近年、建設・土木の現場でマーカー不要の3D計測技術が注目されています。従来は高精度な3次元測量やスキャンを行う際、位置合わせ用のターゲットマーカーや標定点(GCP)を事前に設置するのが一般的でした。しかし、マーカーを配置・測定する作業には手間と時間がかかり、現場担当者にとって大きな負担となっていました。幸いなことに、近年はドローン測量のRTK化やSLAM搭載型レーザースキャナー、スマートフォン内蔵のLiDARなど、マーカー設置を省略できる技術が続々と登場しています。これら「マーカー不要」の3D計測 手法を活用すれば、測量・点検業務の効率化と安全性向上が期待できます。
本記事では、土木測量から設備点検、インフラ保守に至るまで、マーカー不要の3D計測が現場で役立つ8つの活用例を紹介します。省力化・迅速化のポイントとともに、各現場業務におけるメリットを具体的に見ていきましょう。
目次
• 土木測量: ドローン空撮で標定点を削減
• 建設の出来形管理: 点群で施工状況を見える化
• 橋梁点検: 遠隔3D計測で構造変化を把握
• 道路維持管理: 交通規制なしで路面を効率計測
• プラント設備点検: 足場不要で配管を3D記録
• 災害現場の計測: 被災状況を速やかに可視化
• 危険箇所や高所の測量: 非接触で安全にデータ取得
• 現場DX: スマートフォンで手軽に3D計測
• まとめ
土木測量: ドローン空撮で標定点を削減
土木工事の準備段階や造成現場では、広範囲の地形測量が必要です。従来は多くの標定点(地上基準点)を設置し、測量機器で一つ一つ測って位置合わせを行っていました。これは高精度な地形モデルを得るために欠かせない工程でしたが、山林や急斜面では人が立ち入ってマーカーを置く作業自体が危険を伴い、時間もかかりました。
ドローンを活用した空中写真測量は、こうした土木測量を劇的に効率化します。近年のドローンにはRTK/PPK対応の高精度GNSSが搭載可能となり、飛行中に撮影する写真そ れぞれにセンチメートル級の位置情報を付与できます。その結果、地上に多数の標定点を置かなくても、3Dモデルを所定の精度で位置合わせできるようになっています。例えば、ある造成地の写真測量では、RTK搭載ドローンにより標定点ゼロでも従来法と同等の精度を確保できたという報告もあります。標定点設置作業は測量全体の約3割もの手間を占めるケースもありますが、RTKドローンによる「GCPレス測量」ならこの手間をそっくり省略可能です。
ドローン空撮によるマーカー不要の測量は、広大な現場でも1人で短時間に完了できる点が大きなメリットです。以前は測量班が数日かけて行っていた地形測量が、ドローンなら数時間で終了することも珍しくありません。また、人が足を踏み入れにくい軟弱地や急峻な場所でも無理に標識を設置する必要がなくなるため、安全面の向上にもつながります。得られたオルソ画像や3次元点群データからは、体積計算や断面図作成も容易で、土量管理や設計検討の効率も飛躍的に高まります。
建設の出来形管理: 点群で施工状況を見える化
建設工事の進捗管理や出来形(出来高)管理でも、3D計測が威力を発揮しています。従来、施工管理者は各工程ごとに職員が現場の高さや寸法を測り、設計図と照合して品質を確認していました。その際、高精度な確認にはトータルステーションでの測定や、水糸・墨出しなど手作業での位置出しが必要で、場合によっては計測基準として目印(杭やマーキング)を設置する手間もありました。
点群データを用いた出来形管理では、完成した構造物や造成地形を3Dスキャンし、その点群を設計モデルや基準面と比較することで施工状況を一目で把握できます。例えば、施工途中の地盤面をドローンや地上型レーザースキャナーでスキャンしておけば、設計の予定面と実際の盛土・切土の状況差を色分けヒートマップで可視化できます。これにより、どこに過不足があるか、設計通りに仕上がっていない箇所はどこかが即座に判明します。従来は水準器や測量で点を拾い集めて確認していたものが、面として直感的に把握できるようになるのです。
出来形管理に3Dスキャンを導入する際も、マーカー不要の計測機材が実務をシンプルにします。近年は誰でも扱えるiPad搭載型の簡易3Dスキャナーから高精度なモバイルレーザースキャナーまで登場しており、煩雑な機器設定やターゲット設置なしで点群取得が可能です。現場でスキャンした点群はタブレット上ですぐ確認でき、その場で施工担当者と出来形を共有することもできます。国土交通省のi-Construction施策でも、3次元データによる出来形管理が推奨されており、こうした手軽な点群計測は発注者・受注者間の認識共有にも役立っています。結果として是正工事の手戻り防止や品質確保が容易になり、現場全体の効率化と生産性向上につながります。
橋梁点検: 遠隔3D計測で構造変化を把握
橋梁など大型構造物の点検・維持管理にも3D計測が活用されています。従来、橋の健全性を調査するには、橋桁下に高所作業車で接近したり、人が橋面にマーキングをして変位を測るなど、大掛かりな作業が必要でした。特に橋脚や桁のゆがみ計測では、基準となる印を貼り付けて経過観察する手法が取られることもありましたが、これには時間と人手がかかります。
現在では高精度なレーザースキャナーや写真測量によって、離れた位置からでも橋梁全体の形状をデジタル記録できるようになっています。橋の下面や側面を地上からスキャンすれば、肉眼では測りにくいたわみ量や断面形状の変化を点群データで正確に把握できます。例えば、長大橋の場合で も橋両端や周辺でGNSSを使いスキャナーの位置を補正しつつ、橋桁下面はSLAM(自己位置推定と地図生成)機能付き機材で連続取得することで、全体をシームレスにモデル化可能です。この過程で反射ターゲットやプリズムを取り付ける必要はありません。構造物自身の形状特徴をもとにスキャンデータ同士を自動位置合わせできるためです。
3D点群化した橋梁データは、時系列で重ねることで経年変化の比較にも活用できます。初回点検時のモデルと数年後のモデルを比較すれば、たとえば橋脚の傾斜や沈下の有無を定量的に検出できます。これまでは調査員の目視やごく一部の計測器による点チェックに頼っていた部分が、空間全体を捉えたデータで補完されるわけです。また、遠隔計測が可能になったことで、橋の真下に足場を組んだり車線規制を長時間行ったりする頻度も減ります。点検作業の安全性が高まり、交通への影響も最小限に抑えられる点で非接触の3D計測は大きなメリットと言えるでしょう。
道路維持管理: 交通規制なしで路面を効率計測
道路やトンネルの維持管理では、定期的な路面状態や周辺構造の把握が重要です。従来の道路 測量は、作業員が路面や路肩で計測機器を操作するため、作業中は交通規制を敷かなければなりませんでした。特に高速道路では夜間作業や車線規制が前提となり、人員手配や警備にも大きなコストと労力が伴います。
近年普及しているモバイルマッピングシステム(MMS)は、車両に搭載した3Dレーザースキャナーで走行しながら路面や道路構造物を計測できる仕組みです。MMSではGPS/IMUを組み合わせて車両自己位置を高精度に追跡しており、測定対象にあらかじめマーカーを設置する必要がありません。道路を走り抜けるだけで、路面の凹凸やひび割れ位置、ガードレールや標識の位置情報まで一括で点群データ化できます。結果として、交通規制をせずとも短時間で広範囲の道路データを取得できるようになりました。
具体的な効果として、ある高速道路ではMMS導入により出来形測量の時間と費用を約7割削減した例も報告されています。また、一般道でも昼間の交通を止めずに済むため、沿道住民やドライバーへの負担軽減につながります。取得した高密度点群からは、横断勾配の変化やわだち掘れの深さを後から精密に計測可能で、路面補修計画の立案精度も向上します。トンネル内の計測でも、地上局との相対測位やジャイロによる補正で位置出しできるため、壁面の変位や断面形状を正確に記録できます。このように道路維持管理において、走行しながらの3D計測は作業効率と安全性を飛躍的に高める技術となっています。
プラント設備点検: 足場不要で配管を3D記録
工場やプラントの設備点検では、配管や機器レイアウトの計測・記録が欠かせません。従来、複雑に張り巡らされた配管類の寸法を把握するには、配管ごとにスケールで測定したり、干渉チェックのために手作業で図面を起こしたりしていました。高所の配管では作業用の足場を組み、マーキングを付けて傾きを測るようなケースもあります。しかし、足場設置や人が近接しての測定は、安全面でも時間面でも大きな負担でした。
そこで注目されているのが、3Dレーザースキャナーによるプラント設備の点群記録です。固定式のレーザースキャナを三脚に据えて工場内をスキャンしたり、ハンディタイプのスキャナーを持って配管間を歩き回ったりするだけで、配管やタンク、梁などの位置関係を丸ごとデジタル取得できます。最新のスキャナーは高速回転するレーザーで一度に数百万点を取得可能なため、広範囲でも短時間で完了します。しかもマーカーシールを貼り付けなくても、スキャナ自体の高精度な角度・距離計測と複数スキャンの自動位置合わせ機能によって、一連の配管ネットワークを連続した3Dデータに統合できます。これは、従来必要だった「各所に目印を付けておき、後でそれを基準にデータを結合する」作業が不要になることを意味します。
得られた設備の点群データは、事務所のPC上で自由に寸法を計測したり、CAD図面に起こして新設機器との干渉チェックに使ったりできます。例えば、老朽化した配管を交換する際も、事前に現況3Dモデル上で新しい配管の取り回しを検討できるため、現地工事がスムーズになります。足場を組んでメジャーで測る手法と比べ、格段に効率的でミスも減ります。また、高温の設備や危険エリアでも遠隔から計測できるため、作業員の安全確保にも寄与します。足場不要の3Dスキャンは、プラントの維持管理において安全性と生産性の両立を実現するソリューションと言えるでしょう。
災害現場の計測: 被災状況を速やかに可視化
土砂崩れや洪水など災害が発生した現場では、一刻も早い状況把握と復旧計画立案が求められます。しかし、被災直後 の現場は足元が不安定だったり二次災害の危険があったりして、人が詳細に測量するのは困難です。従来は限られた範囲を遠巻きに観察し、おおまかな被害状況を推測するしかない場面もありました。
ここでも活躍するのがマーカー設置を必要としない3D計測技術です。例えば、災害直後にドローンを飛ばせば、広範囲の被災状況を上空から短時間で撮影できます。得られた複数枚の写真から3Dモデルや等高線図を生成すれば、崩落した土砂の体積や浸水範囲を定量化可能です。この際、急いで現地に標識を置く必要はありません。ドローンのGPS情報や周囲の建物・地形を基準に写真測量ソフトが自動で位置合わせを行います。仮にGNSS誤差が大きい場合でも、地図上の既知の目印(建造物角など)を利用して後処理で調整できるため、事前に物理マーカーを準備できなくても大丈夫です。
また、被災現場が入り組んだ市街地や屋内であれば、ハンディタイプの3Dスキャナーを用いて被害箇所を歩きながらスキャンする方法も有効です。SLAM技術を備えたスキャナーであれば、瓦礫の山や傾いた建物内部でも自己位置を推定しつつ形状を捉えられるため、崩壊範囲のモデル化が可能です。これらにより、災害対策本部は短時間で詳細な被害の可視化データを得られます。例えば、斜 面崩落の現場では、その場で土砂量を計算して応急排土計画の参考にしたり、家屋被害の状況モデルを共有して救援部隊の安全な経路を検討したりできます。
マーカー不要の3D計測は、災害対応において「早さ」と「安全」を両立する心強い味方です。人が近づけない場所でも遠隔から測量ができ、しかも精度の高いデータが取得できるため、復旧作業の初動を大きく支援してくれます。二次災害のリスクを減らしつつ必要な情報を得られる点で、今後ますます重要な技術となっていくでしょう。
危険箇所や高所の測量: 非接触で安全にデータ取得
建設・保守の現場には、高所や狭所、危険物の近傍など、人の作業がリスクを伴う箇所が少なくありません。例えば、ビルの外壁調査では高所作業車や吊り下げ足場で人が上がって打音検査や計測を行いますが、大変危険な作業です。また、急斜面の法面測量では滑落のリスク、高架下の計測では交通往来の危険が常につきまといます。こうした危険箇所の測量こそ、非接触で実施できる3D計測技術が有用です。
ドローンや遠隔操作カメラで撮影した画像から3Dモデル化する手法は、ビル外壁や煙突などの高所点検で活用されています。人が直接手の届かない場所でも、空撮写真を解析すれば壁面のひび割れ位置やタイル剥離の範囲をデジタルに把握できます。写真測量ソフトは建物の構造自体をマーカー代わりに特徴検出して合成を行うため、事前にマーキングする必要がありません。足場を組まずに安全に外観検査ができるため、点検コストも削減できます。
同様に、急勾配の法面やダムなどでは地上型LiDARを使った遠隔計測が盛んです。レーザースキャナーなら数百メートル離れた位置からでも岩盤表面のわずかな凹凸まで点群化できるため、人が斜面に張り付いて危険を冒す必要がありません。スキャン時に参照マーカーを置かなくても、複数地点からの測定データを後で合成し地形全体のモデルを構築できます。さらに地下空間や閉鎖空間で有毒ガスの恐れがある場合も、ロボットやドローンに搭載した3Dスキャナーで非接触計測すれば、人員が危険区域に立ち入る機会を最小限にできます。
このように高所・狭所・危険エリアの測量への3D計測導入は、常に作業員の安全確保と効率改善を両立させます。従来は「測りたいが測れない」箇所だったところにもデータ取得の手が届き、点検漏れや推定に頼っていた部分を減らせる意義も大きいです。非接触ゆえに作業計画の自由度も高まり、より安全な手順でインフラ管理ができる点から、今後標準的な手法として定着していくでしょう。
現場DX: スマートフォンで手軽に3D計測
ここまで紹介したような先進の3D計測技術は、一部の専門部署や高価な機器に限られるイメージがあったかもしれません。しかし最近では、スマートフォンやタブレットを用いた手軽な3D計測が現場DX(デジタルトランスフォーメーション)の新潮流となりつつあります。最新のスマートフォンには小型のLiDARセンサーや優れたカメラが搭載されており、専用アプリを使えば誰でも身の回りの構造物をスキャンして点群化できるようになりました。
例えば、iPhoneやiPadのカメラを現場でかざして歩くだけで、周囲の地形や設備をリアルタイムに3Dモデル化できるアプリがあります。これらはAR(拡張現実)の技術を応用し、カメラ映像中の特徴点を追跡して端末の位置姿勢を把握するため、特別なマーカーを使わずとも自 己位置推定が可能です。取得した点群データはその場で平面図や断面図に変換したり、距離・面積を測ったりでき、現場での即時判断に役立ちます。従来、測量の専門知識が必要だった作業も、スマホ計測なら現場監督や点検員自身がワンオペレーションで完結できるようになります。
さらに近年は、スマートフォン計測の精度を高める周辺機器も登場しています。たとえばスマホに装着して使える高精度GNSS受信機を組み合わせれば、スキャンした点群に即座に測地座標(世界座標)を付与することも可能です。これにより、作成した3Dデータを図面座標系や地図と照合したり、離れた現場同士のデータ統合を容易にしたりできます。手のひらサイズの機器でセンチメートル級の測位ができるため、以前のように重たい測量機や多数の制御点を必要としません。まさに「一人一台が測量機」の時代が到来しつつあり、現場のDXが加速しています。
スマートフォンを活用した手軽な3D計測は、今後ますます普及していくでしょう。使い慣れたモバイル端末で直感的に操作できるため、ベテランから新人まで誰もがデジタル計測に参加できます。その結果、現場の情報共有や記録がリアルタイムに高度化し、施工管理や保守点検の質も向上します。マーカー不要で機動力の高いス マホ計測は、建設・土木業界の働き方を大きく変えつつあるのです。
まとめ
マーカー不要の3D計測技術は、測量・施工管理・インフラ点検といった幅広い現場業務において、効率化と安全性向上の鍵を握る存在です。従来は人手と時間を取られていた位置合わせ作業や基準出しが、省力化技術により自動化・簡素化され、限られた人員でも短期間で成果を得られるようになってきました。高精度な3Dデータを用いれば、現場の状況を正確に見える化して関係者間で共有でき、手戻りの削減や品質確保にも直結します。また、人が危険にさらされる作業を置き換えることで労働災害のリスク低減にも寄与します。
もっとも、マーカーを一切使わない場合でも、要求精度によっては適切な検証手順を踏むことが重要です。例えばRTKドローン測量では、少数のチェックポイントで成果精度を確認することが推奨されています。新しい技術と従来手法をうまく使い分けることで、効率と精度をバランスさせた運用が可能となるでしょう。
現場のDXが進む今、誰でも使える計測ツールとして注目なのが LRTK(iPhone装着型GNSS高精度測位デバイス) です。LRTKを使えばスマートフォンがセンチメートル精度の位置測定端末となり、手軽なモバイル3Dスキャンに絶対座標の信頼性を持たせることができます。高精度の基準点出しをボタン一つで代替できるこのようなソリューションは、国土交通省推進のi-Constructionにも合致し、現場の生産性向上に大きく貢献するでしょう。ぜひ最新の技術を積極的に取り入れて、マーカー設置の負担がないスマートな3D計測を実践してみてください。現場作業の効率と安全性が飛躍的に向上し、次のステージへと現場を進化させる力になるはずです。
LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上
LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。
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