目次
• 従来の測量・測位作業における課題
• RTK-GNSSによる高精度測位の基本
• スマホでRTKを実現するLRTKの登場
• 点群取得とAR表示の連携メリット
• スマホ1台で可能な現場作業の実例
• まとめ:LRTKが現場にもたらす変革
• FAQ
従来の測量・測位作業における課題
土木・建設の現場では、設計図や図面に基づいて位置を正確に定める測量作業が欠かせません。建物の位置出し(墨出し)や基礎杭の施工、出来形(完成形状)の確認、現況の記録など、様々な場面で高精度な位置測定が求められます。しかし、従来のやり方にはいくつかの課題がありました。まず、高精度の測位には熟練した測量士による手作業とトータルステーション(三脚式の光学測量機)やGNSS受信機など大型の専用機材が必要で、現場への機材搬入・設置や複数人での操作に時間と労力を要しました。一箇所のポイントを出すにも基準点から距離と角度を何度も測り、杭やチョークで印を付ける といった工程を踏む必要があり、広い現場で多数のポイントを測設する場合はそれだけで丸一日かかることもあります。当然ながら人力中心の作業ではヒューマンエラーのリスクも伴い、測定値の読み違いやマーキングミスが後工程の手戻りや施工ミスにつながる恐れがありました。
また、作業効率と安全性の問題も無視できません。雨天や複雑な地形では測量作業が難航し、重機稼働中のエリアで位置出しを行う際には作業員に危険が及びます。足場の悪い急斜面やぬかるんだ場所での測量は転倒事故のリスクがあり、杭打ち位置を確認するために人が立ち入ること自体が危険なケースもありました。さらに、従来法では物理的に杭や標識を設置できない場所(舗装された地面や高所の構造物上など)では、正確な位置出しが困難で、やむを得ず近似位置で妥協せざるを得ない場面もありました。このように従来の測位作業は人手と時間を要し、精度管理や安全確保にも課題があるのが実情でした。
RTK-GNSSによる高精度測位の基本
こうした測量の効 率と精度の問題を解決する鍵となるのが、GNSSを用いた高精度測位技術です。GNSS(全球測位衛星システム)はGPSや日本の準天頂衛星「みちびき」など複数衛星からの信号で現在位置を特定する仕組みですが、通常のスマートフォン内蔵GPSでは誤差が数メートル程度発生し、精密な測量には不十分でした。そこで登場したのがRTK(リアルタイム・キネマティック)方式による測位です。RTK-GNSSでは、既知の基準点(基地局)から配信される補正情報をリアルタイムに適用して衛星測位の誤差を大幅に低減し、数センチメートル以内というセンチメートル級の測位精度を実現します。この技術により、現場においても従来のトータルステーションに匹敵する精度で自分の位置座標を把握できるようになりました。日本国内では、高精度測位を支援する各種サービスとインフラが整備されつつあり、例えば準天頂衛星から無償提供されるセンチメータ級測位補強サービス(CLAS)の利用や、国土交通省の電子基準点ネットワークを介したネットワーク型RTK(いわゆるGNSS測量の補正情報配信サービス)の活用により、専用の基地局を現地に設置しなくても手軽にRTKによる精密測位が可能な環境が広がっています。

