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PVSystの発電量差を読む方法6つ|ケース比較向け

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この記事は平均5分15秒で読めます
万能の測量機LRTKの説明

著者: LRTKチーム

太陽光発電所の設計、事業性評価、金融機関向け資料、EPC提案、O&M改善検討などでは、PVSystによる発電量シミュレーションを複数ケースで比較する場面がよくあります。例えば、モジュールを変更した場合、PCS容量を変更した場合、傾斜角を変えた場合、方位を少し振った場合、架台配置を詰めた場合、積雪や汚れの条件を変えた場合などです。


このとき、単純に「年間発電量が多いケースが良い」「少ないケースは悪い」と判断してしまうと、設計判断を誤ることがあります。なぜなら、PVSystの発電量差は、日射量、温度、影、IAM、ミスマッチ、配線損失、PCS損失、クリッピング、系統側損失など、複数の要因が積み重なって生じるためです。


ケース比較で重要なのは、最終的な年間発電量だけを見るのではなく、その差がどの段階で生まれているのかを分解して読むことです。発電量差の理由を説明できれば、設計変更の妥当性、損失設定の妥当性、見積条件の整合性、他社解析との差異を説明しやすくなります。


この記事では、PVSystのケース比較で発電量差を読むときに確認したい6つの視点を整理します。単なる結果比較ではなく、なぜ差が出たのかを実務で説明するための読み方として解説します。


目次

年間発電量だけで判断しない

まず比較条件が揃っているかを見る

日射量と有効日射量の差を見る

アレイ出力までの損失差を見る

PCS以降の損失差を見る

月別差と時間帯差で原因を絞る

ケース比較では差分の理由を文章化する

PVSyst比較を現場判断につなげる

まとめ


年間発電量だけで判断しない

PVSystのケース比較で最初に目に入るのは、年間発電量、比発電量、PRなどの代表値です。これらは非常に重要な指標ですが、ケース比較では代表値だけを見て結論を出さないことが大切です。


例えば、ケースAの年間発電量が1,000MWh、ケースBの年間発電量が1,020MWhだった場合、一見するとケースBの方が2%良いように見えます。しかし、その2%の差がどこから来ているのかによって、意味は大きく変わります。


モジュール容量が増えたことで発電量が増えているのか、日射条件が変わっているのか、影損失が減っているのか、PCS容量が大きくなってクリッピングが減ったのか、配線損失の設定が変わっただけなのか。これらは同じ2%の差でも、設計上の意味がまったく異なります。


特に注意したいのは、比較対象の前提条件が完全に一致していないケースです。気象データ、アルベド、ソイリング、モジュール型式、PCS型式、直流容量、交流容量、方位角、傾斜角、影設定、配線損失、変圧器損失などが少しでも違うと、最終発電量には差が出ます。


そのため、PVSystのケース比較では、最終発電量の差を確認したあと、必ずLoss Diagramや月別表に戻って、どの項目が差分に効いているかを確認します。


年間発電量は結論であり、原因ではありません。ケース比較では、年間発電量の差を出発点として、その内訳を追いかける読み方が必要です。


まず比較条件が揃っているかを見る

発電量差を読む前に、最初に確認すべきことは比較条件の整合性です。ここを確認せずに損失項目を比較しても、原因分析がずれてしまうことがあります。


まず見るべきなのは、対象容量です。DC容量が同じなのか、AC容量が同じなのか、DC/AC比が同じなのかを確認します。DC容量が異なるケースを単純に年間発電量で比較すると、容量が大きいケースほど発電量が大きく見えます。この場合は、年間発電量そのものではなく、kWpあたりの発電量やPRで比較する必要があります。


次に、気象データが同じかを確認します。PVSystでは、同じ地点でも使用する気象データソースや年次、補正方法によって日射量や気温が変わります。日射量が異なると、下流の損失項目を細かく見ても、そもそもの入力エネルギーが違うため、正しい比較になりません。


また、地形や影設定も重要です。近接影、遠方影、地形影、遮蔽物、架台間隔、モジュール段数などが違うと、有効日射量が変わります。特に低傾斜や東西配置、積雪地域、山間部では、影や入射角の差が年間発電量に大きく影響することがあります。


さらに、ソイリング、アルベド、積雪、IAM、温度係数、配線損失、変圧器損失、補機損失などの設定が同じかも確認します。これらは一つ一つの差が小さく見えても、複数重なると年間発電量に無視できない差が出ます。


ケース比較でよくあるミスは、設計案の違いによる発電量差だと思っていたものが、実際には入力条件の違いによる差だったというものです。例えば、架台配置変更の効果を見たいのに、ソイリング設定や配線損失設定まで変わっていると、配置変更の効果だけを評価できません。


したがって、PVSystのケース比較では、発電量差を見る前に、比較の目的を明確にします。モジュール変更の比較なのか、PCS容量の比較なのか、傾斜角の比較なのか、レイアウトの比較なのかを決め、その目的に関係しない条件はできるだけ揃えることが基本です。


日射量と有効日射量の差を見る

比較条件を確認したら、次に見るべきなのは日射量の差です。PVSystでは、水平面日射、傾斜面日射、有効日射量の流れを確認できます。この上流側の差は、発電量全体に大きく影響します。


まず、GlobHorやGlobIncのような日射量が同じかを確認します。GlobHorは水平面日射、GlobIncは傾斜面に入射する日射量として理解できます。気象データや傾斜角、方位角が変わると、この段階で差が生じます。


例えば、南向き15度と南向き25度のケースを比較すると、年間の傾斜面日射量が変わります。冬季の日射取得が増える一方で、夏季の取得が変わることもあります。東西配置と南向き配置を比較する場合も、年間合計だけでなく、朝夕の発電分布が変わります。


次に、影やIAMを反映した有効日射量を確認します。傾斜面日射量が同じでも、影損失やIAM損失が違えば、モジュールが実際に利用できる日射量は変わります。架台間隔を狭くしたケースでは、設置容量は増える一方で、影損失が増えることがあります。この場合、年間発電量は増えても、kWpあたりの発電量やPRは下がることがあります。


IAMは、斜めから入る光による損失です。傾斜角、方位角、モジュール表面特性、朝夕の日射条件によって影響が変わります。ケース間でIAM損失が大きく違う場合、単なる容量差やPCS差ではなく、入射角条件の違いが発電量差に効いている可能性があります。


また、積雪地域ではアルベドや積雪損失の扱いも重要です。積雪によって発電が減る一方、周辺の雪面反射によって一部の条件では日射取得が増えることもあります。PVSyst上でどのように設定しているかによって、冬季の発電量差が大きく変わります。


日射量と有効日射量の確認は、発電量差の入口を確認する作業です。ここで差が大きい場合、後段のPCS損失や配線損失だけを見ても本質的な原因にはたどり着けません。


アレイ出力までの損失差を見る

有効日射量を確認したら、次にアレイ出力までの損失を見ます。ここでは、モジュールが受け取った日射エネルギーが、直流電力としてどれだけ取り出されるかを確認します。


アレイ側で重要なのは、温度損失、モジュール品質損失、LID、ミスマッチ損失、DC配線損失、影による電気的損失などです。これらは最終発電量に直接影響し、ケース比較でも差が出やすい項目です。


特に温度損失は、モジュール種類、設置方式、通風条件、周囲温度によって変わります。同じ日射量でも、モジュール温度が高くなる条件では出力が下がります。屋根置き、地上設置、両面モジュール、低傾斜配置などでは、温度条件の考え方が変わるため、比較時に注意が必要です。


モジュール型式を変更したケースでは、温度係数や公称出力、低照度特性、両面率などが変わる場合があります。この場合、発電量差は単に容量差だけではなく、モジュール特性の違いによっても生じます。


ミスマッチ損失も見落としやすい項目です。ストリング構成、影のかかり方、モジュールのばらつき、MPPT分割の考え方によって損失が変わります。特に複雑な地形や複数方位のレイアウトでは、ストリング構成の違いが発電量差に影響することがあります。


DC配線損失は、比較時に非常に重要です。PVSystでは、配線損失を一定割合で設定する場合もあれば、ケーブル長や断面積から計算する場合もあります。ケース間でDC配線損失の設定が異なると、発電量差の一部が設計差ではなく設定差になります。


例えば、あるケースではDC配線損失を1.5%とし、別のケースでは1.0%としている場合、それだけで年間発電量に差が出ます。PCS配置を変えたために実際のケーブル長が短くなったのであれば妥当な差ですが、単に設定が揃っていないだけであれば比較としては不適切です。


アレイ出力までの損失を見るときは、どの損失が設計変更によって自然に変わるものなのか、どの損失が単なる入力条件の違いなのかを分けて考えることが大切です。


PCS以降の損失差を見る

アレイ出力までを確認したら、次にPCS以降の損失を見ます。ここでは、直流電力が交流電力に変換され、系統連系点まで送られる過程でどれだけ減るかを確認します。


PCS関連で特に重要なのは、インバータ効率、MPPT範囲、電圧条件、過積載によるクリッピング、力率設定、AC配線損失、変圧器損失、補機損失などです。


ケース比較でよく出るのが、DC/AC比の違いによる発電量差です。DC容量に対してPCS容量が小さい場合、日射が強い時間帯にPCSの出力上限に達し、クリッピングが発生します。これにより、アレイ側では発電可能だった電力の一部が捨てられます。


一方で、DC/AC比を高める設計には、PCS容量を抑えながら年間発電量を確保するというメリットもあります。そのため、クリッピング損失があるから悪いという単純な判断ではなく、設備費、系統容量、売電単価、出力制御、施工性と合わせて判断する必要があります。


PCS容量を変更したケースでは、年間発電量が増えた理由がクリッピング損失の減少なのか、PCS効率の違いなのかを分けて見る必要があります。大型PCSと分散型PCSでは、効率曲線や低負荷時の挙動が異なることがあります。


力率設定も注意が必要です。PVSyst上で力率や出力制限をどのように扱っているかによって、損失の見え方が変わります。特に、PCSの定格出力を有効電力として見るのか、皮相電力との関係で見るのかによって、出力制限や損失の解釈が変わる場合があります。


AC配線損失や変圧器損失も、ケース比較では設定差が出やすい項目です。PCSから受変電設備までの距離が変わる、PCS台数が変わる、変圧器構成が変わると、実際の損失も変わります。ただし、設計が変わっていないのに損失設定だけが違う場合は、比較条件として整合していない可能性があります。


補機損失も忘れてはいけません。監視装置、通信機器、PCS待機電力、変圧器の無負荷損、空調や融雪設備など、補機電力の考え方によってPRや売電量が変わります。小規模案件では相対的に補機損失が大きく見える場合もあります。


PCS以降の損失は、設計だけでなく運用条件や系統条件にも関係します。ケース比較では、PCS以降の差が発電所の実力差なのか、電気設計条件の差なのかを切り分けることが重要です。


月別差と時間帯差で原因を絞る

年間発電量の差とLoss Diagramを確認したら、次に月別差を見ます。月別で見ることで、発電量差が季節要因によるものなのか、年間を通して一定の損失によるものなのかを判断しやすくなります。


例えば、冬季だけ差が大きい場合は、積雪、低太陽高度、影、アルベド、傾斜角の影響が考えられます。夏季だけ差が大きい場合は、温度損失、PCSクリッピング、日射ピーク時の制限が関係している可能性があります。


春や秋に差が大きい場合は、太陽高度や入射角、方位の違いが影響していることがあります。東西配置と南向き配置の比較では、年間発電量だけでなく、月別や時間帯別の発電パターンが変わります。


月別差を見るときは、発電量の絶対差だけでなく、比率でも確認します。発電量が多い月は絶対差が大きく見えやすく、発電量が少ない月は絶対差が小さく見えます。そのため、月別発電量の差分をkWhで見るだけでなく、何%の差なのかも確認すると原因をつかみやすくなります。


さらに詳しく見る場合は、時間帯別の差を確認します。朝夕に差が出る場合は、方位角、影、IAM、地形影が関係している可能性があります。正午前後に差が出る場合は、PCSクリッピングや温度損失が関係している可能性があります。


PVSystの出力を時間別データとして確認できる場合は、代表日や月別平均で比較すると、どの時間帯で差が出ているかを説明しやすくなります。特にPCS容量比較や東西配置比較では、時間帯別の発電カーブを見ると、年間値だけでは見えない違いが分かります。


月別差と時間帯差は、Loss Diagramで見つけた原因を検証するための手段です。例えば、Loss Diagramでクリッピング損失が増えている場合、夏季の日中に差が大きく出ているかを確認します。影損失が増えている場合、冬季や朝夕に差が出ているかを確認します。


このように、年間値、損失項目、月別差、時間帯差をつなげて読むことで、発電量差の説明に説得力が出ます。


ケース比較では差分の理由を文章化する

PVSystの比較結果は、数値表だけでは伝わりにくいことがあります。実務では、発電量差の理由を文章で説明できる形に整理することが重要です。


例えば、「ケースBはケースAより年間発電量が2.1%高い」という説明だけでは不十分です。これだけでは、なぜ高いのか、設計変更の効果なのか、条件差なのかが分かりません。


より実務的には、「ケースBはDC容量が同一である一方、架台間隔の拡大により近接影損失が低下し、有効日射量が増加した。また、PCS容量は同一のためクリッピング損失に大きな差はなく、発電量差の主因は影損失の低下である」といった説明が必要です。


また、ケース比較では、差分の要因を一つに決めつけないことも大切です。発電量差は複数の要因が同時に効いていることが多いため、主因と副因を分けて説明すると分かりやすくなります。


例えば、「主因は傾斜面日射量の増加であり、副次的に冬季の影損失低下が寄与している。一方で、夏季には温度損失がやや増加しており、年間全体ではこれらが相殺された結果、発電量差は約1%にとどまっている」といった整理です。


このように書くと、単に発電量が増えたという話ではなく、設計上の判断材料になります。


金融機関、発注者、EPC、O&M、社内稟議向けに説明する場合も、発電量差の理由が明確であれば、解析結果の信頼性が高まります。逆に、差分の理由が説明できない場合、PVSystの設定や比較条件に疑問を持たれる可能性があります。


ケース比較では、最後に必ず「何が変わったために、どの損失が変わり、最終発電量にどれだけ影響したのか」を文章化することが重要です。


PVSyst比較を現場判断につなげる

PVSystのケース比較は、机上の発電量比較だけで終わらせるものではありません。実際の設計、施工、維持管理、収益性判断につなげることが目的です。


例えば、架台間隔を広げると影損失は減りますが、同じ敷地に設置できる容量は減るかもしれません。PCS容量を大きくするとクリッピングは減りますが、設備費が増えるかもしれません。傾斜角を大きくすると冬季発電量は増えるかもしれませんが、風荷重や施工性、架台コストに影響するかもしれません。


つまり、PVSyst上で発電量が高いケースが、必ずしも事業として最適とは限りません。ケース比較では、発電量差を設計差、コスト差、施工性、保守性、リスクと合わせて判断する必要があります。


また、PVSystの比較結果を現場に反映するには、現地条件の確認も欠かせません。図面上では影が少ないように見えても、実際には周辺樹木、法面、フェンス、電柱、積雪、汚れ、排水条件などが発電量に影響することがあります。


このような現場確認では、スマートフォンと高精度GNSSを組み合わせた測位や、ARによる図面重ね合わせが役立つ場面があります。LRTKのようにiPhoneとGNSSを活用して、現地で位置を確認しながら図面や設計情報を重ねて見られる仕組みを使うと、机上のPVSyst条件と現場の実態を照合しやすくなります。


例えば、架台位置、PCS位置、ケーブルルート、周辺遮蔽物、造成範囲、点検通路などを現地で確認できれば、PVSystで想定した条件が実際の施工条件と合っているかを判断しやすくなります。発電量差の原因が机上条件によるものなのか、現場条件によるものなのかを整理するうえでも有効です。


PVSystは発電量を評価する強力なツールですが、入力条件は現場の実態に基づいている必要があります。ケース比較の精度を高めるには、シミュレーション結果と現場確認をつなげる視点が重要です。


まとめ

PVSystの発電量差を読むときは、年間発電量だけを見て判断しないことが重要です。最終的な発電量差は、日射量、有効日射量、アレイ損失、PCS損失、配線損失、変圧器損失、補機損失など、多くの要素が積み重なった結果です。


ケース比較では、まず比較条件が揃っているかを確認します。DC容量、AC容量、気象データ、傾斜角、方位角、影設定、ソイリング、アルベド、配線損失、PCS条件などが不一致のままだと、設計差なのか設定差なのかが分からなくなります。


次に、日射量と有効日射量を見て、発電量差の入口を確認します。傾斜角、方位角、影、IAM、積雪、アルベドなどの影響は、ここに表れやすくなります。


その後、アレイ出力までの損失を確認し、温度損失、ミスマッチ、DC配線損失、モジュール特性の違いを見ます。さらに、PCS以降の損失として、クリッピング、PCS効率、AC配線損失、変圧器損失、補機損失を確認します。


年間値だけで原因が分からない場合は、月別差や時間帯別差を見ることで、冬季影、夏季クリッピング、朝夕のIAM、温度損失などを切り分けやすくなります。


最終的には、発電量差を数値だけでなく文章で説明することが大切です。どの条件が変わり、どの損失が変化し、最終発電量にどう影響したのかを整理できれば、設計判断や顧客説明に使いやすい比較になります。


PVSystのケース比較は、単なるシミュレーション結果の優劣判定ではありません。発電量差の理由を読み解き、設計、施工、コスト、運用、現場条件とつなげて判断するための分析です。発電量が増えた理由、減った理由、差が小さい理由を説明できるようにすることで、PVSystの結果はより実務的な意思決定に活用しやすくなります。


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