最近、測量業界で「ワンマン測量」というキーワードが注目を集めています。人手不足や働き方改革の波を受け、「測量はチームで行うもの」という従来の常識が見直され、一人の技術者で完結する新たな測量スタイルが求められているためです。本記事ではワンマン測量が注目される背景と従来の課題、新技術によって実現した一人測量の仕組み、そしてその中心にある最新ツールLRTKの特徴とメリットを詳しく解説します。一人作業の常識を変えるLRTKによる革新的な測量手法を知り、現場の効率化にどのような変化が生まれるのか確認してみましょう。
ワンマン測量が注目される背景と従来の課題
建設・土木の現場で行われる測量作業は、品質管理や出来形確認に欠かせない重要な工程です。しかし従来は複数人のチームで行うのが当たり前でした。例えばトータルステーションを用いた測量では、1人が機器を操作し、もう1人が離れた地点でプリズムを持って目標点に立つ必要がありました。このように人手に頼った測量作業は、近年深刻化する人員不足や技術者高齢化の中で大きな負担となっています。また、旧来の方法には次のような課題がありました。
• 人員コストと確保の問題:2~3名体制が前提のため、人手が足りない現場では測量が滞る原因になっていました。熟練測量士と補助者を揃えるコストもかかります。
• 時間と労力の負担:広い現場で数百点を測る場合、複数人でも丸一日以上かかることも珍しくありません。測量後に事務所でデータ整理や図面作成を行う必要もあり、全体のリードタイムが長くなりがちでした。
• ヒューマンエラーのリスク:手書きメモで測点や数値を記録する際の書き写しミス、 写真と測点の紐付け忘れなど、人為的なミスが発生しやすい状況でした。現場でミスに気付かず、後で再測定が必要になるケースもありました。
• 技術の属人化:高度な測量機器の操作や経験はベテランに偏りがちで、特定の担当者が不在だと測量作業が進まないという問題もありました。現場全体で技能を平準化することが課題となっていました。
こうした背景から、「一人で効率良く測量を完結したい」というニーズが高まり、ワンマン測量への注目が急速に高まっています。
一人測量を可能にする技術革新
一人で測量を完結するためには、最新のテクノロジーの力が欠かせません。幸い近年は測量技術が飛躍的に進歩し、ワンマン測量を支えるさまざまなソリューションが登場しています。その代表的な例がロボティックトータルステーションとGNSS(GPS)測位の活用です。
• ロボティックトータルステーション:自動追尾機能を備えたトータルステーションなら、オペレーターが一人でも機器が自動でプリズムを追尾してくれるため、補助者なしで測距・測角が可能です。ただし視通しが必要で、機器自体も高価で扱いに熟練を要します。
• RTK-GNSS測位:衛星測位技術の進展もワンマン測量を後押ししています。特にRTK(リアルタイムキネマティック)方式のGNSSなら、移動局(ローバー)と基準局からの補正情報を組み合わせ、リアルタイムにセンチメートル級の測位精度を実現できます。視通しの制約がなく広範囲で高精度測位できるため、一人で位置出しや出来形計測を行うのに適しています。国や業界もi-ConstructionやDX(デジタルトランスフォーメーション)推進でICT活用を促進しており、RTK-GNSSを活用した一人測量が現場の新常識になりつつあります。
さらに近年では、スマートフォンとこれら高精度測位技術を組み合わせることで、一人測量をより手軽に実現するソリューションが登場しました。誰もが持つスマホを高精度な測量機器に変えてしまおうという発想です。その最先端にあるのが、東京工業大学発のスタートアップ・レフィクシア株式会社が開発した小型デバイスLRTK(エルアールティーケー)です。
LRTKとは?スマホで実現するワンマン測量
LRTKは、スマートフォンに装着して使用する超小型のRTK-GNSS受信機です。重量わずか約160g、厚さ1cmほどの筐体にアンテナとバッテリーを内蔵し、スマホとBluetoothやLightningコネクタで接続して利用します。対応アプリを起動して衛星を捕捉すれば、手のひらサイズのデバイスとスマホだけでセンチメートル精度の測位が可能になります。従来は三脚と据付型機器で行っていた測量も、ポケットに収まる機器+スマホで完結できるわけです。
LRTKをスマホに取り付ければ、誰でも持ち歩いて使える「スマホ測量機」に早変わりします。例えばiPhoneとLRTKがあれば 、現場で位置出し(墨出し)から出来形管理、さらには地形の3Dスキャンまで、一人でこなすことができるようになります。高価な専用機材や複数人の人手を必要とせず、いつでもどこでもさっと取り出して測量できるフットワークの良さが大きな魅力です。まさにワンマン測量を革新する画期的ツールとして注目されています。
それでは、LRTKが具体的にどのような機能と特徴を備えているのか見てみましょう。
LRTKの主な機能と特徴
• センチメートル級の高精度測位:LRTK最大の特長は、GNSSによって誤差数センチの精密測位ができることです。一般的なスマホ内蔵GPSでは5~10m程度の誤差がありますが、LRTKはRTK方式によりリアルタイム補正を行い、境界杭の設置や出来形確認にも十分対応できる測位精度を実現します。高精度な絶対座標が取得できるため、従来は難しかった一人での境界測量や細かな出来形計測も可能になりました。
• ARによる杭打ち座標ナビゲーション:LRTKのスマホアプリには、事前に設定した目標点の座標までユーザーを誘導するナビ機能があります。画面上に「あと東に5cm」「北に10cm」などリアルタイムで表示される案内に従ってスマホを動かすだけで、狙った位置に正確に杭打ちポイントを特定できます。スマホのカメラ映像にARで仮想の印(マーカー)を重ねて表示することもできるため、初めての現場でも迷わず杭位置を定められます。複数人がかりだった位置出し作業も、一人でスムーズにこなせるでしょう。
• LiDARスキャンによる3D点群測量:iPhoneに搭載されたLiDARセンサーやカメラとも連携し、現場の地形や構造物をその場で3D点群データ化できるのもLRTKの魅力です。スマホを手に持って歩き回りながら周囲をスキャンするだけで、各点に高精度な座標が付与された点群モデルを取得できます。従来は見落としがあった細部までデータ化されるため、出来形の全体把握や体積計算、変位モニタリングにも活用可能です。高額なレーザースキャナーやドローンを使わずとも、スマホ一台で広範囲の3次元測量が誰にでも行えます。
• ワンタップ測位と自動記録:測りたい地点ではスマホ画面のボタンをワンタップするだけで、そ の瞬間の緯度・経度・高さを記録できます。LRTKアプリがバックグラウンドで日時や測位状態も含め自動保存し、点名も自動採番して一覧管理されます。紙の野帳に書き写す必要がなく、写真撮影すれば画像にも位置座標や方向タグが付くため、「どの地点で撮った写真か」が後から明確です。煩雑なメモや整理の手間を省き、記録漏れやミスを防止できます。
• クラウド共有による即時活用:現場で取得した測量データは、そのままクラウドへアップロードして関係者とリアルタイム共有可能です。アプリの共有ボタンを押すだけで、記録した座標リストや点群データがLRTKクラウド上に同期されます。オフィスに戻る前に上司や同僚がPCブラウザで結果を確認でき、地図上にプロットされた測点や写真・メモを即座に閲覧できます。専用ソフトがなくてもURL経由で発注者ともデータ共有できるため、測量結果のチェックや追加指示もその場で受けられます。測り終えたデータをすぐ次の工程に活かせるので、工事全体の手戻り防止や意思決定の迅速化につながります。
• スマホ装着型ならではの手軽さ:LRTKはスマホに取り付けて使うため、従来機器と比べ圧倒的に持ち運びが容易でセッティングも簡単です。初めて使う現場でも衛星捕捉からRTKの固定解取得まで数十秒程度で準備完了します。専用アプリも直感的な操作画面で、測量機器の経験が浅い人でも短期間で使いこなせます。測量のノウハウがアプリに組み込まれて標準化されているため、誰でも安定した精度で測れる点も安心です。現場の作業員が一人一台ポケットに入れて持ち歩けるため、「ちょっと測りたい」ときにすぐ取り出して測れる機動力も抜群です。
LRTK導入によるメリット
上記のような機能を備えたLRTKを導入することで、現場の測量作業には次のようなメリットがもたらされます。
• 省人化による人件費削減:これまで2~3名体制で行っていた測量を1名で実施できるため、大幅な人員削減が可能です。限られたスタッフで複数現場を掛け持ちでき、人件費圧縮と人手不足解消に直結します。
• 作業時間の大幅短縮:高精度測位とデータ自動処理により、測量から図面作成・数量計 算・報告までの時間が劇的に短縮されます。例えば、従来は2人で丸一日かかっていた出来形測定が、LRTK導入後は1人で数時間ほどで完了した例もあります。70%以上の時間削減が実現し、作業効率が飛躍的に向上します。
• 測量精度・データ品質の向上:RTK-GNSSによる精密測定で誤差の小さいデータを取得でき、品質確保に貢献します。また点群計測で現場全体を高密度に測れるため、見落としや抜けのない成果品が得られます。精度が高い分、再測定や手直しの発生も減り、スムーズに工程を進められます。
• 安全性の向上:測量にかかる時間短縮は、作業員の現場滞在時間の削減につながり、暑熱環境下での熱中症リスクや高所・交通量の多い場所での事故リスクを低減します。一人で手早く終わらせられれば、危険な状況に晒される時間も最小限で済みます。
• ヒューマンエラーの防止:測定値や写真が自動でデジタル記録されるため、手書きの書き間違いやデータ転記ミスがなくなります。クラウド上でデータを一元管理できるので、記録漏れの心配もありません。常に正確なデータに基づいて作業でき、信頼性の高い成果を出せます。
• 習得の容易さと属人化解消:スマホアプリ中心のシンプルな操作体系のため、短期間のトレーニングで誰でも扱えるようになります。測量ノウハウがシステム化されていることで「その人にしかできない」作業が減り、ベテラン不在でも一定の精度で現場を回せます。組織全体で測量技術を平準化でき、チーム内の技術継承にも役立ちます。
導入事例から見るLRTKの効果
実際にLRTKを現場導入した例として、その効果を確認してみましょう。
建設現場での活用例:ある土木施工現場ではLRTKの導入によって測量作業の大幅な効率化が報告されています。従来は2人1組で丸一日かけて行っていた出来形測定を、LRTK利用後は1人で数時間以内に完了できました。約70%以上の時間短縮となり、人件費削減に加え、現場全体を高密度に計測して品質も向上しています。取得した3D点群データにより、それまで抜き取り調査では見落としていた箇所も把握でき、施工ミスの早期発見や手戻り防止に役立ちました。
自治体での活用例:地方自治体でも現場DXの一環としてLRTKが活用され始めています。例えば福井市では2023年、災害復旧の現場調査にいち早くLRTKシステムを導入しました。被災箇所を職員が発見してすぐスマホで測量を開始できるため、現場と役所を何度も往復する必要がなく、従来より短時間で詳細な被害状況を記録できています。その結果、復旧計画の立案から工事着手までのリードタイムが短縮され、早期復旧とコスト削減に大きく貢献しました。LRTKは初期導入費用が比較的安価なことから自治体にとっても導入しやすく、従来は外部委託していた測量を自前で行うことで費用圧縮や技術の内製化にもつなげています。このように、LRTKによる一人測量は公共分野でも成果を上げており、他の自治体でも導入を検討する動きが広がっています。
LRTKによるワンマン測量の始め方
このように多くの利点を持つLRTKですが、導入・使用方法も非常に簡単です。最後に、LRTKを使って一人測量を始める基本的なステップを確認してみましょう。
• 機器とアプリの準備:まずLRTKデバイス本体を用意し、対応するスマートフォン(例えばiPhone)に取り付けます。スマホには専用の「LRTK」アプリをインストールしておきましょう(App StoreやGoogle Playで無料ダウンロード可能)。
• 現場でセットアップ:測量現場に着いたら、スマホに装着したLRTKの電源を入れ、アプリを起動します。デバイスとスマホが接続されるとGNSS衛星の受信が始まります。数十秒ほど待ってRTKの「FIX解」(高精度な受信状態)が得られれば準備完了です。
• 測定とデータ取得:測りたいポイントに移動し、スマホ画面の「測位」ボタンをタップするだけで、その地点の高精度座標が自動記録されます。広範囲を連続で測りたい場合は、スマホを持って歩き回るだけで先述の点群スキャンを実行できます。杭打ちが必要な場合も、画面の案内に従って動くだけで一人で正確に目標地点を特定可能です。
• 結果の共有・活用:取得した測点データや点群モデルはスマホ上で確認でき、必要に応じて現場写真も紐付けて保存します。測量が終わったらアプリからワンタップでクラウドにデータをアップロードしましょう。オフィスに戻る前に関係者と成果を共有でき、その場で追加の指示や確認を仰ぐことも可能です。これにより、手戻りなく次の工程へスムーズに進むことができます。
以上のステップで、これまで複数人がかりだった測量作業が一人でスムーズに完結します。LRTKは“一人作業”の常識を変える強力なパートナーです。高精度かつ手軽なこのツールを活用すれば、「測量はチームでなければできない」という従来の考え方は過去のものになるでしょう。人手不足や生産性向上に悩む現場こそ、LRTKによるワンマン測量を導入する絶好のタイミングです。最先端の技術であなたの現場に革新をもたらし、測量の常識を一緒にアップデートしてみませんか?
LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上
LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。
LRTKの詳細については、下記のリンクよりご覧ください。
製品に関するご質問やお見積り、導入検討に関するご相談は、
こちらのお問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。ぜひLRTKで、貴社の現場を次のステージへと進化させましょう。

