目次
• PVSyst マニュアルで損失図を読む前に押さえる基本
• 見方1:上から下へのエネルギーの流れを追う
• 見方2:損失率を単純に足し算 しない
• 見方3:日射から有効日射までの損失を見る
• 見方4:アレイ側の損失で発電量低下の理由を見る
• 見方5:PCS・AC側の損失で最終出力を見る
• 見方6:PRや月別結果と合わせて判断する
• 損失図を実務で使うときに避けたい読み間違い
• シミュレーション結果を改善につなげる考え方
• まとめ
PVSyst マニュアルで損失図を読む前に押さえる基本
PVSyst マニュア ルで損失図を理解したい人の多くは、シミュレーション結果のどこを見れば発電量の妥当性を判断できるのか、どの損失が大きいと設計を見直すべきなのか、報告書の数値をどのように説明すればよいのかで悩んでいます。損失図は、単に「損失が何%あるか」を眺める画面ではなく、太陽光発電システムに入ってきた日射エネルギーが、どの段階で減り、最終的にどれだけ有効な電力量として残ったのかを確認するための流れ図です。
PVSystの公式ドキュメントでも、損失図は太陽光発電システム設計の品質を素早く把握し、主な損失源を特定するためのものと説明されています。また、シミュレーションレポートには年間の損失図が表示され、月別の詳細結果でも損失の季節変動を確認できるとされています。
損失図を読むときに最初に大切なのは、損失図を「答え」ではなく「確認の順番」として扱うことです。最終発電量が低い場合でも、原因が日射量なのか、影なのか、温度なのか、モジュールの設定なのか、PCSの容量や効率なのかは、損失図の上から順に追わなければ判断できません。反対に、最終発電量だけを見て良い悪いを決めると、設計上の問題を見逃すことがあります。
たとえば、年間発電量が想定より低い場合でも、設置地域の日射条件そのものが厳しいのか、方位や傾斜による受光条件が悪いのか、近傍影の設定が強く影響しているのか、温度損失が大きいのかによって、改善すべき場所はまったく変わります。損失図は、こうした原因を一つずつ分解して確認するための地図のような役割を持っています。
また、損失図は営業資料や社内説明にも使われやすい一方で、読み方を誤ると「損失率の合計が合わない」「PRと発電量の関係が分からない」「どの損失を改善できるのか分からない」という混乱につながります。PVSyst マニュアルで損失図を読むときは、数値の大小だけでなく、損失が発生する位置、前後の関係、設計変更で動かせる項目かどうかを意識することが重要です。
見方1:上から下へのエネルギーの流れを追う
損失図の基本は、上から下へエネルギーの流れを追うことです。最上部には、対象地点に届く日射や、 傾斜面に入射する日射に関係する数値が示されます。そこから、方位・傾斜、遠方影、近傍影、IAM、汚れなどの影響を受けながら、モジュール面で実際に利用できる日射へと整理されていきます。その後、モジュールで直流電力に変換され、温度、低照度、ミスマッチ、配線、劣化などの損失を経て、PCSを通り、最終的な交流出力へ進みます。
この流れを理解せずに、途中の損失率だけを見ると判断を誤ります。たとえば、影損失が大きく見えても、年間を通じて発電量への影響が限定的な場合もあります。逆に、1つ1つの損失率は小さく見えても、複数の損失が積み重なることで最終出力に大きな差が出ることもあります。損失図は、個別の損失を見るためのものでもありますが、同時に「どの段階でエネルギーが大きく減っているか」を見るためのものです。
最初に見るべきなのは、いきなり最終発電量ではありません。まず、入力側の日射条件が妥当かを見ます。次に、傾斜面日射や有効日射の段階で大きな低下がないかを見ます。その後、モジュール変換後の直流側でどの程度落ちているかを確認し、最後にPCSやAC側の損失を確認します。この順番を守るだけで、損失図の読みやすさは大きく変わります。
PVSystの損失図では、アレイ損失は有効な全天日射とSTC条件でのアレイMPP公称効率を用いた名目エネルギーの評価から始まり、環境条件に応じたPVモデルの挙動が整理されると説明されています。つまり、損失図は単なる集計表ではなく、日射からPVアレイの挙動、さらにシステム出力へ進む計算過程を視覚的に追うためのものです。
実務では、損失図を開いたら、まず「この図はどこから始まり、どこで終わっているのか」を確認します。入力は日射であり、出力は系統へ送られる電力量や利用可能な電力量です。この入口と出口を押さえたうえで途中の損失を見ると、発電量が低い原因を説明しやすくなります。
特に、複数案を比較する場合は、最終発電量だけを横並びにするのではなく、損失図の流れのどこで差がついているかを見ることが重要です。方位や傾斜を変えた案では、傾斜面日射や近傍影の影響が変わります。モジュールやPCSを変えた案では、温度損失、ミスマッチ、PCS損失、出力制限などの見え方が変わります。このように、損失図は比較検討の根 拠を作るためにも有効です。
見方2:損失率を単純に足し算しない
PVSyst マニュアルで損失図を読むときに、最も誤解されやすいのが損失率の扱いです。損失図には複数の損失項目が並ぶため、それらを単純に合計して「合計損失は何%」と考えたくなります。しかし、損失図のパーセンテージは、それぞれ同じ基準に対する割合ではありません。各段階で残ったエネルギーに対して次の損失が計算されるため、単純な足し算では全体の損失率と一致しません。
PVSystの公式ドキュメントでも、各損失は前のエネルギー量に対する割合として定義されるため、パーセンテージ値は加算できず、複数の損失をまとめた全体割合は詳細値の合計にはならないと明記されています。
この考え方は、実務説明で非常に重要です。たとえば、ある段階で5%の損失があり、その次に3%の損失がある場合、元の100に対して単純に8が失われる という意味ではありません。最初の損失後に残った95に対して、次の3%がかかるという見方になります。そのため、損失図の各行に表示された数字を合計しても、最初と最後の差とぴったり一致しないことがあります。
この仕組みを理解しておかないと、顧客や社内レビューで「損失率の合計が合わないのではないか」と指摘されたときに説明に困ります。損失図では、各損失がどの段階のエネルギー量を基準にしているかが重要です。前段階で大きくエネルギーが減っていれば、後段階の損失率は同じでも、絶対量としての影響は変わります。
また、損失率が大きい項目だけを見て対策を考えるのも危険です。ある損失率が大きくても、設計条件上避けにくい場合があります。たとえば、気温が高い地域では温度損失が大きく出やすく、完全にゼロにすることはできません。一方で、影や配線、PCS容量、ストリング構成などは、設計の見直しによって改善できる可能性があります。
損失率を見るときは、「大きいか小さいか」だけでなく、「 その損失はどの基準に対して出ているのか」「設計変更で下げられるのか」「他の損失との関係で増減していないか」を合わせて考えます。これにより、損失図を単なる数値一覧ではなく、改善余地を探すための判断材料として使えるようになります。
特に提案段階では、損失率を足し合わせた説明よりも、「最終出力に至るまでの主な低下要因は、影、温度、PCS変換の3点です」のように、影響の大きい項目を分けて説明した方が伝わりやすくなります。損失図の本質は、合計値を作ることではなく、減少の構造を理解することにあります。
見方3:日射から有効日射までの損失を見る
損失図の前半では、太陽光発電システムに入ってくる日射が、どの程度モジュールに有効に届いているかを確認します。この部分では、水平面日射、傾斜面日射、遠方影、近傍影、IAM、汚れなどが関係します。ここで大きな損失が出ている場合、後段の機器設定を見直しても、発電量の改善には限界があります。なぜなら、モジュールに届く日射そのものが減っているからです。
まず確認したいのは、方位と傾斜による受光条件です。同じ設備容量でも、南向きに近い配置と東西向きの配置では、年間の発電パターンが変わります。屋根設置では、建物の向きや屋根勾配の制約があるため、最適な方位・傾斜を自由に選べない場合があります。地上設置では、架台ピッチや傾斜角、土地形状によって、日射取得量と影のバランスを調整する必要があります。
次に見るべきなのが影の影響です。影には、山や地形などによる遠方影と、建物、樹木、設備、架台列同士などによる近傍影があります。遠方影は朝夕や季節によって効き方が変わり、近傍影はレイアウトや周辺障害物の設定に大きく左右されます。損失図で影損失が大きい場合は、3Dモデルの入力、障害物高さ、設置間隔、モジュール配置が妥当かを確認します。
IAMは、入射角による反射損失を表す項目です。太陽光がモジュールに対して斜めに入るほど、ガラス面で反射される割合が増え、有効に利用できる日射が減ります。朝夕や冬季に影響が出やすく、傾斜角や設置方位とも関係します。IAM損失が大きいからといって必ず問題とは限りませんが、極端な配置や特殊な条件では、結果の妥当性を確認する必要があります。
汚れ損失も、日射から有効日射へ進む段階で重要です。砂じん、花粉、鳥の糞、積雪後の汚れ、沿岸部の塩分など、現場環境によって影響は変わります。PVSyst上では一定率として設定されることも多いですが、実際の運用では清掃頻度や降雨条件、設置角度によって変化します。損失図で汚れ損失を確認するときは、単に数値が入っているかどうかではなく、その現場の維持管理方針と整合しているかを考えます。
この前半部分での確認ポイントは、システムが受け取るエネルギーの入口が妥当かどうかです。日射データが適切でなければ、損失図全体の信頼性が下がります。周辺影の入力が粗ければ、実際より発電量が高く出たり低く出たりします。汚れ損失が現場条件に合っていなければ、収益性評価にも影響します。
PVSystのPR説明では、PRに含まれる要素として、影、IAM、汚れなどの光学的損失、PV変換、劣化、モジュー ル品質、ミスマッチ、配線などのアレイ損失、さらに系統連系ではインバータ効率などのシステム損失が挙げられています。 この分類を意識すると、損失図の前半は主に「光がどれだけ有効に届いたか」を見る領域だと理解しやすくなります。
実務では、損失図の前半に大きな損失がある場合、まず設置条件と入力条件を疑います。周辺建物の高さ、地盤高さ、方位、傾斜、アレイ間隔、積雪や汚れの条件などを再確認します。ここを丁寧に見直すことで、後から「シミュレーションでは良かったのに実測発電量が低い」という問題を減らしやすくなります。
見方4:アレイ側の損失で発電量低下の理由を見る
損失図の中盤では、モジュール面に届いた有効日射が、直流電力としてどの程度取り出されるかを確認します。この領域では、温度損失、低照度損失、モジュール品質、ミスマッチ、配線損失、劣化などが関係します。ここは、太陽光発電システムの設計品質が表れやすい部分です。
最も注目されやすいのが温度損失です。太陽電池モジュールは、セル温度が上がると出力が低下します。日射量が多い地域ほど発電量が増えやすい一方で、気温やモジュール温度も上がりやすく、温度損失が大きくなることがあります。屋根設置では、屋根面との距離や通風条件によって温度上昇の程度が変わります。地上設置では、架台高さや通風条件が比較的取りやすいため、屋根設置とは異なる傾向になることがあります。
温度損失を読むときは、単に数値が大きいかどうかだけでなく、地域の気候、設置方式、モジュールの温度係数と整合しているかを見ます。高温地域で温度損失がある程度大きいのは自然ですが、想定より極端に大きい場合は、モジュール種類や設置条件の設定を確認します。逆に、現場条件から考えて温度損失が小さすぎる場合も、入力条件が楽観的になっていないか注意が必要です。
次に確認したいのがミスマッチ損失です。ミスマッチは、モジュールごとの出力差、影のかかり方、ストリング構成の違いなどによって生じます。特に、部分影が発生する現場では、単純な日射損失だけでなく、電気的な不一致による追加的 な損失が出ることがあります。損失図でミスマッチが大きい場合は、ストリング設計、影のかかる範囲、モジュール配置を見直す余地があります。
配線損失も、実務では見逃せません。DCケーブルが長い、電流が大きい、ケーブルサイズが不十分、集電箱やPCSまでの距離が長いといった条件では、配線損失が増えます。損失図で配線損失が大きい場合は、ケーブルルート、ケーブル断面積、ストリング数、接続箱配置、PCS配置を確認します。配線損失は設計で改善できる可能性があるため、発電量改善とコスト増のバランスを見ながら判断します。
モジュール品質や劣化の項目も重要です。初年度から想定する出力許容差、経年劣化、製品仕様上のばらつきなどは、長期の発電量評価に影響します。損失図を見るときは、初年度シミュレーションなのか、長期平均を想定しているのかを確認する必要があります。金融機関向けや投資判断向けの資料では、初年度発電量だけでなく、劣化を含めた長期評価が求められることがあります。
低照度損失も、地域や設置条件によって意味が変わります。曇天が多い地域、朝夕の発電比率が高い配置、東西向きの設計などでは、低照度領域でのモジュール特性が効いてくることがあります。低照度損失が大きい場合は、モジュール特性の設定や、日射データの傾向を合わせて確認するとよいでしょう。
アレイ側の損失を見るときは、「機器の性能」「配置の妥当性」「電気設計」の3つに分けて考えると整理しやすくなります。温度損失は設置方式やモジュール特性に関係します。ミスマッチは配置やストリング設計に関係します。配線損失はケーブル設計や機器配置に関係します。これらを分けて読むことで、改善すべき対象が明確になります。
見方5:PCS・AC側の損失で最終出力を見る
損失図の後半では、直流電力がPCSを通って交流電力になり、最終的に系統や負荷に供給されるまでの損失を確認します。ここでは、PCS変換損失、PCS容量によるクリッピング、AC配線損失、変圧器損失、出力制限、待機損失などが関係します。前半と中盤で十分な直流電力が得られていても、後半で大きく落ちていれば、 最終的な発電量は伸びません。
PCS変換損失は、直流から交流へ変換する際の効率に関係します。PCSには負荷率によって効率が変わる特性があり、常に最高効率で動作するわけではありません。設備容量に対してPCS容量が小さい場合、日射が強い時間帯に出力が頭打ちになることがあります。これがクリッピングや出力制限として損失図に表れる場合があります。
直流交流比を高める設計では、PCS容量に対して太陽電池容量を大きくすることで、低日射時の稼働率を高める狙いがあります。しかし、過度に大きくすると高日射時のクリッピングが増え、損失図上でPCS関連の損失が大きくなります。そのため、損失図を見るときは、PCS損失が大きいこと自体をすぐに悪いと判断するのではなく、年間発電量、設備利用率、コスト、売電条件と合わせて評価する必要があります。
AC側の配線や変圧器の損失も、発電所全体では無視できません。特に大規模案件では、PCSから受変電設備、連系点までの距離が長くなり、電圧階級やケーブル設計によって損失が変わります。損失図でAC側の損失が大きい場合は、ケーブルサイズ、機器配置、集電方式、変圧器仕様を確認します。
自家消費型や蓄電池連携の案件では、最終出力の見方がさらに複雑になります。系統へ送る電力量だけでなく、負荷で直接使う電力量、蓄電池へ入る電力量、蓄電池から出る電力量、充放電損失などを整理する必要があります。PVSystのPR説明では、自家消費や蓄電池を含む系統連系では、PR評価にE_GridだけでなくE_Solarも含める考え方が示されています。
この点は、通常の売電型案件と自家消費型案件を比較するときに重要です。売電型では、系統に出た電力量が分かりやすい指標になります。一方で、自家消費型では、施設内で使われた電力量も価値を持ちます。そのため、損失図を読むときは、最終的なエネルギーの行き先を確認し、何を成果として評価するのかを明確にする必要があります。
PCS・AC側の損失を説明するときは、「変換で失われる損失」と「容量や制約によって使えない損失」を分けると分かり やすくなります。変換損失は機器効率の問題です。クリッピングや出力制限は、設計方針や連系条件の問題です。AC配線や変圧器損失は、設備配置や電気設計の問題です。これらを同じ「PCSまわりの損失」とまとめてしまうと、改善策が曖昧になります。
見方6:PRや月別結果と合わせて判断する
損失図は非常に便利ですが、損失図だけでシステムの良し悪しをすべて判断するのは危険です。実務では、PR、年間発電量、月別発電量、比発電量、出力抑制、キャッシュフローなどと合わせて評価します。特にPRは、システム品質を比較するうえでよく使われる指標です。
PVSystの公式ドキュメントでは、PRは実際に有効に生産されたエネルギーを、システムがSTC条件の公称効率で連続稼働した場合に得られるエネルギーと比較する指標として説明されています。系統連系の場合は、E_GridをGlobIncとPnomPVで割る形で示されています。
PRを見るときは、損失図のどの項目がPRを下げているかを合わせて確認します。PRが低い場合でも、原因が温度損失なのか、影損失なのか、PCS損失なのかで意味は異なります。高温地域で温度損失が大きくPRが下がるのは、ある程度自然な場合があります。一方で、近傍影や配線損失、ミスマッチが大きくPRを下げているなら、設計改善の余地があるかもしれません。
また、PRは地域や方位の影響を完全に無視できるわけではありませんが、単なる年間発電量よりもシステム品質を比較しやすい指標です。PVSystのPR説明でも、PRは比発電量とは異なり、気象データや面の向きに直接依存しないため、異なる場所や向きのシステム品質比較に使えると説明されています。
ただし、PRだけを高くすることが目的ではありません。たとえば、東西設置や高DC/AC比の設計では、PRの見え方と収益性が単純に一致しないことがあります。発電カーブ、売電単価、自家消費率、PCS容量、土地利用効率などを総合的に見なければ、実務上の最適案は判断できません。損失図は、PRの背景を説明するための補助線として使うのが適切です。
月別結果との組み合わせも重要です。年間の損失図では、季節ごとの特徴が平均化されて見えます。夏に温度損失が大きいのか、冬に影損失が大きいのか、梅雨時期に低照度の影響が強いのかは、月別で見なければ分かりにくいことがあります。PVSystの損失図は年間レポートに表示されるだけでなく、月別にも確認できるため、季節性の評価に役立ちます。
たとえば、冬季の朝夕に近傍影が大きい案件では、年間損失図だけを見ると影響が小さく見えることがあります。しかし、月別結果で冬の損失を確認すると、特定期間に発電量が大きく落ちていることが分かる場合があります。積雪地域、高緯度地域、山間部、屋根上に障害物が多い案件では、月別確認が特に重要です。
損失図、PR、月別結果を組み合わせることで、「年間では許容できるが冬季の発電低下に注意が必要」「PRは良いが絶対発電量は土地条件の影響で伸びにくい」「発電量は高いがPCSクリッピングが大きく、容量設計に再検討余地がある」といった、より実務的な判断ができるようになります。
損失図を実務で使うときに避けたい読み間違い
損失図を実務で使うときに避けたい読み間違いの一つは、損失が大きい項目をすべて悪いものとして扱うことです。損失には、設計上避けにくいものと、入力や設計の見直しで改善できるものがあります。温度損失やIAM損失は自然条件や設置条件に伴って発生しやすい一方で、配線損失、影の一部、ミスマッチ、PCS容量の選定は、設計によって調整できる可能性があります。
もう一つの読み間違いは、損失図を単独で評価することです。損失図は結果の分解には適していますが、最終的な良し悪しはプロジェクト目的によって変わります。売電型であれば年間発電量や売電収入が重視されます。自家消費型であれば、施設負荷との一致、逆潮流の有無、蓄電池の使い方が重要になります。営農型や屋根設置では、設置制約や運用条件も評価に入ります。
また、入力条件を確認せずに損失図だけを信じるのも危険です。損失図は、入力された気象データ、 機器仕様、レイアウト、影モデル、配線条件、汚れ条件などを前提に出力されます。前提が誤っていれば、損失図はきれいに見えても、現実に近い結果とは限りません。特に、3D影モデル、地形条件、屋根勾配、モジュール配置、PCS仕様、配線長は慎重に確認する必要があります。
営業資料で損失図を使う場合は、専門用語をそのまま並べるよりも、意味を翻訳して説明することが大切です。たとえば、IAMは「斜めから光が入ることで反射が増える影響」、ミスマッチは「モジュールやストリングの条件差で出力がそろわない影響」、クリッピングは「PCS容量の上限で一部の出力を使い切れない影響」と説明すると、非専門の関係者にも伝わりやすくなります。
社内レビューでは、損失図を使って確認順序を標準化すると便利です。まず日射データ、次に方位・傾斜、次に影、次に温度、次にミスマッチと配線、最後にPCSとAC側を見るという流れを決めておけば、担当者ごとの確認漏れを減らせます。シミュレーション結果の妥当性を判断するうえで、損失図はチェックリストの役割も果たします。
さらに、複数ケース比較では、損失図の差分を見ることが重要です。単一ケースの損失図だけでは、その数値が良いのか悪いのか判断しづらいことがあります。方位を変えた案、傾斜を変えた案、PCS容量を変えた案、モジュール種類を変えた案を比較すると、どの損失がどの設計変更に反応しているかが分かります。この差分こそが、PVSystを使う実務上の価値です。
シミュレーション結果を改善につなげる考え方
損失図を理解した後は、改善につなげる視点が必要です。損失図を見て終わりにするのではなく、どの項目を動かせるのか、どの項目は現場条件として受け入れるべきなのかを整理します。改善余地のある損失を見つけることで、発電量、コスト、施工性、保守性のバランスを取りながら設計を詰めることができます。
影損失が大きい場合は、まず影の入力精度を確認します。障害物の高さや位置が正しいか、3Dモデルが過剰または不足していないか、アレイ間隔や高さが現実と一致しているかを見ます。そのうえで、レイアウト変更、架台高さの調整、障害物との離隔、モジュール配置の変更を検討します。ただし、土地面積や屋根形状の制約がある場合、影損失を下げるために設備容量が減り、総発電量が下がることもあります。
温度損失が大きい場合は、設置方式と通風条件を確認します。屋根面に近すぎる配置では温度が上がりやすくなります。地上設置でも、架台高さや周辺の風通しが影響します。モジュールの温度係数も比較対象になります。ただし、温度損失を下げるためだけに高コストな設計へ変更しても、投資回収に見合わない場合があります。
配線損失が大きい場合は、ケーブル長、断面積、電圧、電流、接続箱やPCSの配置を見直します。配線損失は比較的設計で改善しやすい一方で、ケーブルサイズを大きくすると材料費や施工性に影響します。そのため、損失低減による発電量増加と、工事費増加のバランスを確認します。
ミスマッチ損失が大きい場合は、ストリング構成、影のかかるモジュールのまとまり、方位や傾斜が異なる面の扱いを確認し ます。異なる向きのモジュールを同じ入力にまとめていないか、部分影を受ける範囲が過度に混在していないかを見ます。屋根設置では複数面にまたがる設計が多く、ミスマッチを抑える設計が重要です。
PCS関連の損失が大きい場合は、PCS容量、直流交流比、出力制限条件、負荷パターンを見ます。売電型では、クリッピングが多少あっても設備全体の収益性が高まることがあります。自家消費型では、昼間負荷との一致や蓄電池の使い方によって最適なPCS容量が変わります。損失図の数値だけでなく、事業条件と合わせた判断が必要です。
改善策を考えるときは、すべての損失を最小化することを目的にしない方が実務的です。太陽光発電の設計では、発電量を最大化することと、コストを最適化することは必ずしも一致しません。影を減らすために架台間隔を広げれば、設置容量が減ることがあります。配線損失を減らすために太いケーブルを使えば、工事費が上がります。PCSクリッピングを減らすためにPCS容量を増やせば、機器費が増えることがあります。
そのため、損失図は「損失をゼロにするための表」ではなく、「設計判断の優先順位を決めるための表」として使うべきです。どの損失が大きいか、どの損失が改善可能か、改善にどれだけコストがかかるか、改善しても事業上の効果があるかを順番に考えることで、現実的な設計改善につながります。
まとめ
PVSyst マニュアルで損失図を理解するためには、損失図を単なる数値一覧として見るのではなく、日射から最終出力までのエネルギーの流れとして読むことが大切です。最初に入力側の日射条件を確認し、次に影、IAM、汚れなどの光学的損失を見ます。その後、温度、低照度、ミスマッチ、配線、劣化などのアレイ側損失を確認し、最後にPCSやAC側の損失を見ます。
特に重要なのは、損失率を単純に足し算しないことです。PVSystの損失図では、各損失が前段階のエネルギー量に対する割合として扱われるため、表示されたパーセンテージを合計しても全体損失にはなりません。この仕組みを理解しておくと、報告書の説明や社内レビューで誤解を避けやすくなります。
損失図を見る6つの見方は、上から下への流れを追うこと、損失率を足し算しないこと、日射から有効日射までを見ること、アレイ側の損失で発電量低下の理由を見ること、PCS・AC側の損失で最終出力を見ること、PRや月別結果と合わせて判断することです。この6つを押さえれば、損失図のどこを見ればよいかが明確になります。
実務では、損失図を見て終わりではなく、設計改善につなげることが重要です。影損失が大きければレイアウトや3Dモデルを確認し、温度損失が大きければ設置方式や通風条件を確認します。配線損失が大きければケーブル設計や機器配置を見直し、PCS損失が大きければ直流交流比や出力制限条件を確認します。
ただし、すべての損失を小さくすることが最適とは限りません。発電量、コスト、施工性、保守性、売電条件、自家消費率などを総合的に見て、どの損失を受け入れ、どの損失を改善するかを判断する必要があります。損失図は、その判断を感覚ではなく数値と構造で説明するための重要な資料です。
PVSyst マニュアルで損失図を理解できるようになると、発電量が低い原因を説明しやすくなり、設計案の比較もしやすくなります。さらに、顧客や社内関係者に対して、なぜその発電量になるのか、どの損失が主要因なのか、どこに改善余地があるのかを具体的に伝えられます。損失図を正しく読むことは、PVSystを実務で使いこなすための基本であり、太陽光発電システムの設計品質を高めるための重要な第一歩です。
LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上
LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。
LRTKの詳細については、下記のリンクよりご覧ください。
製品に関するご質問やお見積り、導入検討に関するご相談は、
こちらのお問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。ぜひLRTKで、貴社の現場を次のステージへと進化させましょう。

