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点群データの扱い方まるわかり|取得→変換→保存→活用までの流れ

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万能の測量機LRTKの説明

近年、建設業界では 3次元点群データ(Point Cloud Data)の活用が急速に広がっています。国土交通省も測量から維持管理まであらゆるプロセスにICTを取り入れる「i-Construction」を推進しており、建設生産システムの効率化や魅力ある現場づくりが進められています。点群データとは、空間内の多数の点の座標情報(X,Y,Z)に色や輝度などの情報を付加したデータで、物体や地形の三次元形状を精密に表現できるものです。本記事では、建設現場の実務担当者やICT未経験の若手職員、自治体の発注者といった初心者の方にもわかるように、点群データの取得方法・処理と変換・保存管理・活用事例を工程順に丁寧に解説します。専門用語はできるだけ噛み砕き、国交省資料やJACICの情報、メーカー事例など信頼性の高い日本語情報源をもとに、図や具体例を交えてポイントを整理します。


点群データの取得方法

点群データを取得する手法には様々な種類がありますが、建設や測量の現場で主に用いられる代表的な方法は次の4つです。それぞれの特徴や用途を見ていきましょう。


地上型3Dレーザースキャナーによる計測

地上設置型3Dレーザースキャナー(TLS: Terrestrial Laser Scanner)は、地上に固定した装置からパルスレーザー光を360度周囲に照射し、構造物や地形の形状を高密度な点群データとして取得する方法です。設置した地点を中心に短時間で大量の点を非接触で計測できるため、地形測量や建築物・土木構造物の詳細な形状把握によく利用されます。例えば、歴史的建造物のお城の石垣計測など、細部まで精密な記録が必要な場面で活躍します。ただし据え置き型のため一度に測れる範囲は装置の見通せる範囲に限られ、広いエリアをカバーするには複数地点からの計測とデータ合成が必要です。また機器価格は数百万円と高額で専門知識も要するため、誰もが手軽に使えるわけではありません。


UAVレーザ測量(ドローン搭載LiDAR)

UAV(ドローン)によるレーザースキャナ計測は、小型レーザースキャナーと高精度GNSS、IMU(慣性計測装置)をドローンに搭載し、空中から地表をレーザーでスキャンする方法です。ドローンが低空飛行しながらレーザー計測と自己位置計測を同時に行い、後処理で位置補正と点群生成を行うことで、高密度・高精度な三次元点群データを取得できます。上空からの計測により地上型やMMSでは計測が難しい広範囲の地形や森林の測量にも適しており、短時間で面的な地形データを得られるのが強みです。UAVレーザは国土交通省の出来形管理要領にも定められており、土工の出来形計測にも活用されています。また、ドローン標準搭載のGPSやIMUにレーザースキャナを追加する形で運用できるものの、機器自体の価格はまだ高額で、計測サービスを専門会社に委託するケースも多い状況です。


モバイルマッピングシステム(MMS)による計測

MMS(Mobile Mapping System)は、車両にレーザースキャナーやカメラ、GNSSアンテナ、IMUなどを搭載し、走行しながら周囲の3次元座標データと連続写真画像を取得する移動体計測システムです。道路やトンネルといった線形構造物の長距離区間を高速に測量できるのが特長で、道路面の路面形状や沿道の構造物、さらに河川堤防の形状把握などにも利用されています。一度の走行で道路延長方向の膨大な点群を得られるため、道路台帳の更新や舗装点検など自治体のインフラ管理業務にも活用されています。ただし、専用車両や高精度機器一式の導入費用は数千万円規模と非常に高額であるため、国や大手測量会社など一部の機関しか保有していないのが現状です。そのため地方公共団体では、必要時に専門業者へ委託してMMS計測を実施するケースが一般的です。


写真測量(SfM/MVS)による点群生成

写真測量による点群取得(SfM: Structure from Motion)は、特殊な機材を使わず市販のデジタルカメラやドローン搭載カメラで対象物を複数撮影し、その画像群からソフトウェア処理によって3次元点群データを再構築する手法です。撮影画像の特徴点の位置関係からカメラの姿勢を推定し、三角測量で低密度の点群を生成する技術で、必要に応じてMVS(Multi-View Stereo)処理で点群を高密度化することもできます。ドローン+写真測量(SfM)による点群作成は現在最も採用されている手法であり、高価なレーザ機器を用いなくても低コストで広範囲の3Dデータが得られる点が普及の理由です。ただし精密なモデル作成にはレーザ計測に比べ密度が劣る場合もあり、また撮影には画像のオーバーラップ率(85%以上推奨)を高く保つ工夫が必要です。それでも近年のソフトウェアの進歩により、写真からの点群生成は手軽で実用十分な精度が得られるようになってきました。


点群データの処理と変換

現地で取得したままの生の点群データは、ただ無数の点座標の集まりにすぎず、このままではCADソフト等で直接利用することができません。有効活用するには専用の点群処理ソフトウェアで適切な処理・加工を行い、目的に合わせた形式に変換する必要があります。ここでは主な処理工程とデータ変換について解説します。


ノイズ除去(フィルタリング): 点群には計測時の誤測点や、対象物以外の不要な周辺物の点(たとえば通行人や雨粒、測量機器の反射など)が含まれることがあります。まずはこうした不要点群(ノイズ)を除去し、対象物だけを残します。ノイズを取り除くことで後続処理の精度が上がり、データ容量も削減できます。ソフトによっては点の高さや反射強度に基づいて自動的に地表面だけを抽出するフィルタ機能もあります。例えばLAS形式の点群データには各点に分類コード(クラス値)を付与することが可能で、地表・建物・樹木などに分類しておけば必要な地物だけを抽出したり地形モデルや3D都市モデルの作成に活用できます。

合成・位置合わせ(レジストレーション): 地上型スキャナ等で複数地点から計測した場合、それぞれの点群データを一つの座標系に統合する「合成」作業が必要です。各測定位置で取得した点群同士を重ね合わせ、位置ズレを補正します。この際、あらかじめ現場に配置したターゲット(標識)を基準点として用いると、点群同士の位置合わせ精度を高めることができます。丁寧に位置合わせされた点群は、まるで様々な角度から撮影した写真を継ぎ合わせたかのように対象物を完全な立体として再現でき、以後の計測や図化作業の精度向上に寄与します。

点群の分類・編集: 必要に応じて点群に含まれる点を種類ごとに分類したり、データを間引き・平滑化するといった編集も行います。例えば地形モデルを作成する場合は、建物や樹木に属する点を除去して地表面点群だけを取り出す処理(グラウンドフィルタ)が必要です。近年はAI技術の活用で、点群データに対して自動で地物分類(セマンティックセグメンテーション)を行う研究開発も進められています。また、計測漏れで生じた穴を補完する補間(穴埋め)や、点群を一定間隔に間引き(サンプリング)してデータ量を削減する処理、隣接する点から面を推定して異常点を削除するスムージングなど、目的に応じた編集機能が各種ソフトに備わっています。こうした編集により解析しやすいデータに整えることで、点群データの実用性が高まります。

メッシュ変換とCADデータ化: 点群データ自体は点の集合ですが、必要に応じて点と点を結んでメッシュ(ポリゴン面)を作成し、3Dモデル化することもあります。例えば出来形管理で土量を算出する際には、地表面の点群から三角網(TIN)を作成して盛土・掘削の体積を計算するといった手順がとられます。メッシュ化したデータはSTLやOBJ、DXFなど3D CADで扱えるファイル形式に変換して、設計データとの重ね合わせや図面作成に利用します。ただしメッシュ化するとデータ量が非常に大きくなるため、用途に応じて点群のまま利用するかメッシュモデルにするか検討が必要です。

ファイル形式への変換: 点群データを外部に受け渡したり長期保管したりするには、標準的なファイル形式に変換・保存することが重要です。代表的な点群データのファイル形式としては LASLAZE57 などがあります。LAS は米国ASPRSが策定した業界標準の点群データ交換フォーマットで、測位情報や強度、分類情報なども含めて記録できます。LAZ はLASを可逆圧縮した形式で、データ精度を保ったままファイルサイズを大幅に削減できるメリットがあります。E57 はASTM策定のベンダーニュートラルな形式で、複数スキャナ機種からの統合や画像・属性情報の一括保存に適した柔軟なフォーマットです。そのほか各メーカー独自形式(例: LeicaのPTX/PTS、TopconのCL3/CLR等)やテキスト形式(.xyzや.csvなど)も存在しますが、長期運用やソフト間連携を考えるとLAS/LAZやE57への変換が無難でしょう。


点群データの保存と管理

高精細な点群データはしばしば巨大なサイズになります。一般的に10GB以上の容量を要し、用途によっては100GB超に達する場合もあります。国土地理院の公開している航空レーザ測量データでも、1ファイルあたり数百MB~数GB規模になるとされています。このためノイズ処理や形式変換などの作業はスペックの高いPCや専用ソフトでないと現実的でなく、日常的なデータ閲覧にも工夫が必要です。


オンプレミスでの保存: 現在、公共事業の成果として納品される点群データは、多くがCD/DVDや外付けハードディスクなどの物理メディアで受け渡され、各発注機関や会社内のサーバーに蓄積・保管されています。オンプレミスで管理する利点は、機密性の高いデータを自社内で厳重に管理できる点や、ネット接続のない環境でも利用できる点です。しかし一方で、社内だけで巨大データを抱え込むと関係者間での共有が困難になりがちです。部署ごとに保管された点群が「宝の持ち腐れ」になってしまい、十分に活用されないケースも指摘されています。


クラウドでの管理・共有: 近年はクラウドサービスを活用して点群データを管理・共有する動きも出てきています。例えば、国土交通省は3D点群や都市モデルなどのオープンデータを集約・公開する「国土交通データプラットフォーム」を整備しつつあります。また自治体レベルでも、奈良県香芝市は道路網の点群データをデジタルツイン環境で一般公開する全国初の試みを行いました。この「香芝RID」というクラウドシステムでは、市内全域270kmの道路点群をサーバーに載せ、事業者や市民がウェブからアクセスできるようにしています。クラウド上にデータを置けば、発注者・受注者間で同じデータを同時に参照したり、遠隔地の関係者とも迅速に情報共有できる利点があります。加えて、Webブラウザ上で動作する点群ビューア(例:国土地理院「点群タイル」技術や民間の3D点群ブラウザ)が登場しており、専用ソフトを持たない人でもオンラインで点群を閲覧・測定できる環境が整いつつあります。もっともクラウド利用にあたっては、通信環境やセキュリティポリシーの問題も考慮が必要です。プロジェクトの規模や目的に応じて、オンプレとクラウドそれぞれのメリットを活かしたハイブリッドな運用も検討されます。


点群データの活用事例

最後に、取得・処理・保存した点群データが実際の業務でどのように活用できるか、代表的な5つの活用シーンを紹介します。出来形管理や施工管理、BIM連携など幅広い場面で活用が進んでおり、従来手法と比べたメリットも確認され始めています。初心者の方も、自分の業務でどう使えるかイメージしてみましょう。


 出来形管理への活用: 出来形管理とは、工事完了後の構造物や地形が設計図どおりに出来ているかを検測・確認する工程です。点群計測はこの出来形管理に革新をもたらしています。例えばコンクリート構造物の配筋出来形を固定式レーザースキャナで計測し、部材寸法を点群上でチェックした事例では、従来の人力測定に比べて費用・時間を約73%削減できたとの報告があります。また点群データから構造物表面の基準面を作成し、各点の微小な高低差を色分布図で可視化することで、コンクリート壁面の浮き剥離漏水といった劣化兆候を検知することも可能です。実際に、点群で壁面の浮きや剥離を検知し、法定点検の効率化に繋げたケースもあります。このように、点群活用による出来形管理は、品質確保と省力化の両面で大きなメリットがあります。


施工管理への活用: 施工管理では、工事の進捗や出来高を把握したり、施工精度を検証したりする場面で点群が役立ちます。例えば土工事では、ドローン写真測量やレーザースキャナで定期的に現場の地形点群を取得し、設計モデル(CIMデータ)と比較して盛土・切土の進捗量を自動算出できます。これにより出来高確認のための人力測量を減らし、安全性も向上します。また重機搭載型のマシンガイダンスと組み合わせて、点群上で掘削・盛土すべき高さをリアルタイム表示し、熟練オペレータでなくとも高精度な造成を行うといった先進事例も出てきています。さらに、点群データを施工記録として蓄積しておけば、将来的に「あの時どれだけ施工したか」をトレースでき、施工履歴のトレーサビリティ確保にも繋がります。国交省の要領でも「点群データや施工履歴データの取得により施工管理の高度化とトレーサビリティ確保が図れる」ことがうたわれています。


BIM/CIM連携への活用: BIM(Building Information Modeling)や CIM(Construction Information Modeling)の文脈でも点群データは重要な役割を果たします。例えば既存構造物のリニューアル工事では、現況を点群計測して精密な既存モデルを起こし、それを元にBIM設計を行う「スキャン to BIM」の手法が一般化しつつあります。これにより現場の実態を忠実に反映した設計が可能となり、設計ミスや施工時の手戻りを削減できます。また、新設工事では施工途中の点群を設計BIM/CIMモデルと重ね合わせ、躯体位置のズレや干渉を出来形BIMモデルとしてチェックする活用も進んでいます。出来形検査時に点群と設計3Dモデルを比較することで、出来形寸法管理図を自動生成したり、出来形管理項目を一括判定するといった効率化も可能です。さらに、完成後の構造物を点群+BIMでデジタルアーカイブ化しておけば、将来の改修設計や災害時の復旧計画にも迅速に活用できます。こうしたBIM/CIMと点群データの連携活用は、建設生産・管理プロセス全体のDX(デジタルトランスフォーメーション)を支えるキーテクノロジーと言えるでしょう。


維持管理(インフラ保全)への活用: インフラの維持管理分野でも点群データ活用の効果が実証され始めています。道路や橋梁の定期点検で、レーザースキャナやMMSにより構造物全体の現状を点群で記録し、過去の点群データと比較して変状を把握するといった使い方が可能です。例えばトンネル内を点群計測し、経年での断面形状の変化やひび割れの有無を点群同士の差分で検出する研究も行われています。また前述のコンクリート表面の浮き・剥離検知のように、打音検査では見逃す微細な劣化を面的に抽出できる点も注目されています。さらに、香芝市の事例では市内全域の道路点群をオープンデータ化し、道路改良設計に活用しています。従来は現地測量に延べ17人日かかっていた平面・縦横断図の作成が、点群データ活用によって10.3人日(約46%短縮)で完了したとの報告があり、点群が維持管理業務の効率化に寄与した好例といえます。今後は維持管理で取得される膨大な点群を活かして、AIによる自動損傷判別や予防保全へのフィードバックなど、一層高度な活用も期待されています。


遠隔臨場への活用: 遠隔臨場とは、工事検査や立会いを現場に赴かずに遠隔地から行う手法で、近年国土交通省が本格導入を進めています。ウェアラブルカメラ等で撮影した映像と音声をリアルタイムに共有し、発注者の監督職員がオフィスから出来形確認や立会を行う仕組みです。点群データはこの遠隔臨場を補完するツールとしても有用です。例えば、現場で取得した高精度な点群をクラウド経由で共有すれば、オフィス側の技術者が映像だけでなく3Dの計測情報を併せて確認できます。図面や写真だけでは把握しにくい箇所も、点群データ上で距離や勾配を計測したり断面を切ったりすることで、遠隔地から詳細に検査可能となります。国土交通省の試行要領でも「遠隔臨場において必要に応じて計測データを活用する」ことが想定されており、将来的には点群データや3Dモデルを活用したリモート検査の高度化が期待されています。遠隔臨場は働き方改革やコロナ禍で一気に普及しましたが、点群データとの組み合わせによって、より信頼性の高いリモート監督・検査が可能になるでしょう。


以上、点群データの取得から活用まで一連の流れを解説しました。「測って終わり」になりがちだった点群データをしっかり活かすことで、業務の効率化や品質向上、コスト削減に繋がることがお分かりいただけたと思います。今後、建設DXやインフラ維持管理の高度化において点群データは欠かせない重要ツールとなっていくでしょう。ぜひ本記事の内容を研修資料や業務マニュアルの一助としていただき、現場での3次元データ活用に役立ててください。


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