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モバイルスキャンが土木現場で注目される5つの理由

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万能の測量機LRTKの説明

はじめに

近年、土木・建設現場の生産性向上や人手不足の解消に向けて、モバイルスキャンと呼ばれる技術が大きな注目を集めています。モバイルスキャンとは、スマートフォンなどの携帯型デバイスを用いて現場の測量や計測を行い、その場で3Dモデル(点群データ)を取得する手法です。従来は熟練の測量技術者がトータルステーションや地上型レーザースキャナーといった高価な機器を用いて行っていた作業を、モバイルスキャンなら誰でも手軽に実施できるようになりつつあります。その背景には、スマホの高性能化(カメラやLiDARセンサーの搭載)、GNSS測位精度の向上(日本では準天頂衛星みちびきの運用によりスマホGPS精度が数十cmまで向上)、そして国土交通省による*i-Construction*推進など、技術面・制度面での後押しがあります。


本記事では、モバイルスキャンが土木・建設の現場で特に注目される5つの理由について専門的かつ実務的な観点から解説します。それぞれ「作業効率化と省人化」「測量精度の向上」「安全性の向上と非接触計測」「導入しやすい初期コストと教育負担の軽さ」「現場DX・クラウド共有との親和性」の5点に分けて詳述します。さらに記事の最後では、スマホ+RTK測位+点群+クラウド連携+AR誘導といった最新技術を組み合わせたモバイルスキャンの具体的な活用方法(測位→スキャン→共有の手順)と、導入によって得られるメリットについても簡潔にご紹介します。現場のデジタル化を加速するモバイルスキャンは、各地で試験導入段階から実運用段階へ移行しつつあり、将来的に測量・検査の新たなスタンダードとなることが期待されています。


1. 作業効率化と省人化

土木現場では測量や出来形管理など、多くの場面で計測作業が発生します。従来の手法では、水準器や巻尺を使った人力による寸法測定や、測量機器を設置してのポイント測量に多大な時間と人手を要していました。モバイルスキャンを導入すれば、こうした計測作業を飛躍的に効率化することが可能です。スマートフォンを持って測りたい範囲を歩くだけで、広範囲の地形や構造物を短時間でスキャンできます。一度のスキャンで得られる点群データには数万〜数百万もの測点が含まれるため、従来は断片的にしか把握できなかった現場全体の形状を一度に取得できます。例えば、数百メートルにわたる道路区間を3Dスキャンすれば、従来は測点ごとに何人もで半日かけていた路面や法面の断面計測を、一人でわずか数十分ほどで完了できます。


この効率化は単に時間短縮に留まりません。省人化にも直結します。従来の測量では複数人で機器を操作したりスタッフ(標尺)を立てたりする必要がありましたが、モバイルスキャンであれば基本的に作業者一人で完結できます。例えば土量計算のための盛土の計測も、これまでは人手で何点も断面を測っていたものが、スマホ一台で一人が周囲を歩くだけで完了します。人員手配の手間を減らせるだけでなく、人件費の削減や人材不足への対応にもつながります。限られた人数でも効率良く現場を管理できるようになることが、モバイルスキャンが注目される大きな理由の一つです。さらに、取得した点群データから盛土の体積や断面形状を自動算出できるため、従来は測定後に別途行っていた数量計算・図面作成といった工程も大幅に効率化されます。


2. 測量精度の向上

モバイルスキャンによって取得される点群データは、現場の形状を高密度に捉えているため測量精度の向上に寄与します。手作業で数点を計測する場合と比べ、点群データなら地表や構造物の細かな起伏まで面的・立体的に把握できます。これにより、従来は見落とされがちだった微妙な高さの違いや表面の凹凸も明らかになります。出来形管理において図面との差異をチェックする際も、広範囲を一度にスキャンした点群を使えば、必要な箇所を見逃すリスクが減り全体像を正確に比較できます。さらに、一度取得した点群データは現場全体の記録として残るため、後から「やはりあの部分の寸法も確認したい」といった場合でも追加の現場測定に行かずにデータ上で必要な寸法を計測できます。


また、最近のモバイルスキャンソリューションでは測位精度そのものも飛躍的に高まっています。スマホに装着できる高精度GNSS受信機(RTK対応デバイス)を併用することで、取得した点群に世界座標(緯度・経度・高さ)を与えることが可能です。これにより各点の位置精度は数センチ程度まで高まり、測量図や設計データとの厳密な照合ができるようになります。例えばLRTKのようなスマホ一体型RTK測位ソリューションを用いれば、スマホでスキャンした点群にそのまま公共座標系の座標値を付与でき、後処理の位置合わせ作業も不要です。モバイルスキャンは密度の高いデータ高精度な測位の両面から、従来以上に信頼性の高い測量結果をもたらします。また、施工途中に点群スキャンで出来形を逐次確認すれば、施工誤差を早期に発見して手直し工事を未然に防ぐことができ、品質確保のリスク低減にもつながります。


3. 安全性の向上と非接触計測

建設現場での安全確保もまた、モバイルスキャンが注目される理由です。非接触で測れるということは、危険な場所に人が立ち入らずに済むということでもあります。例えば高所や法面の計測では、従来は作業員が直接危険な高所に上って墜落のリスクを負いながら寸法を測ったり、重機の近くで作業したりする必要がありました。モバイルスキャンなら距離を置いて安全な位置から対象物をスキャンできるため、高所作業や高速道路脇での測量などでもリスクを最小限に抑えられます。実際に、災害現場の状況把握にスマホを用いた3Dスキャンが活用され始めており、崩落現場や浸水地域でも作業員が危険を冒すことなく現況を詳細に記録できます。


また、計測作業自体が短時間で終わるため、作業員が危険区域に留まる時間を減らせる点でも安全性向上に寄与します。非接触で大量の点群データを取れる利点は、計測ミスの削減にもつながります。人力で接触しながら測る場合、手元のブレや測定箇所の選定ミスが生じる可能性がありますが、レーザー計測や写真測量による点群取得ではそうしたヒューマンエラーが起きにくくなります。さらに取得後のデータ処理も自動化されているため、現場での記録漏れや書き間違いといったミスも防ぎやすくなります。加えて、モバイルスキャンで得た3Dモデルはそのまま現場の安全教育施工計画にも活用可能です。例えばスキャンした地形データ上で重機のオペレーションをシミュレーションしたり、AR技術で作業手順を視覚的にガイドしたりすることで、より安全で確実な施工を実現できます。


4. 導入しやすい初期コストと教育負担の軽さ

最新技術というと高額な投資が必要な印象を持たれがちですが、モバイルスキャンに関しては導入コストが比較的低く抑えられる点も見逃せません。従来の3Dレーザースキャナーや測量専用機器は、購入に数百万円以上かかるケースも珍しくありませんでした。これに対し、スマートフォンと簡易なセンサー類を組み合わせるモバイルスキャンであれば、初期費用は数十万円程度(場合によってはそれ以下)からスタート可能です。すでに社内で保有しているスマホやタブレットを活用すれば、新たに専用機材を購入する負担も最小限で済みます。ハードルの低い価格帯で試験導入できるため、中小の建設会社や自治体でも採用しやすいのが特長です。実際に、地方自治体が豪雨災害後の復旧調査にスマホを使ったモバイルスキャンを導入し、専門の測量会社に委託することなく職員のみで現況の3D記録と被害範囲の迅速な把握を行ったケースもあります。低コスト・短期間で運用を開始できることから、このように緊急時の初動対応力向上という点でもモバイルスキャンは有効と評価されています。


さらに、教育・訓練コストが小さいことも大きなメリットです。スマホアプリで完結するモバイルスキャンは操作が直感的で分かりやすく、特別な資格や測量の熟練がなくても扱いやすいよう設計されています。現場スタッフへの説明会や研修を行っても短時間で習得でき、現場での実践にすぐ移行できます。これは、従来の測量機器にありがちだった「専門オペレーターに依存する」という状況から脱却できることを意味します。若手や新人でもスマホに触れたことがある人なら抵抗なく使い始められるため、現場全体のICTリテラシー向上にもつながります。結果として、組織として新技術を内製化しやすくなり、外注費用の削減や社内ノウハウ蓄積による大幅なコスト削減効果も期待できます。実際に、自社でモバイルスキャンを習得して外注測量を減らし、年間の測量コストを大幅圧縮できた中小施工会社も登場しています。


5. 現場DX・クラウド共有との親和性

モバイルスキャンは、現場のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進にも大きく貢献します。点群データというデジタルな三次元情報を容易に取得できるようになることで、施工管理のプロセス自体がデジタル化し、様々な付加価値が生まれます。また、ドローン飛行が難しい狭小現場や屋内・地下空間でも手持ちスマホで計測できるため、場所を選ばず現況を3次元化できる点も実務上の利点です。例えば、従来は紙の図面や写真で行っていた出来形検査も、点群をCADデータやBIMモデルと重ね合わせて3D上で照査するといった高度な解析が可能になります。またクラウドサービスとの親和性も高く、モバイルスキャンで取得したデータを即座にクラウドにアップロードして共有できるため、現場と事務所間でリアルタイムに情報をやり取りできます。離れた場所にいる上司や発注者とも、クラウド上で同じ3Dモデルを見ながらコミュニケーションでき、迅速な意思決定や合意形成が図れます。国土交通省も「3次元計測技術を用いた出来形管理要領(案)」を策定し、点群スキャンによる出来形管理を正式にガイドライン化しつつあり、これらの技術はまさに建設業界の新常識になりつつあります。視覚的な3Dデータを共有することで、現場で起きていることを関係者全員が共通認識でき、施工プロセスの透明性と信頼性も向上します。さらに、現場を3Dデータでアーカイブしておけば、完成後に見えなくなる構造物や埋設物も含めて確実に記録が残るため、将来のメンテナンスや万一のトラブル時の検証にも役立ちます。さらに、工事の各工程終了時に現場を3Dスキャンしてデータを蓄積すれば、進捗の定量的な把握や出来形の時系列比較も容易になります。


さらに、モバイルスキャンと組み合わせて活用できるAR技術も現場DXを加速させるポイントです。スマホやタブレットの画面越しに、スキャンした点群データや設計モデルを実際の風景に重ねて表示すれば、その場で施工の進捗や出来形の良否を直感的に確認できます。例えば、掘削前に地下埋設物の位置をAR表示して事前に把握したり、施工箇所に設計どおりの完成形を投影して仕上がりをイメージしたり、設計図上の杭位置を現地にAR表示して杭打ちのガイドとするなど、といった使い方が可能です。また、RTKによる高精度な測位情報があることで、AR上に表示されるガイドマーカーの位置もずれることなく正確です。丁張設置の手間を減らしつつ、データに基づく施工を現場で実践できるため、品質と効率の両面でDX効果を発揮します。


モバイルスキャンの導入方法(測位→スキャン→共有)とそのメリット

ここまで挙げたように、モバイルスキャンは多くの利点を持っています。最後に、スマホを用いたモバイルスキャンを現場で実践する基本的な手順と、導入によって得られる具体的なメリットを確認しましょう。


1. 高精度の測位:まずはスマートフォンにRTK対応のGNSS受信機を接続し、基準点に基づいた高精度測位を行います。例えば専用のポールにスマホとRTKデバイス(一脚に装着できるLRTK Phoneなど)を取り付け、既知点でcm級の位置合わせを行うことで、スマホ自体がリアルタイムにセンチメートル精度で現在位置を把握できるようになります。これがモバイルスキャンの土台となる正確な座標基盤を提供します。


2. 3Dスキャン:測位が完了したら、スマホのスキャンアプリを起動して計測を開始します。LiDARセンサー搭載のスマホであれば周囲に赤外線レーザーを照射しながら端末を動かすだけで、その場で周囲の点群を取得できます。LiDAR非搭載の場合でも、スマホのカメラで対象物をぐるりと撮影すれば、写真から立体形状を復元するフォトグラメトリ機能で点群生成が可能です。オペレーターは画面上の指示に従って移動し、隙間なく対象を捉えるだけで良いので、難しい操作は必要ありません。建物内部から土量の多い現場まで、短時間で必要な範囲の3次元データを取得できるのがモバイルスキャンの強みです。


3. データ共有と活用:スキャンが完了すると、スマホ上で点群データを確認するとともに、クラウドへアップロードしてプロジェクト関係者と即時に共有できます。オフィスのパソコンでは受信した点群をもとに体積計算や図面との比較検証が行えるほか、クラウド上で複数人が同じデータを閲覧してコメントを付け合うことも可能です。さらに、現場では共有した点群データや設計データをスマホのARモードで呼び出し、その場で重ねて表示することで、追加の測定や出来形のチェックを行えます。


以上の手順を経て実践されるモバイルスキャンにより、一人の作業者であっても従来は複数人がかりだった測量・計測作業を安全かつ迅速に完了できるようになります。導入メリットとして、作業時間の短縮や人件費の削減はもちろん、取得データの信頼性向上や情報共有の円滑化による品質管理の強化が挙げられます。


現場の状況を高精度な3Dデータとして蓄積していけば、施工の振り返りや将来のメンテナンス計画にも役立ち、長期的なコスト削減と技術力向上にもつながります。また、現場スタッフがこうしたデジタル計測技術に習熟することで組織全体のIT・測量スキルが底上げされ、将来的な競争力強化にも寄与します。モバイルスキャンは、これからの土木現場において単なる測量効率化ツールに留まらず、現場DXを支える基盤技術として大きな価値を発揮していくことでしょう。


LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上

LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。

LRTKの詳細については、下記のリンクよりご覧ください。

 

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