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点群データの保存方法は?クラウド管理とファイル形式の基本

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万能の測量機LRTKの説明

建設業界でも活用が進む「点群データ」は、無数の3次元座標点(X,Y,Z)から現場の形状を精密に記録したデータです。たとえばレーザースキャナやドローン測量で取得した点群には、各点の座標に加えRGBカラーや反射強度(インテンシティ)などの属性情報も含まれ、高精度に現場を再現できます。しかしそのデータ量は膨大で、現場一つ分で数千万点以上・数百MB~数GBにもなることも珍しくありません。本記事では、点群データの主なファイル形式とその違い、データ容量と圧縮のポイント、そしてクラウドでの保存・管理方法について、初心者にもわかりやすく基礎から解説します。また、オンプレミス(社内保管)とクラウドの使い分けや、点群データ運用の具体的フロー例も紹介します。


点群データの主なファイル形式と違い

点群データには様々なファイル形式(拡張子)があり、それぞれデータ構造や保持できる情報、用途に違いがあります。代表的な形式と特徴は次の通りです。


LAS(LASer): 点群データ交換の業界標準とされるバイナリ形式です。米国ASPRSが仕様策定しており、航空レーザ測量や地上LiDAR問わず幅広く使われます。各点の座標値(X,Y,Z)だけでなく、強度(反射強度インテンシティ)、分類コード(地面・建物・植物など)や点IDといった豊富な属性情報を格納できます。LASファイルはバイナリ形式のためテキスト形式よりサイズが小さく読み込みも高速で、GISソフトや点群処理ソフトで広く対応されています。

LAZ(LASzip): LASファイルを可逆圧縮した形式で、データ内容はLASと同等です。圧縮アルゴリズムによりファイルサイズを大幅に縮小でき、LASの約1/5~1/10程度のサイズになることもあります。例えば約1000万点の点群ではLASが150MB程度でも、LAZにすれば50MB前後まで縮められます。LASの全情報を保持しつつ効率的に保存・転送できるため、大規模データの共有に適しています(対応ソフトで解凍せず直接読み込み可)。

PLY(Polygon File Format): 元々3Dモデル用のフォーマットですが、点群データの保存にも利用されます。バイナリ・テキスト両形式をサポートし、各点の座標や法線ベクトル、色情報などを記録可能です。特徴はポリゴンメッシュの面情報も含められる点で、点群から生成した3Dメッシュモデルの保存に使われることもあります。主に3DスキャンやCG分野で利用され、建設分野では点群+メッシュモデルを扱う場面で見られます。

E57(ASTM E57): 3D点群データと付随情報のための国際標準フォーマットです。LAS同様バイナリ形式で効率的に格納でき、特徴として複数の点群スキャンやデジタル画像も一つのファイルに含められる点があります。例えば地上レーザースキャナで取得した各位置ごとの点群と、その位置で撮影した360°写真を統合して保存できるため、色付き点群の生成現場写真との対応付けに便利です。E57はメーカー間の中間フォーマットとして位置付けられ、各種点群処理ソフトやBIMソフトで広くサポートされています。

テキスト形式(.txt, .csv, .xyz など): 座標値をカンマ区切りや空白区切りのテキストで列挙した形式です。各点のX,Y,Z座標のほか必要に応じて強度やRGB値を列に持たせることもできますが、フォーマットは統一されておらず扱うソフト間で列順を合わせる必要があります。人間が直接中身を確認しやすい反面、データ量が非常に大きくなりがちなのが欠点です。例えば1000万点の点群をCSVで保存すると約490MBにもなりましたが、LAS(二進法)では約150MBに収まっています。文字列として各数値や区切り記号を記録するため容量増大と読み書きの低速化を招き、あまり効率的ではありません。少点数のデータや簡易的な交換には使えますが、大規模点群では可能ならLAS/E57などバイナリ形式へ変換することが望ましいでしょう。

PTS/PTX(スキャナベンダー形式): 点群計測機器メーカーが採用する独自形式です。PTSはLeica社などで使われるテキスト形式の点群ファイルで、各点の座標や強度値を空白区切りで列挙し、ファイル冒頭に点数等のヘッダ情報を含みます。PTXは複数スキャン位置の点群を含む特殊なテキスト形式で、各スキャンの行列状点群を連結保存できます。これらベンダー形式は計測機から直接出力されるケースがありますが、データ量が大きいため処理後はLAS/E57等に変換されることが多いです。またAutodesk RecapのRCP/RCSやFaroのFLSなど、各社専用形式も存在しますが、それらは該当ソフト以外では扱いづらいため、長期保管や他社共有時には中間フォーマット(LAS/E57等)にしておくのが無難です。


以上のように、点群ファイル形式によって互換性や保持情報が異なるため、用途に応じて使い分ける必要があります。例えば他社とデータ交換するなら標準的なLASやE57が適し、独自形式は避けるべきです。カラー情報が必要な場合はLAS(PDRF含む)やE57、PLYなら保持できますが、XYZでは別途色ファイルを用意する必要があります。また大規模プロジェクトでは、後述のように圧縮形式LAZの活用も検討すると良いでしょう。


点群データ容量と圧縮のポイント

▼ データ容量の目安: 点群データはファイル形式によってサイズが大きく変わります。一般にテキスト形式は容量が肥大化し、バイナリ形式は圧縮され効率的です。例えば国土測量の基準では1㎡あたり4点以上の密度が推奨されていますが、300m×400m程度の範囲を測量すると点数は1000万点を超え、テキスト(CSV)では500MB前後LAS(二進形式)では150MB程度になると報告されています。このようにLASはテキストの1/3程度の容量に抑えられ、読み書き速度も速い利点があります。点群データには座標値のほかにRGB色や強度など複数属性が付加されるため、対象範囲が広かったり点密度が高いと平気で数百MB~数GBのファイルサイズになることを念頭に置く必要があります。


▼ LAZ圧縮の活用: 大容量データを扱う際は、LASをLAZ形式に圧縮することで格段に取り回しが楽になります。LAZはLASを可逆圧縮して情報劣化なくサイズだけ縮小でき、実際に「LAS ⇒ LAZ」でファイルサイズが1/5~1/10になることが確認されています。たとえば500MBのLASデータが50MB程度にまで軽量化できれば、クラウド共有時の転送時間も大幅に短縮できます。国土地理院や自治体オープンデータでもLASをLAZに圧縮した形で提供するケースが増えており、受け取った側もLASzip対応ソフトかライブラリ(PDALやLASzipツール等)で解凍・利用が可能です。特に保管や配布にはLAZを積極的に活用することが推奨されます。


▼ ファイル分割と軽量化: 点群データを効率的に扱う工夫として、領域ごと・計測位置ごとのファイルに分割する方法もあります。単一の巨大ファイルより複数ファイルに分けた方が、並列処理による読み込み高速化が可能です。例えば地上型レーザースキャナで取得した点群は、機器ごと(スキャン位置ごと)にファイルを分けて保存し、必要な部分だけ読み込むことで無駄を減らせます。またソフトによっては点群をサンプリング(間引き)して軽量版を生成したり、ビューア用に解像度可変の形式(例: COPC.LAZ=クラウド最適化点群)へ変換する機能もあります。運用上は、生データ(フル解像度LAS)と圧縮・軽量版データ(LAZや縮小点群)を両方用意し、用途に応じて使い分けるとよいでしょう。


※なお、国土地理院の指針では納品時の標準フォーマットをLAS1.2(必要に応じLAZ圧縮)と定めている例があります。こうした公的仕様に従う場合は指定形式での保存が必要です。基本的には元データはフル情報のLAS/E57で保持し、配布時にLAZ圧縮という形が望ましいと言えます。


点群データのクラウド保存と管理方法

膨大な点群データをクラウドストレージで管理・共有する動きが近年広がっています。クラウド活用により「重いデータを毎回ハードディスクで手渡しする」「社内サーバー増設に追われる」といった課題を解決でき、関係者間でのリアルタイム共有も容易になります。ここでは、建設業界で利用される主なクラウド保存の方法とその特徴を紹介します。


汎用クラウドストレージサービス: Google DriveやOneDrive、Dropbox、Boxといった一般的なクラウドストレージに点群ファイルをアップロードし、リンク共有する方法です。メリットは手軽さで、既存の社内クラウド環境をそのまま利用できます。ただし大容量ファイルのアップロード・ダウンロードに時間がかかる点や、プレビュー機能が点群に非対応で結局ダウンロードして専用ソフトで開かなければならない点が課題です。サイズ制限にも注意が必要で、例えば無料版では単一ファイル数GBまでなどの制約があります。簡易な共有には使えますが、真の活用には専用ビューア等との併用が望まれます。

点群データ共有特化型クラウド: 点群データの閲覧・管理に特化したクラウドサービスも多数登場しています。これらはブラウザ上で3D点群を表示し、測定や注釈付けなどができるため、受け手はソフトを持っていなくてもWebブラウザから点群を扱えるのが大きな利点です。代表例を挙げます。 * InfiPoints Cloud(エリジオン): 大規模点群処理ソフトInfiPointsのクラウドプラットフォーム。処理済み点群をアップロードすれば、高性能PCでなくてもブラウザで手軽に閲覧可能で、相手先に専用ソフトをインストールしてもらう必要もありません。HDDでデータをコピーして郵送…といった手間も不要になり、URLひとつで高速に現場情報を共有できます。点群のフィッティング(位置合わせ)やノイズ除去など一部処理をクラウド側で自動化する機能もあり、ユーザーの作業負担軽減にも寄与しています。 * ポイントクラウドビュー(ニコン・トリンブル): 測量機メーカーのTrimbleが提供するクラウド点群共有ソリューションで、Trimble Connect上で動作します。専用クラウドストレージ1TBが付属し、LAS/LAZやE57など主要点群形式に対応。3Dビューアで点群とパノラマ写真を同期表示でき、座標付きの点群ならBIM/CADデータと重ね合わせた仮想現実空間での検討も可能です。現場のタブレットやスマホからもアクセスでき、施工者~協力会社~発注者間でいつでも現況を共有できるのが強みです。 * ScanX(スキャンエックス): 国産のクラウド点群サービスで、ドローン写真からの点群生成機能とも連携しています。生成した点群をクラウド上でそのまま編集・分類でき、出来上がった点群はワンクリックで関係者にURL共有可能。受け手はブラウザで遠隔閲覧・簡易編集できるため、複数現場の点群を社内で一元管理する使い方がされています。「端末ごとにソフトを買う必要がなくコスト削減になる」「現場ごとのデータ出力や変換作業が不要になり効率向上」といった利点が現場から報告されています。 * MAGNET Collage Web(トプコン): 測量大手トプコンの点群処理ソフトMAGNET CollageのWebビューアです。クラウド上にアップした点群データを3Dタイル化し、Webブラウザで高速表示・共有できる仕組みです。社内外の関係者と共同で点群を確認し、断面の確認や注釈追加などが可能です。測量から出来形管理まで一連のトプコン製品群と統合されており、現場の情報共有を円滑にします。 * 公共事業向けASP型サービス: 国土交通省が推進するCIM(Construction Information Modeling)では、施工プロジェクトで情報共有システム(ASP)の利用が推奨されています。例えば株式会社インフォマティクスのクラウドCIMや、イエラエセキュリティのKOLC+(コルクプラス)などが国交省のASP型情報共有システムとして利用可能です。KOLC+ではBIM/CIMモデルと点群を統合管理し、Web上で統合3D表示や進捗共有が行えます。こうしたASPサービスはセキュリティ対策やアクセス制御機能も備えており、大規模プロジェクトでも安心して点群をクラウド活用できるようになっています。


以上のような専用サービス以外にも、各社から様々なクラウド点群ソリューションが提供されています(例: VisionLidar365, Pinspect MONOLIST, CIMPHONY Plus等)。自社のニーズに合わせて、単なるファイル保管用途なのか、ブラウザでの可視化・コラボレーションが必要なのか、といった観点でサービスを選定するとよいでしょう。


クラウド管理のメリットと課題

クラウドで点群データを管理・共有することには多くのメリットがありますが、留意すべき課題も存在します。ここではクラウド活用の利点考慮点を整理します。


● クラウド活用の主なメリット:


どこからでもアクセス・共有: インターネット経由でデータにアクセスできるため、オフィスはもちろん現場のタブレットからでもリアルタイムに点群を閲覧できます。離れた拠点間でUSBメモリを郵送したり、担当者が出張先にデータを持参したりせずとも、クラウド上で常に最新データを共有可能です。例えば施工会議で発注者に最新現況を見せる、といった場面もブラウザで即座に表示できます。

コラボレーションと情報一元化: 複数人が同じプラットフォーム上で点群データを参照・コメントできるため、「最新版はどれか」「誰がどの変更をしたか」といった齟齬を防げます。クラウドビューア上で距離や面積を計測したり注釈を付与すれば、その結果も含め関係者全員で情報を共有できます。ElysiumのInfiPoints Cloudでは点群内の任意位置に関連資料ファイルやリンクを埋め込め、設計図や写真など関連情報を点群に集約して管理することも可能です。

専用ソフト・高スペックPCが不要: 従来、点群を扱う側も重量級ソフトウェアと高性能PCが必要でした。クラウドサービスではサーバー側で巨大データの処理・描画を行い結果を配信するため、一般的な事務用PCでもブラウザで快適に3D点群を閲覧できます。例えばInfiPoints Cloudでは共有URLを開くだけで点群を確認でき、相手先に特殊なビューアをインストールしてもらう必要もありません。このおかげで、技術者以外のスタッフや協力会社も手軽に3Dデータを活用できる環境を整えられます。

データ管理・バックアップの効率化: 点群の蓄積が進むと社内サーバー増設やHDD買い足しが発生しがちですが、クラウドを使えばその心配が軽減されます。大容量ストレージをオンデマンドに利用でき、必要に応じて容量追加も可能です。またクラウド事業者側で冗長化・バックアップがなされているため、社内で複製を管理する負担も減ります。例えば「毎回USBディスクにコピーして二重保管」等の手作業も省け、災害や機器故障時のデータ消失リスクも低減します。

他システムとの連携: クラウド上にデータがあることで、他のオンラインサービスと連携しやすくなる利点もあります。例えばBIM/CIMクラウドと点群クラウドをリンクさせて設計モデルと出来形点群を突合せチェックしたり、GISクラウドに点群を重ねて地図上で管理したりといったデータ連携の展開性が向上します。APIを提供するサービスもあり、点群を軸とした新たなDXツール構築の基盤にもなり得ます。


● クラウド活用における課題・注意点:


回線速度・通信環境: 最大のネックはネットワーク帯域です。点群データは圧縮してもファイルサイズが大きいため、クラウドへのアップロードやダウンロードには高速回線が求められます。光回線等が整備されたオフィスでは問題ありませんが、現場事務所の回線が細い場合やモバイル通信では時間がかかることがあります。またトンネル内や山間部など現場で通信圏外となるケースではクラウドに依存できず、事前にローカルにデータを保存しておく対応も必要です。大容量を扱う際は可能なら夜間に転送する、LTE回線ではなくWi-Fiを利用する等の配慮をしましょう。

セキュリティと機密性: クラウド上にアップしたデータは基本インターネット経由でアクセス可能になるため、情報漏えい対策が重要です。サービス選定時にはデータの暗号化、アクセス権限管理、ログ監視などセキュリティ機能を確認してください。特にインフラ設備やプラントの点群は機密性が高いため、社外クラウドに置けないというポリシーもあります。その場合は社内プライベートクラウドかオンプレミス運用を選択する必要があります。クラウドサービスでも利用者ごとに細かなアクセス制御を設定できるもの(例: KOLC+のユーザー権限管理)を活用し、閲覧者を限定したりダウンロード禁止設定をするなどの対策を講じましょう。

コスト: クラウド利用には継続的な費用が発生します。ストレージ容量に応じた月額課金やユーザーライセンス料など、社内サーバー運用と異なるコスト構造を理解する必要があります。大量の点群を長期間保管すると料金が嵩む可能性もあるため、不要データは適宜削除する、アーカイブ用途は安価なコールドストレージに移す等の工夫でコスト最適化を図りましょう。一方でオンプレミスでもサーバー機器代や更新作業コストがかかるため、トータルコストで見極めることが大切です。

運用ルール整備: クラウド導入後は「どの段階のデータをクラウドに上げるか」「どのバージョンを正とするか」といった運用ルールの策定も欠かせません。現場担当者がスキャン直後の生点群を都度アップするのか、ノイズ除去・変換後の確定データのみアップするのか、社内で方針を共有しましょう。またフォルダ構成やファイル命名規則も決めておくと、大量の点群を後から探しやすくなります。クラウドは便利ですが放任するとデータが氾濫しかねないため、情報管理担当者が主体となって整理・権限設定を行うことが望まれます。


以上のメリット・デメリットを踏まえ、現場のICT活用度合いや社内規程に応じてクラウド活用を検討してください。幸い現在のクラウド点群ビューアにはオンプレミス環境に導入できるタイプも存在します。どうしても社外クラウドが使えない場合は、社内サーバーにインストールしてWebブラウザ共有できるソリューション(例: 国際航業のFusionSpace®はオンプレミス対応)を採用する手もあります。重要なのは、プロジェクト関係者全員が必要なときに点群データへアクセスできる環境を整えることです。その目的に照らし、最適な保存・共有方法を選びましょう。


オンプレミス(社内保管)とクラウドの使い分け

最後に、社内サーバー等でのオンプレミス保管クラウド活用の棲み分けについて整理します。両者には一長一短があり、プロジェクトの規模や要件によって適した使い方があります。


オンプレミス保管の特徴: 自社内のサーバーやNAS、外付けHDDに点群データを保存する形態です。メリットは社内ネットワーク上で高速にアクセスできる点と、データを自社管理下に置ける安心感です。社内LANなら数十GBのファイルでも短時間でコピーできますし、機密情報も外部に出さずに済みます。ネット回線の不調に左右されないため、オフィスや現場内で閉じた利用には効率的です。しかしデメリットとして、データ増加に応じて機材投資や維持管理が必要になる点があります。実際、多くの企業では大量の点群に対応するため専用サーバーを整備したり外付けHDDを次々と買い足すといった対応をしています。点群データは1現場で数十~数百GBにもなるため、案件が増えるほどストレージ拡張とバックアップの手間がかかり、担当者の負担となります。また社外と共有する際は結局HDDを送付したり、セキュアなファイル転送サービスを利用するなど手間がかかります。オンプレは主に社内完結利用向きで、他社とリアルタイム共有するには不向きと言えます。

クラウド活用の特徴: 先述の通り、クラウドはデータ共有とスケーラビリティに優れます。特に複数社JVや発注者との協働プロジェクトでは、クラウド上で点群や図面を共有する方が断然効率的です。「最新版をメール配信」「USBメモリで受け渡し」といった作業が不要になり、ミスやタイムラグが減ります。さらに最近のクラウド点群サービスはオンプレ環境にも対応しており、必要に応じ社内サーバー設置型クラウド(プライベートクラウド)として運用することも可能です。この場合、社外にはデータを出さず社内LAN上のクラウドシステムとして運用でき、セキュリティポリシーにも適合します。ただ完全オンプレ型は導入コストが高めになる傾向があるため、費用対効果を検討する必要があります。


▼ ハイブリッドな運用例: 現実には「基本は社内保管、必要時のみクラウド共有」「生データはローカル保存し、派生データをクラウド掲載」といったハイブリッド運用も行われています。例えば、原版となる高解像度の点群データ(LASファイル群)は社内ファイルサーバーに保管し、社内の専門部署で解析・モデル化を実施。他方で、発注者との打合せ用に要約版の点群(不要点除去・圧縮したLAZやサンプル点群)をクラウドにアップして共有、といった具合です。こうすれば極秘データは手元に残しつつ、コミュニケーションにはクラウドの機動力を活かせます。また一度クラウドに載せたデータも、プロジェクト終了時にはダウンロードして社内にアーカイブし、クラウド上は削除するという運用も考えられます(クラウド費用節減と情報資産の社内集約のため)。自社のIT方針やプロジェクト要求に合わせ、このような使い分けで柔軟に対応することもできます。


結論として、オンプレミス=自前保管の信頼性と即時性、クラウド=共有性と拡張性と捉えると分かりやすいでしょう。小規模案件や社内完結業務ではオンプレ中心で問題ありませんが、関係者が多岐に渡る場合やDXを推進したい場合はクラウドの恩恵が大きくなります。今後は両者を上手に組み合わせ、「必要な人に必要な時に点群データが届く」環境を構築することが鍵となります。


点群データ運用フローの例(取得→変換→保存→共有→活用)

最後に、実際の建設プロジェクトで点群データをどのように扱うか、一般的な運用フローの一例を示します。点群取得から最終活用までの流れを把握することで、上記で述べたファイル形式選択やクラウド活用の位置づけがより明確になるでしょう。


現場でのデータ取得(計測): まずは対象物・現場を3次元計測して点群データを取得します。方法はプロジェクトにより様々で、ドローン搭載のレーザースキャナや写真測量(SfM)による点群生成、地上型3Dレーザースキャナによる据置き計測、モバイルマッピングシステム(MMS)車両での走行計測などがあります。例えば道路改良工事ではMMSで道路沿線の点群を取得し、橋梁補修では地上レーザースキャナで橋を各方向からスキャンするといった具合です。取得直後の点群データは機器ごとの生データ形式(例: Faroなら`.fls`ファイル等)になっているため、機器付属ソフトや変換ツールでPCに取り込みます。

点群データの前処理・変換: 取得した生点群はそのままでは使えないことが多いため、専用ソフトで点群処理(前処理)を行います。複数測定位置に分かれている場合は位置合わせ(合成・登録)を行い、重複やズレを補正します。不要な点(人や車両など動的物体、ノイズ点)はフィルタで除去し、必要に応じサンプリングや地表面抽出などの処理も実施します。こうしてクリーンアップ・編集した上で、利用しやすい形式にエクスポートします。多くの場合、社内標準や発注者指定に従ってLASまたはE57形式に変換し、一部は圧縮してLAZファイルにします(カラー情報やIntensityも必要なら保持)。例えば地形の航空レーザ点群ならLAS1.2形式、構造物スキャンならE57形式、といったように使い分けます。また後工程でCADソフトに読み込む予定があれば、Recap用にRCP形式や、Civil3D用にPCG形式に変換することもあります。前処理と変換を終えたら、点群データは解析・活用しやすい状態になっています。

データの保存と整理: 前処理を終え生成された点群データを、所定の保管場所に保存します。社内サーバー上のプロジェクトフォルダに点群データ用ディレクトリを作り、日付やエリア別にLAS/E57ファイルを配置するなどの整理を行います。ファイル名には計測日やエリア名、変換形式を入れるなどして、後から見て内容がわかるよう工夫します(例: `20230501_◯◯トンネル_LAS.laz` など)。データ容量が大きい場合はファイルごとにZip圧縮したりチェックサムを付与し、コピー時の欠損を防止します。併せて、位置座標系や取得機器情報などメタデータも記録・共有しておきます。点群は座標系が統一されていないと重ね合わせできないため、測量座標か任意座標かを明示し、必要なら変換パラメータ(基準点座標など)も残しておきます。

クラウドへのアップロード・共有: 続いて、プロジェクト関係者間でデータを共有するためにクラウドを活用します(必要な場合)。社内メンバーだけで扱う段階ではオンプレの共有フォルダで済むかもしれませんが、協力会社や発注者にも展開するならクラウドストレージにアップして共有リンクを発行するのが効率的です。例えば、先ほど保存したLAZファイル群をOneDriveのプロジェクト共有フォルダにアップロードし、閲覧権限付きリンクを関係者に送付します。または、点群ビューアサービス(例: InfiPoints Cloud や BIM/CIM共有クラウド)にデータをアップし、相手にはURL招待を送ります。発注者からは「現況点群データ一式」の提出を求められることもあるため、その際はハードディスクにコピーして納品しつつクラウドにも同じデータを上げておくと、納品後の質疑対応などでも即座に参照できて便利です。重要なのは、必要な人全員がアクセスできる場所に最新点群を置くことであり、そのための手段としてクラウドを活用します。

データの活用・分析: 共有された点群データは、各担当者がそれぞれの用途で活用します。例えば設計担当者はCADソフトに点群を読み込み、現況地形と設計モデルを重ねて干渉チェックを行います。施工管理担当者は点群ビューアで出来形の盛土量を算出したり、施工前後の点群差分から撤去土量を比較検証します。発注者はクラウド上で点群を確認し、現場に行かずに状況把握や出来形検査を実施します。またBIM/CIM担当は点群をもとに3Dモデル化(モデリング)を行い、必要に応じて復元図や図面を作成します。例えば橋梁の維持管理では、旧橋の図面が無い場合でも点群から高精度な復元図を起こすことが可能です。このように、点群データは測量・設計・施工・維持管理の各段階で多用途に利活用されます。それぞれの工程でフィードバックがあれば、再度追加計測したり点群を加工して対応します。最終的にプロジェクト完了後は、点群データを長期保管データベースに登録して今後の資産として生かしたり、自治体に納品して公共測量成果とするケースもあります。


以上が点群データの一連の運用フロー例です。このフローにおいて重要なのは、適切なファイル形式選択スムーズなデータ共有です。取得後すぐ点群をクラウドに上げて関係者と共有すれば、「現場でスキャンした翌日には皆がデータを見られる」状況を作れます。逆に従来型の手法(物理メディアで受け渡し)では、担当者が現地調査に行って初めて現況を把握できるといった時間差・情報伝達ロスが発生しがちでした。ICT初心者の方も、本記事で紹介した基礎知識を踏まえて、ぜひ点群データの効率的な保存・管理に取り組んでみてください。適切な形式でデータを残し、クラウドもうまく活用することで、点群の価値を最大限に引き出すことができるでしょう。


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