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点群ファイルの『重さ』に困ったら|圧縮・分割・クラウドの活用術

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万能の測量機LRTKの説明

点群ファイルが重くなる理由(なぜ“重い”のか?)

点群データは非常に高密度な3次元情報を含むためファイルサイズが大きくなりがちです。例えば公共測量で要求される密度(1㎡あたり4点以上)で300m×400mほどの範囲を計測すると、点の数は1,000万点を超え、そのファイルサイズは100MB超(場合によっては500MB程度)にも達します。これは従来の2次元図面やメッシュ標高データに比べて桁違いの情報量です。


重くなる要因の一つは点の密度です。点群データでは対象物の細部まで点で取得するため、範囲が広かったり精度を上げたりすると点の数が爆発的に増えます。また各点には座標(X, Y, Z)に加えて属性情報(色情報RGB、反射強度、分類情報など)が付加されることがあります。国土地理院の航空レーザ点群では、地表面だけでなく建物や植生等の地物も含めて測量し、各点にカラー画像から取得したRGB値やレーザ反射強度、地表・水面・その他といった簡易分類まで記録しています。これにより詳細な解析が可能になりますが、その分1点あたりのデータ量も増え、ファイル全体が重くなる原因になります。


さらに地物の混在もデータ量を押し上げるポイントです。地形だけでなく建物や樹木、構造物など現場のあらゆるものを一括で点群化すると、必要な部分だけではなく現場全体の膨大な点が含まれるため、ファイルサイズが大きくなります。用途によっては地表面だけで十分な場合でも、元データには建物や設備、樹木など不要な点が混ざっていると無駄に“重い”状態になります(後述の分類による分割で対処可能です)。


最後にデータ形式も無視できません。テキスト形式(例えばCSVやPTSなど)の点群ファイルは、数値を文字列で保存するため桁や区切り記号まで含めて記録され、非常に容量を食います。実際、同じ点群データでもCSV形式だとLAS(二進バイナリ形式)より大きく、LASをさらに圧縮したLAZ形式に比べれば桁違いにファイルサイズが肥大化します。テキスト形式は人間には読みやすい一方で、ファイルが巨大すぎてエディタで開けなかったり、データ項目の定義が不明瞭だったりと実務上扱いにくい欠点もあります。総じて、点群データの「重さ」は点の膨大さリッチな情報量、そして形式上の非効率によって生じています。


圧縮ファイル形式の活用(LAZなど)と変換手順

たとえば上のグラフは、同じ点群データを保存する場合の形式別ファイルサイズの概算比較です。ご覧のようにCSV(テキスト)形式は非常に非効率で、LAS(バイナリ)形式に比べても遙かに大きな容量を要します。一方、LASを専用アルゴリズムで圧縮するLAZ形式にすれば、ファイルサイズは元のわずか1/10程度(7~20%程度)まで縮小できます。しかもLAZ形式への圧縮は可逆圧縮(ロスレス)で行われるため、展開すれば元のLASとビットレベルで同一のデータが得られます。つまり情報劣化なく容量だけ大幅に削減できるため、現在ではLAZがLiDAR点群圧縮のデファクトスタンダードになっています。国土地理院の提供する航空レーザ点群もLAS1.2形式をLASzip圧縮したLAZ形式で配布されています。


LAZ形式を活用することで、重い点群ファイルの取り回しは格段に改善します。実際、点群データの配布や共有の場面では可能な限りLASではなくLAZでやり取りするのが望ましいです。もし手元にLASファイルしかない場合でも、変換は比較的簡単です。オープンソースのLASzipツール(LAStoolsの一部)を使えばコマンド一発で`.las`から`.laz`に圧縮できますし、逆に`.laz`から`.las`に解凍することも可能です。例えばコマンドラインでは次のように入力します(Windowsの場合):


laszip -i input.las -o output.laz

これでinput.lasを圧縮し、output.lazが生成されます。複数ファイルをまとめて処理することもバッチスクリプト等で可能です。LASzipはフリーソフトなのでコストもかかりませんし、処理時間も非常に短いです。


GUIで行いたい場合はCloudCompareというフリーの点群処理ソフトでもLAS/LAZの入出力が可能です。ただしCloudCompareでLAZを扱うにはLASzipライブラリをプラグインとして組み込む必要があります。一度対応版を用意すれば、LASを読み込んで「保存」する際にLAZ形式を選ぶだけで圧縮できます。また、QGISなどGISソフトも最近はLAZ読み込みに対応しており、内部で自動的にタイル化された形式(Entwine Point Tiles)に変換してくれるものもあります。このように、LAS→LAZ変換の手順自体は難しくありませんので、特に社内や取引先で大容量データ交換が発生する場合は積極的にLAZ形式を採用すると良いでしょう。


点群データの分割方法とおすすめルール

点群ファイルを軽量化・扱いやすくするにはデータを分割することも有効です。1ファイルにすべてを詰め込むのではなく、範囲や内容ごとに小分けすれば、必要な部分だけを読み込んで作業できるため負荷が下がります。また分割ルールを決めておけばチームでのデータ管理も楽になります。代表的な分割の切り口は次のとおりです。


範囲で分割: エリアが広大な場合は、エリアごとにタイル状に区切ります。国土地理院の公開データでも2万5千分の1地図のメッシュ単位でLAS/LAZファイルを分割提供しています。例えば1km四方や500m四方といった矩形グリッドでエリア区切りすれば、ファイルごとのサイズも数百MB程度に収まり、扱いやすくなります。都市部などデータ密度が高い部分だけ細かく区切る方法もあります。エリア分割した場合、ファイル名に座標やメッシュ番号を入れておくとどの範囲か一目で分かり管理しやすいです。

分類で分割: 点群には地表面、建物、植生、車両…と様々な種類の点が混在しています。そこであらかじめ分類コードごとにファイルを分けておくと、目的別のデータ抽出が容易になります。例えば地形解析用に地面の点だけを抜き出したファイル、構造物モデル用に建物や構造物の点だけ集めたファイル、といった具合です。最近の点群処理ソフトやクラウドサービスではAI等による自動分類機能が充実しており、地表・低木・高木・建物…と自動でラベル付けしてレイヤ分けできます。下図はクラウドソフトScanXで点群を自動分類した例ですが、地面(茶)、植生(緑)、電線など人工物(青)と色分け表示されており、レイヤごとに表示ON/OFFやデータ抽出ができます。このように地物分類に沿って分割すれば、例えば地面だけのデータは軽量なのでノートPCでもさくさく扱える、といった利点があります。既存のLASデータでも分類コード(Class)が付与されていればツールでフィルタして別ファイルに書き出すことが可能です。

用途で分割: 利用目的に応じてデータを取捨選択する方法です。例えば詳細な3Dモデル化が目的なら高密度点群が必要ですが、単に現況把握やプレゼンテーションが目的なら間引き(ダウンサンプリング)した粗めの点群でも十分な場合があります。このように必要な精度・範囲だけを切り出し、不要な点は削減したデータセットを作成しておくと、閲覧や解析が格段に軽快になります。場合によっては点群をメッシュ(TINや等高線など)に変換してしまう方法も考えられます。点群そのものを扱うニーズに合わせ、フル解像度版・軽量版・派生データ(モデルや断面図など)を用意しておくと社内外への提供もスムーズです。


以上のように、範囲・内容・用途ごとに適切に点群を分割管理することで、「重すぎて開かない」「毎回必要ない点まで読み込んで時間がかかる」といったストレスを減らすことができます。分割後のファイルは明確な命名規則やフォルダ体系で整理し、どのデータを使えば良いか関係者が迷わないようにしましょう。なおEntwine Point Tile(EPT)のように、点群を空間インデックスに基づいて階層的にタイル分割する高度な方式もあります。EPTはビューア側で必要な範囲・解像度のタイルだけ読込む仕組みで、クラウド配信に適しています。大規模データを配布する際はこうした方式も検討すると良いでしょう。


クラウドを活用した管理・共有(ScanX、InfiPoints Cloudの紹介と違い)

点群データの利活用を本格化するなら、社内外でのデータ共有共同作業の仕組みづくりが欠かせません。近年は点群をクラウド上で管理・処理・閲覧できるサービスも登場しています。その代表例がScanX(スキャン・エックス)とInfiPoints Cloudです。それぞれ特徴が異なるので、概要と違いを紹介します。


ScanXはローカスブルー社が提供する国産のオンライン点群処理サービスで、「インターネットとブラウザだけで誰でも簡単に3D点群を解析・編集できる」ことを謳っています。従来は点群処理に高価な専用ソフトやハイスペックPCが必要でしたが、ScanXではWebブラウザ上ですべて完結するため、現場でもオフィスでも場所を選ばずアクセスでき、複数ユーザーが同時に作業を進めることも可能です。操作画面やワークフローも直感的で初心者に扱いやすく、導入コスト(月額制)も専用ソフト購入に比べて抑えられています。


機能面でも、ScanXには点群の自動クラス分類(地表・植生・建物などの自動判別)やノイズ除去、測量成果の算出(体積・断面・法面勾配の計測、TINメッシュや等高線の作成等)といった充実した機能がクラウド側で実装されています。ユーザーはただ生の点群データをアップロードするだけで、高度な解析がバックエンドで自動実行され、分類済み・解析済みの結果をブラウザで確認・編集できます。例えば地表面の自動抽出により起工測量や出来形管理に必要な地盤面データを即座に得る、といったことも可能です。こうした自動処理により、従来手作業で行っていた煩雑な点群編集の工数が大幅に削減され、誰が操作しても一定品質の成果が得られるというメリットがあります。実際、ScanXは2020年の提供開始以来、建設・土木業界を中心に全国40都道府県で利用が広がり、国土交通大臣賞(i-Construction大賞)も受賞しています。


一方のInfiPoints Cloudは、エリジオン社の点群処理ソフト「InfiPoints」のクラウドオプションサービスです。主にInfiPointsで処理した点群データをクラウド上で共有することを目的としており、点群の重処理から閲覧までを一気通貫で提供します。基本的な流れとしては、まず社内でInfiPoints(デスクトップアプリ)を使い複数のスキャンデータを統合・登録(位置合わせ)します。その後、出来上がった点群を中間形式(E57など)でクラウドにアップロードし、クラウド側でフィッティング処理(位置調整)やノイズ除去、面抽出、軽量化などの前処理を自動実行します。処理完了後はブラウザ経由で点群データを3D表示でき、関係者へのURL共有で現場の様子をオンライン確認できます。つまり、InfiPoints Cloudを使えば巨大点群データをわざわざHDDやSDカードにコピーして郵送したり、各拠点ごとに高性能PCを用意したりする必要がなくなります。手元の普通の事務PCとインターネット環境さえあれば、誰でもいつでも最新の点群を閲覧・確認できるわけです。


両者の違いをまとめると、ScanXは単体で完結するクラウド点群プラットフォームであり、特別なソフトを持っていなくてもブラウザさえあれば利用開始できます。自動分類などの機能がオールインワンで提供され、初心者でも扱いやすい設計です。一方、InfiPoints Cloudは既存のハイエンドソフト(InfiPoints)のクラウド拡張という位置付けで、社内で高度な点群編集を行った上で、その成果を安全かつ効率的に社外共有する用途に適しています。InfiPoints自体、プラント設備の配管自動抽出やCAD連携など高度機能を持つ専門ソフトです。クラウド版はそのデータ共有部分を担い、専用アプリ不要・ライセンス不要で誰でも閲覧・一部編集できるビューア環境を提供します。例えば施主(発注者)や協力会社に対し、InfiPoints Cloud上で完成点群モデルを見せながらコミュニケーションを図ることができ、従来よりスムーズな合意形成が可能になります。


社内での共有体制構築とクラウド導入時の注意点(権限・通信・コストなど)

最後に、点群データを安全かつ効率的に社内共有するための体制づくりと、クラウドサービス導入時の注意点について触れます。


権限管理: 点群データには工事現場やインフラ施設など重要情報が含まれるため、閲覧・編集できる人の範囲を適切に制限する必要があります。クラウドサービスにはユーザーごとのアクセス権設定機能が備わっており(ScanXやInfiPoints Cloudでもユーザー管理・権限設定が可能)、必要な人にだけデータを共有することができます。例えば閲覧専用の権限や編集可能な権限をアカウントごとに付与し、社外への誤共有やデータ改ざんを防止します。社内で共有フォルダを用意する場合も、アクセス権限やフォルダ構成を整備し、誰でも勝手に削除できてしまう状況は避けましょう。加えて、機密性の高い案件ではデータ暗号化やダウンロード禁止設定などセキュリティにも配慮することが肝心です。


通信環境: クラウドを活用する以上、インターネット通信は不可欠です。点群はファイルサイズが大きいので、アップロード・ダウンロードに時間がかかります。オフィスや現場のネット回線速度を事前に確認し、大容量データを扱っても業務に支障が出ない環境を整備しましょう。例えば、現場で取得した100GB規模の点群データをクラウドに上げる場合、ポケットWi-Fi程度では何日もかかる恐れがあります。そのような場合はオフィスに戻ってから有線の高速回線でアップロードする、夜間の空いている時間帯に転送する、といった工夫が必要です。またクラウド上で点群を閲覧する際も、高解像度データをストリーミングするため回線負荷がかかります。サービスによっては表示範囲だけデータを送る工夫(前述のEPTなど)がありますが、利用者側の通信量・通信コストにも留意してください。社内ネットワークにファイルサーバを設置して共有する場合も、LANの帯域やNASの速度がボトルネックにならないよう注意が必要です。


コスト: クラウドサービス導入にはランニングコストが発生します。ScanXやInfiPoints Cloudはいずれも月額課金モデルで、データ容量や機能に応じてプランが分かれています。例えばScanXの場合、基本プランで月額29,800円(40GBまで)、上位プランでは月額49,800円(300GBまで)といった料金設定です(※いずれも税別)。エンタープライズ向けには更に大容量・カスタマイズプランも用意されています。一見高額に感じるかもしれませんが、専用ソフトのライセンス購入や高性能マシンの台数分配備に比べれば抑えられるケースも多いです。コスト対効果を考えるうえでは、「クラウド導入によって削減できる人件費・時間」と「サービス利用料」を比較するとよいでしょう。加えて、利用開始前にお試しプランデモ利用を行い、自社のワークフローにマッチするかを検証することも大切です。


以上、点群ファイルが重すぎて困っている方向けに、容量削減のテクニック(圧縮・分割)やクラウド活用術を解説しました。特に建設ICTや公共発注の分野では、国土交通省のi-Construction施策も後押しして3D点群の利活用が急速に広がっています。社内ブログや研修資料では、まず「なぜ点群は重いのか」を正しく理解した上で、今回紹介したLAZ圧縮の活用データ分割のコツを具体例とともに示すと良いでしょう。さらにクラウドサービス(ScanXやInfiPoints Cloud)の特徴を比較検討し、自社に合った共有体制を築くことで、点群データの価値を最大限引き出すことができます。大容量データに振り回されず、賢く圧縮・分割し、クラウドもうまく使って効率アップ!——本記事がその一助になれば幸いです。


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