目次
• はじめに
• 従来のRTK測量と通信圏外の課題
• 圏外でも使えるLRTKアンテナとは
• 208.2mmオフセットで実現する高精度測位
• 現場で活躍するシーンとメリット
• まとめ
• LRTKによる簡易測量へ
• FAQ
はじめに
リアルタイムにセンチメートル級の精度で位置を測定できるRTK(Real Time Kinematic)は、測量や建設の現場で不可欠な技術となっています。しかし従来のRTK測位は、基地局からの無線電波やインターネット通信による補正情報の受信を前提としており、携帯電話の電波が届かない山間部や離島、災害現場など通信圏外の環境では本来の威力を発揮できない課題がありました。そのため電波圏外の現場では、やむなく現地での即時測位を諦めて後日データを持ち帰り処理する、といった対 応に頼らざるを得ないことも多かったのです。高精度な測位が現場でリアルタイムに行えない状況は、生産性の低下や判断の遅れにつながり、大きな支障となっていました。
もし通信インフラに頼らずにRTK測位が可能になれば、どんな場所でもその場で正確な位置情報を取得できるようになり、現場の作業効率と安心感は飛躍的に向上するでしょう。そこで近年注目されているのが、日本の人工衛星システムを活用した「通信不要のセンチ級測位」技術です。本記事では、通信圏外でも使えるRTKを実現する最新ソリューションとして、Lefixea社のLRTKシリーズに注目します。特に、通信圏外で利用できるLRTK用アンテナと「208.2mm」というオフセット値に焦点を当て、現場で高精度測量を即座に行うためのポイントを詳しく解説します。
従来のRTK測量と通信圏外の課題
まずは、従来のRTK測量方式と通信環境に関する課題について整理します。RTK測位では既知の位置に設置した基準局(基地局)と、測位したい地点でGNSS信号を受信する移動局(ローバー)が同時に観測を行い、両者のデータをリアルタイムに通信することで測位誤差を補正します。この補正情報のやり取りには大きく分けて二つの方法が用いられてきました。
• ローカル基地局方式(独立型RTK): 測量現場付近にユーザー自身が基準局用GNSS受信機を据え付け、特定小電力無線などを用いて移動局へ逐次補正データを送信する方法です。構成はシンプルですが、基地局機材の設営や無線機器の準備に手間がかかります。また無線が届く範囲(通常数km程度)に限りがあるため広範囲の測量には不向きで、移動局が基地局から遠ざかると精度も低下してしまいます。
• ネットワーク型RTK方式(VRS/Ntrip): 国土地理院や民間事業者が整備した電子基準点ネットワーク(GNSS基準局網)のデータを活用し、移動局がインターネット経由で仮想基準点(VRS)からの補正情報を受信する方法です。広いエリアで安定したセンチ級測位が可能となり、基地局との距離による精度低下も補完されます。しかし、この方式は通信回線への接続が前提とな るため、携帯電話が圏外となる地域ではサービスを利用できません。また多くの場合、データ配信サービスの利用に月額料金が発生するためランニングコストの面でもハードルがありました。
以上のように、従来のRTK測量では「基地局からの電波」または「インターネット通信」が不可欠でした。つまり通信インフラが整わない環境ではリアルタイムにセンチメートル級の測位を行うことが難しく、測量作業の即応性が損なわれていたのです。例えば山奥の作業現場や離島ではRTK補正情報を取得できず誤差数メートルの単独測位しかできなかったり、大規模災害で通信網が寸断された地域ではそもそも高精度測位が不可能になるケースもありました。こうした状況では測量のために現場を離れて後処理(PPK)する必要が生じ、迅速な意思決定や作業進行の妨げとなっていました。
圏外でも使えるLRTKアンテナとは
上記の課題を解決するため、日本の準天頂衛星システム「みちびき」が提供するセンチメータ級測位補強サービス(CLAS)を活用した新たな技術が登場 しました。CLASでは、国土地理院の電子基準点網で観測された誤差情報(衛星軌道誤差・時計誤差・電離層や対流圏の影響など)を集約し、補正データとして準天頂衛星から直接ユーザーに配信します。対応するGNSS受信機でこの衛星からの補強信号(L6帯)を受信・解析することで、従来は数メートルあった測位誤差が数センチまで縮小されます。この仕組みにより、基地局や通信回線に頼らずともリアルタイムにセンチ級測位を実現できるのです。まさに「衛星が基地局の役割を果たす」ような形であり、通信圏外でも使えるRTKの鍵となっています。
Lefixea社のLRTKシリーズは、このCLAS方式に対応した高精度GNSS受信機とスマートフォンアプリで構成される測位ソリューションです。スマートフォン(現状ではiPhone/iPadに対応)に装着して使用する小型デバイス「LRTK Phone」本体には、センチ級測位に必要なGNSSアンテナとマルチバンド受信機が内蔵されています。従来は据え置き型で数kgの重量があったRTK機器が、重さ約160g・厚さ1cmほどのポケットサイズに凝縮され、スマホと組み合わせて片手で運用可能となりました。さらにLRTKシリーズはネットワーク型RTKにも対応しており、通信圏内ではNtripを用いた補正情報の取得もできます。圏外・圏内の両方で高精度測位を使い分けられる柔軟性も備えた、次世代の「どこでも使えるRTK」ソリューションと言えるでしょう。
そしてLRTKシリーズの特長を最大限に引き出すアクセサリが、圏外対応LRTKアンテナです。これはLRTK Phoneに接続して利用できる外部GNSSアンテナで、携帯電波の届かない山間部や森林など空が開けていない場所でも衛星信号を捉えやすくするための高感度アンテナです。LRTKスターターキットにはこの圏外対応アンテナが標準付属しており、付属の専用ポール(一脚)の先端に取り付けて使用します。これにより樹木や建物で視界が遮られる環境下でも、安定して人工衛星からの補強信号を受信し続けることが可能です。電波の弱い過酷な現場でも測位精度の維持に威力を発揮し、「圏外でも高精度」を支える重要な役割を担っています。
208.2mmオフセットで実現する高精度測位
圏外対応LRTKアンテナを現場で活用する際には、「208.2mm」というオフセット値を正しく設定することが高精度測位のポイントになります。そもそも測量におけるオフセットとは、GNSSアンテナの位相中心(測位基準点)と、実際に測りたい地点(地面や測点)の高さとの差のことです。測定時にアンテナが地面から離れた位置にある場合、その分の高さをあらかじめ引き算(補正)しなければ、得られた座標値は測点よりも浮いた位置を示してしまいます。
LRTKの場合、専用ポールを用いて測量する際には、アンテナをポール先端に、LRTK Phone本体をその直下に装着する構成となります。208.2mmという数値は、この圏外対応アンテナの取り付け位置からLRTK Phone底面までの垂直距離に相当します。言い換えれば、アンテナの基準点が地面より約20.82cm高い位置にあることを意味します。LRTKアプリではこの208.2mmをオフセット(機器高)として設定入力することで、ソフトウェアが自動的にその高さ分を測位結果から減算してくれます。結果、地表面の実測値と同等の高さ情報をリアルタイムに取得できるのです。オフセット補正をワンタップで適用できるLRTKでは、煩雑な計算や手動入力を行う必要がなく、初心者でも確実に正確な測点座標を得ることができます。
現場では、このオフセット設定により余計な操作を意識せずに測量を進められます。例えば、山林の傾斜地で地面の高さを測る場合で も、ポール先端に取り付けたアンテナを測りたい地点の真上にかざし、LRTKアプリでポイントを記録するだけです。208.2mmのオフセット補正がかかった測位データは、即座にその地点の地表高として算出されます。熟練者でなくとも、機器をかざしてボタンを押すという直感的な操作だけで、高価なトータルステーション等に匹敵する測定結果が得られるのは画期的です。
現場で活躍するシーンとメリット
圏外対応アンテナと208.2mmオフセットを活用したLRTK測量が威力を発揮するシーンは多岐にわたります。典型的なのは、やはり携帯通信圏外の山岳地域や森林内の測量です。従来ならRTKによるリアルタイム測位を諦めざるを得なかった山間部の工事現場でも、LRTKなら単独でセンチ級精度の現在地座標を取得可能です。樹木に囲まれ上空視界の悪い林業現場でも、外部アンテナで衛星信号を捉え続けられるため安定した測位ができます。さらに、大規模災害で基地局や通信インフラがダウンした被災地でも、LRTKがあれば自前で正確な位置情報を測れるため、緊急時の状況把握や初動対応にも役立つでしょう。
また、圏外環境に限らず日常の簡易測量にもLRTKは有効です。例えば、広い造成地でいちいち巻尺を引いて高低差を測っていたような作業も、LRTKとスマホがあればその場で高低差を数センチの精度で測定できます。工事前後の出来形チェックや境界ポイントの確認など、従来は長い時間をかけていた工程を大幅に効率化できるメリットは計り知れません。高精度GNSS測位がこれほど手軽に現場で実現できるようになったことで、「ちょっと測ってみる」が誰にでも可能となり、現場のPDCAサイクルをスピーディーに回せるようになります。
LRTKはスマートフォンと連携することで、位置情報の活用範囲も広がります。測位結果はリアルタイムに地図上にプロットされたり、AR機能によってスマホ画面のカメラ映像に測点や設計モデルを重ね表示することも可能です。その場で直感的に出来形を把握したり、杭打ち位置の指示を行えるため、従来の紙図面と巻尺では難しかった現場DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進にも貢献します。こうした多彩なメリットにより、LRTKは測量の専門技術者でなくとも使いこなせる「現場の新しい相棒」として、さまざまな現場で活躍の幅を広げています。
まとめ
通信インフラに依存しない新しいRTK測位技術の登場により、山奥から離島・災害現場に至るまでどんな現場でもセンチメートル級の測量が可能になりつつあります。特にLRTKシリーズは、準天頂衛星みちびきのCLAS信号を活用することで基地局も通信回線も不要とし、真の意味で「圏外でも使えるRTK」を実現しました。従来は測量を断念していたような厳しい環境下でも、高精度な位置情報を即座に取得できる安心感と、現場作業の効率性向上にもたらす効果は絶大です。また、スマートフォンと組み合わせて誰もが直感的に使える設計としたことで、測量の専門家以外でも日常業務にセンチ精度を取り入れやすくなっています。まさに測量の民主化とも言えるLRTKの登場は、今後の建設・土木分野における標準スタイルを大きく変えていくことでしょう。
通信圏外でも威力を発揮するLRTKアンテナと正確なオフセット設定により、現場での迅速かつ高精度な測量が可能となりました。これを機に、皆さんの現場にも次世代のRTK測位ソ リューションを取り入れてみてはいかがでしょうか。
LRTKによる簡易測量へ
高精度なRTK測位が身近になったことで、日常のちょっとした測量作業にも変化が生まれています。例えば工事現場の小規模な高さ確認や、造成前後の地盤状態チェックなど、従来は巻尺や水準器で対応していた作業も、LRTKとスマホさえあればその場で正確に数値を取得できるようになりました。専門的な技術者でなくとも、スマホアプリのボタン操作ひとつで測れる手軽さはLRTKによる簡易測量の大きな魅力です。「とりあえず測ってみる」が誰でもできるようになることで、現場のPDCAをより細かく回せるようになり、品質管理や進捗確認の精度も向上します。LRTKはまさに、日々の現場管理や確認作業にもセンチメートル級の安心感をもたらす存在と言えるでしょう。
FAQ
Q: RTKとは何ですか? A: RTK(リアルタイムキ ネマティック)とは、2台のGNSS受信機(基準局と移動局)間で通信しながら測位誤差を補正し、リアルタイムに衛星測位の高精度化を図る技術です。通常のGNSS測位では数メートルの誤差が出ますが、RTK方式では基準局との相対測位によってその誤差を打ち消し、水平・垂直ともに数センチの精度を実現できます。土木測量や建設機械の位置誘導など、正確な位置・高さが求められる場面で広く利用されています。
Q: LRTKとは具体的に何を指しますか? A: LRTKはLefixea社が開発したスマホ装着型の高精度GNSS測位システムの名称です。手のひらサイズのGNSS受信機「LRTK Phone」をスマートフォン(iPhone/iPad)に取り付け、専用アプリで操作することで、スマホをセンチメートル級測位ができる測量機器に変身させます。「LRTK」という名前自体は特定の英単語の略ではなく、Portable RTKソリューションのブランド名として使われています(※RTKはReal Time Kinematicの略)。特徴は、ネットワーク型RTKに加えて日本の衛星配信補強(みちびきCLAS)にも対応している点で、通信圏外でも単独でセンチ級測位を継続できることが最大の強みです。
Q: 圏外対応LRTKアンテナのオフセット値は何ですか? A: 圏外対応アンテナを利用する際の高さオフセット値は208.2mmです。この数値はアンテナの位相中心(測位基準点)からLRTK Phone底面までの鉛直距離を表しており、ポール先端のアンテナが地表から約20.82cm高い位置にあることを意味します。LRTKアプリ上でこの208.2mmをオフセットとして設定すると、自動的にその高さ分が測位結果から引かれ、地面上の実測値と同じ高さデータが取得できます。
Q: なぜLRTKは携帯圏外でもRTK測位が可能なのですか? A: 秘密は、日本の準天頂衛星システム「みちびき」から提供されるCLAS補強情報を直接受信できることにあります。従来はインターネット経由で受け取っていたGNSS補正データを、LRTKは衛星通信でまかなっているため、携帯電話の電波が届かない環境でも補正情報を取得可能です。言い換えれば、地上の基地局に相当する役割を衛星が担っているため、通信インフラに依存しないRTK測位を実現できているのです。
Q: LRTKはどんな現場や用途で活躍しますか? A: 通信インフラを問わない強みから、LRTKは山間部・森林・離島・沖合といった携帯圏外エリアで威力を発揮します。たとえば、山岳工事の測量、林業における境界確認、離島でのインフラ点検、通信が不安定な港湾工事、さらには災害直後の被災地調査など、従来リアルタイム測位が難しかった場面で活用できます。また都市部でも、スマホを使った手軽な測量やARによる施工管理など、日常の様々な測位・計測シーンで役立つ汎用性の高さも魅力です。
Q: 測位精度はどの程度出ますか?利用コストは高くないですか? A: LRTKを用いた場合、水平位置でほぼ±1~2cm、鉛直方向で±3cm前後の精度が期待できます(環境や衛星受信状況によりますが、従来の大型RTK機器に匹敵する結果が得られています)。一般的な土木測量用途であれば十分実用的な精度と言えるでしょう。また利用コストの面では、CLAS衛星信号の受信自体は無料で行え、圏外で使う際はインターネット通信も不要です。つまりLRTKデバイスさえ導入してしまえば、補正情報に関わる月額課金などは原則かかりません(※ただしネットワーク型RTKを併用する場合は、通信料やサービス利用料が別途必要になります)。
Q: 操作や設定は難しくありませんか?初心者でも使いこなせますか? A: LRTKは現場の非測量技術者でも扱えるように設計されています。専用アプリはシンプルなUIで、測りたいときにボタンを押すだけで現在位置を記録できますし、測位データの座標変換や平均化など高度な処理も自動化されています。日本語のガイドに従って進めれば特別な知識がなくてもすぐ利用開始できるため、専門資格がない方でも問題ありません。実際、多くの現場担当者が短時間の説明だけでLRTKを使いこなし、「従来の測量器より格段に簡単だ」と評価しています。さらに受信専用のGNSS機器なので無線局免許も不要で、導入ハードルは非常に低いです。
Q: 利用開始には何が必要ですか? A: 基本的にはLRTKスターターキット一式と対応するiPhoneまたはiPadがあればすぐに始められます。スターターキットにはLRTK Phone本体のほか、圏外対応アンテナ、専用ポール(一脚)・二脚スタンド、固定用ブラケット、充電ケーブルなど必要なアクセサリが一通り含まれています。まずApp Storeから無料の「LRTKアプリ」をダウンロードし、ユーザー登録と初期設定を行います。その後、スマホにLRTK Phoneを装着して電源を入れれ ば、自動的に初期化が完了し測位を開始できます。特別な校正作業や難しい設定は不要で、現場に到着してから数十秒で測量を始められる手軽さもLRTKの利点です。
LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上
LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。
LRTKの詳細については、下記のリンクよりご覧ください。
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