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点群で始める現場DX|i-Constructionが変える土木管理の新常識

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万能の測量機LRTKの説明

なぜ今「現場DX」や「点群」が注目されているのか

近年、建設業界では現場DX(デジタルトランスフォーメーション)の必要性が叫ばれています。その背景には、深刻な人手不足や熟練技術者の高齢化、設計図と現場との齟齬による手戻りなど、従来の施工管理が抱える課題があります。国土交通省は2016年にi-Construction(アイ・コンストラクション)というプロジェクトを立ち上げ、測量・設計から施工・検査・維持管理まであらゆるプロセスにICT(情報通信技術)を活用して建設現場の生産性向上を図る取り組みを推進してきました。例えば2023年度から直轄工事にBIM/CIMの原則適用が開始されるなど、業界全体でICT土木(ICT施工)の流れが加速しています。このi-Construction施策のもと、ドローンやモバイル端末による3次元測量が現場に浸透しつつあり、現場DXを支える中核技術として点群データの活用が今、大きな注目を集めているのです。


点群とは何か?図面や写真との違いも含めた基本解説

点群(ポイントクラウド)とは、レーザースキャナーや写真測量などによって得られた多数の3次元点の集合体で、各点が位置座標(X,Y,Z)や色情報などの属性を持つデータのことです。地形や構造物の形状を無数の点でありのまま記録したもので、言わば現実空間を丸ごとコピーしたデジタルツイン(※現実空間を仮想空間に再現する技術)の基盤となる情報です。従来の平面図や2D写真では把握しきれなかった複雑な現場形状も、点群なら高密度な点の集まりとして精密に再現できます。例えば古いインフラで図面が残っていない場合でも、レーザースキャナや写真測量で構造物全体をスキャンして正確な3Dモデル化や断面図の作成が可能です。一度取得した点群データは何度でも再利用できるという強みがあり、現場を丸ごとデータ化しておくことで後からさまざまな分析や図面作成に役立てられます。このように点群は従来の図面や写真とは異なり、現場の実態を3次元で余すところなく記録できる点が大きな特徴なのです。


点群データの取得方法も多様化しています。固定式や移動式の3Dレーザースキャナーによる計測はもちろん、ドローンによる写真測量(フォトグラメトリ)やMMS(モバイルマッピングシステム)によって広範囲の点群を取得することもできます。最近ではスマートフォンやタブレットに内蔵された簡易LiDARセンサーや高性能カメラを使って、身近な機器で点群を得ることも可能になりました(詳細は後述します)。このように点群技術は着実に身近なものとなりつつあり、現場DX推進の強力な武器として期待されています。


点群で変わる土木施工管理:出来形管理・土量計算・施工検査・遠隔共有

点群データを導入すると、土木の施工管理の現場で従来とは大きく異なるワークフローやメリットが生まれます。以下に、出来形管理土量計算施工検査遠隔共有といった具体的な活用分野ごとに、その効果を整理してみましょう。


出来形管理(※完成した構造物の形状寸法を管理すること): 点群を用いることで、完成形を高精度に計測・記録でき、設計通りに施工できているかを直感的に確認できます。従来は現場でスケールや計測器を使って部分的に測っていた出来形も、点群データ上で全体を網羅的にチェック可能です。設計モデル(BIM/CIMデータ)と取得した点群を重ね合わせれば、わずかな差異も見逃さず把握でき、品質管理の精度向上に役立ちます。また、点群から出来形図書を作成したり、出来形検査にそのまま活用したりと、記録作業の効率化と確実性向上にもつながります。

土量計算: 土工事における盛土・切土量の算出も、点群活用で大きく変わります。施工前と施工後の地形点群データを比較すれば、従来は平均断面法など手計算に頼っていた出来高数量(掘削・盛土の土量)を自動かつ精密に算出可能です。二つの点群データの差分から盛土量・切土量を高精度に求められるため、出来高管理や出来形図面の作成が迅速になります。その結果、盛土材の発注管理や出来高精算もスムーズに行えるでしょう。点群による土量管理は、人手による測量誤差を減らしつつ大幅な時間短縮を実現する強力なソリューションです。

施工検査・計測: 工事中や竣工時の各種検査にも点群は威力を発揮します。例えば構造物のひび割れ調査では、従来は撮影写真をつなぎ合わせて図面化するのに数日かかっていた作業が、タブレットで周囲をスキャンするだけで数分で完了し、外注していた作業量も3~4割削減できたとの報告があります。このように点群データを用いることで現場記録の精度向上と作業効率化を同時に実現可能です。取得した点群から任意の断面図や寸法を後から測定できるため、追加の現地計測が不要になる場面も多く、検査工程の省力化につながります。さらに前述の通り、設計データとの照合によって施工ミスの早期発見・是正がしやすくなるため、品質検査の信頼性向上にも寄与します。

遠隔共有・リモート監督: 点群データはクラウド等を介して共有することで、遠隔地からでも仮想的に現場を「見る」ことができます。例えば現場で取得した点群を本社オフィスのPCやVRゴーグルで閲覧し、あたかも現地にいるかのように状況確認を行う試みも既に実現されています。実際にVR技術を使ってオフィスから施工中の現場を巡回し、移動時間ゼロで進捗確認ができたケースも報告されています。このように点群データは現場情報共有のプラットフォームとなり、DXが目指す遠隔化・効率化に大きく貢献します。結果として「毎回現場に出向かなくても状況を把握できる」「図面だけでは掴みにくかった状態を直感的に共有できる」といった新しい施工管理スタイルが可能になるのです。


以上のように、点群活用によって施工管理の各側面で作業のデジタル化・効率化と精度向上が期待できます。写真や図面だけに頼っていた従来手法に比べ、そのメリットは非常に大きいと言えるでしょう。


図面や写真との併用で広がる活用の幅

点群データは万能ですが、だからといって従来の図面や写真をすべて置き換えるわけではありません。むしろ図面や写真と併用することで互いの長所を活かし、活用の幅を広げることができます。例えば、点群データにカメラで撮影した写真を合成して各点に色情報(RGB)を付与すれば、点群をより直感的に扱えるビジュアルな3Dモデルにできます。また取得した点群を基にして必要な箇所の詳細図面や正射画像を作成し、設計図書類に追加することで、現場の実情を反映した説得力のある資料作成が可能です。逆に、設計図や既存の2D地形図の上に点群を重ね表示すれば、計画段階との比較検討に役立ちます。例えば、点群化した現況地形モデルと設計の3Dモデルを重ね合わせてみることで、施工計画の妥当性チェックや出来形の出来栄え評価にも応用できるでしょう。写真についても、従来どおり施工記録や細部の質感把握には有用なので、点群+図面+写真を組み合わせて使うことで現場記録の信頼性と利便性が一段と高まります。要するに、点群データは図面や写真を排除するものではなく、組み合わせることで現場情報を多角的に捉えるための強力なツールなのです。


スマホやLRTKで誰でも簡単に点群取得できる時代に

「高価な3Dレーザースキャナーを買わないと点群は扱えないのでは?」と心配される方もいるかもしれません。しかしご安心ください。最近ではスマートフォンを使って手軽に点群データを計測する技術が登場しつつあります。例えば最新のiPhoneやiPad Proには小型のLiDAR(ライダー)センサーが内蔵されており、専用のアプリを使えば周囲をスキャンするだけで簡易的な3D点群を取得可能です。さらにはスマホのカメラで複数枚の写真を撮影し、フォトグラメトリ技術で点群化するサービスも増えてきました。技術の進歩によって、特別な訓練を受けていない初心者でも身近なデバイスで3D測量が行える時代になりつつあります。点群取得のハードルは着実に下がっており、「とりあえず現場で試してみる」ことが大掛かりな投資なしに可能になっています。


中でも注目したいのが、スマホに取り付けるタイプの高精度GNSS受信機を使った手法です。例えばLefixea社のLRTK Phoneは、iPhoneと一体化してリアルタイムキネマティック方式によるセンチメートル級の測位(RTK-GNSS測位)を実現する超小型デバイスです。このようなデバイスを装着すると、スマホ内蔵LiDARでスキャンした点群にその場で正確な絶対座標(世界測地系座標)を与えることができます。難しい後処理をしなくても、取得した点群が直ちに現場の測量座標系に合致した形で記録されるため、既存の設計データや測量図と点群を直接重ねて比較検討できるようになります。これは測位の専門知識がない初心者にとっても嬉しい進歩で、基準点さえ設置すれば誰でも簡単に高精度な点群計測が行えるという大きな利点です。


実際、スマホと小型GNSS受信機から成るLRTKシステムを用いて、たとえば盛土の山をぐるりと歩いてスキャンすれば、その土量(体積)をその場で即座に算出・表示することも可能です。従来は測量から計算まで半日以上かかっていた土量計測が数分で完了してしまうイメージで、現場の土量管理が飛躍的に効率化します。さらに取得した点群は自動的にクラウドに同期できるので、事務所にいながら即座にデータを確認したりチームで共有したりすることも容易です。加えて、点群データとAR(拡張現実)技術を組み合わせて所定の位置に杭を打つ作業を誘導するAR測量機能など、新しい施工支援ツールへの発展可能性も見えてきました。このようにスマホ測量や手頃な機器の活用によって、「誰でもどこでも高速・高精度に3D点群を取得できる」時代が現実のものとなりつつあります。専門機材の導入を諦める前に、まずは身近なスマホから点群活用を始めてみるのも良いでしょう。無料または安価なアプリも数多く登場していますので、社内でデモ的に試して手応えを感じたら本格導入を検討するといった段階的アプローチがおすすめです。


まとめ:点群を“現場DX”の第一歩に

ここまで点群データの基礎から活用方法まで、初心者向けに具体的に解説してきました。最初は難しそうに思えたかもしれませんが、要点を押さえれば決して敷居の高い技術ではないことがお分かりいただけたのではないでしょうか。むしろ一度使ってみると、「どうして今まで使ってこなかったんだろう?」と思うほど、業務改善に役立つ場面が多いはずです。現場DXは一朝一夕には進みませんが、点群活用はその有力な第一歩となります。最初は小さく始め、現場の一部からでも試行してみて、そこで得られた成功体験を徐々に横展開していくと良いでしょう。例えば一部の測量業務を点群で代替してみるだけでも、「こんなに簡単に正確に測れた」「点群だとこんなことまで分かる」といった新たな気付きが得られるはずです。そうした気付きの積み重ねが現場全体の生産性向上につながり、ひいては働き方改革や人手不足の解消にも寄与します。


最後に強調しておきたいのは、点群導入はあくまで手段であって目的ではないという点です。新しい技術を使うこと自体が目的化しては本末転倒ですので、「点群を使って何を良くしたいのか」を常に念頭に置いて取り組みましょう。その上で、ぜひ恐れずに点群という新たなツールを現場管理に取り入れてみてください。きっと「これなら自分の現場でも使えそうだ」と実感でき、DXへの第一歩を踏み出す大きな原動力になるはずです。デジタル技術を味方につけて、よりスマートで効率的な施工管理を実現していきましょう!


LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上

LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。

LRTKの詳細については、下記のリンクよりご覧ください。

 

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