退避場所が分かりにくかったのか、作業姿勢が警報方向と合っていなかったのかを確認します。原因を現場条件、設備、作業方法、教育、連絡体制に分けて見ることで、より効果的な改善策を選べます。


工事の進行に合わせた見直しも欠かせません。施工初期は資材が少なく見通しがよかった場所でも、作業が進むにつれて仮設設備や材料置き場が増え、警報の届き方や退避動線が変わることがあります。逆に、作業範囲が移動したのに警報装置の位置がそのままで、実際の作業箇所を十分にカバーできていない場合もあります。日々の作業打合せでは、その日の作業位置と警報装置の位置が合っているかを確認し、必要があれば作業開始前に調整します。工程を優先して確認を省くと、安全設備が形だけになってしまいます。


点検記録は、発注者、元請、協力会社、現場責任者、作業班の間で共有しやすい形にしておくと効果的です。鉄道施工では複数の関係者が同じ現場に関わるため、安全情報が一部の担当者に閉じていると、作業員の入れ替わりや別工種の参加時に抜けが生じます。記録を共有することで、前回の問題点、改善済みの内容、注意すべき場所を短時間で引き継げます。特に夜間作業や短時間作業では、情報共有の効率が安全水準に直結します。


また、装置の点検と同じくらい、作業員の反応確認も大切です。警報が鳴ったときに全員がすぐ退避したか、退避場所で待機できたか、戻りの判断を勝手にしなかったか、責任者が全員確認できたかを観察します。警報装置が正常に鳴っていても、人の動きにばらつきがあれば改善が必要です。退避行動の確認は、訓練時だけでなく、実作業中の安全巡視でも見ておくとよいです。


継続的な改善では、現場で使いやすい記録方法を選ぶことも重要です。細かすぎる記録は続かず、簡単すぎる記録は改善に使えません。必要な項目を絞り、作業前後に短時間で記入できる形にすることで、記録が日常の安全管理に定着します。写真や位置情報を使って設置状況を残せる場合は、次回設置時の再現性が高まります。警報装置の位置、退避場所、支障物、作業範囲を視覚的に残しておくと、口頭説明だけでは伝わりにくい情報も共有しやすくなります。


列車接近警報装置の運用は、設置した日が完成ではなく、点検し、記録し、改善することで強くなります。現場の変化を前提にして、警報が本当に届いているか、作業員が本当に退避できているかを確認し続けることが、鉄道施工における安全管理の質を高めます。


まとめ

鉄道施工の列車接近警報装置設置では、機器を置くことよりも、作業員が安全に退避できる状態をつくることが重要です。最初に、装置の目的を作業計画に落とし込み、どの作業で、どの危険を抑え、警報後に誰がどのように動くのかを明確にします。次に、線路条件、列車接近方向、作業範囲、退避場所、足元の状態、資材や仮設物との干渉を現地で確認し、警報装置の設置位置を決めます。そのうえで、実際の作業姿勢や騒音環境に近い状態で警報が届くかを検証し、必要に応じて音、光、合図、配置を見直します。


また、作業員への周知と退避訓練を行い、警報が鳴ったときに全員が迷わず同じ行動を取れるようにすることも欠かせません。警報の意味、退避場所、再開判断、工具や材料の扱い、責任者の確認方法を具体的に共有することで、警報は実際の安全行動につながります。さらに、作業開始前の点検、聞こえ方の確認、退避動線の確認、ヒヤリ事例の共有、改善記録を継続することで、現場条件の変化にも対応しやすくなります。


列車接近警報装置は、鉄道施工の安全を支える重要な仕組みですが、単独で完結するものではありません。見張り、連絡、退避場所、作業計画、教育、記録と組み合わせて運用することで、作業員退避を守る力が高まります。現場では、警報が鳴ることではなく、警報を受けた作業員が安全な位置へ確実に移動できることを基準に設置と運用を見直すことが大切です。


今後、鉄道施工の現場で警報装置の設置状況、退避場所、作業員の動線、点検記録をより分かりやすく残したい場合は、写真、位置情報、点検メモを一元管理できる記録方法を検討するとよいです。


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