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LRTKとは何か?みちびき対応スマホ測量機、その驚きの実力に迫る

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万能の測量機LRTKの説明

LRTK(エルアールティーケー)とは、スマートフォンに取り付けるだけでRTK測位(リアルタイムキネマティック)によるセンチメートル級の高精度測位を可能にする次世代型の測量デバイスです:。日本の建設・土木・測量業界では近年、スマホとGNSS受信機を組み合わせた手軽な高精度測位機器が注目を集めています。特に、日本版GPSとも呼ばれる準天頂衛星システム「みちびき」と、そのセンチメートル級測位補強サービス(CLAS)に対応したLRTKは、インターネット圏外の山間部や災害現場でも活躍できる“万能測量機”として静かなブームを呼んでいます::。本記事では、みちびきとCLASの技術概要からLRTKのRTK測位原理、システム構成、衛星対応やマルチバンドGNSSのメリット、NTRIPとCLAS補正方式の違い、さらには平面直角座標系・標高系への座標変換に至るまで、技術的な観点で深掘りします。加えて、現場での具体的な活用例を紹介し、記事の最後にはLRTKを用いた手軽な測量導入方法にも触れます。


準天頂衛星「みちびき」とCLASによる高精度測位

まず、日本の高精度測位を語る上で欠かせないのが準天頂衛星システム(QZSS)「みちびき」です。みちびきは日本及びアジア・オセアニア地域向けの衛星測位システムで、アメリカGPSを補完する「日本版GPS」として位置付けられています:。2018年までに4機体制で運用を開始し、2023~2024年に追加の衛星を打ち上げて2025年には計7機体制での運用を目指しています:。衛星数の増強によって、日本上空では常に複数のみちびき衛星が見えるようになり、山間部や高層ビル街でも安定して衛星を捕捉できるよう精度向上が期待されています:。


みちびきが提供するサービスの一つがCLAS(Centimeter Level Augmentation Service、シーラス)です。その名の通り「センチメータ級測位補強サービス」を意味し、みちびきの電波を通じて数センチの誤差にまで位置精度を高めることができます:。CLASの仕組みを簡単に説明すると、国土地理院が全国に整備した電子基準点(GNSS基準局)の観測データをもとに測位誤差を算出し、その補正情報をL6帯電波(L6D信号)に乗せてみちびき衛星から広域に放送するというものです:。地上のユーザーは、CLAS対応の専用受信機を用いてこの補強信号を受信し、自身のGNSS測位に適用することでリアルタイムに測位精度を数cm程度まで向上させられます:。これにより、従来は基地局を設置したり移動体通信網を利用したりしなければ得られなかった高精度測位を、電波さえ届けばインターネット不要で実現できる点が大きな特徴です。


ただし、CLASを利用するためには対応するGNSS受信機が必要で、一般的なスマホ内蔵GPSだけでは利用できません:。また、わずかとはいえ衛星からの補強情報送信にはタイムラグがあるため、高速移動する自動車の自律走行などリアルタイム性が極めて重要な用途には現時点では完全対応が難しいとも言われています:。しかし、土木・建設現場での測量や機械誘導、農業分野の自動走行、インフラ点検といった静止または低速移動での位置計測には、CLASは十分な精度と即位性能を発揮します。特に通信インフラが脆弱な地域や災害時に通信が途絶した環境でも使える安心感から、CLAS対応機器のニーズは高まっています:。


RTK測位の原理とLRTKの仕組み

次に、LRTKが採用するRTK測位の原理について見ていきます。RTK(Real Time Kinematic)とは、基準局(基地局)と移動局(ローバー)という2地点で同時にGNSS観測を行い、それらのデータ差分をリアルタイムに補正することで測位精度を飛躍的に高める手法です:。単独のGPS測位では数メートルの誤差が生じうるのに対し、RTKでは基準局との相対測位によって誤差要因(衛星時計誤差や電離層遅延誤差など)を打ち消し合うため、1~2cm程度の精度を実現できます:。例えば、通常のスマホ内蔵GPSが5~10m程度ずれるのに対し、RTK対応のLRTKデバイスを用いれば、理論上は桁違いに小さい誤差で位置を特定できるのです:。


RTK測位を行うためには、本来は自前で基準局を設置するか、あるいは国土地理院や民間提供の基準局ネットワークから補正情報(RTCMデータなど)をインターネット経由で取得する必要があります。後者の場合、一般にNTRIP(Networked Transport of RTCM via Internet Protocol)と呼ばれる仕組みでスマホや測量機器が補正情報を受信します。一方で、前述のCLASはインターネットを介さず衛星経由で補正データを取得できるため、LRTKはNTRIPとCLASの双方に対応し、現場の通信状況に応じて使い分けられるよう設計されています::。例えば携帯電波の届く市街地や平野部ではネット経由のRTKネットワークを利用し、携帯圏外の山間部や地下空間ではみちびき経由のCLASで補正を受ける、といった柔軟な運用が可能です。


LRTKデバイスの仕組みは、スマートフォンと一体化して使える超小型の高性能GNSS受信機と、それを制御するスマホ用アプリ・クラウドサービスによって構成されています:。LRTKの受信機本体(ローバー)は軽量コンパクト(125g程度、厚さ約13mm)ながら、測量用GNSSアンテナとバッテリーを内蔵しており、スマホの背面に装着する専用ケースを介してワンタッチで着脱可能です::。スマホとはBluetoothで無線接続されるため煩わしい配線も不要で、必要に応じて受信機をスマホから分離し一脚や三脚に据えて使用することも可能です:。受信機は複数の周波数帯に対応したマルチバンドGNSS測位に対応しており、GPS・GLONASS・Galileo・みちびき(QZSS)など複数衛星からの信号を同時利用します。加えてL1周波数帯だけでなくL5帯など複数の周波数を使うことで電離層誤差の除去や高速な整数曖昧度解決(フォローアップ解決)を可能にし、測位の初期収束時間を短縮して安定したcm級精度を得られるメリットがあります。さらに最新モデルでは3周波対応やジャイロ・加速度計を組み合わせた傾斜補正機能まで搭載され、ポールが傾いた状態でも正確な鉛直下の点を測位できるよう工夫されています(トータルステーションのような補正機能付きGNSS)。


一方、スマートフォン側には専用の「LRTKアプリ」をインストールして使用します:。このアプリがRTK演算エンジンの役割を果たし、受信機から取得したGNSSデータと補正情報(Ntrip経由またはCLAS電波)を用いてリアルタイムに高精度座標を計算します。LRTKアプリは測位した位置を地図上にプロットして表示するだけでなく、多彩な計測モードを備えています:。例えば、任意の地点でボタンを押すだけの単点測位(静態測位)モード、歩きながら1秒間に最大10点の頻度で軌跡を記録する連続測位(ログ)モード:、iPhoneのLiDARスキャナーと連携して地形や構造物をスキャンし高精度な3D点群データを取得するモード:などです。さらには、スマホのカメラで撮影した写真に自動的に高精度な測位タグ(緯度・経度・高さ・方位)を付与し、写真を撮影地点の地図上に配置する写真記録機能もあります:。これにより、撮影場所の緯度経度やどの方向を向いて撮った写真かまで正確に記録されます:。これらの測位データや写真データはワンタップで「LRTKクラウド」と呼ばれるクラウドサービスにアップロード可能で、ウェブブラウザ上で地図付きで閲覧・管理したり、チーム間で共有したり、日報PDFを自動生成したりといった機能も提供されています:。


: *スマートフォンに装着するLRTK受信機はポケットに収まる小型サイズで、現場に持ち歩いて必要なときにすぐ高精度測位に活用できる(レフィクシア提供)*::


みちびき対応状況とマルチバンドGNSSのメリット

LRTKが高精度を実現できる背景には、ハードウェアの対応衛星とGNSS信号の充実があります。前述のとおり、日本の測位環境ではGPS衛星に加えて準天頂衛星みちびきを含むマルチGNSSの活用が不可欠です。LRTK受信機は当然ながらみちびき対応であり、日本上空を通過するQZSS衛星からの信号(L1C/A, L1S, L2C, L5など)を捉えてCLAS補強情報の受信や測位に役立てています:。みちびき以外にも米国GPSやロシアGLONASS、欧州Galileo、中国BeiDouといった主要GNSS衛星を幅広く追尾できるため、衛星可視数が増えて測位の可用性と安定性が向上します。特に都市部のビル陰や山間部では視界に入る衛星の数が限られるため、複数システム・複数周波数で冗長性を持たせることが信頼性確保に繋がります:。また、マルチバンド(複数周波数)対応の強みは、電離層や対流圏による誤差の除去です。単一周波数では補正しきれない誤差も、異なる周波数信号の比較によってキャンセルできるため、マルチバンド受信機ではより早く高精度解を得られます。一般にL1+L5デュアルバンドはL1単独に比べ初期の固定解取得時間が短縮され、L1+L2+L5のトリプルバンドではさらに安定した測位が可能になります。LRTKではこうした最新のマルチGNSS・マルチバンド技術を活かし、現場でストレスなく即位できるよう工夫されています。


一方で、GNSS衛星から受け取った測位結果(経緯度や楕円体高)を、そのまま現場の座標として使うわけにはいかないケースもあります。日本の公共測量や建設工事では、座標系として世界測地系に基づく「日本測地系(JGD2011/2022)」の平面直角座標系が用いられるのが一般的です。また高さ(標高)についても、GNSSが直接求める値は地球楕円体に対する高さであるため、実際の海抜高度(正高・正高度)に合わせるにはジオイド高を補正してやる必要があります:。従来、GNSS測量導入初期には取得した経緯度を別途ソフトで平面直角座標に変換したり、国土地理院のジオイドモデル(「GSIGEO2011」等)を用いて高さを換算したりと手間がかかっていました。しかしLRTKアプリでは、測位と同時にこれらの座標変換をリアルタイムで行う機能が備わっています:。ユーザーが事前に作業地域の座標系(○系)を選択しておけば、測定ボタンを押した瞬間にその地点の平面直角座標値(X,Y)が自動計算されて表示されます:。高さ方向も同様で、WGS84楕円体高から日本のジオイド高を差し引くことでJGD2011の標高値に換算し表示してくれます:。例えば「緯度36.…°, 経度140.…°, 楕円体高△m」というGNSS測位結果が得られた場合でも、LRTK上では「○系X=◇m, Y=◇m, 標高=▲m」といった具合に現場で使いやすい座標系の値へ即座に変換されるのです:。


さらに高度な座標変換として、既知点を用いたローカライズ(サイトキャリブレーション)機能も重要です。これは、現地に設置された既知点(公共座標が判明している基準点)をRTKで観測し、そのズレから測位結果をローカル座標系に合わせ込む処理です::。大規模な公共測量では3点以上の既知点でヘルムート変換を行い、平面座標のシフト・回転・スケール補正を算出するのが標準ですが::、LRTKのようなスマホ測量機でも必要に応じてこのローカライズを行うことで、過去の測量図や設計図との高い整合性を確保できます:。幸い、LRTKアプリには既知点測量時の平均化測位機能も実装されており、数十秒間静止して複数回観測した平均値を取ることで一層安定した基準点座標を取得することが可能です:。以上のように、LRTKはGNSSによるグローバル座標と日本のローカル座標系とのギャップを埋める機能を備えており、測位データを即座に実務利用できる形に整えてくれるのです。


LRTKの具体的な活用例:測量から施工管理まで

LRTKは、単に高精度な位置を知るだけでなく、その利便性と多機能性によって現場の様々な業務を変革しつつあります:。ここでは、建設・土木・測量のプロの目線で、LRTKの代表的な活用シーンをいくつか紹介します。


測量作業(基準点測設・現況測量): これまでの基準点測量は二人一組でトータルステーションを据え、既知点からの角度・距離測定で新点を出すのが一般的でした。しかしLRTKを導入すれば、あらかじめ現場の既知点でローカライズを行うことで、1人でGNSSローバーを持ち歩くだけで任意点の座標を即取得できるようになります:。広い造成現場では、重機オペレーター自らがタブレット装着のLRTKで必要箇所の高さ・位置を測定し、その場で埋設物の深さを確認するといった運用も実現しています:。LRTKにより一人一台での測量が可能になり、人手不足の現場でも効率よく高精度測量を行えます。

杭打ち・墨出し(施工の位置出し作業): 建設現場で構造物の位置を出す「杭打ち」やコンクリート打設前の「墨出し」作業にもLRTKは威力を発揮します。従来は図面上の座標値をもとに巻尺やトータルステーションで位置を出していたものが、LRTKでは測位したいターゲット座標をアプリに登録し、スマホ画面上で目標方向と距離をリアルタイムに表示させることができます:。まるでカーナビの目的地誘導のように、指定位置まで誘導してくれるため、経験の浅い作業員でも直感的に杭位置を特定可能です。さらにカメラ映像にAR表示される矢印に従えば、下を向いて図面と睨めっこすることなく正確な位置出しができ、施工の効率と精度が飛躍的に向上します::。

出来形管理・3次元計測: 道路や造成地の出来形(出来高)管理にもLRTKが活躍しています。iPhoneやiPadに搭載されたLiDARセンサーとLRTKを組み合わせれば、地形や盛土・掘削箇所をスキャンして高精度な3D点群データを取得できます:。取得した点群の各点にはcm精度の座標が付与されているため、土量計算や断面作成も高精度に行えます:。例えば、ある工事現場ではLRTKで取得した点群データから即座に残土の体積を算出し、重機による撤去回数を最適化するといった効率化が図られています。また、舗装や構造物の出来形検査でも、設計値とのズレを即座に計測して合否判断することが可能です。紙の野帳や巻尺で測っていた時代に比べ、デジタル計測による即時検証で品質管理の高度化が実現します。

写真記録・インフラ点検: 建設業務やインフラ維持管理では、現場写真の撮影と報告が欠かせません。LRTKはこの分野でも力を発揮します。例えば橋梁やトンネルの点検では、劣化箇所を写真に収める際に位置座標付きの写真を残すことが重要です:。LRTKアプリで撮影すれば、写真ファイルに高精度な撮影位置(公共座標)と方位データが自動付加されるため、後で写真を地図上にプロットして正確な位置関係を可視化できます:。実際に、道路巡回点検でLRTKを用いてひび割れ箇所を撮影・クラウド共有し、オフィスで即座に補修計画を立案する、といったDX事例も登場しています:。また工事の進捗記録写真でも、撮影箇所が一目瞭然となるため、報告書作成や出来高検査資料の作成が格段に効率化します。

ARによる施工支援: LRTKは現場のAR活用も促進します。スマホをかざすと、画面上に設計モデルや埋設物の位置が実物大で重ねて表示される機能は、まさに未来の施工管理です::。例えば地下埋設管のルートをAR表示して掘削時の損傷防止に役立てたり、完成予定の構造物モデルを現地に投影して出来上がりイメージの確認や施工計画の打ち合わせに使ったりできます。LRTKの高精度な位置・方位データがあるからこそ、これらAR表示の位置合わせも誤差なく行えます:。煩雑な墨出し作業の手間を省き、見える化による直感的な施工を実現するLRTKのAR機能は、将来的な施工の在り方を変えるポテンシャルを秘めています。

クラウド連携・データ共有: LRTKクラウドを通じたデータ共有も、現場の生産性を大きく向上させます。測位データや写真を現場から即クラウドにアップロードすれば、オフィスの監督者や発注者ともリアルタイムで情報を共有可能です:。例えば測設した複数点の座標間距離をクラウド上で自動計測したり、日々の出来形データを蓄積して進捗を俯瞰する、といったこともボタン一つで実現します:。従来はUSBメモリでデータを持ち帰ったり手入力していた作業日報も、クラウド上で自動生成・配信できるため事務作業が削減されます。さらには、クラウド経由で最新アプリやファームウェアへの更新が提供され、常にシステムを最新状態に保てるメリットもあります。現場とオフィスをシームレスに繋ぎ、時間と距離を超えてコラボレーションできる点もLRTKの大きな価値と言えるでしょう。


おわりに:LRTKで始めるスマート測量

本記事では、みちびきの衛星技術とRTK原理を背景に、スマホ測量機LRTKの仕組みと実力について詳しく解説しました。従来、高精度測位と言えば専門測量機器や難しい設定が必要でしたが、LRTKの登場により誰でもスマホで簡単・手軽にcm精度測位が行える時代が到来しています:。土木・建設現場で日常的に発生する測量・計測・記録作業が、一人の技術者の手のひらで完結し、そのデータが即座に現場改善や品質向上に繋がる——これはまさに現場DX(デジタルトランスフォーメーション)の象徴と言えるでしょう。


特に、人手不足や働き方改革が叫ばれる建設業界において、LRTKのような1人1台の高精度測量ツールは生産性向上の切り札となります:。初めてRTKやスマホ測量に触れる方でも、スマホアプリの分かりやすいインターフェースと自動計算機能により、難しい座標変換や補正設定を意識せず直感的に使い始められるでしょう。記事内で紹介したように、基準点測量から施工管理、維持管理まで幅広い用途で効果を発揮するLRTKは、これからの現場標準となっていく可能性を秘めています。


もし、あなたの現場でも「測量作業を効率化したい」「高精度な位置情報を手軽に活用したい」といったニーズがあるなら、ぜひLRTKによるスマート測量の導入を検討してみてください。ポケットサイズのデバイスとスマホさえあれば、今日からでもセンチメートル級測位の恩恵を享受できます。みちびき対応スマホ測量機LRTKが、あなたの現場を次のステージへと導いてくれることでしょう。


LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上

LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。

LRTKの詳細については、下記のリンクよりご覧ください。

 

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こちらのお問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。ぜひLRTKで、貴社の現場を次のステージへと進化させましょう。

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