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電線保守にドローン点検を使う前の5つの注意点

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万能の測量機LRTKの説明

著者: LRTKチーム

電線保守では、高所作業車や昇塔、徒歩巡視だけでは確認しにくい箇所を、ドローン点検で効率よく確認できる場面があります。碍子、金具、支持物、樹木との離隔、電線のたるみ、外傷、鳥害、周辺地形の変化などを上空や斜め方向から記録できるため、現場の安全性向上や点検記録の充実につながります。一方で、電線の近くを飛ばす作業は、一般的な空撮とはリスクの質が異なります。飛行ルール、接触や落下のリスク、電気設備としての安全管理、撮影品質、位置情報、作業体制、データ管理までを事前に整理しないまま導入すると、点検効率よりもトラブル対応の負担が大きくなることがあります。


目次

電線保守でドローン点検を使う目的を先に決める

飛行ルールと現場条件を事前に確認する

電線特有の接触・感電・離隔リスクを見落とさない

撮影品質と異常判定の基準をそろえる

位置情報と点検記録を保守業務に残せる形にする

作業体制と現場運用を一回限りで終わらせない

まとめ


電線保守でドローン点検を使う目的を先に決める

電線保守にドローン点検を導入するとき、最初に決めるべきことは「ドローンで何を見たいのか」です。ここが曖昧なまま機体や撮影方法を選ぶと、撮影枚数は増えたのに、保守判断に使える情報が残らないという状態になりがちです。ドローンは便利な道具ですが、万能な点検員ではありません。地上から見えにくい角度を補うのか、接近が危険な場所を遠隔で確認するのか、災害後の広域確認を早めるのか、劣化傾向を時系列で追うのかによって、必要な飛行ルートも撮影距離も記録項目も変わります。


たとえば、電線の保守といっても対象は一つではありません。送電線、配電線、引込線、通信線、架空地線、支持物、腕金、碍子、接続部、支線、開閉器、周辺樹木、道路や建物との離隔など、現場で確認したい対象は多岐にわたります。電線そのものの外観だけを撮るのか、支持物を含めた設備全体を撮るのか、沿線環境の変化まで記録するのかで、点検の意味は大きく変わります。ドローン点検を「電線を撮影する作業」とだけ考えるのではなく、「保守判断に必要な証拠を、どの位置から、どの粒度で、どの頻度で残す作業」と定義することが重要です。


目的を決める際は、異常の種類をあらかじめ分類しておくと実務に落とし込みやすくなります。断線や大きな損傷のように緊急対応が必要なもの、碍子や金具の変形のように詳細確認へ回すもの、樹木接近や鳥の巣のように時期を見て対応するもの、過去写真との比較で進行を確認するものでは、求められる撮影条件が異なります。緊急性の高い異常を見つける目的であれば、撮影後すぐに共有できる運用が必要です。経年変化を追う目的であれば、毎回同じ角度、同じ距離、同じ対象範囲で記録できる再現性が必要です。


また、ドローン点検で「見えるもの」と「見えないもの」を分けておくことも欠かせません。外観のひび、欠け、変色、傾き、樹木との接近、周辺地盤の変化などは画像で把握しやすい項目です。一方で、内部劣化、接触抵抗、電気的な異常、微細な損傷、風による一時的なたるみなどは、撮影だけでは判断できない場合があります。画像で疑いを見つけ、必要に応じて地上確認や詳細点検につなげるという役割分担を明確にしておけば、ドローン点検に過度な期待を持たずに済みます。


導入前には、既存の電線保守フローとの接続も考える必要があります。巡視、定期点検、災害時点検、補修計画、報告書作成、協力会社への依頼、社内承認などの流れの中で、ドローン点検の結果がどこに入るのかを決めておかないと、撮影データが担当者の端末に残るだけで終わってしまいます。保守業務では、撮影できたことよりも、後から誰が見ても「どの設備の、どの位置で、いつ、何が確認されたのか」が分かることが重要です。ドローンを使う目的を先に言語化することで、必要な機材、操縦者、補助者、撮影仕様、データ管理方法を逆算できます。


飛行ルールと現場条件を事前に確認する

電線保守にドローン点検を使う前に、飛行ルールの確認は必ず先に行うべき工程です。日本では、100g以上の無人航空機を屋外で飛行させる場合、原則として機体登録が必要です。登録されていない無人航空機は飛行できない扱いであり、許可や承認が必要な飛行を行う場合にも、まず機体や操縦者、飛行計画に関する条件を整理しておく必要があります。制度は改正されることがあるため、実際の運用前には国土交通省などの最新情報を確認することが前提です。


特に電線保守では、飛行場所が毎回同じとは限りません。山間部、住宅地、道路沿い、河川沿い、工場周辺、鉄道や公共施設の近くなど、現場条件は点検区間ごとに変わります。人口が集中する地域、空港等の周辺、地表または水面から150m以上の空域、緊急用務空域などでは、飛行に許可が必要または飛行が制限される場合があります。緊急用務空域については、他の許可があっても飛行できない扱いになるため、災害後の電線確認では特に注意が必要です。


飛行ルールの確認でありがちな失敗は、「前回飛べたから今回も飛べる」と判断してしまうことです。電線保守の現場は、点ではなく線で広がります。わずか数百メートル移動しただけで、人口集中地区に入ったり、空港周辺の制限にかかったり、道路や住宅、学校、病院、工場などの第三者リスクが高い場所に近づいたりすることがあります。飛行ルート全体で条件を確認し、離着陸地点、操縦者の立ち位置、補助者の配置、第三者の立入管理、緊急着陸場所まで含めて計画する必要があります。


また、電線保守では目視外に近い運用になりやすい点にも注意が必要です。線状設備を追いかける点検では、機体が操縦者から離れやすく、樹木や地形、建物で視界が遮られることがあります。夜間、目視外、人や物件との距離を十分に確保できない飛行などは、条件によって承認が必要となる飛行方法に該当します。飛行前確認、衝突予防、他人に迷惑を及ぼさない飛行といった基本的なルールも、場所に関わらず守る必要があります。


現場条件の確認では、航空法上の手続きだけでなく、土地所有者、施設管理者、道路管理者、河川管理者、自治体、関係する電力・通信設備の管理者との調整も必要になる場合があります。法令上飛行できる空域であっても、離着陸場所として使う土地の許可、周辺住民への説明、作業車両の停車位置、交通誘導、工事中エリアとの重複など、実務上の調整が不足すると現場で止まります。点検当日に「ここから離陸できない」「予定していた立ち位置が使えない」「通行人が多くて飛ばせない」となると、再訪問や再申請の手間が発生します。


天候判断も飛行ルールと同じくらい重要です。電線周辺は風の影響を受けやすく、谷筋、河川沿い、山の稜線、建物の隙間では突風や乱流が起きることがあります。地上では問題なく見えても、電線の高さでは風が強いこともあります。雨、霧、強い逆光、低い雲、降雪、雷の兆候は、映像品質だけでなく安全にも直結します。点検を予定通り終えることより、飛行を中止する判断基準を明確にしておくことが大切です。中止基準が現場任せだと、作業責任者、操縦者、保守担当者の間で判断が揺れます。


事前確認の成果物としては、飛行ルート図、点検対象リスト、離着陸地点、操縦者と補助者の配置、立入管理範囲、緊急時の着陸候補地、連絡体制、撮影対象、撮影順序、飛行中止条件を一つの作業計画にまとめておくとよいです。ドローン点検は「飛ばす技術」だけで成立するものではありません。電線保守の現場では、飛ばす前の段取りが安全と成果物の品質を大きく左右します。


電線特有の接触・感電・離隔リスクを見落とさない

電線保守におけるドローン点検の最大の注意点は、電線そのものが危険源であることです。空撮や屋根点検とは違い、対象物が細く、長く、空中にあり、周辺には支持物、支線、樹木、建物、道路、通信線などが複雑に存在します。機体が少し流されただけでも、電線や支線、樹木の枝に接触する可能性があります。電線に接触すれば、機体の落下、設備損傷、停電、火災、感電、第三者被害につながるおそれがあります。


ドローン点検では、映像上では距離が十分にあるように見えても、実際には奥行きの把握が難しい場面があります。特に電線は細いため、カメラ画面上での見え方と実距離の感覚に差が出やすい対象です。背景が空の場合は電線が見えやすくても、背景が山林や建物になると輪郭が溶け込みます。逆光や薄暮、雨上がりの反射、霧、雪、葉の揺れも見落としの原因になります。操縦者が画面に集中しすぎると、周囲の電線や支線を見失うことがあるため、目視で周辺を監視する補助者の役割が非常に重要です。


離隔管理では、「対象の電線に近づきすぎない」だけでは足りません。撮影したい電線の手前や奥に別の電線がある場合、機体の進行方向と横風の方向によっては、意図しない線に接近します。支持物の周辺には腕金、碍子、引留金具、支線、接地線、標識、鳥害対策部材などがあり、機体のプロペラや脚部が引っかかる可能性があります。樹木に接近した電線を点検するときは、枝の揺れ、葉の密度、枯れ枝の突出、斜面から伸びる樹冠も考慮しなければなりません。


感電リスクについても、安易な判断は禁物です。機体が直接電線に触れない運用であっても、電気設備の近傍で作業する以上、設備条件や環境条件に応じた安全管理が必要です。濡れた環境、強風、塩害地域、粉じん、雷の接近、電気設備の損傷が疑われる状況では、通常より慎重な判断が求められます。電線の種類、電圧、停電の有無、保守区間の切り分け、作業責任者の指示、設備管理者の安全基準に従い、必要であればドローン点検を行わず、別の点検方法に切り替える判断も必要です。


電線付近を飛行する場合は、機体の自動制御に頼りすぎないことも大切です。障害物検知機能があっても、細い電線や斜めに伸びる支線、背景に紛れる枝を常に確実に検知できるとは限りません。自動航行を使う場合でも、事前に安全なルートを確認し、電線との位置関係を把握し、緊急停止や手動介入の手順を決めておく必要があります。自動飛行のルートが地図上では安全に見えても、実際の現場では仮設物、樹木の成長、工事車両、積雪、地形変化によって危険が生じることがあります。


緊急時の対応も事前に決めておくべきです。機体が電線や樹木に引っかかった場合、操縦者や現場作業員が独断で回収しようとするのは危険です。電線に接触した可能性がある場合、落下場所が道路や民地に及ぶ場合、設備損傷が疑われる場合には、設備管理者や関係者への連絡、周辺の立入制限、二次災害防止を優先します。点検作業の計画段階で、事故時の連絡先、現場責任者、通報判断、記録方法を決めておくことで、万一のときに混乱を抑えられます。


電線保守にドローンを使う価値は、高所や危険箇所への接近を減らせることにあります。しかし、そのために機体を危険源へ近づけすぎてしまっては本末転倒です。撮影精度を上げるために近づくのではなく、安全な距離から必要な情報を得る方法を設計することが、電線保守におけるドローン点検の基本です。


撮影品質と異常判定の基準をそろえる

ドローン点検で撮影した画像や動画は、ただきれいに撮れていればよいわけではありません。電線保守で使う記録は、異常の有無を判断でき、過去と比較でき、報告書に使え、必要に応じて補修指示につなげられる品質である必要があります。撮影品質の基準がないまま運用を始めると、担当者によって写真の角度、距離、明るさ、枚数、対象の切り取り方がばらつきます。その結果、後から確認したときに「異常がない」のか「見えるように撮れていない」のか判断できなくなります。


まず決めたいのは、対象ごとの撮影単位です。支持物全景、腕金周辺、碍子、接続部、電線のたるみ、樹木との接近、道路横断部、建物近接部など、設備ごとに必要な写真の粒度を定義します。全景写真は位置関係を把握するために有効ですが、細部の劣化判定には不十分です。逆に細部写真だけでは、どの支持物のどの方向から撮ったものか分からなくなることがあります。全景、近景、異常箇所の詳細、周辺環境の順に記録するなど、撮影の型を決めておくと、現場ごとの差を抑えられます。


次に、撮影方向をそろえることが重要です。電線や支持物は立体的な設備であり、一方向からの写真だけでは見えない面があります。太陽の向き、背景、風による揺れ、機体の位置によって見え方が変わります。たとえば碍子や金具の損傷を確認したい場合、斜め上、斜め下、側面など、どの方向から撮ると判定しやすいかを事前に決めます。樹木との離隔を見たい場合は、横方向からの写真だけでなく、上方からの位置関係も有効です。道路や建物との関係を残す場合は、周辺物が写る構図も必要です。


動画と静止画の使い分けも整理しておくべきです。動画は連続した状況把握に向いており、線状設備をたどる点検では便利です。一方で、報告や異常判定では、ブレの少ない静止画のほうが使いやすい場面が多くあります。動画から後で切り出せばよいと考えると、必要な瞬間がブレていたり、解像度が足りなかったり、対象が画面端に寄っていたりすることがあります。重要箇所では動画だけに頼らず、判定用の静止画を残す運用が安全です。


画像の品質では、解像度、ピント、露出、ブレ、圧縮、撮影距離、対象の大きさが問題になります。電線の細かな外傷や金具の変形を見たいのに、対象が画面の一部に小さく写っているだけでは判定できません。逆に、近づきすぎると接触リスクが高まります。そのため、安全な距離を保ちながら必要な画質を得るために、カメラ性能、レンズの画角、撮影倍率、飛行位置を事前に試験しておくとよいです。現場導入前に、模擬対象や過去の設備を使って「この距離なら何が見えるか」を確認しておくと、過剰な接近を避けやすくなります。


異常判定の基準も欠かせません。撮影者が異常を見つけるのか、保守担当者が後で確認するのか、専門部署が判定するのかによって、現場で必要な記録が変わります。撮影者が現場で気づいた違和感は、写真だけでなくコメントとして残すべきです。「何となく気になる」でも、位置、方向、対象、状況が記録されていれば後で確認できます。逆に、判定者が後で見るだけの運用では、撮影時に何を疑って撮った写真なのか分からなくなることがあります。


過去比較を行う場合は、同じ対象を同じ条件で撮る工夫が必要です。毎回違う角度、違う距離、違う明るさで撮った写真では、劣化が進んだのか、見え方が変わっただけなのか判断が難しくなります。電線保守では、季節による樹木の繁茂、積雪、日射、雨天後の反射、台風後の変化なども影響します。撮影日時、天候、風の状態、撮影方向、対象設備の識別情報を残し、過去画像と並べて見られる形にしておくことで、ドローン点検の価値が高まります。


撮影品質のばらつきを減らすには、点検チェックシートや撮影手順書を整備することが有効です。ただし、書類を細かくしすぎると現場で運用されなくなります。大切なのは、最低限残すべき写真、異常時に追加で撮る写真、撮影できなかった場合の理由、再撮影の判断基準を明確にすることです。ドローン点検は、撮影者の腕だけに依存させるのではなく、誰が行っても一定の成果が残るように仕組み化していく必要があります。


位置情報と点検記録を保守業務に残せる形にする

電線保守でドローン点検を使う場合、画像や動画を保存するだけでは不十分です。後から保守業務に使うためには、どの写真が、どの設備の、どの位置の、どの異常を示しているのかを追跡できる必要があります。特に電線は線状に連続しているため、似たような写真が大量に並びやすく、位置情報や設備番号が曖昧だと、報告書作成や補修指示の段階で混乱します。


ドローンで撮影した写真には位置情報が付く場合がありますが、それだけで保守記録として十分とは限りません。上空から撮影した機体位置と、実際に写っている異常箇所の位置は一致しないことがあります。斜め方向から撮影した場合、写真の中心に写っている設備は、機体の真下ではなく離れた場所にあります。電線や支持物が密集している場所では、写真の位置情報だけを頼りにすると、隣の設備と取り違えるおそれがあります。撮影位置、撮影方向、対象設備の識別、異常箇所の説明を組み合わせて管理することが大切です。


設備番号や点検区間との紐づけも重要です。電線保守では、現場の呼び方、図面上の番号、台帳上の番号、補修指示書の番号が一致していないことがあります。ドローン点検のデータを保守台帳に取り込む前に、どの識別情報を正とするのかを決めておく必要があります。写真のファイル名だけで管理するのではなく、撮影日、路線名、区間、支持物番号、撮影方向、異常種別、緊急度、確認者、対応状況を記録できる形にしておくと、後工程で使いやすくなります。


位置情報の精度にも注意が必要です。山間部や市街地では、衛星測位の誤差が大きくなることがあります。電線の近くでは地形、樹木、建物、金属構造物の影響で測位が不安定になる場合もあります。数メートルの誤差で問題ない広域巡視もあれば、支持物や異常箇所を正確に再訪したい場合のように、より高い位置精度が求められる場面もあります。目的に応じて、必要な位置精度を先に決めることが大切です。高い精度が必要な場合は、地上側で基準点や高精度位置情報を併用する方法も検討します。


データの保存方法も、導入前に決めておくべきです。担当者ごとの端末、外部記録媒体、社内共有フォルダ、点検管理システムなど、保存場所がばらばらになると、過去比較が難しくなります。電線保守では、数年単位で同じ設備を見ることが多いため、短期的な共有よりも長期的な検索性が重要です。写真を見つけるために毎回人に聞かなければならない状態では、点検データは資産になりません。設備単位、位置単位、異常種別、時系列で検索できるようにすることが理想です。


撮影データには、個人情報や周辺施設が写り込む可能性もあります。住宅地や道路沿いで電線を撮影すると、車両、敷地、人物、建物内部、看板などが写ることがあります。保守目的で必要な範囲を超えて撮影しない、共有範囲を制限する、不要な映像を整理する、外部提出時には必要な処理を行うなど、データの取り扱い方を決めておく必要があります。ドローン点検は現場の見える化に役立ちますが、見える化した情報をどの範囲で扱うかまで設計しておかないと、後から問題になることがあります。


報告書作成までを見据えた記録設計も重要です。点検後に担当者が一枚ずつ写真を探し、手作業で場所を書き込み、別資料に貼り付ける運用では、せっかくドローンで効率化しても後処理で時間を取られます。撮影時点で設備情報や位置情報を整理し、異常箇所にコメントを付け、必要な写真を選別できるようにしておけば、報告書作成や補修依頼がスムーズになります。電線保守では、点検そのものよりも、点検結果を次の保守判断につなげることが重要です。


作業体制と現場運用を一回限りで終わらせない

ドローン点検は、一度試験的に飛ばして終わりではなく、継続して使える運用にすることが大切です。電線保守の現場では、担当者が変わる、点検区間が変わる、季節が変わる、委託先が変わると、同じやり方が通用しないことがあります。導入時に作業体制を決めず、操縦できる人に任せきりにすると、その人が不在のときに運用が止まります。ドローン点検を保守業務の一部にするには、役割分担、教育、手順、記録、改善の仕組みが必要です。


現場で必要な役割は、操縦者だけではありません。点検対象を理解して撮影指示を出す人、周辺の安全を確認する人、第三者の立入を管理する人、道路や通行者への対応を行う人、設備管理者や関係者と連絡する人、撮影データを整理する人が必要になる場合があります。小規模な点検では兼務できることもありますが、役割が曖昧だと、飛行中に誰が何を判断するのか分からなくなります。特に電線近接の点検では、操縦者が画面に集中している間、周囲を見る補助者の存在が安全を左右します。


教育面では、操縦技術と電線保守の知識を分けて考える必要があります。ドローンを安全に飛ばせる人が、電線設備の異常を見分けられるとは限りません。逆に、電線保守に詳しい人が、ドローンの飛行リスクを十分に理解しているとも限りません。現場で成果を出すには、操縦者と保守担当者が同じ目的を共有し、撮るべき対象、避けるべき飛行、異常時の追加撮影、撤退判断をすり合わせる必要があります。撮影前の短い打ち合わせでも、対象設備、危険箇所、撮影順、飛行中止条件を確認するだけで、現場の品質は大きく変わります。


委託でドローン点検を行う場合も、丸投げは避けるべきです。外部の操縦者に依頼する場合、飛行技術だけでなく、電線保守の目的、撮影対象、必要な記録形式、提出データの仕様、異常発見時の連絡方法を明確に伝える必要があります。成果物を「写真一式」とだけ指定すると、必要な写真が不足したり、位置情報が不十分だったり、報告書に使いにくい形式で納品されたりします。依頼側が点検目的と判断基準を持ち、撮影計画と成果物を確認することが重要です。


運用を継続するには、点検後の振り返りも欠かせません。飛行できなかった区間、撮影が不十分だった対象、見落としが発生した箇所、データ整理に時間がかかった原因、関係者調整で詰まった点を記録し、次回の計画に反映します。ドローン点検は、初回から完璧な運用を作るより、実際の現場で改善していくほうが現実的です。ただし、改善するためには、失敗や不足を残す仕組みが必要です。現場で起きた小さな問題を記録しないままにすると、別の区間で同じ問題を繰り返します。


また、ドローン点検を既存の点検方法とどう組み合わせるかも決めておく必要があります。すべてをドローンに置き換えるのではなく、地上巡視、高所作業、詳細点検、測量、写真記録、台帳管理と役割を分けることで、より安全で効率的な保守体制になります。たとえば、広域の一次確認はドローンで行い、異常が疑われる箇所だけ地上で詳細確認する方法があります。逆に、地上から異常が疑われる箇所を見つけ、ドローンで上部や裏側を補足撮影する方法もあります。目的に応じて組み合わせることで、過剰な飛行や不要な接近を減らせます。


導入効果を測る指標も、あらかじめ設定しておくと判断しやすくなります。点検時間の短縮、危険作業の削減、再訪問の減少、異常発見率、報告書作成時間、過去比較のしやすさ、補修判断までの時間など、電線保守の業務に直結する指標で評価します。単に撮影枚数が増えた、飛行回数が増えたというだけでは、保守の改善とは言えません。ドローン点検が現場の安全と判断の質を高めているかを確認しながら、運用を育てていくことが大切です。


まとめ

電線保守にドローン点検を使う前には、機体や撮影方法だけでなく、目的、法規制、安全、品質、位置情報、運用体制をまとめて確認する必要があります。ドローンは、電線や支持物を高所から確認できる有効な手段ですが、電線付近を飛行する以上、接触、落下、感電、第三者被害、データの取り違えといったリスクを無視できません。導入前に注意点を整理しておけば、現場で慌てる場面を減らし、撮影データを保守判断に使える記録として残しやすくなります。


特に重要なのは、ドローン点検を「飛ばす作業」ではなく「保守情報を残す作業」として設計することです。どの設備を、どの角度から、どの品質で撮影し、どの位置情報と紐づけ、誰が判定し、どのように補修や次回点検へつなげるのかを決めることで、点検結果が現場の資産になります。反対に、写真や動画だけが大量に残っても、設備番号や位置、異常内容が分からなければ、後から使いにくいデータになってしまいます。


電線保守では、ドローンで得た上空からの情報と、地上で取得する正確な位置情報を組み合わせることで、点検記録の信頼性を高められます。異常箇所、撮影地点、支持物、補修予定位置を現場で分かりやすく残したい場合は、高精度な位置情報をスマートフォンで扱えるLRTK Phoneを活用することで、ドローン点検後の確認作業や保守記録の整理につなげやすくなります。


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