建設現場や測量の分野では、ドローン写真測量やレーザースキャンなどで取得したデータに正確な座標を付与するために、従来「マーカー」と呼ばれる目印(標定点ターゲットや反射シートなど)を地上に設置する作業が欠かせませんでした。しかし、マーカー設置やその座標測定には手間と時間がかかり、現場の負担となっていました。例えば、広い測量エリアで10点以上の標定点を設置・測定するには何時間も要する上、起伏の激しい場所では重労働となりがちです。こうした作業負担が減れば、より少人数で迅速に測量を開始でき、生産性向上に直結します。
近年、このようなマーカーを使わずにデータに座標を自動付与する技術が登場し、現場作業を大幅に効率化できるようになっています。また、これらのICTを活用した省力化手法は国土交通省が推進するi-Constructionにも合致しており、現場の生産性向上と安全性確保につながると期待されています。本記事では、マーカー不要で高精度な座標を取得するための方法を5つ厳選して紹介します。それぞれの方法の特徴と、現場負担を減らすためのコツについて解説します。
目次
• 1. RTK・PPK搭載ドローンによるマーカー省略
• 2. GNSS内蔵スマート標定点の活用
• 3. モバイルマッピング(LiDAR)による直接座標計測
• 4. RTK-GNSSとスマホ活用の一人測量
• 5. ネットワークRTK・衛星補強サービスの利用
• LRTKによる簡易測量
• FAQ
1. RTK・PPK搭載ドローンによるマーカー省略
ドローンによる写真測量では、通常は地上に複数の標定点マーカー(GCP)を配置し、その正確な座標を測っておくことで、得られる3Dモデルやオルソ画像に高精度な絶対座標を与えていました。市販ドローン内蔵のGPSのみでは数メートルの誤差が生じるため、公共測量レベルの精度(誤差数センチ)を満たすには標定点が欠かせなかったのです。
しかし近年、ドローン本体に高精度GNSS受信機を搭載し、リアルタイムで補正情報を受信しながら飛行するRTKドローンや、飛行ログを後処理で補正す るPPK手法が登場しました。RTK・PPK対応ドローンを用いることで、各写真の位置情報(撮影時のカメラ座標)をセンチメートル級に高めることができます。その結果、必要な標定点の数を大幅に減らすことが可能となり、条件によっては標定点ゼロでも高精度な測量成果を得られるケースも出てきました。なお、これらの直接測位手法(RTK/PPK)は公共測量の手法としても位置付けが進んでおり、国土交通省の最新基準では「カメラ位置を直接測位できる手法」として認められています。
RTK搭載ドローンの実証事例では、従来5点程度設置していた標定点が1点のみでも同等の精度を満たせたという報告もあります。ただし完全にマーカーを省略する場合でも、後述する検証用のポイントで精度確認を行うことが推奨されます。また、RTK/PPKシステムの導入には対応ドローン本体や基地局、専用ソフトウェアなどの初期コストがかかります。現場規模や頻度を考慮し、導入コストと省力化のメリットを比較検討すると良いでしょう。
2. GNSS内蔵スマート標定点の活用
標定点そのものの運用をより自動化・効率化するために、GNSS受信機を内蔵したスマート標定点(対空標識)が登場しています。これは地上に設置するマーカーに小型GPS/GNSSモジュールと電源を内蔵し、設置場所で自ら正確な座標を記録できるようにしたものです。従来は標定点マーカーを設置後に別途GNSS受信機やトータルステーションで一箇所ずつ測量していましたが、スマート標定点を使えば置くだけで自動的に座標取得が完了します。
例えば広い測量現場で複数の標定点を必要とする場合でも、スマート標識を決められた位置に配置するだけでOKです。ドローンで空撮を行っている間に各標識が同時に測位を進めるため、並行して複数点の観測ができます。撮影後は各スマート標識に記録された座標ログを回収し、専用のクラウドサービスやソフト上で写真データと突合することで、標定点座標の入力・写真へのマーキング作業も自動化されます。
この仕組みを活用すれば、標定点ごとに測量機器をセットして測る手間が省けるだけでなく、写真上でのマーカー判読や点群合成といった後処理も大幅に短縮できます。ある現場では、ス マート標定点の導入によって標定点関連の作業時間を従来比で半分以下にできたとの報告もあり、広範囲の空撮測量などで威力を発揮しています。ただしデバイスの準備や運用コストも発生するため、現場の規模や予算に応じて採用を検討すると良いでしょう。
3. モバイルマッピング(LiDAR)による直接座標計測
ドローンだけでなく、地上での大規模な3D計測においてもマーカー設置を省略する動きが進んでいます。その代表格がモバイルマッピングシステム(MMS)や最新の三次元レーザースキャナーによる直接測位です。従来、地上型のレーザースキャナーで広範囲を測量する場合、各測定位置を結ぶためのターゲット設置や既知点への据え付けが必要でした。しかし、GNSSアンテナと高精度IMUを搭載したMMS機器を使えば、移動しながら自車位置を連続的に測定しつつレーザー点群を取得できるため、取得した点群にリアルタイムで地球座標(絶対座標)を付与することが可能です。
例えば、最新の長距離レーザースキャナーでは200m先の構造物も詳細に取得でき、従来は近づいてターゲットを設置しなければ測れなかった危険箇所(急斜面や交通量の多い道路上など)も、安全に遠隔で計測可能です。電線のような細い対象物であっても、特別なマーカーなしに点群化できる高性能を備えています。また最近では、手持ち型・背負い型のMMS(歩行者用モバイルマッピング)も登場しており、歩いて現場を動き回るだけで周囲の3次元形状をスキャンし、自動で位置合わせされた点群データを生成できます。これにより、ドローンが飛ばせない市街地や森林内でもマーカー不要のスピーディーな現地計測が可能となっています。
もちろん、GNSSによる測位が安定する広視界の環境であることが前提ですが、条件が整えば広大なエリアも短時間で網羅でき、事前準備や人員を大幅に削減できます。機材の価格は高めですが、得られる生産性向上効果やデータ精度を考慮すると、十分に投資する価値がある手法と言えるでしょう。
4. RTK-GNSSとスマホ活用の一人測量
高精度な座標を取得する技術は、大掛かりな機器や複数人のチームが必要というイメージがありました。しかし近年は、スマートフォンやタブレットに接続できる小型のRTK-GNSS受信機が登場し、一人で手軽に測量が行えるようになっています。これにより現場での点の座標測定(ポイント測量)は飛躍的に簡素化されました。
専用のポールやスマホ用アプリを用いれば、測りたい地点で端末のボタンを押すだけでその場の緯度・経度・高さをセンチメートル精度で取得し、クラウド上に保存できます。従来はトータルステーションの据え付けや補助者によるプリズム保持などが必要だった作業も、スマホと小型GNSS受信機さえあれば完結します。重い機材を運搬したり三脚を立てたりする手間が省け、初めて使う人でも直感的に操作できるため、作業負荷と人件費の削減につながります。
さらに、取得した点データはリアルタイムにクラウド共有できるため、その場で測量結果を確認したりチームで共有したりするのも容易です。オフライン環境でも内蔵メモリにデータを蓄積し、後でまとめてアップロード可能なため、山間部など電波の届かない場所でも活用できます。このようなスマホ測量の普及によって、「現場の誰もが測量者」になれる時代が近づいています。
近年、熟練測量技術者の人手不足が課題となる中、このような手軽な一人測量ツールは現場の生産性を支える心強い存在となっています。
5. ネットワークRTK・衛星補強サービスの利用
高精度測位にはGNSSの補正情報が欠かせませんが、近年はその入手手段も大きく進化しています。従来は自前で基地局(ベースステーション)を設置し、既知点からローカルに補正データを送信する必要がありました。しかし現在では、官民の提供するネットワーク型RTKサービスを利用することで、インターネット経由で全国どこでも補正情報をリアルタイム受信できるようになっています。日本国内では、国土地理院の電子基準点網(GEONET)を活用したVRS方式の補正サービスが整備されており、多くの地域で利用可能です。
さらに、日本の準天頂衛星「みちびき」ではCLASと呼ばれるセンチメートル級測位補強信号が提供されており、対応受信機を使えば山間部や海上などインターネット圏外の場所でも高精度測位を実現できます。このような衛星測位補強サービス(SBAS/PPP)は、測量のみならず農業や自動運転など幅広い分野で活用が広がっています。
これらのネットワークRTKや衛星補強を積極的に活用すれば、現場で煩雑な基準点設置(既知点への測量)を行う必要がなくなり、到着してすぐに測位・計測を開始できます。接続環境の構築や利用料は発生しますが、一度整えれば以降の現場作業を劇的に効率化できるでしょう。
LRTKによる簡易測量
上述した技術に加え、近年は現場での測量そのものをより手軽にする新しいソリューションも登場しています。その一つがスマートフォン を利用した小型測位デバイス「LRTK」です。LRTK(エルアールティーケー)はスマホやタブレットに装着できるポケットサイズのRTK-GNSS受信機で、誰でも簡単にセンチメートル級の測位が行える万能測量ツールとして開発されました。また、その導入しやすい価格設定も相まって、既に多くの現場で活用が始まっています。
LRTKをスマホに取り付け、測りたい地点でボタンを押すだけで、緯度・経度・高さといった位置情報を高精度に測定してクラウドに記録できます。重さはわずか約125gと軽量で、専用の一脚ポールに装着すれば一人でも効率よく地面の点を測ることが可能です。従来は専門機器が必要だった標定点座標の測量も、LRTKがあればスマホ一つで手軽に実施できます。
例えばドローン写真測量の前に基準点となる地上ポイントの座標をLRTKで測定しておけば、あとは空撮画像にその値を適用するだけで高精度な3Dモデルを得ることができます。たとえドローン側がRTK非対応でも、LRTKで事前に基準点を測っておくことで同様に精度の高い成果品を作成可能です。またLRTKは点の測量だけでなく、取得した点を基にし た距離・面積計算や、AR機能による杭打ち位置出し(墨出し)など現場支援機能も備えており、「一人1台の測量機」を目指したまさに画期的なツールと言えるでしょう。
このように、マーカー(標定点)の活用自体は高精度化に不可欠ですが、その設置や測量作業も技術革新でどんどん簡略化が進んでいます。標定点+最新ツールを組み合わせることで、少人数でも効率よく高精度な測量を行える時代が到来しつつあります。今後も関連技術は進化を続けていくため、精度向上と生産性アップのために新しいソリューションを積極的に取り入れてみてください。
マーカー設置の手間から解放されれば、その分コア業務に時間を割けるようになります。省力化できるところはテクノロジーに任せ、現場の生産性向上を図っていきましょう。
FAQ
Q: マーカー(標定点)を使わない測量で、本当に精度を確保できるのでしょうか? A: 高精度な成果を得るには原理的には標定点による補正が重要ですが、RTK・PPK技術やGNSS内蔵機器の活用により、マーカーなしでも要求精度を満たすことが十分可能です。例えば、RTKドローンで空撮したモデルと検証点とのズレが数センチ以内に収まった事例も報告されています。ただし、機器の設定を適切に行い、衛星受信状態の良い環境で計測することが前提です。また完全にマーカーを省略する場合でも、検証用の既知点で結果の誤差を確認するなど、精度管理は欠かさず行いましょう。
Q: 小規模な現場では、5つの方法のうちどれを選ぶのが適切でしょうか? A: 小さな現場や点の測定が中心の作業であれば、スマホ+小型GNSS受信機による一人測量など、手軽に導入できる方法が適しています。広範囲を高密度に測りたい場合はRTKドローンやモバイルマッピングを検討すると良いでしょう。また、初期投資を抑えたい場合は、既存のドローンにPPK手法を組み合わせたり、必要最小限の標定点測量(例えば数点のみLRTKで測るなど)で対応する方法も考えられます。現場の規模や予算、求める精度に応じて最適な手法を選びましょう。
Q: RTK非対応のドローンでも高精度な写真測量は可能ですか? A: はい、可能です。RTK非対応ドローンの場合、従来通り地上に標定点マーカーを設置して測量する方法がありますが、それ以外にも工夫ができます。例えば空撮前に数箇所の基準点座標をスマホRTKなどで測定し、後処理ソフトでそれらの点を基準としてモデルを補正すれば、ドローン単独GPSの誤差を補って高精度化できます。またドローンのログを記録しておき、後でPPK処理を行うことでRTKなしでもほぼ同等の精度を得ることも一般的です。
Q: GNSSが使えない屋内や森林の下ではどうやって測位すれば良いですか? A: 衛星信号が届かない環境では、完全にマーカーを省略するのは難しくなります。屋内やトンネル内で高精度に測るには、トータルステーションで相対測位を行ったり、レーザースキャナーのSLAM(自己位置推定)機能を活用した後で、入口付近の既知点にデータを合わせ込むといった方法が取られます。この場合でも基準となる既知点が必要になるため、全くのマーカー不要と はいきません。森林など部分的にGNSSが遮られる場所では、見通しの良い場所で適宜GNSS測位を行い、途中区間は地上測量や推定で補間するなど、状況に応じて複合的に対応する必要があります。
Q: 今後は従来の標定点設置が全く不要になるのでしょうか? A: 最先端の技術により標定点に頼らないワークフローが可能になりつつありますが、完全に不要になるとは言い切れません。精度検証のためのチェックポイントは引き続き重要ですし、GNSSが使えない環境では従来通りの手法が必要です。また機器トラブル時のバックアップとして既知点を確保しておくことはリスク管理上有用です。したがって、これからも標定点設置そのものが無くなるわけではありませんが、その数や手間は確実に減らせる方向に進んでいます。
Q: これらの技術を導入するにはどの程度のコストがかかりますか? A: 方法によって大きく異なります。例えばRTK対応ドローンやMMS機器は数百万円規模の投資となりますが、一方でスマホ用のGNSSレシーバーやGNSS内蔵標定点など比較的低コストなソリューションもあります。またネットワークRTKサービス利用料などランニングコストも発生します。自社で機器を購入せず、レンタルやサブスクリプションで利用できるサービスも増えています。現場のニーズと予算に合わせ、費用対効果を検討して最適な導入形態を選ぶと良いでしょう。なお、導入費用が高く感じられる場合も、人件費削減や工期短縮による効果を踏まえて長期的な視点で検討することが重要です。
Q: 測量の専門知識がない初心者でも、これらの最新ツールを使いこなせますか? A: はい。従来の測量機器に比べて、スマホアプリや自動処理ソフトのインターフェースは格段に分かりやすく設計されています。基本的な操作手順さえ覚えれば、専門の測量士でなくても現場データの取得が可能です。ただし、座標系の取り扱いや誤差評価など測量の基礎知識は持っておくと望ましいでしょう。ツールの簡便さに頼りすぎず、得られたデータをきちんと確認する姿勢が大切なのです。
LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上
LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。
LRTKの詳細については、下記のリンクよりご覧ください。
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