国交省が推す点群活用｜建設業のDXがここから始まる

建設業界では今、デジタルトランスフォーメーション（DX）の波が押し寄せており、その中核技術の一つとして「点群データ」が注目されています。国土交通省（国交省）も*i-Construction*や*BIM/CIM*といった施策を通じて、点群を含む3次元データ活用を強力に推進しています。本記事では、点群とは何かという基本から、国交省が点群活用を推す背景、点群が建設DXの起点となる理由、実証事例やガイドライン、現場にもたらす変化、中小企業でも導入可能な手段まで、総合的に解説します。「点群」をキーワードに、建設業の未来を読み解いていきましょう。

点群とは何か？その基本とデータ取得方法

点群（ポイントクラウド）とは、3次元空間上の多数の点の集合によって物体や地形の形状を表現したデータのことです。各点にはX・Y・Zの座標値（位置情報）が含まれ、取得手法によっては色情報（RGB値）も持ちます。例えば建物や地形を点群化すると、その表面を覆う無数の点がコンピュータ上に再現され、まるで立体的な「点の写真」のように見えます。この点群データは主に3Dレーザースキャナー（LiDAR）による実測や、ドローン・カメラを使った写真測量（フォトグラメトリ）によって取得します。レーザースキャナーでは対象物にレーザー光を照射し、返ってくる反射光の時間差から高精度に距離（座標）を測定します。一方、写真測量では多数の写真画像から特徴点を抽出し、画像解析によって三次元座標を計算します。いずれの方法でも、対象物や地形の現況を短時間で高精度にデジタル保存できる点が大きな特徴です。取得した時点の現場の姿をそのままデジタルコピー（デジタルツイン）として残せるため、後から必要な寸法を測ったり図面や3Dモデルを起こしたりすることも容易になります。

近年、この点群データの活用場面は土木・建設の現場で急速に広がっています。点群化された現場データがあれば、距離・面積・体積・高さなどを自由な視点で計測することが可能です。従来は人手で一つひとつ測っていた地形や構造物の寸法取りも、点群計測なら一度に広範囲を高精度に測量できます。取得される情報量は桁違いに多く、あとから不足している寸法をソフト上で測定したり、設計図や3Dモデルを作成したりすることも容易です。例えば施工後の出来形管理にも点群は有効です。完成した盛土や造成地形をまるごと点群で記録しておけば、後になって図面が手元になくても正確な3Dモデルや断面図を作成でき、品質管理や将来の改修計画に役立てることができます。このように点群データは、現場のデジタルツインを実現する基盤技術として注目されており、国交省主導の「i-Construction」によって測量から設計・施工・維持管理まで3D活用が推進されています。

国交省が点群を推進する背景：i-ConstructionとBIM/CIM

国土交通省が点群を含む3次元データ活用を推進する背景には、建設業界を取り巻く様々な課題と政策目標があります。まず大きな狙いとして、生産性向上と労働力不足の解消があります。日本の建設業界は少子高齢化や若年層の建設離れによる人手不足が深刻化しており、現場作業の効率を抜本的に高める新たな技術や仕組みが求められています。国交省が推進する*i-Construction*は、まさに「測量から設計、施工、検査、維持管理に至る建設プロセス全体を3次元データでつなぐ」ことを目標に掲げた改革施策です。2016年のi-Construction宣言では「3年以内に橋梁・トンネル・ダム等の公共工事現場にドローン等を投入し、施工から検査まで建設プロセス全体を3次元データで連携させる」とされ、新たな建設手法の導入が図られました。これにより従来の「きつい・汚い・危険」（3K）の現場イメージを一新し、多様な人材を呼び込んで人手不足を解消するとともに、給与・休暇・希望の「新3K」が実現できる魅力ある現場への劇的改善を目指しています。

また、働き方改革による制約（いわゆる2024年問題）もDX推進の後押しとなっています。2024年から建設業にも時間外労働規制が適用され、従来の長時間労働に依存した働き方が続けられなくなるため、現場の省人化・効率化へのニーズが一段と高まっています。3D点群の活用はこうした課題への有力なソリューションであり、人力に頼っていた測量・検査業務をデジタル技術で効率化・自動化することで、限られた人員でも現場を回せるようにする狙いがあります。実際、国交省は2020年4月に「2023年までに小規模案件を除く全ての公共事業にBIM/CIMを原則適用する」方針を決定し、2023年度から本格的にほぼ全ての直轄工事で3次元モデルの導入を開始しました。このBIM/CIM原則適用により、発注者・受注者は施工プロセス全般で3次元モデルを作成・活用することが求められます。言い換えれば、業界全体で2次元図面中心の業務から3次元モデルを前提とした業務プロセスへ移行していくことになり、点群データを用いた業務への転換が不可欠となったのです。

このように、建設現場の生産性革命（i-Construction）と働き方改革、そしてBIM/CIMの原則適用という政策が重なり、点群データの活用は「待ったなし」の状況となっています。国交省が点群技術を推奨するのは、単なる技術トレンドではなく、深刻な人手不足の克服や品質確保、さらには建設業の将来を見据えたデジタル基盤づくりという強い危機感と目的意識に根差しているのです。

点群が建設DXの起点となる理由

では、なぜ点群活用が「建設業のDXはここから始まる」と言われるほど重要視されるのでしょうか。その理由は、点群データがリアルとデジタルを橋渡しする“起点”となり、従来のプロセスを抜本的に変革するポテンシャルを持つからです。

第一に、点群データは現場の状況を丸ごとデジタル化することで、建設プロセス全体の情報連携を可能にします。DXの本質は業務プロセスをデータで一貫化し最適化することにありますが、点群はその出発点として機能します。例えば従来、測量結果や施工記録は図面や写真、数値表など断片的な情報で管理されていました。それが点群によって3Dデータとして統合されることで、計画・設計・施工・検査・維持管理が全てデジタル空間上で繋がるのです。国交省が提唱した「現場を丸ごと3次元データで繋ぐ」というビジョンも、点群があって初めて実現します。

第二に、点群はデジタルツインの構築を通じて高度な施工管理を可能にします。点群によって作られた現場のデジタルコピー上で、出来形の検証や干渉チェック、工程シミュレーションなどを行うことで、これまで現場で起きていた様々な手戻り（リワーク）やミスを事前に防止できます。例えば点群で取得した現況地形と設計データを重ね合わせれば、施工前に土量や形状の差異を洗い出せますし、施工後に設計面との差分（盛土の過不足や仕上がりの誤差）を面的に検証することも容易です。従来は一部サンプル点でしか確認できなかった品質検査が、点群を用いることで対象物の表面を漏れなく検証できるようになり、品質のばらつきや見落としを減らすことができます。点群による3次元モデル上で施工プロセス全体を可視化（見える化）することで、発注者・施工者間での認識共有が進み、設計変更や手戻りも最小限に抑えられるでしょう。さらに、点群データと結びつける形で工事のスケジュール（4D：時間）やコスト情報（5D：費用）をリンクさせれば、施工段階から維持管理までを通じたライフサイクルマネジメントが可能となり、DXによる業務変革の核となります。

第三に、点群活用はペーパーレス化と業務効率化を飛躍的に促進します。例えば国交省は点群など3Dデータで出来形を確認できる場合には、従来必要だった出来形管理図表の作成やその後の立会検査を省略可能とする方針を打ち出しています。これは点群データさえあれば紙の図面に基づく煩雑な書類作成や確認作業を簡略化できることを意味します。実際、点群から自動計測した面積・体積などのデジタル成果を納品すれば、従来提出していた書類の一部を不要とする運用も始まっています。このようにデータ活用による省力化・ペーパーレス化は、建設DXの重要な柱であり、その起点となる点群技術がもたらす恩恵といえます。

以上のような理由から、「点群こそ建設業DXのスタートライン」と位置づけられているのです。現場を正確にデジタル化し、そのデータを軸にプロセス全体を再構築していくことで、これまで不可能だった効率化や高度化が実現できる──点群にはそんな変革力が備わっています。

国交省の実証事例とガイドライン整備、普及状況

国交省は点群データの活用促進にあたり、各種の実証実験やガイドライン整備を進めてきました。その結果、現在では点群技術を安心して導入できる環境とルールが整いつつあります。

まず、国交省は公式な基準類として「3次元計測技術を用いた出来形管理要領」などを策定し、点群を用いた出来形管理の手順や精度管理方法を明確化しました。この要領にはドローン写真測量や地上レーザースキャナはもちろん、スマートフォンを用いた計測手法についても言及されており、これらの新技術も基準に沿った運用が可能となっています。例えばスマホ＋LiDARによる簡易計測であっても、所定の精度検証や標定作業を行えば出来形管理に活用できることが示されています。さらに国や都道府県からは「ICT施工の手引き」「3次元測量マニュアル」等が公開され、点群データの取得から納品までの具体的な流れや留意点が示されています。初めて点群を扱う現場技術者にとっても、こうした公的ガイドラインがあれば安心して業務に組み込むことができるでしょう。

また、新技術情報提供システム（NETIS）などを通じて、点群関連技術の実証事例と効果検証データも蓄積されています。NETISには多数の点群計測・処理ソフトや機器が登録されており、それぞれの活用効果や現場適用時の留意事項が公開されています。例えばあるスマホ測量技術のNETIS評価結果では、「初心者でも容易に計測でき、作業の省人化に資する」ことが実証されていました。このように公的なお墨付きがある技術を選べば、「精度や使いこなしに不安…」といった中小企業でも導入しやすいでしょう。

点群技術の普及状況についても、年々飛躍的に向上しています。国交省直轄工事ではICT施工（3D測量やマシンガイダンス等を活用した施工）の実施率が年々伸び、2023年度には公告件数の87%に達したと報告されています。これはほぼ直轄工事の大半で何らかの形で点群を含む3D技術が使われていることを意味します。また都道府県や政令市といった地方公共団体でも、ICT施工（主に土工）実施率はまだ23%程度ながら前年比で着実に増加しており、今後さらに広がる見通しです。実際、2023年度における国交省発注のICT活用工事件数は4,665件と過去最高を記録したとのデータもあります。このような数値からも、点群活用を含むICT施工が特別な先進事例ではなく、業界の標準的な取り組みへと移行しつつあることがわかります。

総じて言えば、点群技術は制度面・技術面の両方で「使える準備」が整い、現場への浸透が一気に進んでいる段階です。ガイドラインや基準類が充実し、効果実証も蓄積された今、点群はもはや実験段階の技術ではなく実務のメインストリームとして市民権を得たと言えるでしょう。国交省のバックアップのもと、点群活用のための環境は十分に整備されました。あとは現場がそれを使って成果を出すフェーズに来ているのです。

点群活用で現場はこう変わる：時間短縮・品質向上・見える化

では、実際に点群データを現場業務に取り入れると、どのような変化・メリットが得られるのでしょうか。ここでは時間短縮、品質向上、プロセスの見える化、再測量防止といった観点から、その効果を見てみます。

①大幅な時間短縮と効率化: 点群計測の導入によって、測量・出来形管理などの所要時間は劇的に短縮されます。国交省の調査では、ドローン測量やTLS（地上レーザースキャナ）測量を活用したICT土工で、従来工法に比べ約3割の工程時間削減が確認されています。例えば盛土工事の出来形検査では、従来は測量スタッフが現地で多数のポイントを測って断面図を作成していましたが、ドローンで現場全体をスキャンすれば数十分程度で高密度の点群が取得でき、データ処理後に自動で出来形断面が得られます。その結果、人力測定にかけていた日数が大幅短縮されるのです。実証事例でも、点群を用いた出来形確認により現場での計測作業量が削減され、段取り待ちの時間ロスも減少したことが報告されています。特に従来は危険を伴った法面や高所での計測も、点群なら離れた安全な場所からリモートセンシングできるため、高所作業の削減による安全性向上にもつながりました。同じ人員・時間でも格段に多くの情報を取得できるため、結果的に測量・検査の生産性は飛躍的に向上します。

②品質向上と手戻り削減: 点群データによって現場の形状を漏れなく捕捉できることは、施工品質の検証や記録精度の向上に直結します。例えば、完成した構造物や地盤の点群を設計データと付き合わせれば、全表面について設計との差異を色分け表示するヒートマップが得られます。これにより、従来は見逃されがちだったわずかな出来形の不良箇所も検出でき、やり直しが必要な部分を早期に是正できます。紙の図面やごく一部の測点だけでは見落としていた細部も、点群なら隅々まで可視化できるため品質管理の網が細かくなるのです。さらに点群を時系列で取得しておけば、施工プロセスの途中経過も3Dで記録されるので、後工程になってから「基礎の位置がずれていた」「埋設物と干渉した」等の問題が判明するリスクを抑えられます。こうした手戻りの防止効果は、工期短縮やコスト削減にも大きく貢献します。品質確保と効率化を両立できる点は、点群活用の大きな魅力です。

③工程の見える化と合意形成: 3次元のモデルや点群データは、関係者間のコミュニケーションツールとしても威力を発揮します。例えば、点群化した現場データに設計中の3Dモデルを重ね合わせれば、完成イメージを現実空間にAR表示することができます。発注者と受注者がタブレットの画面越しに、まるでその場に構造物ができあがったかのような光景を共有できるため、設計意図や施工範囲の理解が飛躍的に深まります。点群によるAR活用次第では、現場打ち合わせでの食い違いや、完成後の「こんなはずでは…」という認識ギャップを解消し、スムーズな合意形成につなげることも可能です。さらに工事進捗に応じて現場を定期的にスキャンすれば、出来高管理や工程管理の見える化にも役立ちます。週次・月次で取得した点群同士を比較すれば、どこまで造成が進んだか、掘削が設計ラインに達しているか等を視覚的に把握でき、施工管理者はもちろん発注者も含めたチーム全員が進捗を直感的に共有できます。これにより、問題の早期発見や的確な判断が促され、ひいては工期短縮にも資するでしょう。

④再測量の防止とデータ蓄積: 点群導入後によく聞かれる声の一つに「現場にもう一度測りに行く手間が減った」というものがあります。従来は測り漏らしや追加の確認事項が出るたびに再度現地測量が必要でした。しかし一度高密度点群を取得しておけば、「後からあの箇所の寸法も欲しい」となっても現場へ戻ることなくデータ上で計測できます。たとえ当初想定していなかった分析であっても、点群データさえ残しておけばフレキシブルに対応可能です。これは特にリソースの限られる中小現場で大きな利点です。また、こうして蓄積された点群データは将来の維持管理や改修計画にも再利用できます。例えば道路工事で埋設管の位置を点群で記録しておけば、次回の掘削工事時にARでその位置を投影して避けることができます。このように一度の計測が何度もの価値を生むのが点群データ活用の強みであり、結果として無駄な重複作業や測量コストの削減につながっています。

以上、点群活用によって現場にもたらされる変化を見てきました。時間・コスト・安全・品質・コミュニケーションなど、あらゆる面でプラスの効果が報告されており、まさに現場を一変させるゲームチェンジャーと言えるでしょう。こうした変化を実感すると、国交省が点群技術に力を入れる理由もうなずけるのではないでしょうか。

中小企業でも可能な点群導入策：スマホ計測とLRTK

「とはいえ、高性能な3Dレーザースキャナーやドローンを揃えるのは高額で、中小企業には難しいのでは？」と感じる方もいるかもしれません。しかし現在では技術革新により、そのハードルは大きく下がっています。スマートフォン＋低コスト機器で点群計測を始められる時代が到来しており、中小建設業でも現実的に導入可能な選択肢が増えています。

まずコスト面について言えば、点群導入は決して高くありません。かつてプロ仕様の3Dスキャナーは数百万円と高価でしたが、今や手持ちのスマホに安価な周辺デバイスを組み合わせるだけで始められる時代です。例えばスマホ測量アプリが各種登場しており、利用料は月額数万円程度で済むサービスもあります。さらにソフトバンクが提供する高精度GNSS補正サービス「ichimill」のように、数センチ精度の測位が月額数千円という驚きの低価格で利用できるケースもあります。初期導入費用についても、スマホ以外に必要なデバイス類を数十万円規模で揃えれば十分なため、従来機材の1桁以上安いコストで始められる試算です。つまり「点群=高額」というイメージは既に過去のものになりつつあります。

次に操作や運用面でも、技術の民主化が進んでいます。最近のスマホ測量システムは専門知識がなくても誰でも簡単に扱えるよう工夫されており、測定から点群生成までの流れをスマホアプリが自動化してくれます。クラウドサービスと連携したものでは、撮影したデータをアップロードするだけでワンクリックで解析が完了し、複雑なソフトを使いこなす必要もありません。現場でスマホを使ったことがある人なら直感的に操作できるUIが用意されており、結果もスマホ画面で即座に確認できるものが登場しています。例えばその場で盛土の体積を計算したり、必要な距離を測定したりといった後処理も難しい手順なしに実現してしまうのです。このように「難しい」「専門のプロにしか使えない」は昔の話で、今や現場の誰もが使えるツールになりつつあります。事実、iPhoneやiPadのLiDARを使った手軽な点群スキャン製品も登場しており、「安い、早い、誰でも簡単に」をコンセプトに掲げています。自社の現場スタッフが少し研修を受ければ、もう外部の測量業者に頼らなくても自前で点群を使いこなせる時代になったのです。

そして中小企業でも導入しやすい具体的ソリューションの例として注目なのが、スマホ＋RTK（高精度GNSS）の組み合わせです。スマートフォンのカメラや内蔵LiDARで形状を捉えつつ、RTKによるセンチメートル級の位置座標を付与することで、これまで大型の測量機器が必要だった高精度点群計測が手のひらサイズで実現します。例えばiPhone 12 Pro以降のモデルに外付けのRTKレシーバーを組み合わせれば、誰でも現場で高精度な3D点群を取得することが可能です。実際、海外ではPix4DやLeicaなど各社からスマホ対応のRTKデバイス（ケース型のGNSS受信機）と専用アプリが提供され始めており、「スマホが測量機器に早変わり」と評価されています。スマホはもはや電話やカメラとしてだけでなく、手軽な点群スキャナーとして中小企業の現場力を底上げしてくれる存在になってきています。

中でも日本国内で現場導入が進みつつあるのが、*Lefixea社*の提供するLRTKというソリューションです。LRTK Phoneと呼ばれる重さ約165g・厚さ1cmほどの小型RTK-GNSS受信機デバイスをスマートフォンに装着し、専用のLRTKアプリを使ってスマホのカメラやLiDARと連携することで、誰でも簡単に絶対座標付きの点群データを取得できるようにするシステムです。LRTKは日本の準天頂衛星みちびきが配信するセンチメータ級補強サービス（CLAS）にも対応しており、山間部など携帯電波の届かない現場でも単独でcm精度の測位が可能です。これによりインターネット接続が困難な環境でも高精度測量が継続でき、全国どこでも安定した点群計測が実現します。現場ではスマホ一台とLRTK Phoneさえあれば、煩雑な機器の設定なしにすぐ測位を開始でき、取得した点群データは自動的にクラウドへ同期されます。クラウド上の「LRTK Cloud」にアップされたデータにはPCのブラウザからアクセスして解析・管理することも可能で、社内でのデータ共有も容易です。LRTKを導入した現場からは「重機や人手をたくさん割かずとも、現場担当者自ら必要なタイミングで計測できるので、測量待ちの時間が減った」という声が上がっています。メジャーや墨出し道具がなくてもLRTK Phoneさえあれば何でも測れるため、従来の測量段取りが不要になり作業効率が向上したとの報告もあります。まさにスマホが万能測量機に変身すると言えるでしょう。さらにLRTKシリーズは国交省のi-Constructionにも適合しており、現場DXの強力なツールとして位置付けられています。

このように、中小企業であっても手の届く価格と手順で点群技術を導入できる環境が整ってきました。ポイントは、「高価な最新鋭機材をいきなりフルセットで揃える必要はない」ということです。まずはスマホや手軽なデバイスでスモールスタートし、狭い範囲から始めてみるのがおすすめです。使い始めてすぐに効果が実感できれば、社内の理解も得やすく、本格導入へスムーズに移行できるでしょう。幸い、スマホ点群は狭い現場や小規模工事からでも成果を出しやすい特性があります。最初は部分的な活用でも、経験とデータが蓄積すれば徐々に対象範囲や用途を広げていけます。中小建設会社こそ、柔軟な発想でこうした新技術を小回り良く取り入れ、DXの果実を享受していくべき時代と言えます。

まとめ：点群活用で始める建設業のDX

「国交省が推す点群活用｜建設業のDXがここから始まる」というテーマで、点群データの基礎から政策的背景、現場にもたらす変化、そして具体的な導入策まで見てきました。ポイントを振り返ると、点群技術は現場の実態を高精度にデジタル化し、建設プロセス全体の生産性と品質を飛躍的に高める基盤であることがわかります。国交省が強力にバックアップする形で、今や点群活用は特別な先端技術ではなく業界標準の取り組みへと移行しました。3次元データ活用抜きに将来の建設現場は語れない、といっても過言ではないでしょう。

一方で、「ウチの会社でもできるだろうか…」と不安に思う向きも、中小企業でも利用可能な安価で簡便なソリューションが登場している現在、その心配は徐々に払拭されつつあります。スマホを片手に誰もが計測者になれる時代、点群活用への第一歩を踏み出すハードルは驚くほど低くなりました。むしろ重要なのは、まず小さくてもいいから実際に現場で試してみることです。デジタル化の恩恵を実感すれば、現場の意識も変わり、DX推進の好循環が生まれてくるはずです。

国交省の提唱する*i-Construction*やBIM/CIMの潮流は、これからも加速していくでしょう。その起点に位置する点群技術を自社の戦力として取り込めるかどうかが、これからの建設業の競争力を左右すると言っても過言ではありません。点群活用は「今が始めどき」です。技術もコストも実用段階に達した今、現場DXへの一歩を踏み出す絶好のタイミングでしょう。ぜひ点群という武器を手に、建設業のデジタル変革に乗り出してみてはいかがでしょうか。現場の未来が大きく拓けることを期待しています。