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PVSyst マニュアルで遮蔽物設定を進める6ステップ

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この記事は平均7分15秒で読めます
万能の測量機LRTKの説明

著者: LRTKチーム

目次

PVSystの遮蔽物設定で最初に理解したいこと

遮蔽物設定を後回しにすると起きる問題

ステップ1 遮蔽物を遠方影と近傍影に分ける

ステップ2 方位・傾斜・システム条件を先に整える

ステップ3 現地情報を3D化できる形で整理する

ステップ4 Near Shadingsで遮蔽物とPV面を配置する

ステップ5 影の計算方法と電気的影響を確認する

ステップ6 結果を比較して設計判断につなげる

遮蔽物設定でよくある失敗

PVSyst マニュアルを実務で使いこなすコツ

まとめ


PVSystの遮蔽物設定で最初に理解したいこと

PVSyst マニュアルで遮蔽物設定を調べている人の多くは、単に操作手順を知りたいだけではなく、シミュレーション結果に影がどのように反映されるのか、どこまで細かく入力すべきなのか、入力した遮蔽物が発電量や損失率にどう影響するのかを確認したいはずです。太陽光発電のシミュレーションでは、パネル容量や気象データ、方位、傾斜、PCS条件だけを整えても、周囲の建物、樹木、架台列、山の稜線、設備機器などによる影を見落とすと、実際の発電量と解析結果に差が出やすくなります。


PVSystの公式ドキュメントでは、影を大きく遠方影と近傍影に分けて説明しています。遠方影は地平線や遠くの山など、PV面全体に対して太陽が見えるか見えないかを扱う考え方です。一方、近傍影は近くの物体がPV面の一部に落とす影であり、詳細な3D表現が必要になるため、遠方影より複雑な扱いになります。


この記事では、PVSyst マニュアルで遮蔽物設定を進める際に迷いやすい点を、実務の流れに合わせて6ステップで整理します。画面名や考え方を丸暗記するのではなく、なぜその順番で確認するのか、どの段階でミスが起きやすいのか、最終的にどの結果を見て設計判断につなげるのかを理解することを目的にしています。


遮蔽物設定で大切なのは、最初から完璧な3Dモデルを作ろうとしないことです。まずは影の種類を分け、次にPV面の向きや容量などの基本条件を整え、そのうえで遮蔽物の寸法や位置をモデル化し、影の計算を実行し、最後に損失の妥当性を確認します。この順番を守るだけで、設定ミスや二重計上、計算時間の増大、結果の読み違いをかなり減らせます。


遮蔽物設定を後回しにすると起きる問題

太陽光発電の設計では、遮蔽物の確認が後回しになることがあります。先に容量、ストリング、PCS、気象データを入力し、最後に影を加えればよいと考えがちです。しかしPVSystでは、遮蔽物設定がPV面の向き、アレイ配置、モジュール枚数、3Dシーン、計算方法と関係するため、最後にまとめて設定しようとすると手戻りが発生しやすくなります。


たとえば、屋根上案件で隣接建物や塔屋の影を後から入力した結果、想定していたモジュール配置の一部が大きく影を受けることがあります。地上設置案件では、架台列どうしの相互影を考慮したら、列間隔や傾斜角の再検討が必要になることもあります。山間部や傾斜地では、遠方の地形影と近傍の設備影を混同すると、どの損失がどの原因で発生しているのかが見えにくくなります。


PVSystのNear Shadingsは、近傍影を扱う中心的な画面であり、3Dエディタを使って全体シーンを構築する流れになります。公式ドキュメントでも、Near Shadingsのメインダイアログは近傍影処理のダッシュボードであり、Construction/Perspectiveから3Dエディタを開いてシーンを作る流れが示されています。


そのため、遮蔽物設定は単なる後処理ではありません。設計初期から、影をどの精度で扱うのか、どの遮蔽物を入力するのか、3D化する対象は何か、簡略化してよい要素は何かを決めておく必要があります。PVSyst マニュアルを読むときも、ボタンの場所だけでなく、入力前の設計判断を含めて理解することが重要です。


ステップ1 遮蔽物を遠方影と近傍影に分ける

最初のステップは、遮蔽物を遠方影と近傍影に分けることです。この分類を曖昧にしたまま設定を始めると、3Dシーンに入れるべきではない要素まで細かく作り込んだり、逆に近くの建物や架台列を簡略化しすぎたりして、結果の精度と作業量のバランスが崩れます。


遠方影として扱いやすいのは、山の稜線、遠くの丘陵、遠方の建物群などです。これらはPV面全体に対して太陽が遮られるかどうかを大きく判断する要素です。遠くにあるため、影の境界がパネル上を細かく移動するというより、ある太陽高度や方位のときに日射が入るか入らないかという形で影響します。


近傍影として扱うべきなのは、隣接建物、屋上の塔屋、パラペット、樹木、電柱、フェンス、隣の架台列、設備盤、キュービクル、換気設備などです。これらはPV面の一部に影を落とし、時間帯や季節によって影の位置が変わります。近傍影では、パネル面のどの部分に影がかかるかが重要になり、場合によっては電気的なミスマッチ損失にも関係します。


PVSystのドキュメントでは、近傍影のShading FactorはPVフィールドの全有効面積に対する影面積の割合として説明されています。また、近傍影の処理は詳細な3D記述を必要とするため、遠方影より複雑であるとされています。


実務では、すべての遮蔽物を同じ粒度で入力しようとしないことが大切です。発電面から遠く、影の輪郭が細かく効かないものは遠方影として整理します。発電面に近く、影がパネルの一部を横切るものは近傍影として3Dシーンに入れます。この切り分けを最初に行うことで、作業時間を抑えながら、結果に影響する部分へ集中できます。


特に地上設置の大規模案件では、架台列同士の相互影と、周辺の地形影や樹木影を同じ感覚で扱うと混乱します。架台列の相互影は近傍影として発電面の一部に影を作りますが、遠くの山や丘は遠方影として扱うほうが自然です。屋根上案件では、パラペットや塔屋、隣接建物は近傍影になりやすく、遠方の高層建物や地平線方向の障害物は条件によって扱いを分ける必要があります。


ステップ2 方位・傾斜・システム条件を先に整える

次のステップは、遮蔽物を入力する前に、方位、傾斜、PV面、モジュール枚数、サブアレイ、システム構成を大まかに整えることです。遮蔽物設定だけを先に作り込んでも、後からPV面の向きや枚数が変わると、3Dシーンとの整合が崩れます。


PVSystでは、3Dシーンを定義する場合、バリアント側のOrientationで定義した向きと、System側で定義した有効PV面積やモジュール数が一致している必要があります。不一致が許容範囲を超えると、シミュレーションを実行できない場合があります。


この点は、PVSyst マニュアルを読むうえで非常に重要です。遮蔽物設定は独立した飾りではなく、設計条件と連動する入力項目です。PV面の向き、傾斜、アレイの分割、モジュール配置が固まっていない段階で細かな遮蔽物を作ると、後で整合エラーや再設定が発生しやすくなります。


実務では、まず影なしの基本ケースを作ると進めやすくなります。気象データ、設置方位、傾斜、モジュール、PCS、ストリング構成を設定し、遮蔽物なしでシミュレーションを回して基準値を確認します。そのうえで、遮蔽物ありのケースを作成し、発電量、PR、損失図、月別結果を比較します。この方法なら、遮蔽物がどの程度結果を変えたのかを読み取りやすくなります。


また、遮蔽物設定前に設計条件を整えることは、関係者への説明にも役立ちます。影なしケースでは理想的な配置に近い発電量を示し、影ありケースでは現地条件を反映した発電量を示せます。両者の差分を説明できれば、列間隔の変更、モジュール配置の見直し、障害物周辺の非設置範囲、伐採や移設の必要性などを具体的に議論できます。


この段階で避けたいのは、システム条件が未確定のまま3Dシーンだけを詳細化することです。細かいモデルを作っても、PV面の定義が変われば再調整が必要になります。PVSyst マニュアルを読みながら作業する場合は、Near Shadingsの前にOrientationとSystemの整合を確認するという意識を持つと、後工程が安定します。


ステップ3 現地情報を3D化できる形で整理する

3つ目のステップは、現地情報を3Dモデルに落とし込める形で整理することです。遮蔽物設定で失敗しやすい原因の一つは、現地の写真や図面を見ながら、感覚的に物体を配置してしまうことです。PVSyst上で影を再現するには、遮蔽物の高さ、幅、奥行き、PV面からの距離、方位、地盤差、設置面との関係をできるだけ具体的に整理する必要があります。


屋根上案件であれば、パラペット高さ、塔屋の寸法、空調室外機やダクトの高さ、隣接建物までの距離、屋根面の傾斜、PV面の配置範囲を確認します。地上設置案件であれば、架台列の高さ、傾斜、列間隔、前後列の関係、周囲の樹木やフェンス、近接する建物、地盤の高低差を整理します。傾斜地では、単純な平面配置だけでなく、標高差や斜面方向も結果に影響します。


PVSystに入力するためには、現地情報を「影を作る物体」と「影を受けるPV面」に分けて考えるとわかりやすくなります。影を作る物体は、建物、壁、柱、樹木、架台列などです。影を受けるPV面は、モジュールが配置される面です。両者の位置関係が曖昧だと、画面上ではそれらしく見えても、影の発生時刻や損失量が現地感覚と合わなくなります。


この段階では、完璧な建築モデルを作る必要はありません。むしろ、発電面に影を落とす輪郭を優先して単純化することが重要です。複雑な設備形状を細かく再現しても、影の輪郭や高さが結果にほとんど影響しない場合は、計算負荷と作業時間だけが増えます。反対に、細い柱やフェンス、電線のように見た目は小さくても、朝夕に長い影を作る要素は注意が必要です。


現地調査では、写真だけに頼らず、寸法の根拠を残しておくことが大切です。平面図、立面図、配置図、測量成果、屋根伏図、ドローン写真、現地メモなどを組み合わせ、どの数値をPVSystに入力したのか説明できる状態にします。後から発電量の差や影損失について質問されたとき、根拠が残っていれば、設定の妥当性を説明しやすくなります。


PVSyst マニュアルで操作を確認する前に、こうした入力材料を整理しておくと、画面上で迷う時間が大きく減ります。遮蔽物設定の品質は、ソフト上の操作だけでなく、入力前の現地情報整理でほぼ決まると考えてよいでしょう。


ステップ4 Near Shadingsで遮蔽物とPV面を配置する

4つ目のステップは、Near Shadingsで3Dシーンを作成し、遮蔽物とPV面を配置することです。ここが、PVSyst マニュアルで最も操作を確認したくなる部分です。Near Shadingsでは、PV面と周辺物体を3D空間上に配置し、近傍影の影響を計算できるようにします。


PVSystのNear Shadingsメインダイアログでは、Construction/Perspectiveから3Dエディタを開き、全体シーンを構築します。有効な3Dシーンを終了すると、プログラムは3Dフィールドの方位がOrientation側の定義と合っているか、System側で定義したモジュールを配置するのに十分で合理的な3D面積があるかを確認します。


作業の基本は、まずPV面を正しく置き、次に周辺遮蔽物を配置することです。PV面の位置や向きがずれている状態で遮蔽物を入れても、影の結果は正しくなりません。特に方位角の解釈、傾斜角、座標の向き、原点位置は、後から大きな差になりやすいポイントです。


遮蔽物を作るときは、現地の見た目を完全再現するよりも、影として効く形状を優先します。隣接建物であれば、屋根の細部よりもPV面に影を落とす外形と高さが重要です。パラペットであれば、厚みよりも高さとPV面からの距離が効きます。樹木は季節変化や透過性があるため、完全な固体として扱うべきか、保守的に見るべきかを案件ごとに判断します。


地上設置の架台列では、列間隔と傾斜角の関係が重要になります。前列の影が後列にどの時間帯でかかるのかを確認し、必要に応じて列間隔や設置角度を見直します。PVSystでは、架台列の相互影を簡略的に扱う方法と、Near Shadingシーン内でPV面として明示的に定義する方法があります。公式ドキュメントでも、shedの相互影にはOrientation側で定義する方法と、Near shadingシーンでPV面として定義する方法があり、両方を同時に使うと影が二重に考慮されるため注意が必要だと説明されています。


この二重計上は実務で非常に起こりやすいミスです。列間影をOrientation側で設定しているのに、Near Shadings側でも同じ架台列を影要素として入れると、損失が過大に出る可能性があります。逆に、Near Shadingsで周辺建物だけを入れ、架台列相互影をどこにも設定していなければ、損失が過小に出る可能性があります。どの影をどの機能で扱っているのかを明確にしておくことが大切です。


3Dシーンを作成したら、必ず視点を変えて確認します。平面上では合っているように見えても、高さ方向がずれていることがあります。正面、側面、斜め、上空から見て、PV面と遮蔽物の位置関係を確認します。朝夕の影が重要な案件では、遮蔽物の高さや距離が少し違うだけで影の伸び方が変わります。


ステップ5 影の計算方法と電気的影響を確認する

5つ目のステップは、影の計算方法と電気的影響の扱いを確認することです。遮蔽物を3Dシーンに配置しただけでは、結果を正しく読めるとは限りません。PVSystでは、影を単純な日射損失として扱うのか、ストリングやモジュール配置に応じた電気的ミスマッチまで見るのかによって、結果の意味が変わります。


PVSystの公式ドキュメントでは、近傍影のビーム成分について、日射の不足による損失と、直列モジュールや並列ストリングの電気的応答による損失を区別しています。また、電気的損失の扱いとして、ストリングに応じたShading factorによる概算と、モジュール位置に基づく詳細な電気計算があると説明されています。


この違いを理解しないまま結果を見ると、影損失が小さく見えたり、大きく見えたりする理由を説明できません。たとえば、同じ影面積でも、影がモジュールの端に少しだけかかる場合と、直列に接続されたセルやモジュールの重要な部分にかかる場合では、電気的な影響が変わります。単純な面積比だけで判断すると、実際の出力低下を過小評価することがあります。


一方で、常に最も詳細な計算を使えばよいというわけでもありません。詳細な設定には、モジュール配置やストリング構成の正確な入力が必要です。設計初期の比較段階では、まず線形的な影損失で傾向を見て、候補案が絞れた段階で電気的影響を詳しく確認する進め方もあります。大規模案件では、計算時間とのバランスも考える必要があります。


PVSystでは、Shading Factor Tableを作成して影の影響を計算に利用します。公式ドキュメントでは、Shading Factorは特定の太陽方向に対するPVフィールドの影面積割合であり、0は影なし、1は完全に影で覆われた状態を意味すると説明されています。また、計算時間を抑えるため、太陽高度や方位のグリッドに対する事前計算値から補間するFast calculationと、各シミュレーションステップで計算するSlow calculationの考え方が示されています。


実務では、まず影なしケース、線形影ありケース、必要に応じて電気的影響を含むケースを比較すると理解しやすくなります。損失が大きい場合は、どの月、どの時間帯、どの遮蔽物が効いているのかを確認します。冬季の朝夕に損失が集中しているのか、年間を通じて特定の列に影が出ているのか、近傍建物の影なのか、架台列の相互影なのかを分けて見ます。


この段階で重要なのは、結果を一つの数値だけで判断しないことです。年間発電量だけを見ると影の問題が小さく見えても、特定月の発電量やピーク時間帯の出力に影響する場合があります。自家消費案件やピークカットを重視する案件では、年間値だけでなく時間帯別の影響も重要です。売電案件でも、冬季の発電量や保証条件に関わる場合は、影の根拠を丁寧に確認する必要があります。


ステップ6 結果を比較して設計判断につなげる

6つ目のステップは、遮蔽物設定後の結果を比較し、設計判断につなげることです。PVSyst マニュアルを見ながら設定を完了しても、そこで終わりではありません。重要なのは、影が発電量にどの程度影響したのか、その損失は許容できるのか、設計を変更すべきなのかを判断することです。


まず確認したいのは、影なしケースと影ありケースの差分です。年間発電量、PR、Specific Production、Shading loss、月別発電量を比較します。影ありケースで損失が大きく増えた場合は、3Dシーンの設定ミスなのか、実際に現地条件として厳しいのかを切り分けます。


次に、影の発生時期を確認します。冬季だけに影が出るのか、春秋にも影が出るのか、夏季の朝夕にも影が残るのかで、設計判断は変わります。冬季の低い太陽高度で避けられない影であれば、許容する判断もあります。一方、年間を通じて主要な発電時間帯に影が出ているなら、配置変更や遮蔽物対策を検討すべきです。


また、影損失の大小だけでなく、対策コストとのバランスを見ます。列間隔を広げれば影は減るかもしれませんが、設置容量が減る可能性があります。樹木を伐採すれば影は減るかもしれませんが、許認可や周辺環境への配慮が必要です。屋根上の塔屋周辺を非設置にすれば影損失は減るかもしれませんが、総容量が下がる場合があります。PVSystの結果は、こうした設計判断を定量化するための材料です。


大規模案件では、すべてのPVテーブルを詳細計算すると時間がかかる場合があります。PVSystには、3Dシーン全体のうち特定のPVテーブルに限定して影計算を行い、その結果を全体へ外挿する考え方も用意されています。公式ドキュメントでは、大規模プロジェクトで計算時間が長い場合や特定部分に注目したい場合、Partial shadings calculationを利用できると説明されています。


ただし、部分計算を使う場合は、選んだ範囲が全体を代表しているかを慎重に見なければなりません。影が均一に発生する架台列であれば代表範囲を使いやすい場合がありますが、周辺建物の近くと遠くで影条件が大きく違う場合、部分計算の外挿が実態を表しにくくなります。計算時間を短縮するための便利な機能であっても、結果の読み方には注意が必要です。


最終的には、PVSystの結果を設計図や現地条件と照合します。影損失が想定より大きい場合は、PV面の位置、遮蔽物の高さ、方位、単位、座標、列間隔、二重計上の有無を確認します。影損失が想定より小さすぎる場合も同様です。遮蔽物を入れたつもりでも、影を投げる設定が無効になっている、PV面との位置関係がずれている、遠方影と近傍影の扱いを間違えているといった原因があり得ます。


遮蔽物設定でよくある失敗

PVSyst マニュアルを見ながら遮蔽物設定を行っても、実務ではいくつかの典型的な失敗が起こります。最も多いのは、遠方影と近傍影の混同です。遠くの山を細かい3D遮蔽物として作り込んだり、逆に近くの建物を簡単な地平線として扱ったりすると、影の発生状態を正しく再現できません。


次に多いのは、OrientationやSystemとの不整合です。3Dシーン上のPV面と、バリアント側で定義した方位・傾斜・有効面積・モジュール枚数が合っていないと、計算前にエラーが出たり、結果の意味が不明確になったりします。PVSystは3Dシーンとシステム定義を照合するため、遮蔽物だけでなくPV面そのものの整合が重要です。


二重計上も見落としやすい失敗です。架台列の相互影をOrientation側で扱っているにもかかわらず、Near Shadings側でも同じ影を入れてしまうと、損失が過大になります。特に地上設置案件では、列間影、周辺建物、地形影、フェンス影など、複数の影要因が重なります。どの機能で何を表現しているかを記録しておくことが大切です。


寸法や単位の誤りも結果に大きく影響します。高さをメートルで入れるべきところを別単位の感覚で入れてしまう、方位の基準を逆に解釈する、図面上の距離と実距離を混同する、屋根面の高さ差を無視するなどのミスは、見た目では気づきにくい場合があります。3Dビューでそれらしく見えても、影の伸び方が不自然であれば設定を疑う必要があります。


また、遮蔽物を細かく作りすぎる失敗もあります。すべての設備、配管、手すり、架台部材を詳細に入れようとすると、作業時間が増え、計算も重くなります。影として結果に効く要素と、見た目だけの要素を分けることが大切です。PVSystは設計判断のためのシミュレーションツールであり、建築CGを作ることが目的ではありません。


最後に、結果確認を年間値だけで済ませる失敗があります。年間の影損失が小さくても、特定の月や時間帯に集中している場合があります。自家消費やピーク時間帯の発電が重要な案件では、時間帯別の影響が大きな意味を持ちます。遮蔽物設定後は、年間発電量だけでなく、月別結果、損失図、影に関する出力を合わせて確認しましょう。


PVSyst マニュアルを実務で使いこなすコツ

PVSyst マニュアルを実務で使うときは、操作手順をそのまま追うだけでなく、自分の案件に置き換えて読むことが大切です。マニュアル上の例は理解の出発点ですが、実際の案件では、屋根形状、架台列、地形、近隣建物、樹木、設備機器、設計段階、必要な精度がそれぞれ異なります。


最初に作るべきなのは、影なしの基準ケースです。基準ケースがなければ、遮蔽物を入れた後の差分を評価できません。次に、主要な遮蔽物だけを入れた簡易ケースを作ります。いきなり細部まで作るのではなく、発電量に効きそうな大きな遮蔽物から反映します。その後、必要に応じて細部を追加し、結果がどの程度変わるかを確認します。


この段階的な進め方には、もう一つの利点があります。影損失が急に大きくなったとき、どの入力が原因だったのかを追いやすくなります。すべての遮蔽物を一度に入力すると、結果が変わっても原因を特定しにくくなります。建物を追加した段階、架台列を追加した段階、樹木を追加した段階、電気的影響を有効にした段階でそれぞれ結果を保存しておくと、検証が容易です。


また、PVSystの結果は、現地写真や図面とセットで確認することが重要です。シミュレーション結果だけを見ると数値は整って見えますが、現地条件と合っていなければ意味がありません。PV面の北側と南側を取り違えていないか、遮蔽物の高さが実態に合っているか、架台列の方向が図面と一致しているか、地盤差を無視していないかを確認します。


関係者へ説明する場合は、「遮蔽物を入れたので発電量が下がった」と言うだけでは不十分です。どの遮蔽物が、どの時期に、どの程度影響し、その結果として年間発電量やPRがどう変わったのかを説明できるようにします。設計変更が必要な場合は、列間隔を広げる、配置をずらす、影の強い範囲を非設置にする、遮蔽物対策を行うなど、複数案を比較すると判断しやすくなります。


PVSyst マニュアルで遮蔽物設定を学ぶ目的は、画面操作を覚えることだけではありません。設計条件、現地条件、影の種類、計算方法、結果解釈をつなげて、再現性のある判断を行うことです。特に、発電量保証や事業性評価に関わる案件では、遮蔽物設定の根拠を説明できることが重要になります。


まとめ

PVSyst マニュアルで遮蔽物設定を進めるときは、まず遠方影と近傍影を分けることから始めます。遠方影は地平線や遠くの山のようにPV面全体へ効く影、近傍影は建物や架台列のようにPV面の一部へ具体的な影を落とす要素です。この分類を最初に行うことで、どの機能を使い、どの程度3D化すべきかが明確になります。


次に、方位、傾斜、PV面、モジュール枚数、サブアレイなどの基本条件を整えます。遮蔽物設定はシステム条件と連動するため、先に基本ケースを作り、影なしの結果を確認しておくことが重要です。そのうえで、現地情報を寸法、距離、高さ、方位、地盤差として整理し、Near Shadingsで3Dシーンを構築します。


3Dシーンでは、見た目の再現よりも、影として効く要素を正しく表現することが大切です。架台列の相互影、周辺建物、塔屋、パラペット、樹木などを整理し、二重計上や入力漏れを避けます。遮蔽物を配置したら、Shading Factor Tableや計算方法を確認し、線形的な影損失と電気的影響の違いを理解して結果を読みます。


最後に、影なしケースと影ありケースを比較し、年間発電量、月別結果、PR、損失図を見ながら、設計変更が必要かどうかを判断します。遮蔽物設定は、単に損失を入力する作業ではなく、現地条件を設計に反映し、発電量の妥当性を説明するための重要な工程です。


PVSyst マニュアルを活用するなら、操作画面を追うだけでなく、影の分類、入力根拠、3Dシーンの整合、計算方法、結果解釈まで一連の流れとして理解することが大切です。この6ステップで進めれば、遮蔽物設定の迷いを減らし、実務で説明しやすいシミュレーション結果に近づけられます。


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