目次
• 圏外対応LRTKアンテナとは
• オフセット値208.2mmとは何か
• オフセット値の設定方法
• 圏外対応アンテナの活用シーン
• LRTKで実現する簡易測量
• FAQ
圏外対応LRTKアンテナとは
まず、「圏外対応LRTKアンテナ」とは何かを説明します。LRTKシリーズはスマートフォン(主にiPhone)に取り付けて使用する高精度GNSS受信機で、現場で簡単にセンチメートル級の測位ができるソリューションです。このLRTKは通常、インターネット経由でRTK測位を行うネットワーク型RTKに対応しています。しかし山間部や電波の届かない建設現場など携帯通信が圏外となる場所では、インターネットを使ったRTK補正情報を受信できません。そこで活躍するのが「圏外対応LRTKアンテナ」です。
圏外対応LRTKアンテナは、その名の通り通信圏外でも高精度測位を可能に するためのオプションアンテナです。このアンテナをLRTK端末に装着することで、通常はインターネット接続がなくては受け取れない補正情報を、人工衛星から直接受信できるようになります。具体的には、日本の準天頂衛星システム「みちびき」が提供するセンチメータ級測位補強サービス(CLAS)という衛星からの補正信号を受信可能です。CLAS対応のアンテナを搭載したLRTKであれば、携帯電波が届かない環境でも、空が開けていて衛星信号さえ受信できれば、リアルタイムに数センチ精度の位置測位が実現できます。なお、LRTK受信機自体はL1/L2/L5の3周波GNSSに対応しており、圏外対応アンテナ使用時には準天頂衛星のL6帯(CLAS信号)も受信可能です。複数周波数の観測により、難しい環境下でも安定して精度の高い測位解を得やすいというメリットがあります。
圏外対応アンテナはアンテナ部とバッテリーが一体化した小型デバイスで、iPhoneに簡単に装着できます。重量は数百グラム程度と軽量で、片手で持てるサイズ感です。現場で持ち運びしやすく、必要なときにすぐ取り付けて使用できます。圏外対応アンテナを使用している場合でも、従来通りネットワーク型RTK(Ntripなどのインターネット経由の補正サービス)も引き続き利用可能です。つまり、圏外対応LRTKアンテナを装着すれば、現場の電波状況に応じてインターネット経由の補 正と衛星経由の補正を使い分けられる柔軟性があります。携帯回線がつながる現場では従来のネットワークRTKを活用し、山奥など回線圏外では衛星からのCLAS信号に自動で切り替えて測位を継続できます。これにより、LRTK端末ひとつで日本全国どこでも高精度な測量が可能になるのです。
オフセット値208.2mmとは何か
では本題の「オフセット値208.2mm」とは何でしょうか。簡単に言うと、LRTKアンテナと測定ポイントとの高さの差(ずれ)を補正するための値です。測量では、GNSSアンテナ(受信機)の位置と実際に測りたい地点(地面や基準点)の位置に高低差がある場合、その差を補正しないと正確な高さ(標高)や座標が得られません。この高さの差を正しく補正するために、アンテナのオフセット(ずれ量)を事前に設定しておく必要があります。
LRTKシリーズでは、アンテナをポール(一脚)に取り付けて地面の基準点などを測定することがあります。その際、アンテナは地面から持ち上げられた位置にありますね。特に圏外対応LRTKアンテナはiPhone装着型の小型GNSSですが、精度を高めるために現場では専用ポールの先端に取り付け、地面の測点に当てて使うことが多いでしょう。このとき、アンテナが地面から離れている分の高さをあらかじめ引き算する設定が「オフセット値」です。
208.2mmという数値は、圏外対応LRTKアンテナの場合にメーカーが推奨するオフセット値です。具体的には「圏外対応LRTKアンテナ本体から、装着したスマートフォン(LRTK Phone)の底面までの長さ」に相当します。約20センチ強のこの距離分、アンテナ位置が測定対象のポイントより上にずれている計算になるため、あらかじめ208.2mmをオフセット(高さを引き算する値)として設定しておくことで、測位ソフトウェアが自動的にその分を差し引いてくれます。
言い換えると、圏外対応アンテナを用いて測量する際に208.2mmのオフセットを設定すれば、測位結果の高さから常に約20.82cmが自動減算されます。その結果、地面の実際の高さとほぼ一致する値が出力されるのです。208.2mmという値はメーカーが精密に算出したアンテナ中心とスマホ底面の距離であり 、利用者はこの値をそのまま設定するだけで複雑な計算を意識せずに正確な高さ補正が行えます。逆に言えば、このオフセットを設定し忘れると、結果の高さが実際より20cmほど高く出てしまうため注意が必要です。
オフセット値の設定方法
それでは、実際にLRTKでオフセット値208.2mmを設定する方法を見てみましょう。基本的な手順は次の通りです。
• 圏外対応LRTKアンテナを装着する: まずiPhoneなどのスマートフォンに圏外対応LRTKアンテナを取り付けます。専用のスマホ用ケースにワンタッチで装着できる構造になっており、難しい配線は不要です。アンテナをしっかり固定したら、必要に応じてポール(一脚)や三脚にセットします(ポール先端に取り付ければ地面の点を突きやすくなります)。
• LRTKアプリを起動して接続する: スマホ上でLRTK専用アプリを起動し、アンテナ(GNSS受信機)との接続が確立されていることを確認します。BluetoothやLightningコネクタ経由で接続されている場合、アプリ画面に受信機の接続状態が表示されます。接続後、測位モードが通常通り作動している(noRTKではなくFloatやFixになる)ことをチェックしてください。
• 測位設定でオフセット値を入力する: LRTKアプリ内の設定メニューからアンテナ高(オフセット)の項目を開きます。項目名は「アンテナ高」や「オフセット値」等になっていますので探してください。そこに208.2mmという値を入力します。アプリによって単位指定が異なる場合がありますが、ミリメートル単位であればそのまま「208.2」と入力し、センチメートル単位なら「20.82」のように換算してください。入力後は設定を保存するか、そのまま設定画面を閉じれば値が反映されます。
• 測定時に結果を確認する: オフセットを設定した状態で、実際に測量を行います。例えばポールの先端(石突き)を測りたい地点に当て、スマホ画面上の「測位」ボタンを押せば座標を取得できます。取得されたデータの高さ(標高)を確認すると、設定したオフセット分だけ自動で補正されていることがわかります。つまり、本来アンテナが地面より20.82cm高い位置にあったにも関わらず、その分が差し引かれた値が出力されます。
なお、LRTKアプリにはオフセット設定の切り替えをワンタッチで行える機能も備わっています。現場で手持ち計測からポール計測に切り替える際も、あらかじめ登録した208.2mmのオフセット値をボタン一つで有効/無効にできるため、状況に応じた設定変更がスムーズです。また、一度208.2mmを入力しておけば次回以降もその値が記憶されているため、毎回入力し直す手間はありません(※アプリの仕様によりますが、多くの場合最後に設定した値が保存されます)。もしポールの長さ自体を変更した場合は、その分を別途「アンテナ高」として加算して入力するか、アプリでポール高を調整する機能がある場合はそちらを利用して調整してください。いずれにせよ、圏外対応アンテナ使用時は208.2mmという基準オフセット値を正しく設定することが、高精度測位のカギとなります。
圏外対応アンテナの活用シーン
圏外対応LRTKアンテナと208.2mmオフセット設定の組み合わせにより、これまで困難だった環境でも手軽に高精度測量が可能になります。具体的にどのようなシーンで活躍するのか、いくつか例を挙げてみましょう。
• 携帯圏外の山間部や森林地帯: ダム建設予定地や森林測量など、山奥で携帯電話の電波が届かない場所でも、圏外対応アンテナがあれば安心です。みちびき(準天頂衛星)からのCLAS信号を直接受け取って測位できるため、独立した基地局を設置したり、車で麓まで降りて通信したりする手間が省けます。リモートな山岳現場での地形調査やインフラ点検にも最適です。
• 海上・離島での測量: 沖合の海上や離島では、携帯通信が不安定または圏外となるケースがあります。圏外対応LRTKアンテナ搭載のシステムなら、船上や島内でも衛星から補強信号を受けて高精度な測位が行えます。例えば、沿岸施設の測量や、離島のインフラ点検で船や小型ボートから位置計測を行う場合にも役立ちます。
• 農業・林業など田園地域: 農村部や山林地域など、携帯インフラが十分でない地域での測位にも力を発揮します。広大な農地の区画測定や、森林内の作業路の位置出しなど、従来は誤差の大きい単独測位で妥協していた場面でも、圏外 対応アンテナにより常にcm級の現在位置を把握できます。農業分野では自動走行トラクターの補助や圃場管理、林業分野では伐採エリアの境界確認などにも応用が期待できます。
• 災害時の緊急測量: 地震や豪雨などの災害直後は、通信インフラがダウンしてしまう可能性があります。そのような状況下でも、圏外対応アンテナを装備したLRTKであれば迅速に被災地の状況を測量できます。衛星からの補正信号により、倒壊した構造物の位置や地盤変動の測定を即座に行い、復旧計画に役立てることができます。通信に頼らない測量手段があることは、防災・減災の面でも非常に心強いと言えるでしょう。
• 広大な敷地や地下施設での測量: ゴルフ場や大規模な造成地といった広範囲の現場では、場所によっては携帯電波が届きにくいエリアが点在することもあります。また地下施設やトンネル坑口付近なども通信が不安定です。そうしたエリアでも圏外対応アンテナがあれば、多少通信が途切れる場所に入っても測位精度を維持できます(※衛星信号自体は受信できる地上部分に限ります)。広い現場を移動しながら連続して測量するときにも威力を発揮するでしょう。
上記のように、圏外対応LRTKアンテナは「どこでも正確に測る」ことを可能にする心強いツールです。従来は基地局を持参したり、高価な移動通信装置を用意したりとコストや準備が大変だった場面でも、LRTK端末とこのアンテナさえあればシンプルに乗り切れます。加えて、208.2mmのオフセット設定を正しく行っておけば、測定結果の高さ情報も現場で即座に利用できる精度で取得できます。現場担当者にとって、測量作業が飛躍的に効率化されることでしょう。
LRTKで実現する簡易測量
LRTKシリーズの最大の特徴は、高精度測位を誰でも手軽に行える点にあります。スマートフォンに専用デバイスを装着し、直感的なアプリ操作で測量ができるため、専門的な知識がなくとも現場測定が可能です。特に圏外対応アンテナを組み合わせれば、従来は測量士や高価な機材が必要だった環境下でも、一人で機動的に測量を完結できるでしょう。
例えば、一人の作業員がLRTK Phoneを携行し現場を歩き回り、 必要な点の座標や標高を次々に取得していく様子を想像してください。測位したデータはその場でクラウドにアップロードされ、オフィスにいるスタッフと即時共有することも可能です。重たいトータルステーションや従来型GNSS機器を運ぶ必要がなく、ポケットに収まるLRTK端末で簡易測量が実現します。
さらにLRTKは、写真計測やLiDARスキャン機能(iPhone Pro搭載のLiDARセンサーを活用した点群取得)にも対応しており、取得したデータに高精度の位置情報を付加できます。これにより、出来形管理(施工後の仕上がり確認)の点群データ作成や、埋設物の位置記録といった作業も少人数で効率良く行えます。また、AR機能によって現地で設計図と実景を重ね合わせて表示することも可能です。測ったデータの活用範囲が広がり、受発注者間の情報共有もスムーズになります。
このようにLRTKを活用すれば、現場での測量作業は格段に効率化されます。高精度の位置情報をリアルタイムに取得し、すぐに記録・共有できるため、従来に比べて大幅な時間短縮と省力化が期待できます。もし高精度測位ソリューションの導入に興味があれば、LRTKを用いた新しい簡易測量スタイルをぜひ検討してみてください。1人1台のLRTKで、これまで以上にスピーディーかつ正確なデータ収集が可能になります。
FAQ
Q. 圏外対応LRTKアンテナの208.2mmオフセットは必ず設定しないといけませんか? A. はい、正確な測位結果を得るために設定することを強くお勧めします。208.2mmという値はアンテナと測点との高さ差を補正するためのものです。これを設定しない場合、取得される高さ座標は実際より約20cm高い値になってしまいます。特に標高や高さ情報が重要な測量では、オフセットを正しく入力しておくことで誤差を解消できます。
Q. 208.2mmという数値はどのように決まったのですか? A. 208.2mmは、圏外対応LRTKアンテナをスマートフォンに装着した際の「アンテナの位相中心からスマホ底面までの垂直距離」に基づいて決められた値です。メーカーが設計段階で正確に測定した寸法であり、ユーザー自身が計測する必要はありません。この既定値をそのまま入力すれば、適切な高さ補正が行われるようになっています。
Q. 圏外対応アンテナはどんな場所でも使えますか? A. 基本的に空が見通せる屋外であれば日本全国どこでも利用できます。圏外対応アンテナは衛星からのCLAS信号を受信するため、GNSS衛星や準天頂衛星の電波が届かない屋内やトンネル内、深い谷底では使用できません。しかし、携帯通信が届かない山間部や離島でも空が開けていれば問題なく高精度測位可能です。また、日本以外の地域ではCLAS信号が提供されていないため、本アンテナの真価を発揮できるのは国内(および周辺のCLAS提供エリア)に限られます。
Q. CLASを利用するのに追加の費用や契約は必要ですか? A. いいえ、CLAS(センチメータ級測位補強サービス)は日本政府(内閣府)が提供する衛星測位補強サービスで、対応受信機さえあれば無料で利用できます。携帯通信を使った民間の補正サービス(ネットワーク型RTKのサブスクリプションなど)とは異なり、CLAS信号自体の受信に料金はかかりません。ただし、LRTK端末や圏外対応アンテナといった対応デバイスの購入費用は必要です。
Q. 通常のLRTK利用時にもオフセット設定は必要ですか? A. 圏外対応アンテナを使わない場合でも、測量の状況によってはオフセット設定が必要になることがあります。例えばLRTK受信機をポール先端に取り付けて地面の点を測る場合、アンテナが地面から離れている高さ分を補正するためにオフセットを入力します。ただ、圏外対応アンテナ以外のモデルではオフセット値が208.2mmと異なる可能性があります(機種の形状やアンテナ位置によって距離が異なるため)。基本的にはメーカーが案内している推奨値を使用するか、自分でアンテナ中心から測定点までの高さを測って設定します。手持ちで直接地面を測位するような場合は、アンテナが測点とほぼ同じ位置にあるためオフセットは0と考えて差し支えありません。
Q. 既存のLRTK端末を圏外対応にすることはできますか? A. お使いのLRTK端末のモデルによります。現行のLRTK Phone 4シリーズ(圏外対応モデル)であれば、オプションの圏外対応アンテナを後から購入して取り付けることでCLAS受信機能を追加可能です。一方、初期のLRTKモデルや対応していない機種の場合、ハードウェアがCLAS信号に未対応のため圏外対応アンテナを利用できません。ご自身の端末が圏外対応アンテナに対応しているかどうか、事前にメ ーカーの案内情報をご確認ください。
LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上
LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。
LRTKの詳細については、下記のリンクよりご覧ください。
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