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敷地境界の隣地所有者が不明なときの確認方法5選

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万能の測量機LRTKの説明

著者: LRTKチーム

敷地境界を確認したい場面で、隣地所有者がすぐに分からないことは珍しくありません。相続登記や住所変更登記が反映されていない土地、長期間使われていない土地、共有者が多い土地、道路や水路のように民有地と公共用地が入り組む土地では、現地を見ただけでは誰に連絡すべきか判断できないことがあります。


ただし、隣地所有者が不明だからといって、敷地境界の確認をあいまいなまま進めるのは危険です。建築計画、外構工事、造成、売買、分筆、復元測量、越境物の整理などでは、境界の位置と関係者の確認が後工程に大きく影響します。とくに実務では、現地の塀やフェンス、側溝、植栽、古い杭だけを根拠に境界を判断してしまうと、あとから隣地関係者との認識違いが発覚し、手戻りや協議のやり直しにつながるおそれがあります。


この記事では、「敷地 境界」で調べている実務担当者に向けて、隣地所有者が不明なときに確認すべき基本的な方法を5つに整理します。ここでいう「所有者が不明」とは、登記や現地確認の初期段階で連絡すべき相手がすぐに特定できない状態を想定しています。どの方法も単独で結論を出すためのものではなく、登記資料、現地状況、過去資料、行政情報、専門家の確認を組み合わせて、境界確認の相手方と進め方を安全に絞り込むための考え方です。


目次

登記情報から隣地の筆と名義人を確認する

公図や地積測量図で境界に関係する土地を整理する

現地状況から利用者や管理者の手がかりを確認する

自治体や道路水路の管理部署に相談する

専門家に依頼して所在確認と境界確認を進める

所有者不明時に避けたい判断と記録の残し方

まとめ


登記情報から隣地の筆と名義人を確認する

隣地所有者が分からないとき、最初に行いたい確認は登記情報の確認です。敷地境界の相手方を探す実務では、現地で見えている土地の使われ方だけで判断するのではなく、まず隣接する土地が登記上どの筆に該当するのかを整理する必要があります。見た目では一体の敷地に見えても、登記上は複数の筆に分かれていることがあります。反対に、現地では別々に使われているように見えても、登記上は一筆の土地として扱われている場合もあります。


登記情報では、土地の所在、地番、地目、地積、所有者として登記されている名義人、共有の有無などを確認します。ここで注意したいのは、登記名義人が現在の実際の権利関係者と必ず一致するとは限らない点です。相続が発生しているのに登記が完了していない土地や、住所変更が登記に反映されていない土地では、登記情報だけで連絡先まで確定できないことがあります。そのため、登記情報は最終結論ではなく、確認作業の出発点として扱うのが安全です。


実務では、対象敷地の地番だけでなく、境界を接する可能性がある周辺地番も確認します。境界確認の対象が一辺だけに見える場合でも、角地や細長い残地、道路状の土地、水路敷、里道のような土地が介在していることがあります。現地で「隣の家」と思っていた相手が、登記上は直接の隣接地ではない場合もあります。したがって、敷地の周囲を一筆ずつ確認し、どの筆がどの境界線に接しているのかを図面上で整理することが重要です。


登記情報を確認するときは、所有者名だけを拾って終わりにしないことも大切です。共有名義になっている場合は、共有者全員が境界確認に関係する可能性があります。法人名義の場合は、登記上の所在地や現在の実態を別途確認する必要があります。登記名義人が亡くなっている可能性がある場合や、住所地に郵送しても戻ってくる場合には、相続人や現在の連絡先を確認する作業が必要になることがあります。ここで無理に担当者だけで追い切ろうとすると、個人情報の扱い、調査権限、代理権の面で問題が出る場合があるため、早い段階で専門家へ引き継ぐ判断も必要です。


また、登記情報の地積は、必ずしも現地の実測面積と一致するとは限りません。古い測量成果に基づく土地や、過去の分筆経緯が複雑な土地では、地積だけを根拠に境界位置を推定することはできません。敷地境界の確認では、所有者の手がかりを得る資料として登記情報を使い、そのうえで公図、地積測量図、現地の境界標、過去の立会記録などと照合していく流れが基本になります。


隣地所有者が不明な状態で最も避けたいのは、「登記情報に新しい名前がないから確認できない」「近隣の人がそう言っていたからその人が所有者だろう」といった早い判断です。登記情報は確認の入口であり、そこから関係する土地と登記名義人を客観的に整理することで、次に調べるべき資料や相談先が見えてきます。実務担当者は、まず対象敷地の周囲の地番、名義人、共有者、登記上の住所、地目、地積を一覧化し、どの境界線について誰の確認が必要になりそうかを落ち着いて整理するとよいです。


公図や地積測量図で境界に関係する土地を整理する

登記情報で隣接地の名義人を確認したら、次に公図や地積測量図などの図面資料を確認します。敷地境界の実務では、所有者名だけを追うのではなく、どの土地がどの線で接しているのかを把握することが欠かせません。隣地所有者が不明な場合ほど、図面上の土地関係を整理しておかないと、連絡すべき相手を取り違えたり、本来確認すべき土地を見落としたりするおそれがあります。


公図は、土地の位置関係や地番の並びを把握するために使います。ただし、公図は現地の正確な測量図とは限らず、地域や作成経緯によって精度に差があります。そのため、公図上で隣接して見えるからといって、すぐに境界位置を断定するのは避けるべきです。公図は、どの地番が周囲に存在するのか、道路や水路のような土地が介在していないか、細い筆や不整形な筆がないかを確認するための資料として使うのが現実的です。


地積測量図がある場合は、さらに具体的な確認ができます。地積測量図には、土地の形状、辺長、座標値、求積方法、境界点の位置関係などが記載されていることがあります。とくに分筆や地積更正が行われている土地では、過去の測量成果が境界確認の重要な手がかりになります。ただし、地積測量図が存在していても、それが最新の現地状況と一致するとは限りません。境界標が移動している場合、工事で失われている場合、隣接地側で造成や外構変更が行われている場合などは、図面と現地の照合が必要です。


隣地所有者が不明なときは、対象敷地だけでなく隣接地側の地積測量図の有無も確認する価値があります。自分の敷地に関する資料だけでは境界の片側しか分からないことがありますが、隣地側の分筆図や測量成果に境界点の情報が残っている場合があります。複数の図面を照合することで、同じ境界点がどのように扱われてきたのか、過去に立会いが行われた可能性があるのか、どの関係者が境界確認に関与していたのかを推測しやすくなります。


また、建築確認や開発、造成、外構、道路後退、分筆などの過去資料が残っている場合は、それらも合わせて確認します。過去の配置図や求積図、境界確認書、立会記録、筆界確認に関する書面、測量会社が作成した成果図などがあれば、隣地所有者を探すうえで手がかりになることがあります。ただし、古い資料に記載された所有者名や住所は現在の情報とは限らないため、そのまま連絡先として使うのではなく、登記情報や専門家の確認と照合して扱う必要があります。


図面資料の整理では、境界線ごとに関係する土地を分けて考えることが大切です。北側境界、西側境界、道路側境界、奥の細い筆との境界など、境界線ごとに相手方が異なる場合があります。現地では一つの隣地に見えても、登記上は複数の所有者が関係していることがあります。反対に、道路や水路、法面、通路状の土地を挟んでいるため、目の前の利用者が直接の境界相手ではないこともあります。


この段階で作成しておきたいのは、地番、登記名義人、図面上の接続関係、現地での見え方、確認済み資料、未確認事項をまとめた作業メモです。複雑な土地ほど、頭の中だけで整理すると抜けが出ます。資料ごとに情報が少しずつ異なる場合もあるため、どの情報がどの資料に基づくものかを区別しておくと、後から専門家や行政担当者に相談するときにも説明しやすくなります。


公図や地積測量図は、隣地所有者を直接見つける資料ではない場合もあります。しかし、境界に関係する土地を間違えないための地図として重要です。所有者が不明なときほど、まず土地の関係を正しく把握し、確認対象を広げすぎず、かつ必要な相手を漏らさないように整理することが、後の協議を安全に進める土台になります。


現地状況から利用者や管理者の手がかりを確認する

資料確認と並行して、現地状況の確認も欠かせません。登記情報や図面だけでは、実際に土地を利用している人、管理している人、連絡先の手がかりまでは分からないことがあります。とくに空き地、空き家、駐車場、資材置場、農地、山林、長期間管理されていない土地では、登記名義人と現地の利用者が異なることもあります。敷地境界の確認では、所有者を探すためだけでなく、現地の境界標や越境物、利用状況を把握するためにも現地調査が重要です。


現地では、まず境界付近の状態を丁寧に観察します。境界標、杭、鋲、プレート、石標、ブロック塀、フェンス、側溝、擁壁、植栽、建物の外壁、雨樋、配管、舗装の切れ目など、境界に関係しそうな要素を確認します。ただし、これらは境界そのものを示すとは限りません。古い塀が境界線上にあるとは限らず、フェンスが敷地内に控えて設置されている場合もあります。側溝や擁壁も、所有区分や管理区分と一致しないことがあります。そのため、現地の構造物は参考情報として記録し、登記資料や測量成果と照合する前提で扱います。


次に、隣地の利用状況を確認します。人が住んでいる住宅なのか、空き家なのか、月極のような駐車場なのか、事業用地なのか、農地として使われているのかによって、連絡の取り方や確認すべき相手が変わります。表札、郵便受け、管理看板、連絡先表示、近隣の聞き取りで得られる情報などが手がかりになることがあります。ただし、個人情報の扱いには注意が必要です。近隣から聞いた話は確認済みの情報ではなく、あくまで調査の手がかりとして扱うべきです。


現地で近隣住民に確認する場合は、目的を明確にし、必要以上の個人情報を尋ねないことが大切です。「境界確認のために隣接地の管理者を探している」「正式な確認は資料に基づいて行う」という姿勢を保ち、うわさ話や過去のトラブルに深入りしないようにします。近隣の人が「その土地は昔から誰々さんのものだ」と言っても、相続や売買、共有関係が変わっている可能性があります。聞き取り情報は、登記情報や専門家による調査と照合して初めて実務上の判断材料になります。


空き家や空き地の場合は、管理している不動産関係者、親族、町内の関係者、農地の耕作者などが存在することがあります。ただし、利用者や管理者が分かったとしても、その人が境界確認に同意できる権限を持っているとは限りません。賃借人や管理者は現地の状況をよく知っている場合がありますが、所有者本人や正当な代理権を持つ人とは限らないため、境界確認の相手方として扱えるかどうかは慎重に見極める必要があります。


現地確認では、写真記録を残すことも重要です。境界標の有無、構造物の位置、隣地の利用状況、道路や水路との接続、越境の可能性がある箇所、立入りが困難な箇所などを、日付と撮影位置が分かる形で残します。あとから関係者と協議するとき、現地の状態が変わってしまうこともあります。工事前、草刈り前、解体前、造成前の状況を記録しておくことで、境界確認の経緯を説明しやすくなります。


また、現地に入る範囲にも注意が必要です。隣地所有者が不明だからといって、無断で隣地へ立ち入って詳細に確認することは避けるべきです。道路や自分の敷地側から確認できる範囲を基本とし、立入りが必要な場合は、所有者や管理者、正当な権限を持つ関係者の承諾を得る必要があります。境界確認を進めたい側の都合だけで動くと、後から不信感を持たれる原因になります。


現地状況の確認は、所有者を特定する決定打にならないこともあります。しかし、資料だけでは分からない実態を把握し、どの方向から調査すべきかを判断するためには欠かせない作業です。登記上の名義人、図面上の隣接関係、現地の利用者、管理者らしき人物、境界標の状態を分けて整理することで、次の相談先や専門家への依頼内容が明確になります。


自治体や道路水路の管理部署に相談する

敷地境界の相手方が民有地だけとは限らない場合は、自治体や公共用地の管理部署への確認も必要です。道路、里道、水路、法定外公共物、公共施設用地、公園、排水路などが敷地に接している場合、隣地所有者を個人として探すのではなく、管理者や所管部署を確認する必要があります。現地で道路のように見える場所でも、登記上の道路、私道、公共管理の道路、共有通路など、扱いが異なることがあります。


道路境界や水路境界が関係する場合は、民地同士の境界確認とは進め方が変わります。官民境界の確認が必要になる場合、所管する行政機関への申請や立会いが必要になることがあります。道路台帳、境界確定図、用地図、過去の境界協議記録、道路幅員に関する資料などが存在する場合もあります。実務担当者は、現地が道路や水路に接しているからといって、現地の舗装端や側溝端をそのまま境界と考えるのではなく、管理資料の有無を確認する意識が必要です。


自治体に相談するときは、対象地の地番、位置図、公図、現地写真、相談したい境界の位置を整理しておくと話が進みやすくなります。単に「隣地所有者が分からない」と伝えるだけでは、担当部署も判断しにくい場合があります。どの土地との境界なのか、道路や水路が介在しているのか、建築や工事の予定があるのか、境界確認書や過去図面を探しているのかを明確にして相談することが大切です。


自治体の部署は、道路、河川、水路、農地、建築、都市計画、固定資産、空き家対策などに分かれていることがあります。すべての部署が所有者情報を自由に開示できるわけではありませんが、公共用地の管理者や手続きの窓口を確認できる場合があります。空き家や管理不全土地に関する相談窓口が設けられている地域もあり、境界確認そのものの代理はしてもらえなくても、適切な相談先や必要な手続きの方向性を教えてもらえることがあります。


ただし、自治体に相談すれば隣地所有者の連絡先を必ず教えてもらえる、という考え方は危険です。個人情報の扱いには制限があり、担当部署が把握している情報であっても、第三者へ簡単に提供できない場合があります。固定資産に関する情報も、誰でも自由に確認できるものではありません。そのため、自治体への相談は、所有者の個人情報を直接取得するためというより、公共用地の管理関係、手続きの要否、過去の境界資料の有無、適切な専門家への相談の必要性を確認するためのものと考えるのが現実的です。


農地や山林が隣接している場合も、行政窓口への確認が役立つことがあります。農地として使われている土地では、耕作者と所有者が異なることがあります。山林や法面では、見た目の利用状況だけでは所有関係が分かりにくいことがあります。地域によっては、土地改良区、農業関係の窓口、森林関係の窓口などが関係する場合もあります。ただし、これらも境界の確定や所有者の確定を代わりに行うものではないため、資料確認と専門家調査と組み合わせることが大切です。


建築確認や開発許可、造成、道路後退が関係する場合は、建築や都市計画の担当部署に相談する場面もあります。計画地の接道条件、道路種別、後退の有無、過去の協議履歴などが境界確認の進め方に影響することがあります。隣地所有者が不明なまま配置計画や外構計画を固めてしまうと、後から境界位置や道路関係の認識違いが発覚し、計画変更が必要になることがあります。早い段階で行政資料の有無を確認することで、後工程のリスクを減らせます。


自治体や管理部署への相談では、回答内容を記録しておくことも重要です。相談日、部署名、担当者、確認した内容、案内された資料、今後必要な手続きなどをメモしておきます。口頭で聞いた内容をそのまま判断根拠にするのではなく、正式な資料や申請が必要かどうかを確認する姿勢が大切です。境界に関する問題は、後から「誰が、いつ、どの資料に基づいて判断したのか」が問われやすいため、相談の経緯を残すことが実務上の防御にもなります。


専門家に依頼して所在確認と境界確認を進める

登記情報や現地確認、行政相談を行っても隣地所有者が特定できない場合、または特定できても連絡が取れない場合は、早めに専門家へ相談することが現実的です。敷地境界の確認では、土地家屋調査士、司法書士、弁護士など、状況に応じた専門家の関与が必要になることがあります。実務担当者だけで調査を進めようとすると、調査権限、個人情報、相続関係、代理権、境界確認書の扱いなどで判断を誤るおそれがあります。


土地家屋調査士は、土地の境界や測量、表示に関する実務で関与することが多い専門家です。境界標の確認、復元測量、隣接地との立会い、境界確認書の作成、分筆や地積更正に関する手続きなどで相談先になります。隣地所有者が不明な場合でも、どの資料を確認すべきか、どの土地の関係者に立会いを求めるべきか、現地の境界標をどのように扱うべきかについて、実務的な整理をしてもらえる場合があります。


司法書士は、相続や登記名義、住所変更、法人登記などが関係する場面で相談先になります。登記名義人が亡くなっている可能性がある場合、相続人が多数いる場合、住所変更が追えない場合、法人が移転や解散をしている可能性がある場合などは、登記や相続関係の確認が必要になります。境界確認の相手方を決めるには、誰が現在の権利関係者なのかを整理する必要があり、測量だけでは解決できないことがあります。


弁護士は、所有者不明、相続人間の対立、境界紛争、越境物の撤去、立会い拒否、連絡不能、共有者の一部が応じない場合など、法的な判断や紛争対応が必要な場面で相談先になります。境界確認は単なる現地作業ではなく、権利関係と関係者間の合意が関わる作業です。話し合いで進められない場合や、手続きの選択肢を慎重に判断すべき場合は、早めに法的な助言を受けることで、無理な進行を避けられます。


専門家に依頼する前には、手元の資料を整理しておくと効率的です。対象地の登記情報、公図、地積測量図、現地写真、過去の測量図、建築図面、境界確認書、行政との相談メモ、近隣から得た手がかりなどをまとめておきます。資料が不足していても相談はできますが、何を確認済みで、何が未確認なのかが分かるほど、専門家は次の調査方針を立てやすくなります。


専門家へ依頼する際は、「隣地所有者を探してほしい」という漠然とした依頼だけでなく、目的を明確に伝えることが大切です。建築計画のために敷地境界を確認したいのか、売買前に越境の有無を整理したいのか、分筆のために隣接地立会いが必要なのか、外構工事前にトラブルを避けたいのかによって、必要な確認範囲や進め方が変わります。目的が明確であれば、どこまで調査するべきか、どの段階で立会いを求めるべきか、どの関係者へ説明するべきかも整理しやすくなります。


また、専門家に任せる場合でも、実務担当者が現場の経緯を把握しておくことは重要です。専門家が作成した成果や助言を、社内の設計、施工、営業、管理部門へ正しく伝える必要があるからです。境界確認の結果は、配置計画、仮設計画、重機動線、資材置場、外構ライン、排水計画、越境物の処理などに影響します。専門家任せにして結果だけ受け取るのではなく、確認の前提、未確定部分、注意点を社内で共有できる状態にしておくことが大切です。


隣地所有者が不明なケースでは、時間がかかることもあります。相続人の確認が必要な場合、共有者が多い場合、遠方に住む関係者がいる場合、法人や公共用地が関係する場合などは、短期間で全員の確認が取れないこともあります。工事や契約の直前になってから調査を始めると、スケジュール全体に影響が出やすくなります。境界確認が必要になりそうな案件では、できるだけ早い段階で所有者確認を始めることが、実務上の大きなリスク回避になります。


所有者不明時に避けたい判断と記録の残し方

隣地所有者が不明なときほど、急いで結論を出したくなる場面があります。工事開始日が迫っている、建築計画を早く固めたい、売買契約の準備が進んでいる、施主や発注者から早い回答を求められているなど、実務では時間の制約が常にあります。しかし、敷地境界に関する確認を省略すると、後から大きな手戻りにつながります。所有者不明時に大切なのは、分からないことを分からないまま放置するのではなく、確認済みの情報と未確認の情報を分けて管理することです。


避けたい判断の一つは、現地の見た目だけで境界を決めてしまうことです。塀があるからそこが境界、側溝の端があるからそこが境界、昔からその線で使っているから境界、という判断は危険です。構造物は、所有者の都合で内側に控えて設置されていることもありますし、古い施工時に境界とずれて設置されていることもあります。境界標が見つかった場合でも、それが現在も有効な位置を示しているのか、移動していないのか、どの測量成果に基づくものなのかを確認する必要があります。


次に避けたいのは、利用者と所有者を混同することです。現地を使っている人が、必ずしも所有者とは限りません。賃借人、管理会社、親族、耕作者、近隣の一時利用者など、所有権を持たない人が土地を管理していることがあります。境界確認の説明や現地案内では有力な協力者になることがありますが、境界確認書に署名できる立場かどうかは別問題です。関係者の立場を確認せずに進めると、後から正式な所有者や相続人から異議が出る可能性があります。


また、登記名義人の住所に連絡したが返答がない、郵便が戻ってきた、近隣でも分からないという段階で、確認不能と決めつけるのも早すぎます。所在不明の背景には、住所変更未了、相続登記未了、転居、施設入所、法人の移転、共有者の一部不明など、さまざまな事情があります。実務担当者ができる範囲と専門家が調査できる範囲は異なるため、一定の段階で専門家へ相談することで、次に取れる手段が見えてくる場合があります。


境界に関する用語の扱いにも注意が必要です。登記上の土地の区画である筆界と、当事者間の利用状況や所有権の範囲として意識されている線が、実務上同じように語られてしまうことがあります。一般向けの会話ではどちらも「境界」と呼ばれますが、資料確認や専門家相談では何を確認したいのかを明確にする必要があります。筆界の確認、所有権界の整理、越境物の扱い、施工範囲の確認を混同しないことが、安全な進行につながります。


記録の残し方も重要です。隣地所有者が不明な案件では、後から確認経緯を説明する場面が出やすくなります。どの資料を取得したのか、どの地番を確認したのか、どの部署に相談したのか、現地で何を確認したのか、誰からどのような話を聞いたのか、どの専門家に何を依頼したのかを時系列で残しておくと、社内外への説明がしやすくなります。記録がないと、確認したつもりでも後から再調査が必要になり、同じ作業を繰り返すことになります。


記録では、事実と推測を分けることが大切です。「登記情報では名義人がこの人物である」「現地には管理看板がある」「近隣住民から親族らしき人の話を聞いた」「専門家へ相続関係の確認を依頼中である」というように、根拠の種類を分けて書きます。「おそらく所有者」「たぶん境界」といった表現だけで社内共有すると、未確定情報が確定情報のように扱われる危険があります。敷地境界の実務では、あいまいな情報ほど、あいまいであることを明記する姿勢が重要です。


写真や図面への書き込みも有効です。現地写真に撮影方向や確認箇所を記録し、公図や配置図に確認対象の境界線を示しておくと、関係者間の認識を合わせやすくなります。とくに設計担当、施工担当、測量担当、施主、行政、専門家が関わる案件では、同じ「隣地」という言葉でも指している場所が違うことがあります。図面上で対象範囲を共有しておけば、確認漏れや伝達ミスを減らせます。


境界確認が完了していない段階で工事や計画を進める場合は、未確認リスクを明確にしておく必要があります。仮囲い、資材置場、重機動線、掘削範囲、外構施工、排水処理、越境物の撤去などは、境界の認識があいまいなまま進めるとトラブルになりやすい部分です。所有者不明のため確認中である境界線については、施工範囲を控える、仮設物を境界付近に置かない、追加調査後に最終判断するなど、安全側の運用を検討することが大切です。


所有者不明時の実務は、正解を一度で出す作業ではありません。登記情報、図面、現地、行政、専門家の確認を積み上げながら、確定できる部分と未確定の部分を整理していく作業です。だからこそ、記録の質が重要になります。確認した事実を残し、判断の根拠を明確にし、未確認事項を見える化することで、敷地境界に関する後工程のリスクを抑えられます。


まとめ

敷地境界の隣地所有者が不明なときは、焦って現地の見た目や近隣の話だけで判断しないことが大切です。まず登記情報で隣接地の筆と名義人を確認し、公図や地積測量図で土地の位置関係を整理します。そのうえで、現地の利用状況や管理者の手がかりを確認し、道路や水路、公共用地が関係する場合は自治体や管理部署に相談します。相続、住所変更、共有、所在不明、立会い拒否などが絡む場合は、早めに専門家へ依頼して、調査と境界確認の進め方を整えることが重要です。


所有者不明の問題は、単に連絡先が分からないというだけではありません。境界に関係する土地を取り違えないこと、所有者と利用者を混同しないこと、公共用地と民有地の違いを確認すること、未確定の情報を確定情報のように扱わないことが求められます。実務担当者は、確認済みの資料、現地記録、行政相談の結果、専門家への依頼状況を一つずつ整理し、社内外で共有できる形にしておく必要があります。


とくに建築、造成、外構、売買、分筆、復元測量、越境物の整理などでは、境界確認の遅れが後工程全体に影響します。隣地所有者がすぐに分からない場合でも、確認作業を止めるのではなく、どの資料を確認し、どこまで分かっていて、何が未確認なのかを明確にすることが、手戻りを減らす第一歩です。


現地調査や境界確認の記録を効率よく残すには、写真、位置情報、メモ、確認状況を現場で整理できる運用も役立ちます。特定の道具やサービスに頼る前に、まずは資料名、確認日、確認者、根拠、未確認事項を統一した形式で残すことが重要です。敷地境界まわりの情報を後から見返しやすくし、社内共有や専門家への相談資料として活用できる状態にしておけば、所有者不明時の確認漏れや判断の飛躍を防ぎやすくなります。


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