目次
• 88条申請前に型枠支保工の施工範囲を整理すべき理由
• 手順1 型枠支保工が発生する工区と部位を洗い出す
• 手順2 コンクリート打設 範囲と支保工施工範囲を分けて確認する
• 手順3 支柱高さ3.5m以上となる範囲を抽出する
• 手順4 梁下や段差部など条件が変わる範囲を区分する
• 手順5 組立図と構造計算書の対象範囲をそろえる
• 手順6 現地確認と変更時の見直しを施工範囲に反映する
• 施工範囲整理で起こりやすい不備
• 施工範囲を社内と協力会社で共有する実務ポイント
• まとめ
88条申請前に型枠支保工の施工範囲を整理すべき理由
88条申請前に型枠支保工の施工範囲を整理することは、届出漏れや申請資料の不整合を防ぐために非常に重要です。型枠支保工は、コンクリート打設時に型枠、鉄筋、生コンクリート、作業荷重などを一時的に支える仮設構造物です。施工期間は限定的ですが、打設時には大きな荷重を受けるため、支柱高さ、支柱間隔、下部支持条件、部材配置、組立手順を明確にしておく必要があります。
「88条申請 型枠支保工」で検索する実務担当者が迷いやすいのは、どこまでを申請対象として整理すればよいのかという点です。型枠支保工の施工範囲は、単にコンクリートを打設する範囲と同じではありません。打設荷重を安全に支えるために支柱や受け材を設ける範囲、梁下や段差部を補強する範囲、支柱を立てる下部条件が変わる範囲などを含めて考える必要があります。
施工範囲の整理が曖昧なまま88条申請の準備を進めると、さまざまな問題が起こります。組立図では広い範囲が示されているのに構造計算書では一部しか対象になっていない、打設計画では一体打設になっているのに支保工図では分割範囲が違う、支柱高さが3.5m以上となる一部範囲が申請対象から抜けている、といった不整合が発生し やすくなります。
また、施工範囲が曖昧だと、協力会社への資料依頼も曖昧になります。型枠工事会社に「88条申請用の資料をください」と依頼しても、どの階、どの工区、どの梁下、どの打設ブロックの資料が必要なのかが明確でなければ、必要な組立図や構造計算書が不足する可能性があります。結果として、申請直前に追加資料や修正が必要になり、工程に影響します。
施工範囲の整理は、法令上の対象判定だけでなく、現場の安全管理にも直結します。型枠支保工は、支柱をどこに立てるか、下部が地盤なのか床なのか、梁下に荷重が集中するか、段差部で支柱高さが変わるかによって、安全上の確認内容が変わります。施工範囲を明確にすれば、どこを重点的に確認すべきか、どの範囲を点検対象にすべきかも整理しやすくなります。
さらに、型枠支保工の施工範囲は、工事の進行に伴って変わることがあります。施工図の改訂、打設範囲の変更、工程変更、協力会社の組立方法変更、現地条件の判明によって、支保工を設ける範囲や支柱高さが変わる場合があります。初回確認だけで終わらせず、変更時に施工範囲を見直すルールを持つことが重要です。
この記事では、88条申請前に型枠支保工の施工範囲を整理するための6手順を解説します。工区と部位の洗い出しから、打設範囲との違い、支柱高さ3.5m以上の抽出、条件が変わる範囲の区分、組立図と構造計算書の整合、現地確認と変更時の見直しまで、実務担当者がそのまま確認に使える流れで整理します。
手順1 型枠支保工が発生する工区と部位を洗い出す
最初の手順は、型枠支保工が発生する工区と部位を洗い出すことです。施工範囲を整理するには、まず現場内のどこで型枠支保工が必要になるのかを広く把握する必要があります。最初から88条申請の対象か対象外かを決め切るのではなく、型枠支保工が関係する可能性のある範囲を漏れなく拾うことが重要です。
確認に使う資料は、設計図 、構造図、施工図、打設計画、工程表、仮設計画、協力会社の施工計画です。これらを見ながら、スラブ、梁、庇、階段、ピット、地下躯体、吹抜け、段差部、設備基礎、外構構造物など、型枠支保工が必要になる可能性がある部位を確認します。建物本体だけでなく、外構や付帯構造物も含めて確認することが大切です。
施工範囲の洗い出しでは、工区ごとに整理すると管理しやすくなります。同じ現場内でも、第1工区、第2工区、地下部、上階、外構部などで施工時期や支柱高さ、打設条件が異なることがあります。全体を一つの範囲として捉えると、局所的に条件が厳しい箇所を見落としやすくなります。工区、階、打設ブロック、部位ごとに分けて整理します。
この段階で特に注意すべきなのは、小さな範囲を見落とさないことです。広いスラブ下だけに目が向きがちですが、実際にはピット上部、階段まわり、段差部、設備基礎、外構の現場打ち構造物など、面積は小さくても支柱高さや荷重条件が厳しい箇所があります。工事規模が小さいことや範囲が狭いことだけで対象外と考えないようにします。
また、型枠支保工の施工範囲は、設計図だけでは判断しきれない場合があります。設計図ではスラブや梁の位置は分かりますが、実際に支柱をどこに立てるか、どこまで補強するかは協力会社の施工方法によって変わることがあります。したがって、初期段階で協力会社にも確認し、想定している支保工範囲を共有してもらうことが有効です。
洗い出した範囲は一覧化します。階、工区、部位、打設予定、支保工の有無、支柱高さの見込み、確認資料、協力会社確認状況、未確認事項を記録します。この時点では「対象」「対象外」「要確認」を分ける程度でも構いません。重要なのは、後から確認すべき箇所を一覧に残し、担当者の記憶だけに頼らないことです。
型枠支保工が発生する範囲を最初に広く洗い出しておけば、88条申請の対象判定、構造計算、組立図作成、工程管理を前倒しで進めやすくなります。施工範囲整理の第一歩は、現場全体の中で型枠支保工が関係する場所を漏れなく見える化することです。
手順2 コンクリート打設範囲と支保工施工範囲を分けて確認する
二つ目の手順は、コンクリート打設範囲と型枠支保工の施工範囲を分けて確認することです。型枠支保工はコンクリート打設に伴って設置されるため、打設範囲と支保工範囲を同じものとして扱いがちです。しかし実務では、両者は完全に一致しないことがあります。
コンクリート打設範囲は、どの梁、スラブ、壁、基礎、設備基礎を打設するかを示す範囲です。一方で、型枠支保工の施工範囲は、その打設荷重や型枠荷重を支えるために、支柱、根太、大引き、受け材、水平つなぎ、筋かいなどを設置する範囲です。荷重を安全に受けるために、打設範囲の周辺まで支保工を広げる場合があります。
たとえば、梁を含むスラブを打設する場合、梁下の荷重を支えるために周辺部まで支柱や受け材を配置することがあります。スラブの一部だけを打設する場合でも、端部や梁下、段差部の安定を確保するために、打設範囲より広い支保工施工範囲が必要になる場合があります。この違いを整理しないと、申 請対象範囲や構造計算の対象範囲がずれます。
逆に、打設範囲が広くても、支保工条件が一様ではない場合があります。広い打設範囲の中に、一般スラブ下、梁下、段差部、ピット部、設備基礎部が含まれる場合、それぞれ支柱高さや荷重条件が異なります。打設範囲を一つの範囲として扱うだけでは、型枠支保工の施工範囲として十分な整理にはなりません。
この確認では、打設計画書と支保工組立図を照合します。打設計画書で打設ブロック、打設順序、打設範囲を確認し、支保工組立図で実際の支柱配置や補強範囲を確認します。両者にずれがある場合は、それが意図した違いなのか、資料不整合なのかを確認します。
打設順序も施工範囲整理に影響します。一体で打設するのか、分割して打設するのかによって、支保工にかかる荷重や使用期間が変わる場合があります。分割打設の場合、どの範囲の支保工をどのタイミングで組み、どこまで荷重を受けるのかを整理します。一体打設へ変更された場合は、荷重条件や構造計算の前提も 見直す必要があります。
また、支保工施工範囲には、組立作業に必要な範囲も関係します。支柱を立てる場所、資材搬入経路、仮置き場所、作業床、昇降設備などが施工範囲に影響する場合があります。申請対象としての範囲と、作業管理上の範囲は完全には同じではない場合がありますが、現場で混同しないように整理しておくことが大切です。
打設範囲と支保工施工範囲を分けて整理することで、88条申請に必要な資料の対象が明確になります。どの範囲を構造計算するのか、どの範囲を組立図に示すのか、どの範囲を現地確認するのかが整理され、申請準備の手戻りを減らせます。
手順3 支柱高さ3.5m以上となる範囲を抽出する
三つ目の手順は、支柱高さが3.5m以上となる範囲を抽出することです。型枠支保工の88条申請では、支柱高さが重要な対象判定の基準になります。施工範囲を整理する際は、型枠支保工が発生する範囲の中で、どこが支柱高さ3.5m以上となる可能性があるのかを明確にする必要があります。
ここで注意すべきなのは、建物の階高だけで判断しないことです。支柱高さは、施工時に支柱を実際に立てる下端から、型枠や支える部材までの高さで確認します。完成時の床面や天井高さではなく、支保工を組み立てる時点の状態で確認することが重要です。
支柱高さが大きくなりやすい範囲には、ピット部、吹抜け、地下部、掘削底、段差部、階高が高い空間、外構構造物、設備基礎まわりなどがあります。一般スラブ下は3.5m未満でも、同じ工区内の一部だけ3.5m以上となる場合があります。施工範囲を整理するときは、全体を一括で判断せず、支柱高さが変わる範囲を分けて確認します。
支柱高さの確認では、平面図と断面図を組み合わせます。平面図で支保工の施工範囲を確認し、断面図で下端レベルと上端レベルを確認します。支柱の下端が既設床、構造床、仮設床、地盤、掘削底のどこなのかを明確にします。上端について は、スラブ下端、梁下端、型枠受け材の位置を確認します。
支柱高さが最大となる位置を特定することも重要です。地盤や床に勾配がある場合、段差がある場合、ピットや掘削底がある場合は、最も低い下部から立ち上がる支柱が最大高さになる可能性があります。平均的な高さや一般部の高さではなく、最も厳しい条件を確認します。
支柱高さが3.5m以上となる範囲が一部だけの場合は、その範囲を図面上で明確にします。対象範囲が点のように見えても、支柱単体だけでなく、その支柱が支える受け材、周辺支柱、補強範囲を含めて考える必要があります。型枠支保工は複数の部材が一体となって荷重を受けるため、対象範囲は支柱一本だけで完結するとは限りません。
また、支柱高さが3.5m付近となる箇所は、要確認として慎重に扱います。図面寸法が不明確な場合や、現地レベルに誤差がある場合、対象外と即断すると危険です。協力会社に実際の支柱下端や組立方法を確認し、必要に応じて現地測定を行います。
抽出した範囲は一覧化します。階、工区、部位、支柱高さ、下端レベル、上端レベル、確認図面、現地確認の有無、判定結果を記録します。対象、対象外、要確認を明確にしておくことで、申請資料の作成や社内確認が進めやすくなります。
支柱高さ3.5m以上となる範囲の抽出は、88条申請の対象判定の中心です。ここで見落としがあると、施工範囲整理全体が不十分になります。施工時の状態を前提に、最大高さが発生する箇所を確実に把握することが大切です。
手順4 梁下や段差部など条件が変わる範囲を区分する
四つ目の手順は、梁下や段差部など条件が変わる範囲を区分することです。型枠支保工の施工範囲は、広く一つの範囲として扱うだけでは不十分です。同じ打設ブロック内でも、荷重条件、支柱高さ、支柱間隔、下部支持条件が変わる箇所があります。こうした箇所を区分して整理することで、88条申請資料の精度が上が ります。
梁下は、一般スラブ下と比べて荷重が集中しやすい範囲です。梁せいが大きい場合や梁幅が広い場合、支保工にかかるコンクリート荷重が大きくなります。一般部と同じ支柱間隔や部材配置でよいとは限らないため、梁下は別範囲として確認します。梁下補強、支柱間隔、受け材の配置が組立図や構造計算書に反映されているかを確認します。
段差部では、支柱高さや水平つなぎの条件が変わります。床レベルや地盤面が変わる場所では、支柱高さが位置によって異なります。段差によって水平つなぎが連続しにくくなる場合や、筋かいの配置が変わる場合もあります。段差部を一般部に含めてしまうと、支柱高さや安定条件の確認が不足することがあります。
ピットや開口部周辺も区分が必要です。ピット内や開口部の周辺では、支柱を立てられる位置が制限されることがあります。支柱間隔が広がる、受け材を追加する、補強が必要になるといった変化が起こりやすい範囲です。開口部を避けるために支柱位置をずらす場合は 、構造計算の前提と一致しているかを確認します。
設備基礎や増し打ち範囲も見落としやすい箇所です。面積は小さくてもコンクリート厚が大きい場合、局所的な荷重が増えます。一般スラブ下と同じ条件で扱うと、荷重条件が不足する可能性があります。設備基礎、厚いスラブ、局部的な増し打ちがある場合は、施工範囲の中で別に確認します。
条件が変わる範囲を区分する際は、なぜ区分するのかを明確にします。支柱高さが異なるためなのか、荷重条件が異なるためなのか、支柱配置が変わるためなのか、下部支持条件が異なるためなのかを記録します。区分の理由が明確であれば、構造計算書や組立図との対応関係も整理しやすくなります。
図面上では、一般部、梁下、段差部、ピット部、設備基礎部などを注記で分けると分かりやすくなります。対象となる範囲、要確認範囲、対象外範囲を分けて示し、各範囲の支柱高さや設計条件を確認します。すべてを一つの色や一つの範囲で示すと、条件の違いが見えにくくなります。
この区分は、構造計算の対象設定にも関係します。代表条件で計算する場合でも、その代表条件が最も厳しい範囲を含んでいるかを確認する必要があります。一般部だけを代表として計算し、梁下や段差部の条件が反映されていなければ、申請資料として説明が不足する可能性があります。
梁下や段差部など条件が変わる範囲を区分することは、型枠支保工の施工範囲整理の中でも重要な作業です。条件の違いを明確にすることで、申請資料、構造計算、現場施工、点検範囲の整合を取りやすくなります。
手順5 組立図と構造計算書の対象範囲をそろえる
五つ目の手順は、組立図と構造計算書の対象範囲をそろえることです。施工範囲を整理しても、その範囲が組立図と構造計算書で一致していなければ、88条申請資料としての整合性が不足します。現場担当者は、協力会社から提出された資料を受け取るだけでなく、対象範囲が同じ前提になっているかを確認する必要があります。
組立図には、支柱配置、支柱高さ、支柱間隔、根太、大引き、水平つなぎ、筋かい、下部支持条件、梁下補強などが示されます。一方、構造計算書には、どの範囲の支保工を対象に、どの荷重条件と部材条件で安全性を確認したのかが示されます。この二つの資料の対象範囲がずれていると、計算結果が実際の施工範囲を説明していない状態になります。
よくある不備は、組立図では広い施工範囲が描かれているのに、構造計算書では一般部の代表条件だけが示されている場合です。代表条件で計算する場合でも、代表条件が最も厳しい範囲を含んでいるかを確認しなければなりません。梁下、段差部、ピット部、支柱高さが最大となる範囲が計算条件に含まれているかを見ます。
また、構造計算書では支柱間隔が一定とされているのに、組立図では現地条件に合わせて一部の支柱間隔が広がっている場合があります。開口や配管、搬入経路を避けるために支柱位置を変更した 場合、構造計算の前提が変わる可能性があります。施工範囲だけでなく、その範囲内の支柱配置条件まで照合する必要があります。
対象範囲をそろえるには、まず施工範囲を図面上で明確にします。工区、階、通り芯、打設ブロック、部位を使って、どの範囲が88条申請の確認対象なのかを示します。そのうえで、構造計算書の対象範囲と照合し、同じ範囲を扱っているかを確認します。計算書に対象範囲が明記されていない場合は、協力会社や計算担当者に確認します。
複数の条件を扱う場合は、組立図上の範囲と計算書内の計算条件を対応させます。一般部、梁下、段差部、ピット部など、範囲ごとにどの計算条件が適用されるのかを整理します。対応関係が曖昧な場合、申請資料の説明が難しくなります。
版管理も欠かせません。施工図が更新され、組立図が修正されたのに、構造計算書が古い範囲のままになっている場合があります。逆に、構造計算書の修正内容が組立図に反映されていない場合もあります。図面番号、改訂日、計算書作成日、確認日を管理し、最新版同士で整合を確認します。
組立図と構造計算書の対象範囲をそろえることは、88条申請を円滑に進めるための重要な段取りです。範囲が一致していれば、申請資料の説明が明確になり、現場での組立や点検も同じ前提で進めやすくなります。逆に、ここが曖昧なままでは、申請直前や現場施工時に手戻りが発生しやすくなります。
手順6 現地確認と変更時の見直しを施工範囲に反映する
六つ目の手順は、現地確認と変更時の見直しを施工範囲に反映することです。型枠支保工の施工範囲は、図面だけで決められるものではありません。実際の現場条件や施工中の変更によって、支柱位置、支保工範囲、下部支持条件が変わることがあります。88条申請前には、図面上の施工範囲と現地条件を照合し、必要に応じて範囲を見直す必要があります。
現地確認で最初に見るべきなのは、 支柱を立てる位置です。図面上では支柱を配置できるように見えても、現地には開口、段差、配管、仮設材、資材置場、側溝、勾配、既設構造物などがある場合があります。支柱予定位置に障害物があると、支柱位置を変更する必要があり、施工範囲や支柱間隔が変わる可能性があります。
下部支持条件も現地で確認します。支柱を立てる床や地盤が安定しているか、敷板やベースを設置できるか、雨水や沈下の影響がないかを確認します。地盤上や掘削底に支柱を立てる場合は、図面上のレベルだけでなく、現場の実際の状態を確認することが重要です。下部条件が想定と異なる場合、施工範囲や補強範囲を見直す必要があります。
現地確認では、作業範囲や搬入経路も確認します。支柱や部材を搬入できるか、作業床や昇降設備が確保できるか、他工種と干渉しないかを見ます。図面上で支保工が成立していても、現場で安全に組み立てられなければ施工計画として不十分です。組立作業に必要な範囲も含めて確認します。
現地確認結 果は、図面に反映します。支柱位置に変更が必要な場合、施工範囲を広げる必要がある場合、補強範囲が追加される場合は、組立図や構造計算書への影響を確認します。現場判断で支柱位置を変えるだけでは、申請資料と実施工が合わなくなる可能性があります。
変更時の見直しも重要です。施工図変更、打設範囲変更、打設順序変更、支柱配置変更、工程変更、下部条件変更があった場合は、型枠支保工の施工範囲を再確認します。たとえば、打設範囲が広がれば支保工範囲も変わる可能性があります。梁せいが変更されれば荷重条件が変わります。工程変更によって支柱を立てる下部状態が変わる場合もあります。
変更情報が一部の担当者で止まらないように、再確認のルールを決めておきます。施工図担当、工程担当、型枠担当、安全担当、協力会社の間で、どの変更があったら施工範囲を見直すのかを共有します。変更内容、変更前後の範囲、構造計算や組立図への影響、確認者、確認日を記録します。
現地確認と変更時の見直し を施工範囲に反映することで、申請資料と実際の現場施工のずれを防げます。型枠支保工の88条申請では、初回の図面確認だけでなく、現地と変更に追従する運用が不可欠です。
施工範囲整理で起こりやすい不備
型枠支保工の施工範囲整理では、いくつかの不備が起こりやすいです。最も多いのは、コンクリート打設範囲だけを見て支保工の施工範囲を決めてしまうことです。打設範囲と支保工範囲は一致しない場合があります。支柱や受け材、補強材を設ける範囲が打設範囲より広がることがあるため、打設範囲だけで判断すると申請対象の一部を見落とします。
次に多いのは、一部だけ支柱高さが3.5m以上になる範囲の見落としです。一般部が対象外に見えても、ピット、段差部、吹抜け、掘削底、地下部、外構構造物などでは支柱高さが大きくなる場合があります。施工範囲全体を平均的に見て対象外と判断すると、局所的な対象範囲を拾えません。
条件が変わる範囲を区分していないことも不備につながります。梁下、段差部、開口部周辺、設備基礎、厚いスラブなどは、一般部と荷重条件や支柱配置が異なる場合があります。これらを一つの範囲として扱うと、構造計算や組立図の前提が曖昧になります。
組立図と構造計算書の対象範囲がずれていることもよくあります。組立図では支保工が広く描かれているのに、構造計算書では一般部だけを対象にしている場合があります。代表計算を用いる場合でも、代表条件が最も厳しい範囲を含んでいるかを確認する必要があります。
下部条件の確認不足も大きな問題です。支柱を立てる位置に開口、段差、配管、仮設材、軟弱地盤がある場合、支柱位置を変更する必要があります。現地確認をせずに図面だけで施工範囲を決めると、組立開始後に支柱を立てられないことが判明し、資料修正や工程遅延につながります。
工程変更や施工図変更後に範囲を見直していないことも不備になります。打 設範囲が変わる、梁せいが変わる、開口が追加される、支柱配置が変わると、施工範囲や対象判定に影響する可能性があります。初回確認の範囲を固定したままにせず、変更時に再確認する必要があります。
範囲整理の根拠が記録されていないことも実務上の問題です。どの図面を見て、どの範囲を対象としたのか、支柱高さをどこで確認したのか、協力会社に何を確認したのかが残っていないと、後から説明できません。特に対象外と判断した範囲は、根拠を記録しておくことが重要です。
これらの不備を防ぐには、施工範囲整理を標準化することが有効です。工区と部位の洗い出し、打設範囲と支保工範囲の区分、支柱高さの確認、条件が変わる範囲の区分、組立図と構造計算書の整合、現地確認と変更時の見直しを順番に行うことで、判断のばらつきを減らせます。
施工範囲を社内と協力会社で共有する実務ポイント
型枠支保工の施工範囲を整理したら、その内容を社内と協力会社で共有することが重要です。施工範囲を担当者の手元だけで管理していると、協力会社の組立図や構造計算書、工程表、現地作業に反映されない可能性があります。施工範囲は、申請準備と現場施工の共通前提として扱う必要があります。
まず、施工範囲を図面上で見える化します。対象範囲、要確認範囲、対象外範囲を図面上に示し、支柱高さが3.5m以上となる箇所、梁下や段差部など条件が変わる箇所を明記します。図面上で範囲が分かるようになっていれば、現場担当者、協力会社、安全担当、工程担当が同じ前提で確認できます。
次に、一覧表で管理します。階、工区、部位、打設範囲、支保工施工範囲、支柱高さ、下部条件、構造計算対象、組立図の有無、協力会社確認状況、未確認事項を記録します。図面と一覧表を併用することで、視覚的な確認と進捗管理の両方がしやすくなります。
協力会社には、施工範囲を具体的に伝えます。「この工区の型枠支保工資料をください」だけではなく、どの階、どの通り芯、どの打設ブロック、どの梁下や段差部を対象にするのかを明確にします。支柱高さが3.5m以上となる可能性がある範囲、現地確認が必要な範囲、構造計算に含めるべき範囲を伝えます。
協力会社から提出される組立図や構造計算書については、整理した施工範囲と一致しているかを確認します。協力会社が別の範囲を前提に資料を作成している場合、申請資料として不整合になります。提出資料を受け取った段階で、対象範囲、支柱高さ、支柱間隔、荷重条件、使用材料が一致しているかを確認します。
社内共有では、施工範囲を工程表にも反映します。型枠支保工の組立開始日、打設日、解体予定日を対象範囲ごとに確認します。88条申請の準備は、打設日ではなく支保工の組立開始日から逆算する必要があります。範囲ごとに工程を紐づけることで、申請準備の期限管理がしやすくなります。
安全担当との共有も重要です。施工範囲が明確であれば、組立前確認、組立後点検 、打設前確認の対象範囲も明確になります。支柱高さが高い範囲、梁下補強がある範囲、下部条件が不安定な範囲、段差部や開口周辺などを重点確認箇所として共有できます。
変更時の共有ルールも決めておきます。施工図変更、打設範囲変更、支柱配置変更、工程変更があった場合、施工範囲の見直し結果を社内と協力会社に共有します。変更前の範囲と変更後の範囲、構造計算書や組立図への影響、申請準備への影響を記録します。
施工範囲の共有で大切なのは、同じ図面、同じ一覧、同じ最新版を関係者が見ている状態にすることです。施工範囲が人によって違う認識のままだと、申請資料と現場施工がずれます。範囲を整理するだけでなく、共有し、更新し、記録することで、88条申請の準備を安定して進められます。
まとめ
88条申請前に型枠支保工の施工範囲を整理するには、まず型枠支保工が発生す る工区と部位を洗い出すことが重要です。一般スラブ下だけでなく、梁下、ピット、段差部、吹抜け、地下部、設備基礎、外構構造物など、支保工が必要になる可能性のある箇所を広く確認します。最初から対象外と決めつけず、要確認範囲として管理することが大切です。
次に、コンクリート打設範囲と支保工施工範囲を分けて確認します。打設する範囲と、荷重を支えるために支柱や受け材を設ける範囲は一致しない場合があります。打設計画書と支保工組立図を照合し、どの範囲を申請対象として整理するのかを明確にします。
支柱高さ3.5m以上となる範囲の抽出も欠かせません。支柱高さは、建物の階高ではなく、施工時に支柱を立てる下端から型枠や支える部材までの高さで確認します。ピット、掘削底、段差部、吹抜け、地下部では、一部だけ支柱高さが大きくなることがあります。最大高さが発生する箇所を確認し、図面と一覧に記録します。
梁下や段差部など条件が変わる範囲は、一般部と分けて整理します。梁下では荷重 が集中し、段差部では支柱高さや水平つなぎの条件が変わることがあります。設備基礎、増し打ち、開口部周辺、ピット部なども、荷重条件や支柱配置が異なる可能性があります。条件ごとに範囲を区分することで、構造計算書や組立図との整合を取りやすくなります。
組立図と構造計算書の対象範囲をそろえることも重要です。組立図で示された施工範囲が、構造計算書の対象範囲に含まれているかを確認します。一般部だけを代表計算している場合は、梁下や段差部など最も厳しい条件が計算に反映されているかを確認します。資料の版管理を行い、最新版同士で整合を取ることが必要です。
さらに、現地確認と変更時の見直しを施工範囲に反映します。図面上では支柱を立てられる場所でも、現地には開口、段差、配管、仮設材、資材置場、軟弱地盤がある場合があります。現地確認結果を図面に反映し、必要に応じて組立図や構造計算書を見直します。施工図変更、打設範囲変更、工程変更、支柱配置変更があった場合も、施工範囲を再確認します。
施工範囲を整理したら、社内と協力会社で共有することが大切です。対象範囲、要確認範囲、対象外範囲を図面上で示し、一覧表で管理します。協力会社へは、どの工区、どの部位、どの打設ブロックの資料が必要なのかを具体的に伝えます。安全担当や工程担当とも共有し、組立開始日、点検範囲、申請準備期限を連動させます。
型枠支保工の施工範囲整理では、図面だけでなく現地の位置や高さ、下部条件を正確に記録することが実務の精度を高めます。iPhone装着型GNSS高精度測位デバイスであるLRTKを活用すれば、支保工の設置予定範囲、支柱高さを確認した位置、段差や開口部、搬入経路、下部条件などを位置情報付きで記録しやすくなります。88条申請の判定や構造計算そのものを置き換えるものではありませんが、図面と現地条件を照合し、協力会社や社内関係者と同じ場所を共有するための補助として有効です。施工範囲の整理を属人的にせず、確認記録を残しながら申請準備を進めるうえで、LRTKの活用は実務の効率化につながります。
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