なぜ今、出来形記録を点群で残す必要があるのか?
土木工事における出来形記録(施工後の出来上がり形状の記録)は、品質保証と将来のための重要な工程です。従来は写真や紙の図面で記録するのが一般的でしたが、近年は3次元の点群データを活用する動きが「新常識」になりつつあります。背景には、国土交通省による *i-Construction* 推進など政策的な後押しと、3Dレーザースキャナー等の計測技術の普及があります。点群による出来形 計測はミリ単位の高精度測量が可能で、インフラ点検や出来形管理での利用が拡大しています。
また、出来形管理が重要なのは「一度施工してしまうと後戻りが難しい」ためです。例えばコンクリート打設前や埋め戻し前など、施工途中でしか測れない箇所は確実に記録しておかなければなりません。後で見えなくなる部分は写真を撮るなどして証拠を残し、完成後でも適切に検証できるよう管理するのが従来のやり方でした。しかし写真や断面図だけの記録では、本当に十分と言えるでしょうか? 将来的に「あの部分の記録が足りない…」と後悔しないためにも、より網羅的で信頼性の高い記録手法が求められています。そこで登場したのが、施工現場で手軽に使える3D計測技術、点群データによる出来形記録です。
点群を用いれば、施工直後の形状をそのまま3Dデータとして丸ごと保存できます。これは品質保証の強力な武器になります。完成形状をデジタルな立体モデルで残しておけば、あとから設計値とのズレを詳細に検証でき、万一のトラブル時にも客観的な証拠となるからです。将来的な改修や増築の際にも役立ち、「記録が残っていない…」という後悔を防ぐ保険にもなります。品質確保・記録性・将来活用の観点から、今まさに出来形記録を点群で残す意義は大きいのです。
従来の出来形記録(写真・断面図)で起きがちなトラブルや後悔
従来の写真や断面図による出来形記録では、現場監督が後になって困ってしまうケースが少なくありません。典型的なのは出来形写真の撮り忘れです。忙しい日々の中でうっかり必要な写真を撮り漏らし、竣工書類をまとめる段階になって「しまった…あの撤去前の状況を撮っていない」「コンクリ基礎の延長部分の写真がない!」と気づくことがあります。気付いた時には既に施工済みで手遅れとなり、証拠が残っていないために大目玉を食らった…という現場経験者の嘆きは珍しくありません。
また、写真や断面図だけでは伝わらない情報も多々あります。写真は写っている範囲しか記録できず、角度や光の加減によって重要なディテールが見えないことがあります。寸法を確認しようにも、写っている定規や目盛りがなければ正確な数値はわかりません。断面図も測定した一部の地点を線で結んだものに過ぎず、測っていない箇所の凹凸までは把握できません。その結果、施工後に「図面では問題ないはずなのに実物を見ると微妙に歪んでいる」「設計と違う気がするが証拠がない」といった問題に直面することがあります。特に発注者や第三者から施工精度を指摘された際、限られた写真・図面しかないと十分に反証できず、現場として歯がゆい思いをするかもしれません。
さらには、従来法では記録取得自体にも手間と時間がかかる問題がありました。人力で測点を一つひとつ計測し、紙に書き込んで写真整理を行う作業は非常に煩雑です。その割に取得できるデータは限られており、構造物全体を把握するのは容易ではありません。このように従来の出来形記録手法には「抜け・漏れ」が発生しやすく、後から困るリスクが潜んでいます。現場監督としては、せっかく苦労して施工した成果物を万全に記録できずに後悔することのないよう、より確実な記録方法を検討する価値があるでしょう。
点群を使った出来形記録のメリット
では、点群データを使うと具体的にどんなメリットがあるのでしょうか。主な利点を現場目線で整理してみます。
• 再測量の手間がなくなる: 一度点群で出来形を記録しておけば、後から必要な寸法を計測するために現場に戻る必要がありません。例えば竣工後に追加の数値が欲しくなっても、保存した点群上でクリックすれば瞬時に距離や高さを測定できます。これにより「あの箇所をもう一度測り直さないと…」という事態を避けられ、現場の手間を大幅に削減できます。
• 点ではなく面で出来形を管理できる: 点群は無数の点の集合体として対象物の表面をすべて記録します。つまり、施工した構造物の形状を隅々まで網羅的にデジタル保存できるのです。そのため設計値との差異を面的に把握でき、測定していない箇所の不陸や微小な凹凸も見逃しません。従来は一部の測点しか確認できず見落としがちな誤差も、点群データを解析すれば色分けしたヒートマップなどで一目瞭然です。広範囲をまとめて評価できる“面管理”によって、出来形管理の精度が飛躍的に向上します。
• 出来形を3Dデータとして長期保存・活用できる: 点群データはデジタル情報としてクラウドやPCに蓄積でき、将来にわたって有効な記録資産となります。パソコン上で自由に視点を変えて現場を再現でき、必要に応じて断面図を切り出したり寸法を再計測したりすることも可能です。例えば施工完了時の点群を残しておけば、数年後の維持管理で変状箇所の有無を比較検証したり、将来的な増築・改修の設計検討に活用したりできます。紙の写真台帳では難しい証拠力の高い3D記録として、出来形管理図書の信頼性を高めることにもつながります。
• 安全性・効率の向上: 点群計測は非接触で広範囲を短時間に取得できるため、作業効率の大幅アップにも貢献します。人力では半日かかった測量が数分で完了するといったケースも珍しくありません。その上、危険な場所でも遠隔から計測できるため安全性の向上という付随的効果も得られます。人が立ち入れない急斜面や重機稼働中のエリアでも、離れた位置から点群を取得できるので測定時のリスクを減らせます。このように点群を使った出来形記録は、精度・効率・安全のあらゆる面で従来手法を上回るメリットを現場にもたらします。
点群導入の障壁とそれを解消する方法
メリットの多い点群記録ですが、現場への本格導入にあたってはいくつかのハードルも指摘されています。主な障壁と、その解消策について見てみましょう。
• 高価な専門機器が必要では? … 従来は3Dレーザースキャナーやドローンなど高額な機材が必要で、「うちの現場には手が出ない」と考える方も多かったでしょう。確かに以前は、出来形の点群計測を行うには据置型の大型機器や高性能PCが不可欠でした。しかし現在は、スマートフォンに小型デバイスを取り付けるだけでセンチメートル級の精度で測量できる手頃な機器が登場しています。例えば東京工業大学発ベンチャーの開発したLRTKというデバイスは、ポケットに収まる受信機をスマホに装着するだけで即座に高精度測位・点群計測が可能です。従来は据置機や大型ドローンが必要だった絶対座標付きの点群計測を、手のひらサイズの機器+スマホアプリで実現できるので す。価格も従来機器に比べて非常にリーズナブルで、1人1台持てる時代になっています。これなら中小規模の現場でもコストを理由に導入を諦める必要はないでしょう。
• 操作が難しく現場に馴染まないのでは? … 最先端の計測となると専門知識や複雑な手順が必要というイメージがありますが、最近の点群計測ツールは驚くほどユーザーフレンドリーです。先述のスマホ+LRTKの例では、専用アプリでボタンを押すだけの直感的な操作で測位・スキャンが行えます。重い機器を持ち歩く必要もなく、現場技術者がスマホ片手に周囲を歩き回って点群を取得し、その場で設計データと重ねて出来形を確認するといった使い方も可能です。取得した高精度データは即座にクラウド経由で共有できるため、事務所の上司や発注者ともリアルタイムで情報を共有できます。このように1人で手軽に使えて即共有できる点群ツールなら、特別なスキルがなくても現場にスムーズに溶け込むでしょう。操作研修も写真整理ソフト程度の手軽さで、若手からベテランまで誰でも扱えるはずです。
• データ量が膨大で扱いきれないのでは? … 点群データは確かにファイルサイズが大きく 、高性能なPCやソフトが必要という不安もあるでしょう。しかし、こちらも心配ありません。最近のクラウドサービスやアプリは、スマホで取得した点群を自動でクラウドにアップロードし、ブラウザ上で閲覧・解析できるようにしてくれます。例えば点群対応のクラウドプラットフォームを使えば、発注者に専用ソフトを配布せずともウェブ経由で3Dデータを共有できるため非常に便利だという声もあります。要は、データ管理も含めてワンストップで提供してくれるツールを選べば良いのです。LRTKでも無料のクラウド連携機能が用意されており、現場で取得したデータを即座に事務所と共有してチェックできます。「データがちゃんと取れているか心配…」という場合も、その場で事務所と確認できるので安心です。専用ソフトの操作に不慣れでも、クラウド上で簡単に点群を扱える環境が整ってきています。
• 精度や信頼性は本当に大丈夫? … スマホで計測と言うと精度に不安を感じるかもしれません。しかし、現在のRTK-GNSS技術やスマホ内蔵のLiDAR技術の進歩により、出来形管理に足りる精度は十分確保できます。実際、LRTKのようなデバイスではRTK固定時で水平±1~2cm・垂直±2~3cm程度の誤差に収まるとされており、従来のトータルステーション測量にも匹敵するレベルです。さらに、取得した点群を設計データと照合して自動検証するソフトウェアも実用化 が進んでおり、点群を用いた出来形管理要領(案)も国交省から提示されています。要は適切に使いこなせば精度も信頼性も問題なく、公式な出来形管理に十分耐えうるということです。現場試行や講習会の事例も増えていますので、安心して導入して良いでしょう。
以上のように、かつて障壁と感じられていた点は技術革新によって次々と解消されてきています。「スマホ+点群」で誰でも手軽に出来形記録が残せる時代は目前どころか、既に始まっているのです。
スマートフォンに装着可能な小型RTK-GNSS受信機「LRTK Phone」。スマホをセンチメートル級精度の万能測量機に変えるデバイスで、誰でも気軽に高精度な点群計測が可能になる。このようなツールの登場で、点群導入のハードルは大きく下がった。
スモールスタートで現場に点群記録を取り入れる実践フロー
「とはいえ、いきなり全現場で点群記録を始めるのは不安…」という方は、まずスモールスタートで小規模に試してみると良いでしょう。ここでは、現場に点群記録を段階的に導入する実践的なフローを紹介します。
• 試行計画を立てる: まずは点群記録を試してみる対象工事やタイミングを決めます。例えば、ある小規模な構造物の出来形だけ点群で記録してみる、または通常の出来形管理に加えて並行して点群計測も行ってみる、といった具合です。社内で必要な許可や機材の手配を調整し、無理のない範囲で計画を立案しましょう。
• 必要な機材・ソフトを準備する: 点群計測に使用するツールを用意します。手元に3Dレーザースキャナーがなくても大丈夫です。スマホと専用デバイス(例えばLRTK)やドローンなど、現場で使える身近な機材からスタートしましょう。事前に簡単な操作説明を受け、テスト計測で勝手が分かると安心です。スマホ+アプリであれば特別な訓練なしに扱えるので、まずは触って慣れてみてください。
• 現場で点群データを取得する: 施工中または施工直後のタイミングで、実際に点群計測を実施します。出来形管理の規定で必要な測定は従来通り行いつつ、並行して点群でも記録を残します。計測時は構造物の全体が漏れなく入るように、必要に応じて複数箇所からスキャンしましょう。スマホ計測の場合は撮影範囲に注意し、取り残しがないようぐるりと撮影します。一度で不安な場合は念のため重複気味にスキャンしておくと安心です。
• データを処理・解析する: 取得した点群データを専用アプリやソフトで処理します。ノイズ除去や座標変換など必要な処理を行い、現場の出来形を可視化しましょう。例えばクラウドにアップロードしてパソコンで表示し、設計データとの差分をチェックします。断面図が欲しい場合は点群データから任意の断面を切り出し、寸法を測定します。体積計算が必要なら点群同士の比較で盛土・掘削量を算出します。専門的な解析が難しければ、ひとまず3D点群を回転させながら出来形を目視確認するだけでも効果的です。初回は試行という位置づけなので、まずデータに慣れることを目標にしましょう。
• 記録として保存し活用する: 点群で得られた成果を社内外で共有し、記録として残します。例えば出来形管理図書に通常の写真や図面と合わせて、点群から生成した3Dビューや断面図を添付してみます。発注者にも「実は点群計測を試してみました」と説明し、3Dモデルを見せると喜ばれるかもしれません。データはクラウドやサーバーに保管し、プロジェクト名や日時とともに整理しておきます。将来的に参照しやすいようファイル名やフォルダ構成を工夫し、社内の共有資産として活用しましょう。
• 効果を検証し段階的に拡大する: スモールスタートの結果を振り返り、点群記録の効果を検証します。写真管理と比べて手間はどうだったか、出来形確認に役立つ発見はあったか、関係者の反応はどうか等を評価しましょう。もし「思ったより簡単にできた」「この凹凸は点群でなければ気づかなかった」といった成果があれば、次はもう少し大きな範囲で試してみます。社内で成功事例として共有し、興味を持った同僚にも使い方を教えてあげましょう。一度に全てを変える必要はありません。小さな成功体験を積み重ねて、徐々に現場全体に点群活用を広げていくことがポイントです。
このように段階的に進めれば、現場スタッフの抵抗感も少なくスムーズに新技術を取り入れられるは ずです。「最初の一歩」を踏み出すハードルさえ越えてしまえば、点群記録の有用性はきっと現場のみんなが実感してくれるでしょう。
おわりに:手軽に始められるLRTKで出来形を3D保存
出来形記録を点群で残すことは、後から振り返って「やっておいて良かった!」と思える現場DXへの投資です。写真や断面図だけでは不安な方も、3Dデータがあれば万全の備えとなり、将来のトラブルや後悔を未然に防げます。幸いなことに、今はスマホを活用した安価で簡単な計測手段が登場しています。その代表例が本記事でも紹介した LRTK(エルアールティーケー) です。
LRTKはスマートフォンに装着して使う小型のRTK-GNSS受信機で、誰でも手軽に高精度な点群計測や測量が行える画期的なデバイスです。専用アプリを使えば難しい設定は不要で、ボタン一つで測位から点群スキャンまでこなせます。取得した出来形の3Dデータはその場でクラウドにアップロードされ、オフィスや発注者と即時共有可能です。まさに「スマホが万能測量機に変身」するツールであり、ポケットサイズ・バッテリー内蔵のため 現場を選ばず持ち運べます。価格も従来の測量機器と比べて圧倒的に安価で、1人1台の時代すら見据えられています。初めての点群導入にはうってつけのソリューションと言えるでしょう。
出来形記録の3D化は、将来当たり前になる可能性が高い流れです。早めに現場で経験を積んでおけば、いざという時に他社との差別化や発注者からの信頼獲得にもつながります。ぜひこの機会に点群活用の一歩を踏み出してみてください。LRTKに興味を持たれた方は、公式サイトで詳細な製品情報や導入事例をご覧いただけます。現場の記録を「点群で残す」新しいスタイルで、施工後に後悔しない確実な出来形管理を実践していきましょう。
[LRTK公式サイト](https://www.lrtk.lefixea.com)(製品概要や導入の問い合わせはこちら)
LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上
LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。
LRTKの詳細については、下記のリンクよりご覧ください。
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