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インフラ点検から災害調査まで:フォトグラメトリ活用シーンとその効果

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万能の測量機LRTKの説明

近年、インフラ維持管理や防災の現場で注目を集めている技術にフォトグラメトリがあります。フォトグラメトリ(写真測量)とは、複数の写真画像から対象物の3Dモデルを生成する技術です。例えばドローンやデジタルカメラで構造物や地形を様々な角度から撮影し、専用ソフトで解析することで高密度な点群データや詳細な3次元モデルを構築します。その結果、橋梁や建物の形状をミリ単位の精度でデジタル化することが可能となり、インフラ点検や災害調査において従来にない効率と精度をもたらしています。


本記事では、自治体インフラ担当者や防災関係者、建設技術者、測量会社の皆様に向けて、フォトグラメトリの具体的な活用シーンと得られる効果を解説します。インフラ点検から災害直後の状況把握、構造物の劣化診断まで、写真から生成した3Dデータがどのように現場を変え、安全性や作業効率、精度向上に寄与するのかを見ていきましょう。


インフラ点検におけるフォトグラメトリ活用

道路橋梁やトンネル、高架施設などのインフラ点検では、従来、人が高所に登ったり橋の下に潜り込んだりして近接目視で確認する必要がありました。これには足場の設置や高所作業車の利用、交通規制など大掛かりな手間とコストが伴い、作業員の安全リスクも常に存在します。フォトグラメトリを活用すれば、こうしたインフラ点検の方法が大きく変わります。ドローン(小型無人航空機)に高解像度カメラを搭載して橋梁や道路を上空から撮影すれば、短時間で点検対象の詳細な画像データを取得可能です。撮影した多数の画像をフォトグラメトリで解析して3Dモデル化すれば、橋の裏側や高所部分も含めたデジタル点検モデルが得られます。


ドローン写真測量によるインフラ点検の利点は、まず安全性迅速性です。点検員が危険な高所作業をする必要がなく、地上から安全にデータ取得ができます。また、足場を組んだり車線規制を長時間行ったりする必要が減り、社会への影響も小さくなります。実際にドローンを活用した事例では、一つの橋梁点検に要する時間が従来の8時間以上から2〜3時間程度に短縮された例も報告されています。点検作業の時間短縮(最大で約70%の削減)とそれに伴うコスト低減(40〜60%削減)を実現したケースもあり、限られた予算・人員で多くのインフラを維持管理しなければならない現場にとって大きなメリットです。


さらに、フォトグラメトリで作成した3Dモデルは精密な記録として残せる点も優れています。点検担当者はモデル上で劣化箇所をチェックしたり、寸法を計測したりできます。従来は点検結果を報告書に平面図や写真で記録していましたが、3Dモデルがあれば構造物全体の状態を立体的に把握可能で、後から別の担当者が見ても状況を正確に共有できます。このように、インフラ点検にフォトグラメトリを導入することで、効率化安全性向上データ蓄積の三拍子において高い効果を発揮します。


災害調査へのフォトグラメトリ活用

大規模な自然災害が発生した直後の状況把握や被害調査にも、フォトグラメトリは強力なツールとなります。地震や土砂崩れ、水害などの現場では、被害範囲が広域に及び、人が立ち入るには危険な場所も少なくありません。こうした場面でドローン空撮+フォトグラメトリによる3Dマッピングが有効です。


例えば、土砂災害現場では上空から被災箇所一帯をドローンで撮影し、その画像群から地形の3Dモデルやオルソ画像(上空から見下ろした見取り図)を作成できます。短時間で地滑りの範囲や土砂の量、被害を受けた構造物の状況を可視化できるため、災害対策本部は発生当日のうちに詳細な被害分布図を得ることも可能です。これにより、迅速な状況把握と的確な初動対応が実現します。どの道路が寸断され、どのエリアに優先して救助や支援を投入すべきかといった判断を、従来より早く下せるようになります。


また、災害直後は倒壊しかけた建物や二次災害の危険がある場所も多く、調査に向かう人員の安全確保が課題です。フォトグラメトリなら、人が近づけない危険区域の情報も遠隔で取得できるため、作業員の安全性を確保しつつ必要なデータ収集が行えます。実際に小型ドローンを用いれば、狭い場所や瓦礫の上空も飛行可能で、人力では難しい角度から被害状況を記録できます。こうしたデータは災害対応だけでなく、後日の被害検証や復旧計画立案にも役立ちます。発生直後からフォトグラメトリを活用して現場の“デジタル記録”を残しておくことで、時間が経ってからでも当時の状況を正確に再現・分析できるのです。


構造物の劣化診断と維持管理

橋脚やダム、トンネル、建物といった構造物の劣化診断にもフォトグラメトリは有効です。ひび割れ・剥離・錆びといった劣化現象は従来、近接目視と計測で点検していました。しかしフォトグラメトリで取得した高解像度の3Dモデルやオルソ画像を活用すれば、構造物表面の劣化箇所を面的に網羅して把握することができます。


例えば、橋梁のコンクリート表面をフォトグラメトリで撮影・モデル化すると、発生しているひび割れをモデル上で余すところなく視認できます。3Dモデル上で劣化箇所にマーキングを施し、その正確な位置座標やひびの長さを計測するといったことも容易です。実際に、フォトグラメトリから生成した変状展開図(構造物全体を展開した図面に劣化部位を示したもの)を用いて、ひび割れの分布を抽出・報告する取り組みも行われています。これにより、どの部位にどの程度の劣化があるかを視覚的に非常に分かりやすく示せるため、診断結果の説得力が高まります。


こうした高精度で分かりやすいデータは、維持管理計画の策定にも大いに貢献します。フォトグラメトリで得たデジタル記録を定期点検ごとに蓄積しておけば、年月とともに劣化が進行しているかどうかを定量的に比較することも可能です。従来は経験に頼りがちだった構造物の健全度評価が、データに基づく客観的な判断へとシフトし、補修の優先度や時期を的確に見極められるようになります。


迅速な状況把握と意思決定の支援

フォトグラメトリの導入によって得られる迅速な状況把握は、インフラ管理や災害対応の現場での意思決定スピードを格段に高めます。従来、現地の状況を把握するには人が現場を隅々まで歩き回り、メモや写真で情報収集して持ち帰る必要がありました。これでは詳細な全体像を把握するのに時間がかかり、対応の遅れにつながる恐れがあります。


一方、フォトグラメトリで生成した3Dモデルやオルソマップがあれば、現場の「今」を丸ごとデスク上に再現できます。担当者はオフィスにいながらパソコン上でモデルを自由に視点変更し、必要な計測や検討を即座に行えます。関係者間でデータを共有すれば、複数の部署や専門家が同じ現場モデルを見ながら協議できるため、合意形成もスムーズです。これは災害発生時だけでなく、インフラの補修工事を計画する際など日常業務でも威力を発揮します。例えば、大規模修繕前に橋梁全体のモデルを関係者に共有しておけば、現地説明会に出向かなくても事前に問題点を洗い出し対策を検討できます。


このように、フォトグラメトリによる迅速な状況把握は判断の迅速化と質の向上の両面で効果があります。意思決定に必要な情報が早く正確に揃うことで、対策の立案や実行を遅滞なく行え、結果的に住民の安全・安心にも寄与します。


作業の安全性向上

フォトグラメトリ活用がもたらす大きな効果の一つに、現場作業の安全性向上があります。インフラ点検や災害調査では、危険と隣り合わせの作業が少なくありません。高所での橋梁点検作業では墜落のリスクが伴い、急斜面での地形測量では滑落の危険があります。ドローンとフォトグラメトリを用いることで、そうした「立ち入り困難箇所」での作業をそもそも不要化できる点は大きなメリットです。


実例として、従来は急峻な崖地や災害被災地で測量を行う際、作業員が直接現地に降りて計測していましたが、ドローン空撮に置き換えることで危険個所への立ち入りそのものをなくすことができます。また、高所作業車や吊り橋点検車で行っていた橋梁下部の点検も、ドローンで代用することで作業員が高所に昇る回数を減らせます。これらは墜落・転落事故のリスク低減につながるだけでなく、作業に伴う精神的負担も軽減します。


さらに、フォトグラメトリによるリモート計測は、炎天下や極寒など過酷な環境下での作業時間を短縮する効果もあります。従来のトータルステーションによる測量と比べて現地での作業が効率化されるため、長時間の重労働や反復作業が削減され、結果として熱中症や凍傷などの健康被害防止にも寄与します。安全面の効果は直接的な事故防止に留まらず、作業員の健康管理や労務負担軽減といった側面でも現場にもたらされるのです。


精度向上とデータ活用性

フォトグラメトリは安全かつ速いだけでなく、取得できるデータの精度活用性の高さでも優れています。撮影した写真から生成される点群や3Dモデルは、カメラの画素解像度や撮影条件にもよりますが、細部まで詳細に表現されます。建造物の微細なひび割れや地表のわずかな凹凸まで写し取ることも可能で、従来の肉眼での目視では見落としていた異常を検出できる場合もあります。


測量精度の面でも、適切に計画されたフォトグラメトリ計測では数cm〜数十cm以内の誤差範囲で広範囲の測量が可能です。さらにRTK-GNSS(リアルタイムキネマティック測位)を併用すれば、取得した写真や点群に対しセンチメートル級の位置座標を付与することも容易です。これにより、フォトグラメトリの成果である3Dデータを公共座標系にピタリと一致させ、地図やCAD図面と重ね合わせて利用することができます。インフラ管理分野ではBIM/CIM※といったデジタルモデルの活用が進んでいますが、フォトグラメトリで得たモデルはこうしたプラットフォームへの統合にも適しています。


データの利活用性という点では、フォトグラメトリの成果物が完全なデジタルデータであることが大きな強みです。3Dモデル上で距離・面積・体積を自由に計測できるのはもちろん、断面図を任意の位置で切り出して図面化することもできます。例えば、崩落した斜面の点群データから正確な土砂量を算出して撤去計画に役立てたり、橋梁モデルの断面図を描いて補強工事の検討に使ったりと、応用範囲は幅広いです。また、データはクラウド等で共有・蓄積が可能なので、遠隔地との情報共有や将来の再分析も容易です。一度取得した3Dモデルは、現地が失われない限り半永久的な記録として残ります。これはインフラ資産の長期的な管理や、災害アーカイブの構築にも役立つでしょう。


*(※BIM/CIM: 建築・土木分野における3次元の統合モデル手法。BIMはBuilding Information Modeling、CIMはConstruction Information Modelingを指します)*


フォトグラメトリ導入で期待できる主な効果

以上、様々な観点からフォトグラメトリ活用の有効性を見てきました。最後に、フォトグラメトリを現場に導入することで得られる主な効果をポイントで整理します。


点検・調査の効率化: 広範囲の現場を短時間で3Dデータ化でき、人力に比べて作業時間を大幅に短縮できます。限られた日程でも迅速に多地点を調査・点検可能です。

安全性の向上: 危険箇所への立ち入りを減らし、高所・災害現場での作業を遠隔実施に置き換えることで、作業員の事故リスクや健康被害リスクを低減します。

精密なデータ取得: ミリ~センチ単位の精度で対象物の形状をデジタル記録でき、従来は見えなかった異常も検知しやすくなります。写真測量による点群は色情報も持つため、劣化や損傷の状態も直感的に把握できます。

コスト削減: 足場構築や重機使用、人員動員を削減できるため、長期的には維持管理や調査のコスト圧縮につながります。また、データ共有による重複調査の削減や意思決定の迅速化で間接的なコスト減効果も期待できます。

データの蓄積・活用: デジタルな3D記録が蓄積されることで、経年変化の分析や将来の計画策定に活用できます。クラウドで共有すれば現場とオフィス間でリアルタイムに情報連携でき、意思決定プロセスを改善します。


LRTKによる簡易測量でフォトグラメトリを身近に

フォトグラメトリの有効性は明らかですが、一方で「高度な技術で導入が難しそう」「専門の機材や知識が必要では?」と感じる方もいるかもしれません。確かに従来は、高解像度カメラを搭載したドローンや高性能なPC、専用ソフトウェアなどが必要で、ハードルが高い印象がありました。しかし近年では、こうした最先端技術を手軽に活用できるソリューションも登場しています。その一つが、スマートフォンを用いた簡易測量システム「LRTK」です。


LRTK(エルアールティーケー)は、スマホに取り付けるポケットサイズの機器と専用アプリから構成される次世代の測量ツールです。超小型のRTK-GNSS受信機をスマートフォンに装着することで、従来は専門機器が必要だったセンチメートル級の測位を誰でも実現できます。スマホ1台がそのまま高精度測量機に変身し、位置座標の計測はもちろん、写真撮影や点群スキャン、ARによる位置確認まで幅広い機能を直感的な操作で扱えます。


例えばLRTKを使えば、現場で高精度な点群データを簡単に取得可能です。専用アプリで案内に従ってスマホを構造物や地形に向けてゆっくり歩くだけで、写真が自動撮影され、フォトグラメトリによる3Dモデル生成が行われます。こうして得られた点群やモデルにはRTKによる正確な位置情報が付与されているため、その場で距離や面積を測ったり、クラウド経由でオフィスに即時共有したりできます。専門的なトレーニングを受けていない担当者でも扱えるよう設計されており、1人1台のスマホ測量で現場のデジタル化を進められる点が画期的です。


さらにLRTKは、撮影した写真に位置座標と方位を自動記録する「測位写真」機能や、設計図を現地に重ねて表示できるAR機能など、インフラ管理に役立つ機能が充実しています。価格も従来の測量機器に比べて非常に手頃で、専用クラウドサービスを活用すれば現場と事務所でデータをリアルタイムに共有することも可能です。まさに、これまで敷居が高かったフォトグラメトリや高精度3D測量を誰もが日常業務で使えるものにするためのソリューションと言えます。


フォトグラメトリによるインフラ点検・災害調査の効果を最大限に引き出すには、まず現場でデジタルデータを取得する仕組みを取り入れることが重要です。LRTKのような手軽で高精度なツールを活用すれば、その第一歩を無理なく踏み出せるでしょう。最新技術を味方につけ、インフラ維持管理や防災業務の効率と安全性を飛躍的に向上させてみませんか。フォトグラメトリと簡易測量の導入は、未来のインフラ管理を変革する鍵となるはずです。


LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上

LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。

LRTKの詳細については、下記のリンクよりご覧ください。

 

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こちらのお問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。ぜひLRTKで、貴社の現場を次のステージへと進化させましょう。

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