PVSystのレポートを初めて見ると、発電量そのものよりも、そこに並ぶ用語の意味で迷うことが多くあります。GlobInc、GlobEff、EArray、EGrid、PR、IAM、Soiling、Mismatch、Ohmic loss、Auxiliary lossなど、太陽光発電の設計や発電量解析ではよく使われる言葉でも、慣れていないとどの数値を重視すればよいのか判断しにくいものです。
特に 、PVSystの結果を読む場面では、単語の直訳だけでは不十分です。例えば、日射量に関する用語なのか、太陽電池アレイの出力に関する用語なのか、PCS通過後の交流電力量に関する用語なのかを分けて理解しなければ、発電量が高い理由や低い理由を正しく説明できません。
この記事では、PVSystの読み方で初心者が迷いやすい用語を10個に絞り、発電量解析レポートを読むための辞典として整理します。単なる用語集ではなく、レポートのどこを見ればよいか、比較時に何を注意すべきか、実務でどのように解釈すべきかまで含めて解説します。
目次
• PVSystの用語はエネルギーの流れで読む
• 用語1 GlobHor
• 用語2 GlobInc
• 用語3 GlobEff
• 用語4 EArray
• 用語5 EGrid
• 用語6 PR
• 用語7 IAM loss
• 用語8 Soiling loss
• 用語9 Mismatch loss
• 用語10 Ohmic loss
• PVSyst用語を読む時に初心者が注意すべきこと
• 比較レポートでは用語の意味より前提条件を確認する
• まとめ
PVSystの用語はエネルギーの流れで読む
PVSystの用語を理解するうえで最初に押さえるべきことは、発電所の中でエネルギーがどの段階にあるかを意識することです。太陽光発電の解析結果は、空から降り注ぐ日射から始まり、太陽電池モジュール面に入る日射、影や反射などを差し引いた有効日射、モジュールで直流電力に変換されたエネルギー、PCSで交流に変換されたエネルギー、最終的に系統へ送られる電力量へと順番に流れていきます。
PVSystのレポートには、この流れに沿って多くの用語が出てきます。初心者が混乱しやすいのは、すべての用語を同じ種類の数値として見てしまうことです。しかし実際には、日射量を表す用語、損失を表す用語、直流側の発電量を表す用語、交流側の発電量を表す用語、性能指標を表す用語が混在しています。
例えば、GlobIncはモジュール面に入射する日射量を表す用語であり、発電量そのものではありません。一方、EGridは最終的に系統へ送られる交流電力量を表すため、売電量や発電量評価に近い指標です。PRは発電量の絶対値ではなく、設備容量や日射条件を踏まえて発電所の性能を評価するための比率です。
このように、PVSystの用語は単独で覚えるよりも、日射から系統連系までの流れの中で覚えると理解しやすくなります。以下では、初心者が特に迷いやすい10個の用語を順番に見ていきます。
用語1 GlobHor
GlobHorは、水平面全天日射量を意味します。簡単に言えば、地面と平行な水平面に届く日射量です。気象データとして与えられる基本的な日射量の一つであり、PVSystの解析では最初の入力条件に近い位置づけになります。
太陽光パネルは通常、水平ではなく傾斜をつけて設置されます。そのため、水平面の日射量がそのままモジュール面の日射量になるわけではありません。PVSystでは、水平面の日射量をもとに、設置角度や方位、散乱日射、直達日射などを考慮して、モジュール面に入る日射量へ変換していきます。
初心者が注意すべき点は、GlobHorが高いからといって必ずしも発電量がそのまま高くなるとは限らないことです。発電量には、傾斜角、方位角、温度、影、反射、配線損失、PCS損失など多くの要素が関係します。GlobHorはあくまで気象条件の出発点であり、発電所の性能そのものを表す数値ではありません。
複数地点のレポートを比較する場合、まずGlobHorを見ることで、そもそも日射条件に差があるのかを確認できます。ある地点の発電量が高い場合、それが設計の良さによるものなのか、単に水平面日射量が多い地域だからなのかを切り分けるために重要です。
用語2 GlobInc
GlobIncは、傾斜面入射日射量を意味します。太陽電池モジュールの面に入ってくる日射量を表すため、GlobHorよりも発電量に直接近い指標です。PVSystの結果を読むうえでは、日射条件を見る時に特に重要な用語です。
同じ地点でも、モジュールの角度や方位が変わるとGlobIncは変わります。例えば、南向きで適切な傾斜角を持つレイアウトでは、水平面よりも年間の日射取得量が増える場合があります。一方、東西向きや低傾斜の設計では、時間帯ごとの発電分布が変わり、GlobIncの値も異なります。
PVSystの比較レポートでは、GlobIncが異なる場合、単純にEGridだけを比較しても正しい判断ができません。日射量の入力や設置条件が違えば、最終発電量も変わるためです。発電量差を読む時には、まずGlobIncが同じ前提なのか、異なる前提なのかを確認する必要があります。
初心者にとっては、GlobIncを「パネルに届く発電の材料」と考えると理解しやすくなります。発電量が料理の完成品だとすれば、GlobIncは主な材料です。材料が多ければ発電量は増えやすいですが、調理過程にあたる損失が大きければ、最終的なEGridは思ったほど伸びないこともあります。
用語3 GlobEff
GlobEffは、有効日射量を意味します。モジュール面に入った日射量から、近接影、遠方影、IAM損失、汚れなどの影響を反映した後の、発電に有効に使える日射量として理解できます。
GlobIncがモジュール面に入ってくる日射量であるのに対し、GlobEffはそのうち実際に発電へ使える状態に近づいた日射量です。つまり、GlobIncとGlobEffの差を見ることで、日射がどの程度ロスしているかを確認できます。
例えば、架台間隔が狭くて朝夕に影が出やすい場合、GlobIncが十分でもGlobEffが下がることがあります。また、傾斜角が低く、浅い角度で日射が入る時間が多い場合、IAM損失の影響でGlobEffが下がることもあります。さらに、汚れや積雪をSoilingとして設定している場合も、GlobEffに影響します。
PVSystの読み方で重要なのは、発電量が低い原因をいきなりPCSや配線に求めないことです。まずGlobIncからGlobEffまでの段階で大きく減っていないかを見ることで、日射取得側の問題なのか、電気変換側の問題なのかを分けて考えられます。
用語4 EArray
EArrayは、太陽電池アレイから得られる直流側のエネルギーを表します。PCSに入る前の段階の電力量として理解すると分かりやすいです。モジュールが日射を受けて直流電力に変換した後、温度損失、低照度損失、ミスマッチ損失、直流配線損失などを反映した結果です。
EArrayは、太陽電池モジュールや直流側設計の評価に使いやすい指標です。例えば、同じGlobEffなのにEArrayが低い場合、モジュール温度、モジュール特性、直流配線、ミスマッチ、ストリング設計などに原因がある可能性があります。
一方で、EArrayは最終的な売電量ではありません。PCSで交流に変換される前の数値なので、PCS効率、交流配線損失、変圧器損失、出力制限などはまだ十分に反映されていません。そのため、発電所全体の成果を見る時には、EArrayだけではなくEGridまで確認する必要があります。
初心者がよく混同するのは、EArrayとEGridです。EArrayは直流側、EGridは交流側の最終出力に近い数値です。レポート比較でEArrayは高いのにEGridが低い場合、PCS以降の損失や出力制限が影響している可能性があります。逆にEArrayの時点で低ければ、モジュール面の日射取得や直流側の損失を重点的に見るべきです。
用語5 EGrid
EGridは、系統へ送られる交流電力量を表します。PVSystの結果の中でも、発電量評価や事業性評価に直結しやすい重要な数値です。多くの場合、年間発電量として注目されるのはこのEGridです。
EGridには、PCS変換損失、交流配線損失、変圧器損失、補機損失、出力制限など、発電所の後段にある損失が反映されます。そのため、EArrayよりも小さくなる のが一般的です。EArrayとEGridの差を見ることで、PCS以降でどの程度のロスが発生しているかを把握できます。
PVSystの読み方では、EGridを最終結果として見るだけでなく、そこに至るまでの過程を確認することが大切です。EGridが想定より低い場合、日射量が低いのか、影が多いのか、温度損失が大きいのか、PCS容量に対してDC容量が大きすぎてクリッピングしているのか、交流側損失が大きいのかを分解して見る必要があります。
また、複数案を比較する場合、EGridの大小だけで優劣を判断しないことも重要です。設備容量が異なれば、当然EGridも変わります。DC容量1kWあたりの発電量やPRも併せて見ることで、設計案の効率や妥当性をより公平に比較できます。
用語6 PR
PRはPerformance Ratioの略で、日本語では性能比と呼ばれます。太陽光発電所が、与えられた日射条件と設備容量に対して、どれだけ効率よく電力量を得 られているかを示す指標です。
PRは発電量の絶対値ではありません。日射量や設備容量の影響をある程度ならして、発電所の性能を見るための比率です。そのため、地域が違う発電所や容量が違う発電所を比較する時に役立ちます。
ただし、PRが高ければ必ず良い設計というわけではありません。例えば、過度に保守的な日射データを使っている場合や、損失設定が小さすぎる場合、PRが高く見えることがあります。また、積雪地域や影の多い敷地では、現実的な損失を入れることでPRが低くなる場合もありますが、それは必ずしも悪い解析ではありません。
初心者はPRを「発電所の効率をざっくり示す成績表」と考えると理解しやすいです。ただし、その成績表は前提条件によって変わります。気象データ、モジュール仕様、PCS仕様、配線損失、汚れ、影、出力制限などの設定が違えば、PRも変わります。比較時には、PRの数字だけでなく、どの前提で計算されたPRなのかを確認することが必要です。
用語7 IAM loss
IAM lossは、Incidence Angle Modifier lossの略で、入射角による反射損失を意味します。太陽光がモジュール面に対して斜めに入るほど、ガラス面で反射される割合が増え、発電に使える日射が減ります。この影響を表すのがIAM損失です。
太陽が高い位置にある時間帯では、モジュール面に比較的正面から光が入るため、IAM損失は小さくなりやすいです。一方、朝夕や冬季など、太陽高度が低い時間帯では、光が浅い角度で入るため反射が増え、IAM損失が大きくなりやすくなります。
PVSystのレポートでIAM lossを見る時は、設置角度や方位、地域の日射条件とセットで考える必要があります。低傾斜の屋根置きや、東西向きの設計、朝夕の発電を重視するレイアウトでは、IAMの影響が見えやすくなることがあります。
初心者が注意すべき点は、IAM lossを単なる小さな補正項目として見落とさないことです。年間では数パーセント未満に見えることもありますが、案件比較ではこの差が発電量やPRの差につながることがあります。特に、他社レポートとの比較でIAM設定が異なる場合、同じレイアウトでも結果に差が出る可能性があります。
用語8 Soiling loss
Soiling lossは、汚れによる損失を意味します。モジュール表面に砂ぼこり、花粉、鳥のふん、火山灰、落ち葉、積雪などが付着すると、太陽光がセルまで届きにくくなり、発電量が低下します。この影響をPVSyst上で設定するのがSoiling lossです。
Soiling lossは地域や環境によって大きく変わります。乾燥地域、砂ぼこりが多い場所、農地や造成地の近く、交通量の多い道路沿い、海岸部、積雪地域などでは、汚れや付着物の影響を慎重に見る必要があります。一方で、雨による自然洗浄が期待できる地域では、年間平均のSoiling lossが比較的小さくなることもあります。
PVSystの読み方で重要なのは、Soiling lossが発電所の実態に合っているかどうかです。単に一般的な数値を入れるだけでは、現地環境を反映できない場合があります。積雪地域では、汚れという言葉だけではなく、雪による発電不能期間や反射によるアルベド増加との関係も考える必要があります。
初心者は、Soiling lossを「モジュール表面がきれいではないことによる発電ロス」と理解するとよいです。レポート比較では、Soiling lossの設定値が違うだけで年間発電量が変わるため、PRやEGridの差を見る前に、まず同じ前提になっているかを確認することが大切です。
用語9 Mismatch loss
Mismatch lossは、モジュール間のばらつきやストリング間の条件差によって発生する損失です。太陽電池モジュールは同じ型番でも、実際の出力特性にはわずかな差があります。また、影のかかり方、温度、劣化、配線構成などによって、ストリングごとの出力にも差が出ます。この 差によって、全体として理想通りの出力が得られないことをミスマッチ損失と呼びます。
太陽光発電では、複数のモジュールを直列や並列に接続して発電します。直列接続では、一部のモジュールの電流が低いと、ストリング全体の出力に影響します。そのため、モジュールの選定やストリング設計、影の分布はMismatch lossに関係します。
PVSystのレポートでMismatch lossが大きい場合、まずストリング構成や影の影響を確認する必要があります。特に、地形が複雑な場所、架台方位がばらつく場所、部分影が発生する場所では、ミスマッチが増える可能性があります。また、複数の傾斜や方位を一つのMPPTにまとめている場合も注意が必要です。
初心者にとっては、Mismatch lossを「弱い部分に全体が引っ張られる損失」と考えると理解しやすいです。全モジュールが同じように発電できれば理想的ですが、実際には条件差があるため、全体出力は単純な足し算よりも少し下がることがあります。
用語10 Ohmic loss
Ohmic lossは、配線抵抗による損失を意味します。日本語では抵抗損失や配線損失と呼ばれることもあります。電気がケーブルを流れる時、ケーブルには抵抗があるため、その一部が熱として失われます。この損失がOhmic lossです。
PVSystでは、直流側配線損失、交流側配線損失、場合によっては中圧側配線や変圧器周辺の損失などが設定されます。ケーブルが長いほど、電流が大きいほど、断面積が小さいほど、配線損失は大きくなります。そのため、発電所のレイアウトやPCS配置、接続箱配置、ケーブルサイズはOhmic lossに直結します。
初心者が注意すべき点は、Ohmic lossは小さな割合に見えても、年間発電量では無視できない差になることです。例えば、配線損失が1.0パーセントか1.5パーセントかの差は、単体では小さく見えます。しかし大規模発電所では、年間電力量や収益に換算すると大きな差になる場合があります。
また、PVSystの比較では、配線損失の設定方法がレポートごとに異なることがあります。実際のケーブル長や断面積から計算しているのか、標準値としてパーセント入力しているのかによって、結果の説得力が変わります。レポートを読む時には、Ohmic lossの値だけでなく、その根拠を確認することが重要です。
PVSyst用語を読む時に初心者が注意すべきこと
PVSystの用語を覚える時は、すべてを暗記しようとするより、どの段階の数値なのかを分けて理解することが重要です。日射に関する用語なのか、直流側の発電量なのか、交流側の発電量なのか、損失項目なのか、性能指標なのかを整理すれば、レポート全体の構造が見えてきます。
初心者が特に気をつけたいのは、最終発電量だけを見て判断しないことです。EGridが高いか低いかは重要ですが、その理由を説明できなければ、解析結果を実務に活かすことはできません。GlobIncが低いのか、GlobEffまでの損失が大きいのか、EArrayの段階で下がっているのか、PCS以降で下がっているのかを順番に確認する必要があります。
また、用語の意味を理解していても、単位を見落とすと誤解が生じます。日射量はkWh/m2で示されることが多く、発電量はkWhやMWhで示されます。損失はパーセントで示されることが多いですが、どの基準に対する割合なのかによって意味が変わります。
PVSystの読み方では、数値の大小だけでなく、前後関係を見ることが大切です。GlobHorからGlobInc、GlobIncからGlobEff、GlobEffからEArray、EArrayからEGridへと流れを追うことで、どこで発電量が減っているのかを見つけやすくなります。
比較レポートでは用語の意味より前提条件を確認する
PVSystの用語を理解した後に重要になるのが、比較レポートでの前提条件確認です。複数の解析結果を比較する場合、同じ用語が使われていても、入力条件や設定値が異なれば、数値の意味は完全には一致しません。
例えば、同じPRという用語でも、気象データ、モジュール容量、PCS容量、損失設定、出力制限、積雪や汚れの扱いが違えば、比較の前提が変わります。EGridも同じです。発電量として見れば分かりやすい数値ですが、設備容量や日射量が異なる案を単純比較すると、設計の良し悪しを誤って判断する可能性があります。
PVSystのレポート比較では、まず気象データ、設備容量、傾斜角、方位角、DC/AC比、損失設定、出力制限、影の扱いを確認することが大切です。そのうえで、GlobInc、GlobEff、EArray、EGrid、PRを順番に見ていくと、発電量差の原因を説明しやすくなります。
また、現場での確認も重要です。図面や机上解析だけでは、実際の架台位置、障害物、地形、施工誤差、周辺構造物、保守通路、積雪状況などを完全には把握できません。近年は、iPhoneとGNSSを活用した現地確認や、ARによる図面重ね合わせ、点群データを用いた現況把握も進んでいます。LRTKのように、スマートフォンで 高精度な位置情報を扱い、現場の測位や図面確認を支援する仕組みを活用すれば、PVSyst上の条件と現地実態のずれを確認しやすくなります。
特に、影や架台配置、地形の起伏、方位角の確認は、解析結果の信頼性に関わります。PVSystの用語を理解することは大切ですが、最終的には、その数値が現場の実態をどれだけ反映しているかが重要です。
まとめ
PVSystの読み方で迷いやすい用語は、日射、損失、直流発電量、交流発電量、性能指標のどれに属するかを分けると理解しやすくなります。GlobHorは水平面の日射量、GlobIncはモジュール面に入る日射量、GlobEffは損失を反映した有効日射量です。EArrayは直流側のエネルギー、EGridは系統へ送られる交流電力量であり、PRは発電所の性能を比率で見るための指標です。
IAM loss、Soiling loss、Mismatch loss、Ohmic lossは、それぞれ反射、汚れ、モジュールやストリングのばらつき、配線抵抗による損失を表します。これらの損失項目を理解すると、発電量が高い理由や低い理由をより具体的に説明できるようになります。
初心者がPVSystレポートを読む時は、最初からすべての用語を完璧に覚える必要はありません。まずは、日射がどのように発電量へ変換され、どの段階で損失が発生しているのかを順番に追うことが大切です。GlobIncからGlobEff、EArray、EGridへと流れを確認すれば、レポートの全体像がつかみやすくなります。
また、比較レポートでは、用語の意味だけでなく前提条件をそろえて見ることが欠かせません。同じPVSystのレポートでも、気象データや損失設定、影の扱い、配線条件、PCS条件が異なれば、結果は大きく変わります。用語を辞典のように理解しながら、同時に解析条件を確認することで、PVSystの結果を実務で使える判断材料に変えることができます。
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