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PVSystで影解析を始める前に押さえたい基本5つ

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万能の測量機LRTKの説明

著者: LRTKチーム

PVSystで影解析を始めるとき、最初にやってしまいがちなのが、いきなり3Dシーンを作り込み始めることです。ですが実務では、影解析の精度を左右するのは画面上の操作量ではなく、どの影をどの方法で扱うのかを先に整理できているかどうかです。遠くの山や建物による影と、近くの架台・フェンス・樹木による影では、PVSystの考え方そのものが異なりますし、影の損失も単純な日射不足だけで終わる場合と、電気的な出力低下まで起こる場合があります。PVSystでは影の扱いがビーム成分、拡散成分、反射成分で分かれており、近傍影の扱いには詳細な3D記述が必要になるため、入口で考え方を間違えると、その後の設定や結果の読み方までずれていきます。([pvsyst.com][1])


特に、PVSystで影解析をしたい実務担当者が知りたいのは、難しい理論を網羅することではなく、どこから手を付けるべきか、どの設定が結果に効くのか、どんな見落としが起こりやすいのか、という実務上の判断軸ではないでしょうか。そこで本記事では、PVSystで影解析を始める前に押さえたい基本を5つに絞り、現場で使える形で整理します。影解析は、作り込むほど正確になるとは限りません。むしろ、簡易評価で済む場面と、詳細に詰めるべき場面を切り分けられる人ほど、短時間で精度の高い検討ができます。この記事を読めば、PVSystの影解析を「とりあえず触る」状態から、「意図を持って設定する」状態に進められるはずです。


目次

PVSystの影解析で最初に理解したい前提

基本1 近傍影と遠方影を切り分ける

基本2 何を簡易評価し何を3Dで再現するか決める

基本3 線形損失と電気的損失の違いを理解する

基本4 3Dシーンとシステム条件の整合を取る

基本5 年間値だけでなく時間帯と季節で結果を読む

PVSystで影解析を始めるときによくある失敗

まとめ


PVSystの影解析で最初に理解したい前提

PVSystの影解析は、単に「影があるかないか」を見る機能ではありません。どの位置に、どの時刻に、どの程度の影が落ちるかをもとに、発電面が受ける日射の減少と、その影響による出力低下を評価するための仕組みです。そのため、最初に理解しておきたいのは、PVSystの影解析は見た目の再現ではなく、損失の再現を目的としているという点です。画面上でそれらしく見える3Dモデルを作っても、方位、傾斜、行間、架台高さ、周辺障害物の位置関係が実際とずれていれば、結果は簡単にぶれてしまいます。


また、影解析は単独で完結する設定ではなく、配置条件、方位設定、システム構成、必要に応じた電気的な接続条件と連動して意味を持ちます。PVSystの公式ドキュメントでも、近傍影はソフトの中でも特に難しい領域とされており、時間ごとの計算ではビーム成分、拡散成分、反射成分に対して別々の考え方が適用されます。つまり、障害物を置いて計算ボタンを押せば終わり、という機能ではありません。最初に「何を知りたいのか」を決めることが、むしろ最重要です。([pvsyst.com][1])


実務では、初期検討の段階なのか、詳細設計に近い段階なのかによって、影解析に求める精度が変わります。初期検討なら、行間や傾斜角の妥当性を短時間で比較できれば十分なことがあります。一方で、正式な発電量評価や配置の最終判断に使うのであれば、周辺障害物や架台の端部影響、電気的な影響まで含めた詳細な確認が必要です。最初に検討段階を定めておくと、必要以上に細かいモデルを作って時間を失うことも、逆に簡略化しすぎて重要な損失を見落とすことも防げます。


基本1 近傍影と遠方影を切り分ける

PVSystで影解析を始める前に最も大切なのは、近傍影と遠方影を切り分けることです。公式ドキュメントでは、遠方影は地平線プロファイルで表すもので、対象物が十分遠く、ある時刻には発電面全体に対して太陽が見えるか見えないかという形で一括して効く影として扱われます。目安として、影の原因となる対象物が発電面サイズの約10倍以上離れている場合は遠方影として考えるべきだとされています。一方、近傍影は近くの物体が発電面の一部に可視的な影を落とすもので、影の割合を示すシェーディングファクターに基づいて扱われ、詳細な3D記述が必要です。([pvsyst.com][1])


この違いを実務的に言い換えると、山の稜線や遠方建物の遮りは遠方影、フェンス、電柱、近接建物、樹木、隣接列の架台による影は近傍影として考えるのが基本です。もしこの切り分けを誤ると、近くの障害物を地平線として雑に処理してしまい、部分影の電気的影響を見落とすことがあります。逆に、遠方の稜線まで3Dで細かく作ろうとすると、作業量ばかり増えて本質的な精度向上につながらないこともあります。


判断に迷ったときは、「その影はある瞬間に発電面全体へ一様に効くのか、それとも面の一部だけを横切るのか」で考えると整理しやすくなります。前者なら遠方影、後者なら近傍影です。さらに、影が列ごと、モジュールごとに違う出方をする可能性があるなら、近傍影として扱うべきです。PVSystの影解析で精度を上げたいなら、まずはソフトの操作よりも、この影の分類を正しく行うことから始めるべきです。


基本2 何を簡易評価し何を3Dで再現するか決める

次に大切なのが、何を簡易評価し、何を3Dで再現するかを先に決めることです。PVSystでは、規則的に並んだ列間の相互影を、方位設定側の「無限長列」に相当する簡易モデルで扱う方法と、近傍影の3Dシーンで明示的に列を作る方法の両方があります。前者は規則的な列配置を前提にした2次元的な近似で、計算が速く、初期検討に向いていますが、列の端部影響は無視されます。後者は3Dシーン上で列端や周辺障害物まで含めて扱える代わりに、計算の手間も重くなります。しかも、両方を同時に使うと同じ影を二重に評価してしまうため、併用は避ける必要があります。([pvsyst.com][2])


つまり、最初に決めるべきなのは「この案件で知りたいのは、規則的な行間影の傾向なのか、それとも現地の実配置を反映した詳細影響なのか」という点です。例えば、地上設置の規則的な列配置で、行間と傾斜角のバランスを比較したい段階なら、簡易モデルで十分なことがあります。反対に、敷地形状が複雑で、端部の影、近接障害物、地形差、通路、局所的な遮へいが重要なら、最初から3Dシーンで再現したほうが判断しやすくなります。


この考え方は追尾架台のような案件ではさらに重要です。PVSystの公式資料では、トラッカー配列の相互影を計算するには3Dシーン構築が必須とされています。さらに、バックトラッキングを使う場合でも、すべてが自動的に解決されるわけではありません。参照する列の幅とピッチの比がそろっていないと、一部では依然として相互影が発生し、別の一部では必要以上に早くバックトラッキングしてしまうことがあります。つまり、「追尾だから設定して終わり」ではなく、どの程度まで現場の不整合を反映させるかを事前に決めておくことが重要です。([pvsyst.com][3])


影解析を始める前に、簡易評価で足りる範囲と、3Dでしか見えない範囲を切り分けておけば、検討速度と精度の両立がしやすくなります。逆に、この判断がないまま作業を始めると、必要以上に細かいモデリングに時間を使うか、あるいは簡略化しすぎて重要な損失を見逃すかのどちらかになりやすいです。


基本3 線形損失と電気的損失の違いを理解する

PVSystの影解析で最も誤解されやすいのが、線形損失と電気的損失の違いです。公式ドキュメントでは、線形損失は発電面に届く日射が減ることによる損失であり、電気的影響を含まない下限値として位置付けられています。これに対して電気的損失は、部分影によってモジュールやストリング内の電流バランスが崩れ、見かけ以上に出力が落ちる現象を含みます。つまり、同じ面積だけ影になっていても、発電量への影響は必ずしも面積比例ではありません。([pvsyst.com][4])


この違いを理解していないと、「影面積は小さいから影響も小さいはず」と判断してしまいがちです。しかし実際には、影がどのセル列やどのストリングにかかるか、規則的な列影なのか、斜めに横切る不規則影なのかによって、損失の出方が大きく変わります。PVSystのパーティションモデルでは、電気的影響を調整するための係数も用意されており、規則的な列影では100%近く、不規則な建物影や樹木影のようなケースでは60〜80%程度になることがあると説明されています。つまり、電気的損失は「見た目の影」だけでは判断できず、影の規則性と配線条件に強く左右されるのです。([pvsyst.com][5])


そのため、PVSystで影解析を始めるときは、どの段階で電気的損失まで見るべきかを決める必要があります。初期比較なら、まず線形損失で候補案の優劣を見ても構いません。ただし、最終的な配置判断や、影の入り方に偏りがある案件、ストリング構成の違いが効きそうな案件では、電気的損失を外してはいけません。特にモジュールレイアウト機能は、各モジュール位置とストリング接続を反映した詳細な電気的影響を評価するためのもので、3D配置とシステム定義が固まった後に使う最後の詰めとして有効です。PVSystの公式でも、モジュールレイアウトは通常、システム検討の最後の段階で扱うべきものとされています。([pvsyst.com][6])


実務でのコツは、まず線形損失で大枠を比較し、怪しい場所や重要案件だけを電気的損失まで深掘りすることです。この順番を守ると、無駄なく精度を高められます。最初からすべてを詳細電気モデルで回そうとすると、作業負荷が増えるわりに、入力条件がまだ固まっていなければ結果の信頼性は上がりません。


基本4 3Dシーンとシステム条件の整合を取る

影解析がうまくいかない理由の多くは、3Dシーンそのものの作り方より、3Dシーンとシステム条件の整合が取れていないことにあります。例えば、方位設定側では南向き固定架台としているのに、3Dシーンでは微妙に別方位になっている、行間の数字が図面と違う、モジュール段数がシステム定義と一致していない、架台高さや地盤高低差が反映されていないといったズレです。こうしたズレは画面上では小さく見えても、低高度時の日影の入り方や相互影の開始時刻に効きます。


さらに、PVSystでは計算速度を上げるために、シェーディングファクターテーブルを事前計算して高速計算に使います。公式ドキュメントでは、このテーブルは太陽高度10度刻み、方位20度刻みの事前計算値から補間しており、比較的小さなシステムであれば各時刻ごとに完全計算する低速モードも使えると説明されています。つまり、形状や配置を変えたあとにテーブルを再計算しないまま結果だけ比較すると、設定変更の影響を正しく見られない可能性があります。影解析を進めるときは、形状修正のたびに「計算条件が最新か」を確認する習慣が大切です。([pvsyst.com][7])


トラッカー案件では、整合性の重要度がさらに上がります。PVSystでは、同一方位グループ内のトラッカーは同じ追尾角で動く前提になっており、その角度は基準となる幅とピッチの比、つまりGCRに基づいて計算されます。このため、実配置のGCRが列ごとにそろっていないと、ある列では影が残り、別の列では不要なバックトラッキングが発生することがあります。追尾影解析では、3Dシーンを作るだけでなく、どの列が基準条件になっているのかまで見ておく必要があります。([pvsyst.com][8])


実務上は、方位、傾斜、行間、架台幅、モジュール枚数、地形条件を先に整理し、それから3Dシーンを組み、代表的な日時で影のアニメーションや見え方を確認し、最後にテーブル再計算とシミュレーション比較を行う流れが安定します。いきなり細部を触るより、整合性のチェックポイントを順番に潰していくほうが、結果として早く正確なモデルになります。


基本5 年間値だけでなく時間帯と季節で結果を読む

PVSystの影解析結果は、年間損失率の数字だけで判断しないことが重要です。公式ドキュメントでは、アイソシェーディングカーブが太陽経路図の上に影の影響度を重ねて表示する強力な確認手段として紹介されています。また、影の係数はビーム成分だけでなく、拡散成分や反射成分にも別の形で効きます。つまり、年間で何%失うかを見るだけでは、いつ、どの条件で、どの影が効いているのかまでは分かりません。([pvsyst.com][9])


実務では、冬の朝夕に大きな影が見えても、年間発電量への影響は限定的なことがあります。逆に、日中帯の一部に繰り返し入る列間影や、電気的な不均衡を起こしやすい部分影は、見た目以上に効くことがあります。だからこそ、結果を見るときは「年で何%落ちたか」だけでなく、「何月の何時台に効いているか」「どの列や面に偏っているか」「線形損失だけなのか、電気的損失まで出ているか」を併せて確認する必要があります。


おすすめなのは、複数の比較ケースを作ることです。例えば、近傍影なし、近傍影ありの線形損失のみ、近傍影ありで電気的損失も含む、という3段階で比較すると、どの影響がどれだけ発電量を押し下げているかが整理しやすくなります。追尾案件なら、バックトラッキングあり・なしの比較も有効ですが、その際はPRだけでなく実際の発電量や比発電量で比較するほうが適切です。PVSystの公式でも、バックトラッキング比較ではPRより比発電量を見ることが推奨されています。([pvsyst.com][10])


年間値は最終判断には必要ですが、改善のヒントは時間帯と季節の中にあります。PVSystの影解析を本当に設計改善につなげたいなら、年間損失率を眺めるだけで終わらせず、どの時間帯のどの影を減らせば効果が出るのかまで読み込むことが大切です。


PVSystで影解析を始めるときによくある失敗

PVSystで影解析を始めた人がよくつまずくのは、影の種類を整理しないままモデリングを始めてしまうことです。遠方影で足りる対象まで3Dで細かく作り込み、逆に近くの障害物を地平線扱いで済ませてしまうと、作業量と精度のバランスが崩れます。また、規則的な列間影を簡易モデルで評価しているのに、同じ列を近傍影の3Dシーンでも作ってしまうと、相互影を二重に評価する危険があります。公式にも、方位設定側の列影モデルと近傍影シーンの列定義を同時使用しないよう明記されています。([pvsyst.com][2])


次に多いのが、線形損失だけを見て安心してしまうことです。影面積が小さいからといって、電気的損失も小さいとは限りません。特に、規則的に同じ位置へ影が入る列間影や、ストリング単位で偏った影では、出力低下が見かけより大きくなります。逆に、不規則影では係数調整やモジュールレイアウトによる確認が必要なのに、そこを飛ばしてしまうと、結果の解釈が曖昧になります。


さらに、システム条件を変更した後の見直し不足も典型的な失敗です。モジュールの段数を変えた、ストリングのまとめ方を変えた、方位や傾斜を調整した、行間を少し詰めたといった変更があったのに、3Dシーンやモジュールレイアウト、シェーディングファクターテーブルを更新せずに比較すると、どの条件差を見ているのか分からなくなります。公式資料でも、モジュールレイアウトは3D配置とシステム定義が固まった後に扱い、後からこれらを変えた場合は再確認が必要だとされています。([pvsyst.com][6])


もう一つ見落とされやすいのが、年間損失率だけで善し悪しを決めることです。年間では差が小さく見えても、特定季節の朝夕に集中して影が出る設計は、運用上の評価や説明のしにくさにつながることがあります。反対に、見た目に大きな影でも、年間では影響が限定的で、行間拡大による敷地効率低下のほうが不利になることもあります。影解析は、損失をゼロにする作業ではなく、損失と配置効率のバランスを判断する作業だと理解しておくと、設定や結果に振り回されにくくなります。


まとめ

PVSystで影解析を始める前に押さえたい基本は、近傍影と遠方影を切り分けること、簡易評価と3D再現の役割を分けること、線形損失と電気的損失の違いを理解すること、3Dシーンとシステム条件の整合を取ること、そして年間値だけでなく時間帯と季節で結果を読むことの5つです。この5つを先に理解しておけば、PVSystの影解析は難しい機能ではなく、設計判断を支える整理ツールとして使いやすくなります。


そして、影解析の精度はソフト上の操作だけで決まるものではありません。そもそもの架台位置、行間、障害物位置、高さ情報が曖昧であれば、どれだけ丁寧にPVSystを設定しても結果はぶれます。現地の位置関係をできるだけ素早く、かつ精度よく押さえたい場面では、LRTKのようなiPhone装着型GNSS高精度測位デバイスを活用し、架台列や周辺障害物の座標取得を整えておくと、PVSystへ入れる前段の情報品質を上げやすくなります。影解析を正しく進めたいなら、ソフト操作だけでなく、現場で拾うべき情報の質にも目を向けることが大切です。


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