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PVSystのArray Lossの読み方5つ|どこで減る?

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万能の測量機LRTKの説明

著者: LRTKチーム

太陽光発電所の発電量シミュレーションを確認していると、PVSystの結果画面やLoss Diagramの中でArray Lossという考え方に必ず出会います。発電量が想定より低い、他社シミュレーションと差がある、PRが思ったより伸びない、月別の発電量に違和感があるという時、原因を追っていくとArray Loss周辺に多くのヒントがあります。


Array Lossは、直訳すればアレイ側の損失です。つまり、太陽電池モジュールが日射を受けて直流電力を作る過程で、理想状態からどれだけ出力が減ったかを見る領域です。PCS以降のAC側損失や、変圧器、送電線、系統連系点での損失とは見る場所が違います。PVSystでは、日射がモジュール面に入ってから、アレイ出力として直流電力が得られるまでに、温度、低照度、IAM、ミスマッチ、汚れ、配線、クリッピング前後の条件など、さまざまな要素が積み重なります。


実務では、Array Lossを一つの数字として見るだけでは不十分です。たとえば、Array Lossが大きいからといって、すぐにモジュール性能が悪いとは言えません。温度損失が大きいのか、汚れや積雪を強めに見ているのか、DC配線損失を保守的に入れているのか、近接影や電気的ミスマッチが大きいのかで、対策も説明内容も変わります。逆に、Array Lossが小さすぎる場合も注意が必要です。現場条件を甘く見すぎている、損失設定が抜けている、気象データやアレイ構成が実態と合っていない可能性があります。


この記事では、PVSystのArray Lossを実務で読むための視点を5つに分けて整理します。単なる用語説明ではなく、発電量レビュー、社内説明、銀行提出用資料、EPCとの協議、O&Mでの実測比較に使えるように、どこで電力量が減っているのかを順番に追える形で解説します。


目次

Array Lossはどの範囲の損失かを最初に切り分ける

温度損失でどれだけ減っているかを見る

IAM・低照度・モジュール特性による減少を見る

ミスマッチ・影・汚れでどこまで現場条件が入っているかを見る

DC配線損失とアレイ出力の整合性を見る

Array LossをPR比較と実測比較に使う時の注意点

まとめ


Array Lossはどの範囲の損失かを最初に切り分ける

PVSystのArray Lossを読む時に最初にやるべきことは、どこからどこまでの損失なのかを切り分けることです。太陽光発電所の発電量は、日射があるからそのまま売電電力量になるわけではありません。まず水平面日射や傾斜面日射があり、そこからモジュール面に入る有効な日射が決まり、モジュールが直流電力を作り、その直流電力がPCSに入り、交流に変換され、変圧器やAC配線を通って、最終的に系統側へ送られます。


Array Lossは、この流れの中で主にモジュールからPCS入力前後までの直流側に関係する損失を読むための領域です。つまり、太陽電池アレイが本来作れるはずの直流電力量に対して、実際のアレイ出力がどれだけ下がったかを見る場所です。ここをAC側損失や系統側損失と混同すると、原因分析がずれます。


たとえば、PVSystの結果で年間発電量が他社レポートより低い場合、まず確認したくなるのは最終的なEnergy injected into gridやSpecific Yieldです。しかし、その差の原因がArray Lossにあるのか、Inverter Lossにあるのか、AC ohmic lossにあるのか、Transformer lossにあるのかを切り分けないと、正しい説明になりません。Array Lossが大きい場合は、モジュール温度、日射条件、影、汚れ、DC配線、ミスマッチなどの直流側条件を重点的に確認します。一方、Array Lossが同程度で最終発電量だけが違う場合は、PCS損失、出力制限、AC側配線、変圧器、補機、系統制約などを疑います。


PVSystのLoss Diagramでは、上から下に向かってエネルギーが減っていく形で表示されます。ここで大事なのは、表示されているパーセントが何を基準にした割合かを意識することです。ある損失項目がマイナス2パーセントと表示されていても、それが全日射量に対する比率なのか、直前段階のエネルギーに対する比率なのかで読み方が変わります。複数の損失率を単純に足し算して、最終的なPR低下要因と見なすのは危険です。


Array Lossの読み方でよくある誤解は、Array Lossを一つの固定的な係数として扱ってしまうことです。実際には、Array Lossは年平均で一つの数字に見えても、月別、時刻別、気温、日射強度、影の出方によって大きく変わります。夏は温度損失が大きくなりやすく、冬は温度損失が小さくなる一方で積雪や低日射、影の影響が目立つことがあります。朝夕はIAMや影の影響が出やすく、正午付近は高日射による温度上昇やPCS側の制限が関係しやすくなります。


そのため、Array Lossを見る時は、まず年間値で全体感をつかみ、次に月別値やLoss Diagramの内訳を見て、最後に設定条件と現場条件が合っているかを確認する流れが実務的です。いきなり個別損失の数値だけを見ても、どこで減っているのかは分かりにくいです。最初に、これは直流側の話なのか、交流側の話なのか、気象条件の話なのか、機器設定の話なのかを切り分けることで、レビューの精度が上がります。


温度損失でどれだけ減っているかを見る

Array Lossの中で、最も大きな割合を占めやすい項目の一つが温度損失です。太陽電池モジュールは、日射を受けるほど発電しますが、同時にモジュール温度も上がります。一般的な結晶シリコン系モジュールでは、セル温度が高くなると電圧が下がり、結果として出力が低下します。つまり、日射が強い時間帯ほど発電量は増えますが、温度上昇によって一部の出力が失われます。


PVSystでは、モジュール温度の計算に熱損失係数が関係します。架台方式、通風条件、屋根置きか地上設置か、裏面の風通しが良いかどうかによって、同じ外気温・同じ日射でもモジュール温度は変わります。地上設置で背面の通風が良い場合と、屋根に密着して設置される場合では、温度損失の見方が変わります。地上設置のメガソーラーでは、一般に通風性が比較的良いため、屋根置きより温度上昇が抑えられることがありますが、積雪地、山間部、沿岸部、風況の違いによって実態は変わります。


温度損失を見る時は、年間の損失率だけでなく、月別の傾向を見ることが重要です。夏場に温度損失が大きく、冬場に小さいという傾向は自然です。もし冬場でも温度損失が大きい、あるいは夏場の温度損失が極端に小さい場合は、気象データ、温度係数、熱損失設定、設置方式の入力を確認する必要があります。特に、他社シミュレーションと比較する場合、同じモジュールを使っていても、気象データの外気温や風速、PVSyst側の熱モデル設定が違うと、温度損失に差が出ます。


温度損失はPRにも大きく影響します。PRは、日射に対してどれだけ効率よく電力量へ変換できたかを見る指標ですが、気温が高い地域では温度損失が大きくなりやすいため、同じ設備設計でもPRが低く見えることがあります。逆に寒冷地では温度損失が小さく、PRが高めに見えることがあります。ただし、寒冷地では積雪、低い太陽高度、長い影、アルベド、冬季の日射条件など別の要素が効いてくるため、温度損失だけで有利不利を判断してはいけません。


Array Lossのレビューでは、温度損失が大きいこと自体を問題視するのではなく、その大きさが地域、モジュール、架台、気象データに対して妥当かを見る必要があります。たとえば、外気温の高い地域で夏季の温度損失がある程度大きいのは自然です。一方で、冷涼な地域なのに温度損失が過大に出ている場合は、熱損失係数の設定が厳しすぎる、気象データの温度が現地条件と合っていない、モジュールの温度係数が別型番の値になっている、といった確認が必要です。


実務で説明する時は、「Array Lossのうち温度損失は、モジュールが熱くなることで直流出力が下がる分です」と言うと分かりやすくなります。さらに、「夏場に大きく、冬場に小さくなる傾向があり、地域の気温や架台の通風条件によって変わります」と補足すると、単なるマイナス要因ではなく、物理的に避けられない損失として理解されやすくなります。


IAM・低照度・モジュール特性による減少を見る

Array Lossを読む時に次に確認したいのが、IAM、低照度特性、モジュール品質に関係する損失です。これらは温度損失ほど直感的ではありませんが、PVSystの発電量差を説明する時には重要です。


IAMはIncidence Angle Modifierの略で、太陽光がモジュール面に入射する角度によって、実際に有効利用できる日射が減ることを表します。太陽光がモジュール面に対して正面から入る場合はロスが小さく、斜めから入る場合はガラス表面での反射が増え、セルに届く光が減ります。朝夕や冬季、低い太陽高度の時間帯では、この影響が出やすくなります。


IAM損失は、年間値だけを見ると小さく見えることがあります。しかし、朝夕の発電量や冬季の発電量、傾斜角の違いを比較する時には無視できません。特に、同じ設備容量なのに傾斜角や方位が違うケースを比較する場合、IAMの出方が変わります。PVSystでは、モジュールガラスの特性やIAMモデルによって値が変わるため、他社レポートとの比較では同じ前提になっているかを確認する価値があります。


低照度損失もArray Lossの重要な要素です。太陽電池モジュールは、標準試験条件での定格出力を基準に評価されますが、実際の現場では常に1000W毎平方メートルの強い日射があるわけではありません。曇天、朝夕、冬季、雨天、薄日など、低い日射強度で動作する時間が多くあります。モジュールは低照度でも発電しますが、効率が標準条件と同じとは限りません。この差が低照度損失として現れます。


低照度損失を見る時は、気象データの分布と合わせて考える必要があります。年間日射量が同じでも、晴天時に強い日射が集中する地域と、曇天が多く低照度の時間が長い地域では、モジュールの動作条件が違います。曇りが多い地域では、低照度特性の影響が相対的に大きくなる可能性があります。PVSystの結果で低照度損失が気になる場合は、モジュールデータベースの特性値、選定モジュールの実測データ、気象データの時間分布を確認します。


モジュール特性に関係する損失としては、公称出力の許容差、劣化、品質ばらつき、LIDや初期劣化の扱いなどもあります。PVSystの設定やレポートでは、これらがどの項目に含まれているかを確認する必要があります。初年度の発電量を見ているのか、長期平均の発電量を見ているのか、劣化率を別途見ているのかによって、読み方が変わります。


実務上よくあるのは、PVSystのArray Lossを見て「なぜモジュール側でこんなに減っているのか」と聞かれるケースです。この時、温度損失だけでなく、IAMや低照度損失も含まれていることを説明すると、理解が進みます。モジュールはカタログ出力どおりに常時動くわけではなく、斜め入射、低照度、高温、個体差など、現場での動作条件に応じて少しずつ出力が変わります。Array Lossは、その現場条件を反映した結果として読むべきです。


IAMや低照度損失は、単体では小さく見えても、複数の要因が積み重なると年間発電量に影響します。特に、PR比較で数パーセントの差を議論する場合には、これらの小さな損失の設定差が無視できません。PVSystの結果をレビューする時は、温度損失の次に、IAM、低照度、モジュール特性が妥当な範囲にあるかを確認すると、Array Lossの構造が見えやすくなります。


ミスマッチ・影・汚れでどこまで現場条件が入っているかを見る

Array Lossを実務で読むうえで、現場条件の反映度を確認するために重要なのが、ミスマッチ、影、汚れです。これらは設計や現場環境によって大きく変わり、他社シミュレーションとの差が出やすい項目です。


ミスマッチ損失は、同じストリングや同じMPPTに接続されたモジュール同士の特性差によって生じる損失です。太陽電池モジュールは同じ型番でも、出力や電流電圧特性が完全に同一ではありません。ストリング内で特性がずれると、全体が最も弱い条件に引っ張られるような形になり、理想的な合計出力より少し下がります。さらに、影や汚れが一部に偏る場合、電気的なミスマッチは大きくなります。


PVSystでは、モジュール品質損失やミスマッチ損失として設定される項目があります。ここで注意すべきなのは、ミスマッチ損失を過小に見積もると、実際より発電量が高く出やすいことです。一方で、過大に入れすぎると、設計上の発電量が保守的になりすぎます。大規模発電所では、ストリング構成、MPPTの分割、方位差、傾斜差、影のかかり方、モジュールのロット差などを見ながら、妥当な設定かを判断します。


影による損失は、Array Lossの中でも説明が難しい項目です。影には、地形や周辺物による遠方影、架台列同士による近接影、電柱や樹木などの局所的な影、積雪や汚れに近い部分的遮蔽があります。PVSystでは3Dシーンやシェーディング設定によって、影の影響を計算できますが、入力モデルの精度によって結果は変わります。


影の損失を見る時は、年間値だけではなく、どの季節、どの時間帯に影が出ているかを確認します。冬季の朝夕に影が大きいのは自然ですが、発電量の大きい昼間や春秋にも影が大きく出る場合は、レイアウト上の影響が発電量に効いている可能性があります。特に傾斜地や山間部、造成地、樹木が残る案件では、影のモデル化が発電量の妥当性に直結します。


汚れ損失もArray Lossの中で重要です。PVSystではSoiling Lossとして設定されることが多く、砂埃、花粉、黄砂、鳥糞、農地周辺の土埃、沿岸部の塩分、積雪や融雪後の汚れなどを考慮します。地域や運用によって汚れ方は大きく違います。雨で自然洗浄されやすい地域もあれば、乾燥が続く地域や造成直後の土埃が多い現場では汚れが蓄積しやすい場合もあります。


汚れ損失は、実測比較の時に特に重要です。シミュレーションでは年間一定の汚れ率を入れていても、現場では季節によって大きく変わることがあります。春先に花粉や黄砂が多い、冬季に積雪が残る、造成工事中に粉じんが多い、近隣道路の交通量が多いなど、現場固有の条件がある場合は、年間一律の設定だけでは説明しきれないことがあります。


ここで大事なのは、ミスマッチ、影、汚れを「悪いもの」として見るのではなく、「現場条件がどれだけシミュレーションに入っているか」を見ることです。たとえば、他社レポートより自社PVSystの発電量が低い場合、影や汚れをより現実的または保守的に入れている可能性があります。その場合は、単に発電量が低いのではなく、リスクを織り込んだ結果として説明できます。逆に、これらの損失が極端に小さい場合は、現場条件を十分に反映できているか確認が必要です。


Array Lossを読む時は、ミスマッチ、影、汚れの項目を見て、設計図面、現地写真、地形、架台配置、周辺環境と照合します。PVSyst上の数字だけで判断するのではなく、現場の実態に戻って見ることで、損失の意味が明確になります。


DC配線損失とアレイ出力の整合性を見る

Array Lossの中で、設計条件と直接つながりやすいのがDC配線損失です。太陽電池モジュールで発生した直流電力は、ストリングケーブル、接続箱、幹線、PCS入力までの配線を通って流れます。この時、ケーブルには抵抗があるため、電流が流れることで電圧降下とジュール損失が発生します。これがDC ohmic loss、つまり直流配線損失です。


DC配線損失は、ケーブル長、ケーブル断面積、電流、電圧、ストリング構成、接続箱配置、PCS配置によって変わります。分散型PCSを架台近くに置く設計では、PCSまでのDC距離が短くなり、DC配線損失を抑えやすい場合があります。一方、接続箱からPCSまでの距離が長い、ケーブルサイズが小さい、電流が大きい、回路数が多い場合は、損失が増えます。


PVSystでDC配線損失を読む時は、設定値が固定のパーセントなのか、ケーブル条件から計算しているのかを確認します。概算段階では1パーセントや1.5パーセントなどの代表値を使うことがありますが、詳細設計ではケーブル長と断面積をもとに計算した方が説明しやすくなります。特に、銀行提出用や第三者レビュー用のレポートでは、DC配線損失の根拠を聞かれることがあります。


DC配線損失の見方で重要なのは、損失率の大小だけではありません。設計思想と合っているかが重要です。たとえば、PCSが各ブロックに分散して配置されているのに、DC配線損失が大きく設定されている場合は、保守的な設定になっている可能性があります。逆に、広い敷地でPCSまでの距離が長いのに、DC配線損失が小さすぎる場合は、過小評価の可能性があります。


また、DC配線損失は発電量が大きい時間帯に効きやすい点も意識すべきです。配線損失は電流の二乗に関係するため、日射が強く電流が大きい時間帯ほど損失が増えます。年間平均で見ると小さく見えても、高日射時の出力には影響します。PCSのクリッピングや出力制限が発生する案件では、DC側でどれだけ損失が出てからPCSに入っているかも確認ポイントになります。


PVSystのArray Lossを読む時は、アレイ出力とPCS入力の関係も合わせて見ると理解しやすくなります。モジュールで作られた直流電力が、温度、IAM、低照度、ミスマッチ、影、汚れ、DC配線を経てPCSに届きます。その後、PCSで変換損失やMPPT動作、クリッピングが発生し、AC側へ進みます。もしArray Loss側で大きく減っているなら、PCSに入る前にすでに発電量が下がっているということです。もしArray Lossは妥当なのに最終発電量が低いなら、PCS以降を見るべきです。


DC配線損失は、現場の設計変更によって変わりやすい項目です。PCS位置の変更、接続箱配置の変更、ケーブルルートの変更、ケーブルサイズの変更、ストリング本数の変更があると、損失も変わります。PVSystのレポートが古い設計条件のままになっていると、実設計との整合が崩れます。発電量レビューでは、PVSystのDC配線損失が最新の電気設計と一致しているかを必ず確認するべきです。


Array LossをPR比較と実測比較に使う時の注意点

Array Lossは、PVSyst同士の比較や、PVSystと実測値の比較に非常に役立ちます。ただし、使い方を間違えると、誤った結論につながります。


まず、PR比較でArray Lossを見る場合、最終PRだけを比べないことが大切です。PRが低い場合でも、Array Lossが原因とは限りません。PRは、アレイ側の損失だけでなく、PCS損失、AC側損失、変圧器損失、補機損失、出力制御、稼働停止、系統制約などの影響を受けます。したがって、PR差を説明する時は、Array Lossの内訳とAC側損失の内訳を分けて見る必要があります。


他社PVSystレポートと比較する場合は、同じ言葉が同じ範囲を指しているかを確認します。あるレポートではSoiling Lossが日射側に入っているように見え、別のレポートではアレイ側損失として見えることがあります。表記や集計の仕方が違うと、同じ損失でも別の場所に見えることがあります。そのため、項目名だけでなく、Loss Diagramの流れを見て、どの段階で減っているかを確認する必要があります。


実測比較では、Array Lossをそのまま実測値と比べることはできません。実測で得られるのは、多くの場合、PCS出力、受電点電力量、売電電力量、日射量、気温などです。アレイ出力を直接測っていない場合、Array Lossの各項目を実測で分解するのは難しくなります。日射計や気温計、PCSのDCデータ、ストリング監視データがある場合は、より細かい検証ができますが、データがない場合は推定になります。


PVSystと実測を比べる時は、まず同じ期間で比較することが重要です。PVSystは標準年や代表年の気象データを使っていることが多く、実測年の天候とは一致しません。実測年が曇天続きだった、積雪が多かった、出力制御が多かった、停止期間があったという場合、PVSystの年間値と単純比較しても意味が薄くなります。実測日射量で補正する、月別に比較する、停止や出力制御を除外するなどの工夫が必要です。


Array Lossの中でも、温度損失は実測気温やモジュール温度があれば比較しやすい項目です。日射が強く気温が高い日に、想定より出力が低い場合、温度損失が想定より大きい可能性があります。一方、曇天時や朝夕の出力差は、低照度特性やIAM、影の影響が関係することがあります。局所的なストリングの出力低下がある場合は、ミスマッチ、汚れ、故障、影、接続不良などを疑います。


また、Array Lossを説明資料に使う時は、専門用語を並べるだけでは伝わりにくいです。社内や顧客向けには、「日射がモジュールに入ってから直流電力としてPCSに届くまでの減少」と説明すると分かりやすくなります。そのうえで、「主な内訳は、温度、入射角、低照度、影、汚れ、ミスマッチ、DC配線です」と順番に説明すると、発電量がどこで減っているのかを共有しやすくなります。


PVSystのArray Lossは、設計の良し悪しを単純に判定するための数字ではありません。むしろ、シミュレーションがどれだけ現場条件を反映しているか、どの前提が発電量に効いているかを確認するための診断項目です。PR比較や実測比較では、Array Lossの内訳を見ることで、発電量差の説明力が大きく上がります。


まとめ

PVSystのArray Lossは、太陽電池アレイが日射を受けて直流電力を作り、PCSへ送るまでの間にどこで電力が減っているかを見るための重要な指標です。発電量が低い、PRが低い、他社レポートと差があるという時、Array Lossを丁寧に読むことで、原因がモジュール側にあるのか、現場条件にあるのか、配線設計にあるのかを切り分けやすくなります。


読み方の第一歩は、Array Lossが直流側の損失であることを理解し、AC側損失や変圧器損失、系統側の制約と混同しないことです。次に、温度損失を確認します。温度損失は地域、気象データ、架台の通風条件、モジュールの温度係数によって変わり、年間PRにも大きく影響します。


さらに、IAM、低照度、モジュール特性を見ることで、カタログ出力と現場出力の違いを理解できます。モジュールは常に標準試験条件で動くわけではなく、斜め入射、曇天、朝夕、高温などの条件によって出力が変わります。これらの小さな損失も、年間では無視できない差になることがあります。


現場条件を読むうえでは、ミスマッチ、影、汚れが重要です。これらは設計図面や現地環境と密接に関係し、他社シミュレーションとの差が出やすい項目です。影や汚れをどこまで現実的に入れているかによって、発電量の見え方は変わります。発電量が低い場合でも、それが現場リスクを適切に織り込んだ結果であれば、むしろ説明力のあるシミュレーションと言えます。


DC配線損失は、設計変更と直結する確認項目です。PCS配置、接続箱配置、ケーブル長、ケーブルサイズ、ストリング構成が変われば、DC損失も変わります。PVSystの設定が最新の電気設計と一致しているかを確認することで、レポートの信頼性が高まります。


最後に、Array LossはPR比較や実測比較で使う時に特に有効です。ただし、最終PRや年間発電量だけを見て結論を出すのではなく、損失の流れを段階的に追うことが大切です。Array Lossの中で何が効いているのか、AC側やPCS側の損失とどう分かれているのか、実測データでどこまで検証できるのかを整理することで、発電量差の説明が具体的になります。


PVSystのArray Lossは、一つの数字として見るのではなく、温度、IAM、低照度、影、汚れ、ミスマッチ、DC配線という複数の要因が積み重なった結果として読むべきです。どこで減っているのかを順番に追えば、PVSystの結果は単なる発電量表ではなく、設計条件と現場条件を検証するための実務的な資料になります。


太陽光発電所の設計やレビューでは、PVSystの解析結果だけでなく、現場での位置情報や図面、施工状況を正確に把握することも重要です。LRTKのように、iPhoneとGNSSを活用して現場位置を高精度に取得し、図面や点群と照合できる仕組みを組み合わせると、架台配置、PCS位置、ケーブルルート、影の原因になりやすい周辺物の確認がしやすくなります。PVSystで数値上の損失を読み、現場では高精度な位置情報で実態を確認することで、発電量シミュレーションと施工・保守のつながりをより強くできます。


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