目次
• 88条申請の対象判断は見積段階から始めることが重要です
• 確認項目1 見積範囲に含まれる作業内容を分解して確認する
• 確認 項目2 仮設、足場、構台、支保工の有無を確認する
• 確認項目3 掘削、解体、撤去、改修の条件を確認する
• 確認項目4 使用機械、揚重、搬入方法を確認する
• 確認項目5 工期、着手日、届出準備に必要な期間を確認する
• 確認項目6 見積条件と施工条件の未確定事項を確認する
• 見積段階で対象判断を行う時の注意点
• 見積依頼書に入れておきたい確認文の考え方
• まとめ
88条申請の対象判断は見積段階から始めることが重要です
88条申請の対象判断は、工事契約後や施工直前に始めるのではなく、見積段階から確認しておくことが重要です。見積段階では、まだ施工方法や協力会社の体制が完全には決まっていないこともあります。しかし、この時点で対象になる可能性がある作業を拾っておかなければ、後から届出が必要だと分かった時に、工程、書類作成、社内確認、協力会社調整に大きな手戻りが発生することがあります。
88条申請とは、労働安全衛生法第88条に基づく計画の届出を実務上呼ぶ言い方です。対象となる工事、仮設物、機械、作業条件などに該当する場合、工事開始前に計画を届け出る必要があります。建設工事や設備工事では、足場、構台、支保工、掘削、解体、重量物搬入、高所作業、重機使用などが対象判断に関わることがあります。
「88条申請 対象」で検索する実務担当者は、すでに工事の予定があり、対象になるかどうかを早く整理したい状況にいることが多いはずです。見積書を受け取った段階、または協力会社へ見積依頼を出す段階で、対象判断に必要な情報を確認できれば、届出漏れや工程遅延を防ぎやすくなります。
見積段階の対象判断で難しいのは、見積書には工事内容が簡略化されていることが多い点です。「仮設一式」「撤去工事一式」「設備更新一式」「搬入据付一式」といった表現だけでは、実際にどの作業が含まれているのか分かりません。88条申請の対象かどうかを判断するには、作業の実態、仮設の内容、使用機械、施工場所、作業高さ、掘削深さ、解体範囲、搬入方法などを確認する必要があります。
また、見積段階では、業者によって前提条件が異なることがあります。ある業者は足場を見込んでいるのに、別の業者は足場を別途としている場合があります。ある業者はクレーン搬入を想定しているのに、別の業者はフォークリフトや人力搬入を想定している場合があります。見積金額だけを比較しても、施工条件が違えば、88条申請の対象判断も変わる可能性があります。
見積段階で確認すべきことは、最終的な法的判断をその場で完了させることではありません。重要なのは、対象になる可能性がある条件を早期に見つけ、施工条件として明確にし、届出が必要になった場合の準備 を工程に織り込めるようにすることです。この記事では、88条申請の対象判断で見積段階に確認すべき6項目を、実務担当者向けに整理します。
確認項目1 見積範囲に含まれる作業内容を分解して確認する
見積段階で最初に確認すべきことは、見積範囲に含まれる作業内容を分解することです。見積書には、工事内容が大きな項目としてまとめられていることがあります。しかし、88条申請の対象判断では、工事名称や見積項目名ではなく、実際に現場で行う作業内容を確認する必要があります。
たとえば、見積書に「設備更新工事」と書かれている場合、その中には既設設備の停止、切り離し、撤去、搬出、新設設備の搬入、据付、固定、配管接続、電気接続、試運転、復旧作業が含まれることがあります。これらの作業の中には、重量物搬入、揚重作業、高所作業、基礎はつり、仮設足場、仮設構台など、対象判断に関わる要素が含まれる場合があります。
「撤去工事一式」という見積項目も注意が必要です。何を撤去するのか、どの高さで撤去するのか、どのように切断するのか、廃材をどのように搬出するのか、周辺設備との接続をどう切り離すのかによって、必要な安全対策や届出要否の確認が変わります。見積上は一式でも、実際には複数の危険作業が含まれていることがあります。
見積範囲の分解では、工事本体だけでなく、準備作業と片付け作業も確認します。資材搬入、仮置き、養生、足場組立、構台設置、仮設電源、開口部養生、既設設備の切り離し、廃材搬出、仮設撤去、清掃、復旧などが含まれるかを確認します。これらは見積書の中で目立たないことがありますが、対象判断では重要です。
また、見積範囲に含まれない作業も確認が必要です。協力会社が「足場は別途」「クレーンは別途」「既設撤去は別途」「仮設電源は別途」「搬入経路の養生は別途」としている場合、その作業を誰が手配するのかを明確にしなければなりません。別途項目だからといって、88条申請の対象判断から外してよいわけではありません。工事全体として必要な作業であれば、別途であっても確認対象になります。
見積段階では、見積書の項目ごとに「実際に何をするのか」を聞きます。作業員がどこに立つのか、どの機械を使うのか、どの仮設物を使うのか、どの範囲を壊すのか、何を吊るのか、どのくらい掘るのかを確認します。これにより、見積項目名だけでは分からない対象候補を拾えます。
見積範囲を分解する時は、作業内容を工程順に並べると分かりやすくなります。準備、仮設、撤去、搬出、掘削、基礎、搬入、据付、接続、仕上げ、試験、復旧という流れで整理すると、危険作業や仮設の必要性が見えやすくなります。見積段階でこの整理を行っておけば、後の施工計画確認や届出要否判断がスムーズになります。
確認項目2 仮設、足場、構台、支保工の有無を確認する
88条申請の対象判断で見積段階に必ず確認したいのが、仮設、足場、構台、支保工の有無です。これらは工事本体ではなく、施工のために一時的に設けるものですが、届出要否の判断に深く関わる場合があります。見積書で「仮設費一式」とだけ書かれている場合は、その中身を確認しなければなりません。
足場については、どの作業に必要なのか、どの範囲に設置するのか、どの高さまで組むのか、設置期間はどの程度かを確認します。外壁、屋根、天井、配管ラック、設備架台、タンク、看板、照明、橋梁、法面上部など、高所での作業がある場合は、足場の必要性を早めに確認します。足場を使わない場合でも、高所作業車、脚立、はしご、移動式足場など、代替手段を確認する必要があります。
構台については、作業床、資材置場、荷受け、車両通路、重機設置場所、掘削部をまたぐ通路などとして使う可能性があります。構台は、工事本体の見積には明確に出てこないことがありますが、重量物搬入や高低差のある現場では必要になることがあります。構台に人だけが乗るのか、資材を置くのか、機械や車両が載るのかによって、確認すべき条件が変わります。
支保工や仮受けも見積段階で確認します。型枠、コンク リート打設、既設構造物の一部撤去、開口部設置、設備入替に伴う一時支持などでは、支保工や仮受けが必要になる場合があります。完成後には見えない仮設構造であるため、見積段階で確認しないと後から判明しやすい項目です。
仮設通路や昇降設備も対象判断の確認対象です。作業員がどの経路で作業場所へ入るのか、資材をどのように運ぶのか、段差や開口部をどう通過するのかを確認します。仮設通路や昇降設備が必要になる場合、その設置条件、使用者、管理方法も確認します。
見積段階では、仮設が見積に含まれているかどうかだけでなく、誰が設計し、誰が組み立て、誰が点検し、誰が管理するのかも確認します。足場業者や仮設業者が別途入る場合は、対象判断に必要な図面や仕様をいつ提出できるかを確認します。仮設の詳細が未定の場合は、未定として記録し、確定時に88条申請の対象判断を再確認します。
また、仮設は複数工種が共用することがあります。足場を外壁工事、設備工事、電気工事が共用する場合や、構台を搬入、資材置場、廃材搬出に使う場合があります。共用仮設では、最も厳しい使用条件を前提に確認する必要があります。最初の工種だけを見て判断すると、後から別の工種が想定外の使い方をする可能性があります。
仮設、足場、構台、支保工は、見積段階で対象判断の候補として拾っておくべき項目です。詳細が決まっていない場合でも、必要性があるかどうかを早めに確認し、届出が必要になる可能性を工程と見積条件に反映させることが大切です。
確認項目3 掘削、解体、撤去、改修の条件を確認する
見積段階で確認すべき重要な項目に、掘削、解体、撤去、改修があります。これらの作業は、工事名称や見積項目では簡単に表現されることが多いですが、実際には88条申請の対象判断に関わる条件を含んでいる場合があります。特に既設施設の改修や設備更新では、撤去や解体の内容を軽く見てしまうと、対象漏れにつながりやすくなります。
掘削については、掘削の有無だけでなく、掘削深さ、範囲、延長、土質、地下水、埋設物、土留めの必要性、重機の使用、作業員の立入りを確認します。見積書に「配管布設」「基礎工事」「外構復旧」と書かれている場合でも、実際には掘削が発生することがあります。浅い掘削に見えても、施工上の余掘りや既設物撤去により範囲が広がることがあります。
解体については、対象物の種類、構造、高さ、重量、解体方法、切断方法、はつりの有無、粉じん、騒音、廃材搬出方法を確認します。見積書に「既設撤去」と書かれている場合、単にボルトを外して撤去できるのか、切断や破砕が必要なのか、重機や揚重機械が必要なのかを確認します。設備、架台、基礎、配管、ダクト、盤、外壁、屋根材など、撤去対象を具体的に把握することが大切です。
改修工事では、既設材に関する確認も必要です。既設材を切断、研磨、はつり、削孔、撤去する場合、事前調査や安全対策が必要になることがあります。見積段階で既設材の種類や調査状況が分からない場合は、未確認事項として管理します。既設図面だけで判断せず、現地確認や過去の改修履歴も確認します。
撤去や解体では、廃材の搬出方法も対象判断に関わります。廃材をどこに仮置きするのか、どの経路で運ぶのか、人力で搬出するのか、台車を使うのか、クレーンで吊り下ろすのかを確認します。廃材が重量物の場合や高所から下ろす場合、揚重作業、構台、仮設通路、落下防止対策が必要になることがあります。
掘削、解体、撤去、改修は、見積段階で「一式」としてまとめられやすい作業です。そのため、協力会社へ見積依頼を出す時点で、どこまで含むのか、どのような施工方法を想定しているのか、届出対象になる可能性がある条件はないかを確認します。回答を受ける時は、口頭説明だけではなく、撤去範囲図、掘削図、施工手順、機械計画、現地写真などの資料を求めると判断しやすくなります。
また、掘削や解体は、現地条件によって見積後に変更されやすい作業です。埋設物が見つかった、既設構造物が図面と違った、撤去対象が想定より重かった、搬出経路が使えなかった、といった理由で工法が変わることがあります。見積段階では、変更時に88条申請の対象判断を再確認することも条件として整理しておきます。
確認項目4 使用機械、揚重、搬入方法を確認する
見積段階で使用機械、揚重、搬入方法を確認することは、88条申請の対象判断において非常に重要です。工事の内容そのものは小規模に見えても、重量物を搬入する、クレーンを使う、高所作業車を使う、重機を設置する、仮設リフトを使うといった条件があれば、対象判断の確認が必要になる場合があります。
使用機械については、工程ごとに確認します。搬入時に使う機械、撤去時に使う機械、据付時に使う機械、掘削時に使う機械、解体時に使う機械、仕上げ時に使う機械は異なる場合があります。見積書に「機械損料」や「重機費」とだけ書かれている場合、その中身を確認する必要があります。
クレーンを使う可能性がある場合は、吊り荷の重量、吊り上げ高さ、作業半径、クレーンの設置 場所、アウトリガーの位置、地盤条件、周辺の架空線や建物との関係を確認します。吊り荷が設備本体なのか、解体材なのか、仮設材なのかによって、作業条件が変わります。荷受け場所に構台や作業床が必要かどうかも確認します。
高所作業車を使う場合は、作業高さ、走行経路、床の耐荷重、段差、傾斜、アウトリガーの有無、天井や架空線との干渉を確認します。屋内工事では、扉の高さや幅、床の強度、天井設備との干渉が問題になることがあります。屋外工事では、地盤、勾配、雨天時のぬかるみ、隣地や道路との関係を確認します。
フォークリフトや台車を使う場合も、搬入経路を確認します。入口の幅、通路幅、曲がり角、段差、床の耐荷重、仮置き場所、荷下ろし場所を確認します。設備や資材の重量が大きい場合、床養生や構台が必要になることがあります。見積段階で搬入方法を確認しないと、後で追加仮設や工法変更が発生しやすくなります。
掘削機械や解体機械を使う場合は、機械の大きさ、作業範囲、搬入方法 、周辺への影響を確認します。狭い現場では小型機械を使うのか、人力作業を併用するのか、重機の旋回範囲をどう確保するのかが重要です。機械の使用が対象判断に関わる可能性があるため、見積段階で具体的に聞く必要があります。
搬入方法については、資材や設備をどこから現場へ入れ、どこに仮置きし、どのように最終位置へ運ぶのかを確認します。搬入口、通路、階段、エレベーター、屋上、地下、ピット、狭あい部などを経由する場合、通常の搬入方法では対応できないことがあります。分割搬入、仮設開口、クレーン搬入、構台設置が必要になる場合は、対象判断にも影響します。
見積段階では、使用機械が未定の場合もあります。その場合は、候補となる機械や最大条件を確認します。未定のまま工事が近づくと、届出が必要になる可能性を見落とします。使用機械、揚重、搬入方法は、見積金額だけでなく、88条申請の対象判断、工程、安全計画に直結するため、早めに確認することが重要です。
確認項目5 工期、着手日、届出準備に必要な期間を確認する
88条申請の対象判断では、工事内容だけでなく、工期と着手日の確認も欠かせません。見積段階で対象になる可能性がある工事を見つけても、届出準備に必要な期間を見込んでいなければ、工事開始に間に合わない可能性があります。対象判断は、工程管理とセットで行う必要があります。
まず確認すべきなのは、工事全体の開始日ではなく、対象になる可能性がある作業の開始日です。工事全体の着手日は、現場準備や軽作業の開始日である場合があります。一方で、足場組立、構台設置、掘削、解体、重量物搬入、重機使用などは別の日に始まることがあります。どの作業を基準に届出準備を進めるべきかを確認します。
仮設工事が先行する場合は特に注意が必要です。本体工事は後日でも、足場や構台、支保工などの設置が先に始まる場合があります。対象判断に関わる仮設が先行する場合、届出準備もそれに合わせて前倒しする必要があります。見積段階で仮設の開始日を確認しておけば、準備不足を防ぎやすくなります。
工期が短い工事でも、対象判断を省略してよいわけではありません。短期間の工事ほど、見積から着手までの時間が短く、届出準備が遅れやすくなります。短時間だけクレーンを使う、一日だけ足場を組む、数日だけ掘削する、といった作業でも、対象判断に関わる条件があれば確認が必要です。
見積段階では、届出が必要になった場合の準備期間も確認します。必要な図面、施工計画、機械資料、構造計算、工程表、現地写真、社内確認、関係者確認にどの程度の時間が必要かを想定します。協力会社からの資料提出に時間がかかる場合もあるため、見積依頼時点で必要資料を伝えておくことが有効です。
また、見積段階で工程が未定の場合は、対象判断の締切日を設定します。工事開始日が確定してから判断するのでは遅い場合があります。工事予定時期が分かっているなら、いつまでに施工方法を確定し、いつまでに届出要否を判断し、いつまでに資料をそろえるかを決めます。
工期変更があった場合も再確認が必要です。工程が前倒しされると、届出準備期間が不足することがあります。工程が短縮されると、複数工種が同時施工になり、危険状態が変わることがあります。工程変更は、対象判断に影響する可能性があるため、見積段階で「工程変更時は届出要否を再確認する」という運用を入れておくとよいです。
88条申請の対象判断は、工事内容の確認だけでなく、いつその作業が始まるのかを把握して初めて実務に落とし込めます。見積段階で工期、着手日、資料提出日、判断期限を確認することで、届出漏れだけでなく、工程上の手戻りも防ぎやすくなります。
確認項目6 見積条件と施工条件の未確定事項を確認する
見積段階では、すべての施工条件が確定していないことが普通です。だからこそ、88条申請の対象判断では、未確定事項を明確に管理することが重要です。未確定だから後で考えればよいという扱いにすると、工事開始直前まで対象判断が進まず、届出漏れや工程遅 延につながる可能性があります。
まず確認すべき未確定事項は、施工方法です。足場を使うのか、高所作業車を使うのか、クレーン搬入にするのか、フォークリフト搬入にするのか、人力で分割搬入するのかによって、対象判断が変わることがあります。見積時点で工法が未定の場合は、想定している候補と、どの条件で決定するのかを確認します。
次に、数量や寸法の未確定事項を確認します。掘削深さ、足場高さ、構台面積、吊り荷重量、設備重量、搬入経路幅、作業高さ、解体範囲などが未確定の場合、対象判断に必要な情報が不足しています。未確定の数値については、誰がいつまでに確認するのかを決めます。
既設条件の未確認も重要です。既設図面が古い、現地調査が未実施、埋設物が不明、既設材の調査が未了、床耐荷重が未確認、搬入経路の寸法が未確認といった状態では、施工方法が変わる可能性があります。見積段階では、既設条件の確認不足が見積差異や対象判断の遅れにつながりやすいため、未確認事項として明 確にします。
見積条件の別途項目も確認します。足場別途、重機別途、仮設電源別途、撤去別途、搬入費別途、夜間作業別途、交通誘導別途、構造計算別途などがある場合、それらを誰が手配し、対象判断にどう反映するのかを整理します。別途項目は、見積比較の際にも重要ですが、88条申請の対象確認でも見落としやすい項目です。
協力会社の見積前提も確認します。見積に含まれる仮設や機械、含まれない作業、想定している作業時間、作業場所、搬入条件、支給材の有無、既設調査の範囲などを確認します。業者ごとに前提条件が違う場合、見積金額だけで比較すると、後で追加作業や工法変更が発生することがあります。
未確定事項は、管理表にまとめると効果的です。未確定項目、対象判断への影響、確認先、確認期限、必要資料、暫定判断を整理します。たとえば、「クレーン使用未定。使用する場合は揚重計画確認」「構台要否未定。設備重量確定後に再確認」「掘削深さ未定。設計図確定後に対象判断」「足場高さ未定。足場図提出後に再確認」といった形です。
見積段階の対象判断では、未確定事項をなくすことよりも、未確定事項を見える化することが大切です。見える化されていれば、後で確認できます。見える化されていなければ、確認されないまま工事が進む可能性があります。88条申請の対象漏れを防ぐには、見積条件と施工条件の未確定事項を管理し、確定時に再判断する仕組みを作ることが必要です。
見積段階で対象判断を行う時の注意点
見積段階で88条申請の対象判断を行う時は、いくつかの注意点があります。まず、見積金額だけで判断しないことです。金額が小さい工事でも、足場、構台、掘削、解体、重量物搬入、高所作業を伴う場合があります。反対に、金額が大きい工事でも、届出対象となる条件に該当しない場合もあります。対象判断は、金額ではなく作業内容と施工条件で行います。
次に、見積書 の項目名をそのまま信じすぎないことです。「軽微」「簡易」「一式」「仮設込み」といった表現は、具体的な施工内容を示しているとは限りません。対象判断では、何を、どこで、どの方法で、どの機械を使って、どの規模で行うのかを確認する必要があります。
協力会社からの回答を結論として扱わないことも重要です。協力会社が「88条申請は不要だと思います」と回答しても、その理由と前提条件を確認します。協力会社は自社の作業範囲だけを見ている場合があります。工事全体として仮設や他工種との関係を見た時に、対象判断が変わることがあります。
複数業者の見積を比較する時は、施工条件をそろえることが必要です。ある業者は足場を含み、別の業者は足場を別途としている場合、対象判断に必要な条件も異なります。クレーンを使う業者と使わない業者では、工程、安全計画、届出要否の確認が変わる場合があります。見積比較では、金額だけでなく、仮設、機械、工法、搬入方法、対象判断の前提を比較します。
見積段階で対象の可能性がある場合は、早めに社内の安全担当や申請担当へ共有します。工事担当だけで判断を抱え込むと、後で届出準備が間に合わなくなる可能性があります。対象かどうか迷う段階でも、早めに情報共有しておけば、必要資料や確認先を整理できます。
また、対象外と判断した場合でも、判断根拠を残すことが大切です。なぜ対象外と考えたのか、どの資料を確認したのか、どの前提条件に基づく判断なのかを記録します。工法変更や見積条件変更があった場合は、再確認します。対象外判断は、あくまでその時点の条件に基づくものです。
見積段階では、すべての情報がそろわないことがあります。その場合は、無理に確定判断をせず、「対象の可能性あり」「追加確認が必要」「工法確定後に再判断」といった区分で管理します。判断を先送りするのではなく、確認すべき事項と期限を明確にすることが重要です。
見積依頼書に入れておきたい確認文の考え方
88条申請の対象判断を見積段階から進めるには、見積依頼書の中で必要な確認項目を明確にしておくことが有効です。見積依頼時に何も伝えず、後から対象判断に必要な情報を追加で求めると、協力会社の回答が遅れたり、見積条件の食い違いが発生したりします。最初から確認項目を入れておけば、見積と同時に対象判断の材料を集めやすくなります。
見積依頼書には、作業範囲を明確に記載することが大切です。対象となる場所、設備、構造物、撤去範囲、新設範囲、仮設範囲を示し、見積に含む作業と含まない作業を確認できるようにします。あわせて、見積に含まれる仮設、機械、搬入、撤去、廃材処理、養生、復旧の範囲を明示してもらうよう依頼します。
仮設に関する確認文も入れておくとよいです。足場、構台、支保工、仮設通路、仮設電源、仮囲い、開口部養生、荷受け設備などの使用有無、設置範囲、設置期間、管理者を回答してもらう形にします。仮設が別途の場合は、別途の範囲と理由も確認します。
使用機械に関しては、工程ごとに使用する機械、機械の能力、設置場所、使用期間、必要な作業半径、搬入方法を回答してもらうと判断しやすくなります。クレーン、高所作業車、フォークリフト、掘削機械、解体機械などが想定される場合は、具体的に記載してもらいます。
掘削、解体、撤去、改修については、範囲、方法、数量、深さ、高さ、重量、廃材搬出方法を確認します。既設材の切断、はつり、削孔、研磨、撤去がある場合は、その内容も回答してもらいます。既設条件が未確認の場合は、どの情報が不足しているのかを明記してもらいます。
工程に関しては、工事全体の予定だけでなく、仮設開始日、掘削開始日、解体開始日、重量物搬入日、重機使用日など、対象判断に関わる作業の開始時期を確認します。届出が必要になった場合の準備期間を確保するため、資料提出日や施工計画提出日も確認します。
見積依頼書には、未確定事項の記載を求めることも重要です。 工法未定、使用機械未定、搬入方法未定、仮設要否未定、既設調査未了などがある場合、未定のままにせず、いつまでに確定するかを回答してもらいます。未確定事項が明確であれば、対象判断の再確認タイミングを設定できます。
このように、見積依頼書に確認項目を入れておくことで、見積段階から88条申請の対象判断に必要な情報を集められます。見積書を受け取ってから追加質問を繰り返すよりも、最初から確認条件をそろえた方が、工程管理と安全管理の両方で有利です。
まとめ
88条申請の対象判断は、施工直前ではなく見積段階から始めることが重要です。見積段階で対象になる可能性がある作業を拾っておけば、届出が必要になった場合でも、工程、資料、社内確認、協力会社調整を早めに進められます。反対に、見積段階で確認を省略すると、契約後や着工直前に仮設、掘削、解体、重機使用、重量物搬入などが判明し、手戻りが発生するおそれがあります。
確認すべき項目は、まず見積範囲に含まれる作業内容を分解することです。工事名称や一式表記だけでは判断せず、準備、仮設、撤去、搬入、掘削、据付、接続、復旧まで作業を分けて確認します。次に、仮設、足場、構台、支保工の有無を確認し、工事本体ではない仮設物も対象判断から外さないようにします。
さらに、掘削、解体、撤去、改修の条件を確認し、使用機械、揚重、搬入方法を把握します。どの機械を使うのか、どの場所に置くのか、どの経路で搬入するのかによって、必要な安全対策や届出要否の確認が変わります。工期、着手日、届出準備に必要な期間も確認し、対象になる可能性がある作業の開始日に間に合うように管理します。
見積段階では、施工条件が未確定であることも多いため、未確定事項を明確にすることが大切です。工法、使用機械、仮設、数量、寸法、既設条件、搬入方法が未定の場合は、誰がいつまでに確認するのかを決めます。対象外と考える場合でも、判断の前提を記録し、工法変更時には再確認できるようにします。
特に屋外現場、広い敷地、土木工事、太陽光発電所、プラント、造成地、既設施設の改修工事では、見積段階から現地条件を正確に把握することが重要です。搬入経路、仮設範囲、掘削予定位置、構台設置候補、重機配置、危険箇所を位置情報とともに記録しておけば、見積条件の確認や対象判断の根拠整理がしやすくなります。
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