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人手不足に効く!みちびき×LRTKで一人でもできる高精度測量の新手法

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万能の測量機LRTKの説明

建設業界では深刻な人手不足が問題となっており、2024年4月から施行された働き方改革関連法による残業規制強化(いわゆる「2024年問題」)により、工期遅延や人手不足のさらなる悪化も懸念されています。この状況を受け、国土交通省はICTを活用した省人化施策「i-Construction 2.0」を推進し、建設プロセス全体のデジタル化によって2040年度までに現場生産性を1.5倍、3割以上の省人化を実現する目標を掲げています。つまり、デジタル技術の導入による施工DX(デジタルトランスフォーメーション)は、人手不足を補い業務効率を向上させるために不可欠です。また、測量を担う熟練技術者の高齢化が進み若手人材の不足も深刻化しており、作業負担を軽減して技術を継承していくためにも測量業務の省力化は急務となっています。


そうしたデジタル技術の中でも、最新の測位衛星技術とIoTデバイスを組み合わせることで一人でもできる高精度測量を実現する取り組みが注目されています。特に、日本の衛星測位システム「みちびき」が提供するセンチメータ級測位補強サービス(CLAS)と、新世代の小型RTK-GNSS受信機「LRTK」を活用すれば、これまで複数人を要した測量作業を一人で高精度に行う新手法が現実のものとなりつつあります。本記事では、この「みちびき×LRTK」による一人測量の仕組みと効果について詳しく解説します。


測量作業の省力化が求められる背景

従来、建設現場での測量や墨出し作業には複数人の人手が必要でした。例えばトータルステーションによる測量では、測量機を操作する技術者とターゲットのプリズムを持つ補助者がチームで動くのが一般的です。また、高精度なGNSS測量(RTK測量)を行う場合も、基地局の設置や通信の確保などに手間がかかり、一人で現地調査を完結させるのは容易ではありませんでした。このように人手と時間を要する測量作業は、慢性的な人材不足に陥っている建設業界において大きな負担となっています。さらに、測量を担う熟練技術者の高齢化が進み、若手の人材確保が難しくなっていることからも、現場作業の負担軽減と省力化は急務と言えるでしょう。


しかし近年、GNSS(全球測位衛星システム)の発展とICTの普及により、測量士が1人で受信機を持って現地測量を完結できるケースも登場しています。実際、複数の衛星測位システムを併用するマルチGNSSや、インターネット経由で基準局情報を提供するVRS(バーチャル基準点)などの技術進歩によって、現場で受信機1台を持ち歩くだけでセンチメートル級の測位が可能となりつつあります。測量の一人作業化が進めば、人員手配の負担が軽減され、待ち時間の短縮や業務の省力化に大きく寄与するでしょう。


準天頂衛星「みちびき」による高精度測位

日本の準天頂衛星システム「みちびき」は、GPSに代表される従来の測位衛星システムと連携しながら、日本付近での測位精度と信頼性を向上させるために導入されました。とりわけ「みちびき」はセンチメータ級測位補強サービス(CLAS)と呼ばれる誤差補正情報を配信しており、対応する受信機を用いることで単独のGNSS受信機でもリアルタイムにセンチメートル級の測位が可能となります。従来、センチメートル級の測位には移動局と固定局(基地局)を用いたRTK測量や、ネットワーク型基準局サービス(Ntrip方式)による補正情報の受信が必要でした。しかし、みちびきのCLASに対応した受信機であれば、通信環境が整っていない山間部や災害現場などでも、上空の衛星から直接配信される補強信号を受け取るだけで高精度測位が行えます。


さらに「みちびき」は、日本上空に長時間とどまる特殊な軌道を採用しているため、都市部や山岳部でも衛星の電波が遮られにくく、安定した測位が可能です。複数の測位衛星を組み合わせたマルチGNSSと相まって、衛星の視界が限られる環境下でも必要な衛星数を確保しやすく、測位の可用性と精度が飛躍的に向上しています。加えて、マルチGNSS化によりRTK測位の初期化に要する時間も短縮され、より迅速に測位を固定解(フィックス)へと持ち込めるようになりました。このようにみちびき(CLAS)の活用は、基準局を設置できない一人測量を支える重要な技術要素となっています。


スマートフォンが測量機に変わるLRTK

上記のような衛星測位技術の進歩とともに、生まれた画期的なデバイスがLRTK(エルアールティーケー)です。LRTKは、東京工業大学発ベンチャーのレフィクシア社が開発したポケットサイズのRTK-GNSS受信機で、スマートフォンやタブレットに装着して使用します。重量は約125g、厚さ13mmほどの超小型アンテナ一体型受信機で、iPhone用の専用カバーにワンタッチで取り付け可能です。このLRTKをスマホに装着するだけで、スマートフォンがセンチメートル級精度の測位ができる万能測量機に変身します。また、LRTK受信機はGPS・GLONASS・Galileo・みちびき(CLAS信号)など複数の衛星に対応した3周波GNSSモジュールを搭載しており、衛星数増加による測位精度の向上や測位環境の安定化を最大限に活用できるよう設計されています。


LRTKを用いれば、従来は専門の測量機器や高度な技術が必要だった作業をスマホ一台でこなすことができます。例えば、単独測位による基準点の測量、出来形管理のための点群データ計測、工事現場での墨出し(位置出し)作業、さらには設計データと現況を重ね合わせて表示するAR(拡張現実)による検証まで、LRTKとスマホだけで対応可能です。測位データや点群データはリアルタイムでクラウドにアップロードでき、オフィスにいるスタッフとも即座に共有できます。価格も従来の高精度測量機器に比べてリーズナブルで、一人一台の端末を配備することも現実的なため、現場全体の生産性向上が期待されています。実際にLRTKは内閣府の準天頂衛星システム公式サイトにも[CLAS対応製品として紹介](https://qzss.go.jp/info/archive/lefixea_240513.html)されており、その注目度の高さがうかがえます。


みちびき×LRTKで実現する一人高精度測量

上記で述べた「みちびき」による補強信号と、手軽に使えるLRTKデバイスを組み合わせることで、現場の測量作業は劇的に効率化されます。従来は高精度な測量を行うために、重たい三脚や据え置き型の機材を担いで既知点(基準点)を設置したり、通信環境の確保に苦労したりする必要がありました。ところがみちびき×LRTKの仕組みを使えば、そうした手間をかけずに一人で現場を巡回しながら高精度な測位・計測が行えるのです。携帯電波圏外の山間部や災害直後の被災地においても、LRTKがみちびき(CLAS)の補正情報を受信してセンチ精度の測位を可能にするため、現地に基準局を設置したり測量班を招集したりしなくても、その場で正確な測量データを取得・共有できます


実際に、2023年に発生した能登半島の地震被災地の現地調査でもLRTKが活用されました。通信インフラが途絶した状況下でも、ポケットに収まるこの小型端末が1台あれば、被災現場の状況を高精度に記録し、クラウドを通じて迅速に共有できたと報告されています。災害直後の被災状況を正確に把握して共有できることは、初動対応や復旧計画の立案において大きな助けとなります。重たいレーザースキャナーや発電機付きの大型機材を持ち運ぶ必要もなく、文字通り片手で測位・計測が可能になる点は現場にとって大きなメリットです。これは「常に身に着けて、必要なときにすぐ使える1人1台の測量ツール」を目指して開発されたLRTKならではの利点であり、「現場を身軽にして、自分たちだけで簡単に計測したい」という施工管理者・作業者の願いを叶える画期的なソリューションと言えるでしょう。


例えば、従来は専門業者に委ねていた大規模造成現場の出来形計測も、朝一番に現場全体をLRTKでスキャンすることで日々の盛土量を即座に算出できます。また、重要構造物の施工後検査でも、LRTKで取得した出来形点群データをその場でクラウド共有すれば、オフィスから即座に確認して指示を出すことが可能です。測量の完了を待ってから判断を下すというタイムラグがなくなり、意思決定の迅速化と業務の省力化につながっています。


LRTK LiDARによる広範囲3D計測

LRTKシリーズには、スマホ装着型の受信機「LRTK Phone」だけでなく、長距離のレーザースキャンに対応した「LRTK LiDAR」と呼ばれるモデルも存在します。LRTK LiDARは高性能3DレーザースキャナーとGNSS-RTK受信機を一体化したデバイスで、最大で200m先の構造物まで詳細にスキャンして正確な点群データを取得することができます。従来、大規模な構造物の3次元計測には据え置き型の大型レーザースキャナーを用い、機材の設置や位置合わせのために複数人の作業とターゲット(標識板)の設置など煩雑な準備が必要でした。しかしLRTK LiDARでは、GNSSによって取得する点群に自動で全球座標が付与されるため、煩雑なターゲット設置や後処理が不要です。重たい機材を運搬したり現地に長時間滞在したりしなくても、少人数で効率的に広範囲の高精度スキャンが行えるようになります。


また、LRTK LiDARで取得した大量の点群データはクラウド上にアップロードして一元管理されます。現場で数百万〜数千万点規模の点群を取得した場合でも、数分以内にスマホやタブレット上でデータを仮表示し、欠測箇所の有無を確認して必要に応じ追加スキャンすることが可能です。クラウド上では距離や面積、体積の測定や各点の座標値の確認も行えるため、専用のソフトウェアがなくても遠隔地の関係者とデータを共有しながら施工管理に役立てることができます。これにより、点群計測の結果を現場とオフィスでリアルタイムに活用でき、従来より少ない人員で効率的に出来形管理まで実施できるようになります。


LRTK導入による主なメリット

LRTKとみちびきを組み合わせた新手法は、現場の測量・計測ワークフローに大きな変革をもたらします。最後に、このソリューションを導入することで得られる主なメリットを整理します。


一人一台で測量可能: 従来は高価なGPS受信機やレーザースキャナーを限られた測量担当者だけが扱っていましたが、LRTKは安価で小型なため現場作業員それぞれが携行でき、必要なときにすぐ測量や点群計測を実施できます。これにより測量の待ち時間ゼロが実現し、現場の生産性が飛躍的に向上します。

オールインワンで業務集約: 現況測量、出来形のチェック、墨出し、写真記録、土量計算など従来は別々の機器や担当者が必要だった作業を、1台のスマホ+LRTKで完結できます。しかも取得した点群データや座標情報はクラウド経由ですぐさま共有されるため、測量班から施工管理担当者への情報伝達のタイムラグがなくなり、リアルタイムで現場の状況を把握して判断を下せます。

高精度かつ簡易: 操作はシンプルで専門知識が不要でありながら、測位精度はセンチメートル級を達成しています。熟練技術者でなくても正確な位置座標や点群データを取得でき、iPhone単体のLiDARでは実現できなかった高精度な計測や距離・面積の算出が誰でも手軽に行えるようになります。これにより、経験豊富な測量士の不足を補い、全体として業務品質を維持できます。

初期コスト・手間の削減: LRTK LiDARでは前述のとおりターゲットとなる標識板の設置が不要で、大型三脚や発電機も必要ありません。機材準備や設置にかかる人手と時間を大幅に削減でき、しかも200m先まで計測可能な性能は据え置き型の高額機材にも匹敵します。また、クラウド連携により測量データの整理や共有の手間も軽減されます。トータルで見れば、導入・運用コストを抑えつつ省力化と高度化を両立できる点で優れています。


総じて、これらのメリットが示すようにLRTKの普及は「高精度測量の大衆化」とも言える変革を現場にもたらします。一部の専門技術者だけに任せきりだった測量・計測作業を現場の誰もが担えるようにすることで、人手不足の中でも品質を確保しつつ効率的な施工を進めることが可能となるのです。


まとめと今後の展望

人手不足という建設業界の課題に対して、みちびきの衛星補強信号とLRTKのような先端デバイスを組み合わせた高精度測量手法は、現場の生産性向上に大きく寄与します。デジタル技術によって測量や出来形管理、土量計測など多くの作業が効率化・自動化され、限られた人員でも安全かつ高品質な施工を維持できるようになります。また、こうした測量業務のデジタル化・省人化は、働き方改革の一環として現場の労働環境改善にもつながると期待されます。特に本稿で紹介した「一人でもできる高精度測量」は、測量技術者の高齢化や人材不足が深刻化する中で、誰もが高度な計測を行えるようにするものとして期待されています。


今後、衛星測位や通信インフラのさらなる発展により、一人測量の可能性は一層拡大していくでしょう。例えば、5G通信とRTKを連携させてリアルタイムに現場の点群データを遠隔地へ送信し、そのデータ上で施工管理を行う試みも進んでいます。将来的には、現場に技術者が常駐しなくても遠隔から施工を監督できる「現場に行かない施工管理」が実現するかもしれません。こうした施工DXの推進によって、建設業界は限られた人材でも回せる持続可能な産業へと変革していくと考えられます。


人手不足時代を乗り切る鍵は、現場に役立つ先端技術を積極的に取り入れていくことです。準天頂衛星みちびきとLRTKという新たな武器を味方につけ、一人でも効率よく正確に測れる現場を実現することで、建設現場の生産性と安全性を飛躍的に高め、慢性的な人手不足を克服し、未来の建設現場を切り拓いていきましょう。


LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上

LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。

LRTKの詳細については、下記のリンクよりご覧ください。

 

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