目次
• PVSystのSoiling Lossとは何か
• Soiling Lossを読む前に押さえる基本
• 読み方1 汚れ損失が発電量に与える影 響を見る
• 読み方2 月別設定と季節変動を見る
• 読み方3 他の損失項目との重複を避けて読む
• 読み方4 実測・清掃・現場条件と照合して読む
• Soiling Lossを実務で説明するときの考え方
• Soiling Lossでよくある読み違い
• PVSystレポート全体の中での位置づけ
• 現場確認と高精度測位を組み合わせた活用
PVSystのSoiling Lossとは何か
PVSystのSoiling Lossとは、 太陽電池モジュール表面に付着する汚れによって、受け取れる日射量が減少し、発電量が低下する影響を表す損失項目です。日本語では汚れ損失、汚損損失、モジュール表面汚れによる損失などと呼ばれることがあります。
太陽光発電所では、モジュールが屋外に長期間設置されます。屋外では、砂ぼこり、花粉、黄砂、落ち葉、鳥のふん、農地や道路からの粉じん、海沿いの塩分、積雪後の泥はねなど、さまざまな要因で表面が汚れます。モジュール表面が汚れると、太陽光がセルに届く前に一部が遮られます。その結果、同じ日射条件でも発電量が低くなります。
PVSystでは、このような汚れによる影響をSoiling Lossとして入力または確認します。Soiling Lossは、発電量の見積りにおいて小さく見えることもありますが、年間発電量、Performance Ratio、Specific Yield、売電量や自家消費量の見通しに直接影響します。特に、発電所の規模が大きい場合や、融資、性能保証、発電量保証、事業収支の検討に使う場合は、わずかな数パーセントの違いでも重要です。
PVSystの読み方でSoiling Lossを見るときは、単に数値が何パーセントかを見るだけでは不十分です。その数値が年間一律なのか、月別に変えているのか、降雨や積雪をどう考慮しているのか、清掃計画があるのか、現場環境に合っているのかを確認する必要があります。
実務では、Soiling Lossは「適当に数パーセント入れておく項目」として扱われがちです。しかし、実際には気象、地形、周辺環境、保守計画、モジュール角度、積雪地域かどうかによって妥当な値が変わります。PVSystレポートを読む担当者は、Soiling Lossを単独の数字としてではなく、現場条件と運用条件を反映した前提条件として読むことが大切です。
Soiling Lossを読む前に押さえる基本
Soiling Lossを読む前に、まずPVSystレポートが何を目的として作られているかを確認します。設計初期の概算なのか、EPC見積用なのか、金融機関向けの発電量評価なのか、竣工後の性能検証なのかによって、Soiling Lossに求められる厳密さは変わります。
設計初期であれば、周辺環境がまだ確定していないため、一般的な値で仮置きされていることがあります。一方で、発電量保証や契約条件に関係する資料では、Soiling Lossの根拠がより重要になります。レポートを見る側は、数値そのものだけではなく、その値がどの段階の検討に使われているのかを確認する必要があります。
Soiling Lossは、多くの場合、日射量から発電量に至る途中の損失として扱われます。モジュール表面に到達した日射が、汚れによって一部失われ、その後に温度損失、ミスマッチ損失、配線損失、インバータ損失などが重なって最終的な発電量になります。そのため、Soiling Lossの値を変えると、後段のエネルギー量にも影響します。
ここで重要なのは、Soiling Lossは「発電所が悪い」という評価ではなく、「屋外設置で想定される自然な減少分」を表す前提条件だということです。汚れが全くない状態を毎日維持することは現実的ではありません。したがって、適切なSoiling Lossを設定することは、発電量を過小評価するためではなく、現実に近い発電量を見積もるための作業です。
また、Soiling Lossは清掃や雨によって回復する可能性がある損失です。温度損失や変換損失のように設備の物理特性に強く依存する損失とは異なり、運用によって改善できる余地があります。そのため、O&Mの計画や清掃頻度を考える際にも、Soiling Lossの読み方は重要になります。
PVSystの読み方としては、Soiling Lossを見たら、まず年間値を見る、次に月別値を見る、さらにLoss Diagramや月別発電量への影響を見る、最後に現場条件と整合しているかを確認する、という順番が実務的です。
読み方1 汚れ損失が発電量に与える影響を見る
Soiling Lossの読み方の1つ目は、汚れ損失が年間発電量にどの程度影響しているかを見ることです。PVSystレポートでは、損失図や詳細損失の中にSoiling Lossが表示されることがあります。ここで確認したいのは、単に損失率が何パーセントかではなく、その損失が最終的な発電量にどの程度効いているかです。
たとえば、Soiling Lossが2%であれば、単純にはモジュール表面の汚れによって受け取れる有効な日射が約2%減るという考え方になります。ただし、PVSystのエネルギーフローでは、損失の掛かる位置や他の損失との関係により、最終的な系統出力に対する影響は単純な足し算ではありません。損失項目は段階的に適用されるため、全体の損失を読むときは、それぞれの損失率を合計するのではなく、エネルギーの流れの中でどう減っているかを見る必要があります。
PVSystを読む実務担当者がまず見るべきなのは、Soiling Lossの値が発電量評価に対して妥当な大きさかどうかです。極端に低い値であれば、現場の汚れを過小評価していないかを確認します。極端に高い値であれば、周辺環境や清掃条件を反映しているのか、または安全側に見すぎていないかを確認します。
一般に、汚れ損失は地面の状態や周辺環境によって変わります。舗装された場所や草地が安定している場所では、粉じんの発生が少なくなる場合があります。逆に、未舗装道路、造成直後の裸地、農地 、採石場、交通量の多い道路、海岸部、火山灰や黄砂の影響を受ける地域では、汚れが大きくなる可能性があります。
また、モジュールの傾斜角もSoiling Lossに関係します。傾斜がある程度あれば、雨水によって表面の汚れが流れやすくなります。一方、傾斜が小さい場合は、汚れが残りやすく、水たまり跡や泥の堆積が起きやすくなります。したがって、同じ地域でも、設置角度によってSoiling Lossの妥当性は変わります。
年間発電量への影響を見る際は、Soiling Lossを変えた場合の感度も意識すると実務に役立ちます。たとえば、Soiling Lossを1%変えると年間発電量がどの程度変わるのかを確認しておくと、清掃計画や保守費用との比較がしやすくなります。清掃によって発電量がどの程度改善する見込みなのか、清掃費用に見合う効果があるのかを検討するうえで、Soiling Lossは重要な入口になります。
PVSystレポートの読み方としては、Soiling Lossの数値を見つけたら、次に年間発電量、Specific Yield、Performance Ratioの変化を合わせて見るのが自然です。Soiling Lossが大きいのにPRが高い場合は、他の損失が小さく設定されている可能性があります。逆に、Soiling Lossが小さいのにPRが低い場合は、温度損失、影損失、配線損失、インバータ損失、出力制限など、他の項目が効いている可能性があります。
つまり、Soiling Lossは単独で良い悪いを判断する項目ではありません。PVSyst全体の中で、発電量低下の一部をどの程度説明しているかを読む項目です。
読み方2 月別設定と季節変動を見る
Soiling Lossの読み方の2つ目は、月別設定と季節変動を見ることです。汚れ損失は年間を通じて一定とは限りません。むしろ、現場によっては季節ごとに変わることが多い項目です。
春は花粉や黄砂の影響を受けやすい地域があります。乾燥した時期が続くと、モジュール表面にほこりが蓄積しやすくなります。夏は降雨が多い地域では汚れが洗い流されやすい一方、農地や工事現場の 近くでは土ぼこりが発生することがあります。秋は落ち葉や鳥のふん、乾燥による粉じんの影響が出る場合があります。冬は積雪、融雪、泥はね、凍結、除雪作業による汚れが関係することがあります。
PVSystで月別のSoiling Lossが設定されている場合、各月の値が現場の季節性を反映しているかを確認します。年間一律の設定であっても必ず誤りではありませんが、季節差が大きい地域では月別設定の方が実態に近づくことがあります。
たとえば、梅雨や台風の時期に降雨が多い地域では、雨による自然洗浄効果をある程度見込める場合があります。一方で、乾燥期が長い地域では、汚れが蓄積しやすく、Soiling Lossが増えやすくなります。雪国では、積雪期間中にモジュール表面が雪で覆われる影響と、汚れ損失をどう区別するかが重要になります。
ここで注意したいのは、積雪による発電低下とSoiling Lossを混同しないことです。雪でモジュールが覆われて発電しない状態は、汚れとは別の要因として扱うべき場合があります。雪が溶けた後に泥 や汚れが残る影響はSoiling Lossとして考える余地がありますが、積雪そのものを汚れ損失に含めてしまうと、他の損失項目と重複する可能性があります。
月別設定を見るときは、Soiling Lossの値だけでなく、月別発電量と月別PRの動きも一緒に見ます。ある月だけ発電量が大きく低下している場合、それが日射量の低下によるものなのか、温度上昇によるものなのか、影の影響なのか、汚れ損失なのかを切り分ける必要があります。
特に、Soiling Lossを月別に大きく設定している場合は、その根拠を確認したくなります。周辺に未舗装道路がある、乾燥期に粉じんが多い、農作業の時期に土ぼこりが増える、黄砂や花粉が多い、清掃頻度が低い、降雨が少ないなど、何らかの説明が必要です。
逆に、年間を通してSoiling Lossが低く設定されている場合も、現場環境と整合しているかを確認します。傾斜が十分にあり、降雨も期待でき、周辺に粉じん源が少なく、定期清掃もある場合は低めの設定が妥当なこともあります。しかし、造成地や工事中の区域、農地隣接地などで低すぎる設定になっている場合は、発電量を楽観的に見ている可能性があります。
PVSystの読み方で大事なのは、月別の数値を「細かい設定」として流さないことです。月別Soiling Lossは、現場の季節性を反映する重要な情報です。発電量の季節変動を説明するとき、Soiling Lossがどの月に大きく設定されているかを把握しておくと、施主や社内関係者への説明がしやすくなります。
読み方3 他の損失項目との重複を避けて読む
Soiling Lossの読み方の3つ目は、他の損失項目との重複を避けて読むことです。PVSystでは、発電量に影響する損失が多数あります。影による損失、IAMによる入射角損失、温度損失、低照度損失、ミスマッチ損失、配線損失、インバータ損失、変圧器損失、補機損失、出力制限などが代表的です。Soiling Lossはこの中の一つにすぎません。
汚れによって日射が遮られる影響は、見た目としては影や入射角の影響と似て見えることがあります。しかし、PVSyst上では意味が異なります。影損失は周辺地形、構造物、架台列間、樹木などによって太陽光が遮られる影響です。IAM損失は、太陽光がモジュールに斜めから入ることで反射が増え、有効に吸収される光が減る影響です。Soiling Lossは、モジュール表面に付着した汚れによって光が遮られる影響です。
この違いを理解していないと、同じ現象を複数の損失項目に重ねて入れてしまうことがあります。たとえば、雪がモジュール表面を覆う影響を別の項目で考慮しているのに、Soiling Lossにも大きく含めてしまうと、発電量を過度に低く見積もる可能性があります。また、樹木や周辺構造物の影を3Dシェーディングで反映しているのに、汚れ損失としても大きな値を入れてしまうと、説明が曖昧になります。
一方で、損失が小さく見えすぎている場合にも注意が必要です。影損失やIAM損失が適切に入っているからといって、Soiling Lossが不要になるわけではありません。影や入射角の影響と、表面汚れの影響は別です。現場に汚れ要因があるなら、Soiling Lossとして別途確認する必要があります。
PVSystレポートを読むときは、まずLoss Diagramの中でSoiling Lossがどの位置に出てくるかを確認します。次に、その前後にどの損失項目があるかを見ます。日射側の損失として何が入っているか、アレイ側の損失として何が入っているか、システム側の損失として何が入っているかを理解すると、Soiling Lossの意味が明確になります。
また、Performance Ratioを比較するときにも、Soiling Lossの扱いは重要です。複数のレポートを比較する場合、一方ではSoiling Lossが年間一律で設定され、もう一方では月別設定になっていることがあります。また、一方では積雪や汚れを保守的に見込み、もう一方では最小限にしている場合もあります。この状態でPRだけを比較すると、どちらの設計が優れているのかではなく、前提条件の違いを比較しているだけになることがあります。
実務では、Soiling Lossを読むときに「この損失はどの現象を代表しているのか」と考えることが大切です。砂ぼこりなのか、花粉なのか、鳥のふんなのか、雪解け後の泥なのか、清掃されない状態の蓄積なのかを整理します。現象を言葉にできないSoiling Lossは、説 明時に弱くなります。
特に、社内レビューや施主説明では、Soiling Lossを「一般的な汚れ分です」とだけ説明すると、根拠が薄く見える場合があります。「未舗装部が残るため乾燥期の粉じんを見込んでいます」「周辺が草地で粉じん源が少なく、降雨による自然洗浄を見込んでいます」「定期清掃を前提に年間値を抑えています」のように、現場条件と紐づけて説明できると説得力が上がります。
読み方4 実測・清掃・現場条件と照合して読む
Soiling Lossの読み方の4つ目は、実測、清掃、現場条件と照合して読むことです。PVSystのSoiling Lossはシミュレーション上の前提条件ですが、発電所が稼働した後は実測データと比較することで妥当性を検証できます。
運転開始後に発電量が想定より低い場合、原因は一つとは限りません。日射量が想定より低かったのか、気温が高かったのか、出力制御があったのか、PCS停止があったのか、影の影響が大きかったのか、汚れが蓄積していたのかを切り分ける必要があります。その中で、Soiling Lossは現場確認とデータ分析を組み合わせると判断しやすくなります。
たとえば、同じような日射条件の日を比較して、清掃前後で発電量やPRが改善している場合、汚れによる損失が一定程度あったと考えられます。特定のストリングや特定のエリアだけ発電量が低い場合は、局所的な汚れ、鳥のふん、落ち葉、泥はね、雑草影、機器不具合などを疑います。広い範囲で均一に低下している場合は、全体的な汚れや気象条件の影響を考えます。
清掃計画との照合も重要です。PVSystでSoiling Lossを低く設定しているにもかかわらず、実際には清掃計画がなく、周辺環境も汚れやすい場合、前提が楽観的かもしれません。反対に、定期清掃があり、雨も多く、傾斜も十分で、現場の汚れが少ない場合は、過度に大きなSoiling Lossを入れると発電量を保守的に見すぎる可能性があります。
現場条件を見る際は、モジュール表面だけでなく、周辺環境全体を確認します。発電所内の通路が未舗装か、近くに土砂運搬車が通る道路があるか、農地や畜舎が近いか、海からの距離はどうか、樹木や鳥が多いか、排水の状態はどうか、モジュール下部に泥はねが発生しやすいかを確認します。
また、モジュール列の下端部分だけ汚れが残るケースにも注意が必要です。雨で流された汚れが下端に集まり、帯状に残ることがあります。このような汚れは、見た目には一部でも、セル配置によっては発電への影響が大きくなる場合があります。単純な全面均一のSoiling Lossだけでは表現しきれないこともあるため、現場写真や点検記録と合わせて判断します。
PVSystの読み方として、Soiling Lossは設計時だけで終わる項目ではありません。運転開始後の実測データ、清掃履歴、点検写真、気象データと照合することで、次回のシミュレーションやO&M改善に活かせます。発電所ごとの実績が蓄積されれば、同じ地域や同じような環境の案件で、より現実的なSoiling Lossを設定しやすくなります。

