top of page

PVSystの温度損失の読み方4つ|高温時の影響を整理

タイマーアイコン.jpeg
この記事は平均4分45秒で読めます
万能の測量機LRTKの説明

著者: LRTKチーム

太陽光発電の設計や発電量予測では、影や方位のように目で想像しやすい要素に意識が向きやすい一方で、温度損失は見落とされやすい項目です。しかし、PVSystでは温度はアレイ出力を左右する基本要素として扱われており、セル温度は one-diode model の基本入力の一つと位置づけられています。つまり、温度損失はあとから差し引かれる軽い補正ではなく、発電の根本的な前提の一部です。


とくに「PVSyst 読み方」で情報を探している実務担当者にとっては、温度損失をどう見ればよいのかが曖昧になりやすいはずです。外気温が高いから損失が増える、という理解だけでは十分ではありません。PVSystの熱モデルは、受光面に入る日射、モジュール効率、外気温、放熱条件を使ってアレイ温度を計算し、その温度が出力へどう影響するかを評価します。つまり、見るべきなのは「気温」単体ではなく、「どの条件でセル温度がどこまで上がり、その結果どれだけ出力が落ちるか」です。


また、PVSystの公式ドキュメントでは、モジュールの公称性能は25℃で規定される一方、実際の運転ではアレイ温度はもっと高くなり、その差が温度損失になると説明されています。概要説明では、温度による出力低下はおおむね -0.2〜-0.4%/℃ 程度のレンジで示されており、これだけ見ても、夏季や通風条件の悪い設置では無視しにくいことが分かります。


この記事では、PVSystの温度損失を実務でどう読めばよいかを四つの視点に整理して解説します。まず外気温ではなくアレイ温度として読むこと、次にUc/Uvと設置方式の前提を確認すること、さらに月別結果とTempLossで高温時の影響を読むこと、最後に温度係数と熱モデルの前提を切り分けることです。あわせて、誤解しやすい点と、現地条件の把握精度が温度損失の納得感にどう影響するかまでまとめます。


目次

温度損失を読む前に知っておきたいこと

読み方1|外気温ではなくアレイ温度として読む

読み方2|Uc/Uvと設置方式の前提から読む

読み方3|月別結果とTempLossで高温時の影響を読む

読み方4|温度係数と損失率を切り分けて読む

誤解しやすい点

現地条件の精度が温度損失の納得感を左右する

まとめ


温度損失を読む前に知っておきたいこと

PVSystで温度損失を読むときに最初に押さえたいのは、温度損失は「外気温が高いからそのまま発生する損失」ではないということです。公式ヘルプでは、熱平衡の考え方として、入射日射、吸収率、モジュール効率、放熱係数からセル温度を求めています。式の形で書けば、入ってくるエネルギーと冷却による熱放散が釣り合う点の温度がセル温度です。PVSystは簡略化のために入射日射として GlobInc を使うとしつつ、本来は有効日射 GlobEff が関係すると説明しています。


つまり、同じ外気温でも、日射が強い時間帯なのか、風が抜けるのか、設置方式で背面が開いているのかによって、実際のアレイ温度は変わります。逆に、外気温がそこまで高くなくても、日射が強くて放熱が悪ければ、セル温度はかなり上がります。この構造を理解していないと、夏に損失が大きい理由を「暑いから」で片づけてしまい、設置条件や放熱条件の改善余地を見逃しやすくなります。


PVSystの温度モデルは二層構造になっている点も重要です。まず熱収支モデルで定常温度 TArrSS を求め、その後に熱容量を考慮した慣性モデルで実際の過渡温度 TArray を計算します。したがって、温度損失は単純な静的補正ではなく、気象条件の変化に応じて時間的に追従するモデルの結果です。実務で温度損失を見るときは、単なる係数ではなく、こうした温度計算の出力として理解すると読み違いが減ります。


さらに、結果変数には TempLoss が「PV loss due to temperature」として独立に用意されています。つまりPVSystは、温度損失を影や配線と並ぶ主要損失の一つとして明示的に扱っています。Loss Diagramや simulation variables の中でこの値がどの程度効いているかを見ることで、高温時の影響を定量的に追いやすくなります。


読み方1|外気温ではなくアレイ温度として読む

最初の読み方は、温度損失を外気温ではなくアレイ温度として読むことです。PVSystの熱平衡式では、セル温度は外気温 Tamb に、日射と放熱条件から決まる上昇分が加わった形で表されます。要するに、外気温は出発点であって、損失を直接決める最終値ではありません。実際の損失は Tcell あるいは TArray がどこまで 25℃ を上回るかによって生じます。


この読み方が実務で重要なのは、気温が似ている案件でも温度損失がかなり違うことがあるからです。たとえば、同じ地域の二つの案件でも、片方は架台下がよく抜ける自由設置、もう片方は背面の通風が限られる設置であれば、外気温条件が同じでもアレイ温度は違い、結果として TempLoss の大きさも変わります。夏の結果だけを見て「この地点は暑いから仕方ない」と判断すると、設置条件に由来する差を見逃してしまいます。


また、PVSystの結果では月別や時間別に温度損失を見られるため、外気温の高い月と損失の大きい月が必ずしも完全一致しないことにも気づけます。強い日射、弱い通風、高い外気温が重なると損失は大きくなりやすく、逆に外気温が高くても日射が弱い時期や時間帯では、思ったほど損失が出ないことがあります。だからこそ、外気温の年表ではなく、アレイ温度の結果と TempLoss を一緒に追うことが大切です。


実務でのコツは、温度損失を見たときに最初に「この損失は気温そのもののせいか、それとも放熱の悪さも重なっているか」と考えることです。この一問を挟むだけで、設計側で触れる余地があるのか、純粋に気候条件として受け入れるべきなのかを整理しやすくなります。温度損失は自然条件だけの数字ではなく、設置条件も映している数字です。


読み方2|Uc/Uvと設置方式の前提から読む

二つ目の読み方は、損失率そのものを見る前に、Uc/Uvと設置方式の前提を確認することです。PVSystの熱モデルでは、放熱のしやすさを U = Uc + Uv × WindVel で表します。Uc は風速に依存しない基本の放熱係数、Uv は風速によって増える放熱の寄与です。公式ヘルプでは、Uv を使うのは難しく、気象データの風速は信頼性が十分でないことが多いため、実務では Uv=0 として平均風の影響を Uc に含める考え方が推奨されています。


ここで重要なのは、Ucの値が設置方式に強く依存することです。PVSystのチュートリアルでは、完全な自由通風なら Uc=29 W/m²K、背面に空気層がある半埋込的な設置なら Uc=20 W/m²K、背面断熱に近い一体設置なら Uc=15 W/m²K が提案例として示されています。つまり、温度損失を見るときに「TempLossが何%か」だけを見るのではなく、「そのTempLossはどの放熱前提で計算されたのか」を確認しないと、数字の重みを取り違えます。


実務では、ここが非常に誤解されやすいです。たとえば、ある案件で TempLoss が大きく見えても、背面がかなり閉じた設置条件で Uc が低めに置かれていれば、それは設計前提として自然な結果かもしれません。逆に、自由通風に近いはずの案件で Uc が過度に低く設定されていれば、温度損失は過大評価されている可能性があります。つまり、温度損失は数値だけでなく、熱モデルの前提と一緒に読むべきです。


さらに、公式チュートリアルでは NOCT は比較や参考のために挙げるだけで、実シミュレーションには直接的な relevance は大きくないとされています。実務で本当に見るべきなのは NOCT の見た目ではなく、PVSyst内で採用されている Uc/Uv とその設置条件の整合です。温度損失を評価するときに、カタログ的なNOCTに引っ張られすぎず、PVSystの熱モデル前提へ戻ることが大切です。


読み方3|月別結果とTempLossで高温時の影響を読む

三つ目の読み方は、TempLoss を年次の一つの率としてではなく、月別結果と組み合わせて読むことです。PVSystの結果変数には TempLoss があり、月別にも確認できます。年次で見ると一つのまとまった値に見えますが、実際には季節によって効き方がかなり違います。高温時の影響を整理したいなら、年次値だけでなく、どの月で強く出ているのかを必ず確認する必要があります。


実務上もっとも典型的なのは、春から初夏にかけて発電量が伸びているのに、真夏になると日射条件のわりに伸びが鈍るケースです。このとき年間発電量だけを見ていると違和感が見えにくいですが、月別の TempLoss を見ると、気温と強い日射が重なる時期に温度損失が膨らんでいることが分かりやすくなります。つまり、夏の伸び悩みを「日射不足」と誤解せず、「温度で取りこぼしている」と読めるようになります。


また、月別結果を見ることで、設置方式の前提が妥当かどうかも疑いやすくなります。たとえば、自由通風に近いはずの案件なのに、真夏だけ極端に TempLoss が大きいなら、Ucの設定や風条件の置き方を再確認したくなります。逆に、背面条件が厳しい設置方式なら、夏季の TempLoss がある程度大きく出るのは自然と考えやすくなります。月別結果は、熱モデルの前提と結果を照合する場として使うと有効です。


ここでの実務的な見方は、まず月別発電量の山と谷を見て、次に TempLoss を重ね、日射量の多い月ほど必ず発電量が伸びるわけではないことを確認することです。この読み方ができると、案件ごとの高温時リスクの説明もしやすくなります。温度損失は「年で何%」だけでなく、「夏にどう効くか」で読むほうが、高温時の影響を整理しやすいです。


読み方4|温度係数と損失率を切り分けて読む

四つ目の読み方は、モジュールの温度係数と、PVSystで出てくる温度損失率を切り分けて読むことです。公式ドキュメントでは、muPmpp は最大出力点 Pmpp の温度依存の傾きで、一般に Gamma と呼ばれる値に近いものとして説明されています。PVSystは必要に応じて muGamma という補正を入れ、実測に近い muPmpp へ合わせる仕組みを持っています。つまり、温度係数はモジュール固有の「1℃あたりの出力傾き」に近い概念です。


一方、PVSystの TempLoss は、その係数だけで決まるわけではありません。実際のアレイ温度が何度まで上がったか、どれだけの時間その温度帯で運転したか、日射がどれだけ入っていたかを積算した結果として現れます。したがって、温度係数が似たモジュール同士でも、設置方式や通風条件が違えば TempLoss は変わります。逆に、同じ設置方式でも、温度係数の異なるモジュールを使えば損失率の出方が変わります。両者を混同すると、改善策を誤りやすくなります。


実務では、温度係数が小さいモジュールだから温度損失も小さいはずだと短絡的に考えてしまうことがあります。しかし、それだけでは不十分です。温度係数はモジュールの感度であり、TempLoss はその感度に実際の運転温度が掛かった結果です。つまり、「モジュールの強さ」と「設置条件の厳しさ」の両方を分けて見る必要があります。ここを切り分けて読めるようになると、モジュール選定と設置設計の議論を混ぜずに済みます。


また、PVSystの one-diode model は温度依存を内部で扱っており、muPmpp の扱いは sizing や発電量計算の両方に関係します。だからこそ、温度係数は「カタログ値だから見る」、TempLossは「結果だから見る」と分断するのではなく、温度係数は入力側、TempLossは結果側と整理すると理解しやすくなります。高温時の影響を整理したいなら、この切り分けは非常に大切です。


誤解しやすい点

温度損失で最も誤解しやすいのは、「外気温が高い月=温度損失が大きい月」と単純に考えてしまうことです。実際には、PVSystの熱モデルは日射、効率、放熱係数も一緒に使ってセル温度を決めます。したがって、外気温だけでは損失は決まりません。高日射で通風が悪いと温度損失は大きくなりやすく、外気温が高くても日射が弱ければ損失は思ったほど増えない場合があります。


次によくある誤解は、Uc/Uvの設定を「詳細設定だからそこまで効かない」と軽く見ることです。公式チュートリアルでは、熱パラメータは detailed losses の代表的な確認項目として挙げられ、推奨値まで示されています。つまり、ここは飾りではなく、TempLossを決める主要因です。設置方式と合っていない Uc を入れていれば、年次結果も月次結果もずれて見える可能性があります。


さらに、NOCTを最重要指標のように扱ってしまうのもありがちな誤解です。PVSystのチュートリアルは、NOCTは very specific surrounding and operating conditions で定義される値であり、実シミュレーションには real relevance が大きくないと説明しています。実務で見るべきなのは、NOCTの数字そのものではなく、PVSystで採用している熱モデル前提と、そこから出てくる TempLoss です。


現地条件の精度が温度損失の納得感を左右する

温度損失を机上で正しく読むためには、現地条件の把握精度が非常に重要です。熱モデルは、自由通風なのか、半埋込なのか、背面が断熱に近いのかといった設置方式の前提に大きく依存します。つまり、屋根とモジュールの離隔、背面の抜け方、周辺設備との距離、風の通り道といった現場情報が曖昧だと、Uc/Uvの置き方にも迷いが生じ、TempLossの納得感も弱くなります。


実務では、図面上では自由通風に見えても、実際には屋根の立ち上がりや近接設備、ケーブルラック、パラペットなどが空気の流れを変えていることがあります。逆に、屋根一体に近いと思っていた案件でも、背面の空間が意外に確保されていることがあります。こうした差は、温度損失の見込みを変える可能性があります。つまり、温度損失はMeteoだけの問題ではなく、現場の取り付き方の問題でもあります。


その意味で、現場の位置関係を高精度に把握する手段を持つことは、温度損失の前提を詰めるうえでも有効です。設備配置、障害物との距離、背面空間、方位の整理がより正確にできれば、熱モデルに対する納得感も高まります。ここで自然につながるのが、現場の位置関係を高精度に把握する手段としての iPhone装着型GNSS高精度測位デバイスのLRTKです。現地での位置確認や設備・障害物との関係整理を高精度に進めやすくなることで、PVSystの温度損失の前提条件もより詰めやすくなります。高温時の影響を机上の数字で終わらせず、現場に根ざした判断へつなげたい実務では、こうした高精度な現地把握が助けになります。


まとめ

PVSystの温度損失を読むときは、まず外気温ではなくアレイ温度として考え、次に Uc/Uv と設置方式の前提を確認し、そのうえで月別の TempLoss から高温時の影響を追い、最後にモジュールの温度係数と損失率を切り分けて考えることが重要です。この四つの読み方を押さえるだけで、温度損失は単なる「夏に増える損失」ではなく、設計・設置条件の質を映す指標として見えるようになります。


大切なのは、TempLossを年次の一つの率として眺めるだけで終わらせないことです。PVSystの温度損失は、熱平衡モデル、熱慣性モデル、Uc/Uv、muPmpp といった複数の前提の上に成り立っています。だからこそ、数字を読むときには前提へ戻り、前提を確認したら月別へ戻るという往復が必要です。この往復ができるようになると、設計の見直し、顧客説明、比較検討の精度がかなり上がります。


そして、その読み方をさらに確かなものにするには、現場の位置関係を高精度に把握することが欠かせません。設備配置や背面条件、障害物との関係をより正確に整理したい場合は、iPhone装着型GNSS高精度測位デバイスのLRTKを活用する視点も有効です。PVSystの温度損失を正しく読む力と、現場を正確に押さえる力を組み合わせることで、より納得感のある高温時評価と設計判断につなげやすくなります。


LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上

LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。

LRTKの詳細については、下記のリンクよりご覧ください。

 

製品に関するご質問やお見積り、導入検討に関するご相談は、

こちらのお問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。ぜひLRTKで、貴社の現場を次のステージへと進化させましょう。

bottom of page