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PVSystの損失率設定で失敗しないための確認6項目

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万能の測量機LRTKの説明

著者: LRTKチーム

PVSystで発電量予測を行うとき、想定より結果が低すぎたり、反対に実績と合わないほど強気な値になったりする原因の多くは、損失率の入れ方にあります。PVSystの公式ドキュメントでも、損失パラメータは最初は妥当な初期値が入っている一方、最初のシミュレーション後に各案件に合わせて丁寧に定義し直すことが推奨されています。しかもPVSystは、入射角補正、汚れ、熱、モジュール品質、ミスマッチ、配線、補機、外部変圧器などを個別に扱うため、単純に「安全側だから」と一律で損失を盛ると、かえって予測の整合性を崩しやすくなります。 ([PVsyst][1])


損失率設定で本当に大切なのは、数字を大きめに置くことではありません。どの損失がどこで計算され、何と重なり、どの範囲の発電量を評価しているのかを整理したうえで、案件条件に沿って置き場所を決めることです。この記事では、PVSystで損失率設定を行う実務担当者が、見積段階でも詳細設計段階でも押さえておきたい確認ポイントを6つに整理して解説します。 ([PVsyst][1])


目次

PVSystの損失率設定が発電量予測を左右する理由

確認1 損失の置き場所を整理して二重計上を防ぐ

確認2 配線損失は率の数字だけで決めない

確認3 温度損失は架台条件と通風条件に合わせる

確認4 汚れ損失は年間固定ではなく月別で考える

確認5 モジュール品質とミスマッチを別物として扱う

確認6 稼働停止と補機負荷の範囲を明確にする

損失率設定を見直す実務手順

まとめ


PVSystの損失率設定が発電量予測を左右する理由

PVSystの損失設定が難しいのは、損失が一か所にまとまっているようで、実際には発電の流れの途中ごとに意味が分かれているからです。日射がモジュール面に届く前後で効く損失もあれば、モジュールの温度上昇で効く損失もあり、配線抵抗のように電流や運転点に応じて変わる損失もあります。PVSystはこれらを「Array and system losses」として細かく分けて扱い、結果はLoss Diagramや時系列結果で確認できるようになっています。そのため、雑に一括補正すると、物理的な意味と計算上の位置がずれ、どこで発電量が落ちたのかが見えなくなります。 ([PVsyst][1])


とくに実務では、営業段階の概算、基本設計段階の比較、詳細設計段階の確定値、運転開始後の実績照合で、求められる精度と説明責任が変わります。概算では初期値を使う場面もありますが、案件を前に進めるほど「なぜその損失率なのか」を説明できなければなりません。PVSyst自体も、初回シミュレーションのあとに各損失を案件仕様に合わせて定義し直す流れを前提にしているため、損失率は最後まで初期値のままにするものではなく、条件が固まるほど根拠を強くしていくべき入力項目です。 ([PVsyst][1])


確認1 損失の置き場所を整理して二重計上を防ぐ

最初に確認したいのは、損失をどこに置くべきかです。PVSystは、入射角補正、汚れ、照度、熱、LID、モジュール品質、ミスマッチ、DC配線、AC配線、外部変圧器、補機消費などを個別の項目として扱います。つまり、同じ現象を複数の項目に重ねて入れると、計算上は別々の損失として積み上がってしまいます。実務でありがちなのは、汚れを月別で入れているのに、さらに「安全率」として別の不明確な損失を足すケースや、ミスマッチを設定したうえで、影の不均一や汚れムラまでまとめて別の定数損失にしてしまうケースです。こうした入れ方は、保守的に見えても、根拠の説明ができず、案件比較でも再現性を失います。 ([PVsyst][1])


PVSystの説明では、汚れは別の損失として扱われ、部分影による電気的影響は近傍遮蔽やモジュールレイアウト側で評価されます。また、ミスマッチの原因の一部には不均一な汚れや部分影も含まれますが、それぞれ計算の持ち場が異なります。したがって、「何をどこで表現するか」を案件ごとに最初に決める必要があります。たとえば、近傍遮蔽物を3Dやレイアウトで評価しているなら、その影響をさらに大きな定数損失で上乗せしないことが基本です。損失率設定で失敗しない担当者ほど、数字を増やす前に、損失の置き場の重複を消しています。 ([PVsyst][2])


さらに見落としやすいのが補機負荷です。PVSystの公式ドキュメントでは、補機に伴う損失が変換効率にすでに含まれている場合、それを別途Auxiliary lossとして再定義すると二重計上になると明記されています。インバータ側の定義とDetailed Losses側の設定が食い違うと、担当者自身もどちらで損失を持たせたのか分からなくなりやすいため、補機、夜間消費、PCS周辺機器の扱いは早い段階でルール化しておくべきです。 ([PVsyst][3])


確認2 配線損失は率の数字だけで決めない

配線損失は、実務で最も「数字だけが独り歩きしやすい」項目です。PVSystでは、配線損失の本質的なパラメータは抵抗値であり、損失率のパーセント表示はあくまで便宜的な入力方法です。公式ドキュメントでも、損失率は実際の電力に比例して変わるため、信頼できる単独パラメータではないと説明されています。さらに、年間結果としての配線エネルギー損失は、指定した名目損失率そのものにはならず、年間では通常、指定した名目損失率の約60%程度になることが多いとされています。つまり、配線損失を「毎年ずっと2%落ちる」という固定イメージで扱うと、評価を誤りやすいのです。 ([PVsyst][4])


この点を理解していないと、例えば見積段階でDC配線損失を2%、AC配線損失を1%と一律に置いたあと、詳細設計段階でもそのまま確定値として流用してしまいます。しかし実際には、損失はケーブル長、断面積、回路構成、ストリング電流、MPPT構成で変わります。大規模案件ではストリングごとの長さ差が出やすく、電気的には単純な配線抵抗の問題だけでなく、ストリング間の電圧差やミスマッチの話にもつながります。したがって、初期段階では仮の損失率入力でもよいのですが、確定に近づくほど、系統図やレイアウトから実長ベースで抵抗を見積もる考え方へ移す必要があります。 ([PVsyst][5])


また、配線損失はどの基準点からどこまでを含むのかも重要です。PVSystはDC側とAC側を分けて扱い、必要に応じて外部変圧器損失まで別立てで表現できます。ここを曖昧にしたまま「総配線損失」で一括管理すると、社内資料、顧客説明資料、PVSyst入力値の間で定義がずれます。損失率を安全側にするより先に、DC、AC、変圧器、売電点までのどこを含める数字なのかを明確にした方が、予測の信頼性は大きく上がります。 ([PVsyst][1])


確認3 温度損失は架台条件と通風条件に合わせる

温度損失も、数字を流用しやすい一方で、実案件との差が出やすい項目です。PVSystでは、アレイの熱挙動を表すために、熱損失係数Uを用いたモデルが使われています。公式チュートリアルでは、UはUcとUv×風速で表されるものの、風速データが気象データとして十分に定義されていないことが多く、Uv自体もよく分かっていないため、実務上は風依存を使わずUvを0にして、平均的な風の影響をUcに含めることが推奨されています。つまり、風の設定を細かく入れた方が高度に見えても、根拠が薄ければ精度向上につながるとは限りません。 ([PVsyst][6])


さらに重要なのは、Ucの意味を架台条件と結びつけて考えることです。PVSystは、完全に開放された通風条件ではUcの目安を29 W/m²K、背面が断熱されるような一体化条件では15 W/m²Kと示しており、中間的な条件については一律の確立値がないことも説明しています。これは、同じ出力容量、同じモジュールでも、地上設置の開放架台なのか、屋根面近接なのか、背面の通風がどれだけ確保できるのかで、温度損失の置き方が大きく変わるという意味です。過去案件のUc値を流用する場合でも、構造、離隔、背面空間、風の抜け方が似ているかを確認しなければ、設定だけが独り歩きします。 ([PVsyst][6])


また、PVSystの熱モデルでは、最終的に実システムデータに合わせてU値を調整していく考え方が示されています。したがって、発電量予測を目標値に合わせるためだけにUcを触るのは避けたいところです。温度損失は、現場条件に基づく説明が可能な数字にするべきであり、「結果が低すぎたからUcを上げる」「高すぎたからUcを下げる」という合わせ込みに使うと、他の損失項目との整合性が崩れます。温度損失を疑うときほど、架台条件と通風条件に立ち返ることが先です。 ([PVsyst][7])


確認4 汚れ損失は年間固定ではなく月別で考える

汚れ損失は、現地実態とのズレが最も出やすい項目の一つです。PVSystの公式ドキュメントでは、汚れ損失は降雨に強く依存するため、月別値で定義できるようになっており、シミュレーション上は日射損失として扱われます。さらに、積雪は気象データに含まれていないため、雪の影響が重要な地点では、特定月に部分的または全面的な汚れ減衰として表現する考え方が示されています。これは裏返すと、年間一律の固定値だけで汚れを扱うと、乾燥期の悪化、雨季の回復、降雪期の大きな減衰といった季節差を捨ててしまうことを意味します。 ([PVsyst][8])


実務では、同じ敷地でも、海岸近接、農地隣接、未舗装路の多さ、造成直後の粉じん、交通量、洗浄体制の有無で汚れの出方が変わります。にもかかわらず、「汚れ損失は毎年3%」のような社内標準値をそのまま入れると、実際の季節変動を表現できません。重要なのは、汚れを単なる保険の数字ではなく、降雨と洗浄の運用を反映した月別の仮説として置くことです。そうすれば、後から実績照合をしたときも、どの季節にズレたのかを追いやすくなります。 ([PVsyst][8])


また、雪の影響がある地点では、積雪を汚れとして扱うのか、停止期間として扱うのか、あるいは運用側の除雪前提をどう織り込むのかも整理が必要です。ここが曖昧なまま、汚れ損失にも停止損失にも同じ冬季影響を入れてしまうと、やはり二重計上になります。月別の汚れ設定は面倒に見えますが、実務上は、年間固定値よりむしろ説明しやすい入力方法です。現地写真、周辺環境、洗浄計画、季節要因と結びつけて考えると、損失率に根拠が生まれます。 ([PVsyst][8])


確認5 モジュール品質とミスマッチを別物として扱う

モジュール品質損失とミスマッチ損失を混同しないことも重要です。PVSystでは、Module quality lossは、実際のモジュール性能が公称仕様に対してどの程度だと見込むかを表すパラメータとして扱われます。しかも初期値は、モジュールの公称出力公差に基づいて設定され、正方向選別が強い場合には負の損失、つまりゲインになることさえあります。さらにこの値は、シミュレーション全体に対して一定割合で効く定数損失です。つまり、これは「仕様書の名目値に対して、実際の初期性能をどう見るか」の話であって、配線や影や温度で起きるばらつきとは別のものです。 ([PVsyst][9])


一方のミスマッチ損失は、モジュール間やストリング間のばらつきによって、合成されたI-V特性の最大出力点が単純和より下がる現象です。PVSystのドキュメントでは、分散が2%未満なら損失は0.5%未満と低い一方、分散が大きくなると急速に増えること、そしてデフォルト値はあくまで案件ごとに調整すべきものだと説明されています。通常のストリング長ではデフォルト上限を2%としているため、ここにさらに大きな“念のため損失”を別名で上乗せすると、過度に保守的な予測になりやすくなります。 ([PVsyst][10])


この二つを実務で切り分けるなら、モジュール品質損失は調達仕様、公差、選別方針、受入品質の考え方と結びつけ、ミスマッチはストリング構成、ロット混在、交換品混在、汚れムラ、温度ムラ、部分影リスクと結びつけて考えるのが基本です。モジュール品質で安全率を持たせ、ミスマッチでも安全率を持たせ、さらに名称のない予備損失を追加するような入れ方は、数字の積み重ねとしては簡単でも、説明責任の面では弱くなります。PVSystで信頼される予測を作るには、損失の意味ごとに担当部署の情報をつなぎ直すことが欠かせません。 ([PVsyst][9])


確認6 稼働停止と補機負荷の範囲を明確にする

発電量予測で最後に効いてくるのが、稼働停止や補機消費の扱いです。PVSystでは、System unavailabilityを時間割合や日数として定義でき、その期間はシミュレーション上でシステムが停止扱いになります。保守停止や故障停止を予測に織り込むには有効ですが、これはあくまで「その期間は発電しない」という表現です。したがって、PCSや受変電設備の一時停止、計画点検、連系制約、外部要因による停止をここで持つのか、別の契約上の可用率前提として外だしするのかを最初に決める必要があります。 ([PVsyst][11])


補機消費についても同様です。PVSystでは、補機消費はDetailed Lossesでシステム全体に対して定義され、チェックを入れたときだけシミュレーションに反映されます。内容としては、ファン、空調、電子機器、照明などの管理用エネルギーが想定されており、昼夜で別の考え方を取ることも可能です。つまり、売電点でのネット出力を見たいのか、アレイやインバータの変換後の理論出力を見たいのかで、ここに入れるべき範囲が変わります。評価対象が曖昧なまま補機と停止を盛り込むと、社内では妥当でも、顧客や融資側の期待値とずれることがあります。 ([PVsyst][12])


実務では、損失率設定表を作るときに、「物理損失」「運用損失」「停止損失」「売電点以降の損失」を分けておくと混乱しにくくなります。PVSystに入れる前に分類しておけば、比較表でも説明しやすく、案件途中で前提が変わっても修正箇所が見えます。損失率設定が複雑になる案件ほど、数字を増やすのではなく、範囲を分けることが精度向上につながります。 ([PVsyst][1])


損失率設定を見直す実務手順

損失率設定を見直すときは、いきなり個々の数字を触るより、まずLoss Diagramでどの段階の落ち込みが大きいかを確認するのが近道です。PVSystは各損失の結果を時系列や月別でも追えるため、年間合計だけでなく、どの月に、どの損失が、どれだけ効いているかを確認できます。そこで、配線が大きいのか、熱が大きいのか、汚れの季節差が効いているのかを把握し、次に各項目の根拠資料を見直す流れにすると、修正の優先順位が見えます。最初からすべてを詳細化しようとすると手間ばかり増えるため、Loss Diagramを入口にして、影響の大きい項目から案件条件に寄せていく考え方が実務向きです。 ([PVsyst][13])


見直しの順序としては、まず初期値ベースの基準ケースを残し、そのうえで配線、温度、汚れ、品質、ミスマッチ、停止の順に根拠付きの値へ差し替える方法が分かりやすいです。こうしておけば、どの修正がどれだけ年発電量に効いたかを後から説明できます。さらに、案件比較や社内承認では、確定値だけでなく感度ケースを持っておくと便利です。たとえば汚れ洗浄頻度を変えたケース、Ucを架台条件ごとに分けたケース、停止日数を見直したケースを並べれば、数字の背景が見えやすくなります。PVSystは損失の種類を細かく分けているからこそ、感度分析にも向いています。 ([PVsyst][1])


もう一つ実務で気をつけたいのは、ソフトの版違いです。PVSystのリリースノートには、旧版で計算した案件をVersion 8で扱う際に、IAMやsoilingのLoss Diagram表示に関する不具合修正が記載されています。古い案件を流用して比較するときは、ファイルを開くだけでなく、同じ前提で再計算し、Loss Diagramと主要損失が意図通りかを確認した方が安全です。とくに過去案件のテンプレートを社内標準として使っている場合、損失率だけでなく、結果表示の解釈も含めて点検しておくべきです。 ([PVsyst][14])


まとめ

PVSystの損失率設定で失敗しないためには、損失を大きめに置くことではなく、損失の意味と置き場所を整理することが重要です。配線損失は率の数字だけで判断せず、温度損失は架台条件に合わせ、汚れは月別で考え、モジュール品質とミスマッチは分け、停止や補機は評価範囲を明確にすることが、予測精度と説明責任の両方を高めます。PVSystのLoss Diagramを起点にすれば、どこを見直すべきかが見えやすくなり、実績との差も詰めやすくなります。 ([PVsyst][1])


現地条件の確認や、架台配置、保守動線、周辺地物、洗浄や点検のしやすさを位置情報付きで残しておくと、損失率の根拠づくりはさらに強くなります。発電量予測は机上の数値調整だけでなく、現場条件の記録精度でも差が出ます。そうした現地情報の整理を効率化したい場合には、LRTK(iPhone装着型GNSS高精度測位デバイス)を活用し、設置条件や周辺状況を後から見返せる形で残しておくのも有効です。


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