RTK測位(リアルタイムキネマティック)では、条件が整えばセンチメートル級の高精度な位置情報(Fix解)を得られます。しかし現場では、「RTKがなかなかFixにならない」といった問題に直面することも少なくありません。Fix解が得られない原因は様々ですが、多くの場合、基本的なポイントを見直すことで解決できます。本記事では、RTKがFixしないときに確認すべき5つのチェックポイントを解説します。測位の安定化に役立つ知識としてぜひ参考にしてください。
目次
• 衛星受信状況の確認
• 測位環境(遮蔽物・マルチパス)の確認
• 補正データ受信と通信状態の確認
• 基準局の設定・基線長の確認
• GNSS受信機の設定・ハードウェアの確認
• LRTKによる簡易測量
• FAQ
衛星受信状況の確認
まず最初にチェックすべきは、利用可能な衛星の数と配置(ジオメトリ)です。RTK測位では、5機以上の衛星信号を安定して受信できていることが重要です。衛星数が少なかったり、特定の方向に偏って配置されていると、位置計算に必要な情報が不足し固定解(Fix解)が得られにくくなります。一般的に、4機の衛星で三次元の測位は可能ですが、Fix解を得るには5〜6機以上の衛星を同時利用できる状況が望ましいとされています。測位ソフトや受信機のステータス画面でGNSS衛星の捕捉数やDOP値(幾何精度劣化係数)を確認し、必要な衛星数を満たしているかチェックしましょう。
衛星の配置バランスも重要なポイントです。空の一方向に衛星が偏っているとDOP値が高く(精度が悪く)なり、Fix解が安定しません。衛星が空全体に均等に分布しているほどDOP値は低く抑えられ、精度が向上します。もし衛星配置が悪い時間帯であれば、GNSSプランナーなどで衛星の出現予測を調べ、衛星配置の良い時間に測量を行うことも検討してください。また、受信機の設定で仰角マスク(低仰角の衛星を除外する角度)が高すぎないかも確認しましょう。仰角マスクを15°前後に設定しておけば、低空の衛星も適度に利用でき、衛星数確保と精度維持のバランスが取れます。とくに、複数の衛星測位システム(GPS・GLONASS・Galileo・みちびき等)に対応したマルチGNSS受信機を使うことで利用衛星数が増え、Fix率の向上につながります。
測位環境(遮蔽物・マルチパス)の確認
現場の周囲環境もRTKがFixしない大きな原因となります。GNSS信号はビルの壁面や樹木の枝葉などによって遮られたり反射(マルチパス)したりします。測位アンテナの上空視界が狭い場所では、十分な衛星数を確保できずFix解が得られにくくなります。また、高層建物や金属フェンス、大型車両などが近くにあると、これらに反射した誤った信号を受信してしまい、位置計算に誤差を生じさせます。
対策として、できるだけ周囲が開けた場所で測位することが基本です。上空に遮蔽物がない場所へ移動できるなら、数メートル動かすだけでも受信衛星数が増えてFixに至る場合があります。どうしても建物や構造物の近くで測量しなければならない場合は、アンテナをできるだけ高い位置に設置したり、測位地点を少しずらしてみるなど工夫しましょう。また、初期設定時に一度空が開けた場所でFix状態にしてから目的の地点へ移動するという方法も有効です。一度Fixを得ていれば、短時間であれば多少環境が悪化してもFix状態を維持できる受信機もあります。
マルチパス対策も重要です。アンテナにグランドプレーン(導電板)を装着できる場合は取り付け、地面や下方からの反射波を遮断します。高性能なアンテナや受信機ではマルチパス除去機能も搭載されていますが、基本は「反射を避ける環境づくり」が肝心です。加えて、強い電波干渉源(高圧線や通信アンテナ等)が近くにないかも確認します。強い電磁波はGNSS信号受信にノイズを与え、Fixを阻害することがあります。これら電波環境も含め、現場の測位環境を見直すことがFix解取得への近道です。
補正データ受信と通信状態の確認
RTK測位では、基準局から送られる補正データを受信できていなければ決してFixにはなりません。そこで、補正データが正しく届いているかを確認します。ネットワーク型RTKを利用中なら、NTRIP接続の状態をまずチェックしましょう。専用アプリや受信機の画面で「補正情報:受信中」の表示が出ているか、通信アイコンが正常(例:緑色など)になっているか確 認します。もし未接続になっていれば、NTRIPの設定(接続先URL、ポート、マウントポイント名、ユーザーID/パスワード)に誤りがないか再確認します。一文字でも間違っているとサーバーに接続できません。また、携帯回線を使用している場合はスマホやモバイルルーターがインターネットに接続されているか、電波強度は十分かを見直してください。
補正データを受信しているにもかかわらずFixにならない場合、受信している補正情報の内容にも注意が必要です。例えば、基準局と移動局で使用している衛星システムが異なっていないか確認します。片方がGLONASS衛星を使っているのにもう片方がGLONASSをオフにしていると、衛星データが揃わずFix解が成立しません。必ず両方の設定を合わせるようにしましょう。また、補正データのフォーマットや周波数帯もチェックポイントです。シングル周波数受信機を使っている場合はシングル周波数用の補正(例:MSM4形式)、マルチ周波数機なら高精度なマルチ周波数用補正(例:MSM7形式)を選ぶ必要があります。対応しない形式のデータを受信しても正しく解釈できず、Fixが出ない原因となります。
通信状態も引き続き監視しまし ょう。補正データにタイムラグが生じていたりパケットロスが頻発すると、解がFloatに落ちたり不安定になります。受信機の表示に「Age of Differential(差分時齢)」やRTCMメッセージ受信数などの項目があれば、遅延なく補正が届いているか確認が可能です。遅延が大きいようであれば、通信環境を改善するか、一旦接続を切って再度接続し直してみます。場合によっては別のNTRIPサービスや別の通信手段(例:SIMを他キャリアに変更、Wi-Fiルーターに切替)を試すのも有効です。ローカル無線でRTKを行っている場合は、無線機の電波到達範囲やチャンネル干渉も確認してください。基地局とローバーの間に障害物があれば無線が届かず補正が途切れるため、見通しの良い設置と適切なアンテナ高さの確保が重要です。
なお、仮想基準点(VRS)方式のサービスを利用している場合は、移動局の概略位置を正しく送信できているかも確認しましょう。初期設定で自分の位置を誤って登録していたり、位置情報送信がOFFになっていると、適切な補正データが提供されずFixしない原因となります。接続設定の「位置送信」項目などを再チェックしてください。
基準局の設定・基線長の確認
次に、基準局(基地局)の設定や位置に起因する問題をチェックします。自前の基準局を設置している場合は、基準局の座標設定が正確かどうか確認しましょう。基準局にはできるだけ誤差の小さい既知の座標値を設定することが理想です。仮の座標を使って運用する場合でも、実際の位置とかけ離れた値を設定すると、解計算の初期値にズレが生じてFixが安定しないことがあります。特に数十メートル以上の誤差があると、整数値の初期化に時間がかかったり失敗する原因となり得ます。同じ公共座標系で運用するなら、基準局座標の測地系(JGD2011やWGS84など)が移動局と一致しているかも重要です。基準局と移動局で座標系が異なると、補正情報適用後の解にオフセット誤差が生じ、正しくFixできないことがあります。
基線長(基準局と移動局の距離)も確認ポイントです。RTKの精度やFixまでの時間は、基線長が長くなるほど悪化する傾向があります。おおむね10km以内の基線長であればFix解を得やすいですが、20km、30kmと離れるにつれて電離層・対流圏の誤差差分が大きくなり、Fixに時間がかかったり不安定になります。50km以上離れてしまうと、環境によってはほとんどFixしなくなるケースもあります。対策として、可能であれば作業エリアから近い場所に基準局を置くか、公共の電子基準点やVRS(バーチャル基準点)サービスを利用することで実質的な基線距離を短くできます。ネットワーク型RTKサービスでは、ユーザーの近傍に仮想基準局を生成する仕組みが提供されるため、遠距離でも精度を確保しやすくなります。逆に言えば、ローカルRTKで基地局が遠すぎる場合はFixが出ない原因と考えられるため、サービスの利用や基地局増設を検討しましょう。
なお、基準局自体の設置環境も品質に影響します。基地局アンテナが高層ビルに囲まれていたり、マルチパス環境に置かれていると、その誤差が移動局にも伝播します。基準局はできるだけ見通しの良い安全な場所に設置し、アンテナ高も正確に測定しておくことが大切です。基準局が正しく機能しているか(送信が停止していないか、電源・接続は正常か)も念のため確認しましょう。
GNSS受信機の設定・ハードウェアの確認
最後に、使用しているGNSS受信機や周辺機器の設定・ハード面を確認します。意外なことに、機器の接続不良や設定ミスがFixしない原因となる場 合があります。例えば、外部アンテナを使用している場合はケーブルの緩みや断線がないか点検してください。アンテナコネクタがしっかり接続されていないと衛星信号が弱くなり、十分な測位精度が得られません。過去に問題なくFixできていた機器が突然Fixしなくなったような場合、アンテナケーブルの不具合や受信機本体の故障も疑われます。また、スマートフォンやタブレットと連携して使うタイプのRTK機器であれば、アプリ側の不調やフリーズが原因の可能性もあります。その場合、一度アプリを再起動するかスマホを再起動して再度接続し直してみましょう。
受信機の内部設定も改めて見直します。知らないうちに測位モードや衛星設定が変わっていないか確認してください。例えば、移動局が「スタティック(静止)」モードのまま動かしていると解が安定しなかったり、逆に「キネマティック(移動測位)」モードで静止点を長時間測ると無駄な誤差が乗ることがあります。また、受信する衛星システム(GPSやGLONASS等)のON/OFF設定にも注意です。前述のように基準局と移動局で使う衛星系は統一する必要があるため、どちらかでGLONASSを無効にしているなら両方無効にするか有効に揃えます。測位ソフトによっては、基地局情報を再取得(再読込)することでFixに至るケースもありますので試してみてください。
ハードウェア面では、測位環境に応じたアンテナ設置の工夫も見逃せません。アンテナはできるだけ水平に据え付け、傾斜しないようにします。傾きがあると衛星信号の受信パターンに偏りが生まれ、精度に悪影響を及ぼします。ポールや三脚を使う場合は水準器で水平を確認しましょう。また、アンテナをできるだけ高い位置に設置することで周囲障害物の影響を減らせますが、強風時には揺れないよう固定する配慮も必要です。さらに、状況に応じて機器の再起動も効果的です。基準局・移動局双方を一度電源オフにし、先に基準局を立ち上げてから移動局を起動すると改善することがあります。
それでもRTKがFixしない場合、機器の制約や外部要因も考えられます。特にシングル周波数のみ対応の受信機では、電離層誤差の影響でFixに時間がかかったり不安定になることがあります。可能であればマルチ周波数対応の機器を使うことで大幅に改善が期待できます。また、太陽活動が活発な時間帯や大気の状態によって一時的に精度が低下するケースもあります。その際は焦らず、時間をおいて再度測位を試みることも一つの手です。
さらに、GNSS受信機やアプリのファームウェア/ソフトウェア更新も確認してみましょう。古いバージョンにはRTK解に影響する不具合が残っている場合があり、アップデートによってFix率が改善するケースもあります。メーカーや提供元が提供する最新ファームウェアを適用し、常に最新の状態で運用することが安定したFix解取得につながります。
LRTKによる簡易測量
以上、RTKがFixしない場合に見直すべきポイントを紹介しました。これらを踏まえてもなお機器の扱いが難しい、あるいは測量作業をもっと手軽に行いたいと感じる方もいるでしょう。そんな方におすすめなのが、LRTKによる簡易測量です。LRTKシリーズは、レフィクシア社が提供する小型高精度GNSS受信機で、現場の誰もが簡単にセンチ精度測位を活用できることを目指した製品群です。
LRTK受信機はポケットに入るコンパクトサイズながら、マルチGNSS・マルチ周波数に対応し 、専用アプリと連携して高精度なRTK測位を実現します。使い方はシンプルで、スマートフォンやタブレットに接続しアプリを操作するだけです。複雑な設定はアプリがガイドしてくれるため、専門知識がなくても扱えます。例えばスマートフォン一体型モデルのLRTK Phoneは、iPhoneに装着する超小型受信機で、重量わずか125gと軽量です。現場で常に携帯でき、必要なときにすぐ測位・記録ができます。傾斜補正機能を備えたモデルもあり、アンテナが傾いた状態でも先端の位置座標を自動補正して取得可能です。
また、日本の準天頂衛星「みちびき」が提供するCLAS衛星補強信号にも対応しており、山間部などインターネットが圏外の場所でも衛星経由で補正情報を受け取ってFix解を得ることができます。得られた測位データはリアルタイムにクラウドと連携でき、現場で測った点の座標やメモをその場で共有することも可能です。LRTKによる簡易測量を導入すれば、これまで測量専門の技術者に頼っていた作業も、現場の作業員自身で手軽にこなせるようになります。RTK測位のハードルを下げ、現場の生産性向上に直結するソリューションとして注目されています。
FAQ
Q1: RTKでFix解を得るには最低何基の衛星が必要ですか? A: 理論上は4基の衛星で三次元測位が可能ですが、RTKで安定して固定解を得るには5〜6基以上の衛星が必要と言われます。衛星は多いほど良く、GNSSはGPS以外にもGLONASSやGalileo、みちびきを利用できる機種を使うと衛星数が増えFix率が向上します。
Q2: RTKがなかなかFixにならない時はどのくらい待つべきでしょうか? A: 環境が良ければ、受信機の電源投入後や測位開始から数十秒〜数分でFixになるのが通常です。5分以上経ってもFixしない場合は何らかの原因がある可能性が高いでしょう。その際は本記事で述べた各ポイント(衛星数、環境、補正データ受信状況など)を改めて確認してください。長時間Float解のまま測り続けても精度は向上しないため、原因を特定して対策することが重要です。
Q3: 天候や時間帯によってFixしにくくなることはありますか? A: 雨や曇り程度の気象でGNSS電波が大きく減衰することはありませんが、電離層の乱れや衛星配置の関係で時間帯による影響が出ることはあります。例えば日中の14〜17時頃は電離層の影響で精度が低下しやすいと言われています。また、都市部では特定の時間に衛星が低い角度となりビル陰に入りやすい場合もあります。そのような環境要因でFixが得にくいと感じたら、時間をずらして再トライするのも有効です。
Q4: Float(浮動)解で測位しても問題ないでしょうか? A: Float解はFix解より精度が劣り、通常は数十センチ〜1m程度の誤差範囲になります。精密な測量や設計施工管理にはFloat解のままでは不十分です。短時間でFixに至らない場合でも、慌ててFloat解の値を記録するのではなく、Fixになるまで待つか、時間をおいてから再度測位し直す方が安全です。どうしてもFixが得られない場合は、Static測位(長時間観測して事後解析)に切り替える、もしくは簡易な観測でも複数回測定して平均を取るなどして精度向上を図りましょう。
Q5: 基準局からの距離が遠いときの対策はありますか? A: 基準局から遠距離になるとFixが難しくなるため、可能であれば公共のネットワーク型RTK(VRS方式)を利用するのが効果的です。VRSサービスならユーザー付近に仮想基準点を生成するので距離の問題を解消できます。また、どうしても遠距離をカバーする場合は中継局を設置したり、出力の強い無線機を使うなど通信面の強化も必要です。それでも難しい場合、測位地点付近に一時的に基準局を移設することや、後処理(PPK)による解析を検討することもあります。
LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上
LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。
LRTKの詳細については、下記のリンクよりご覧ください。
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