目次
• 従来の測量とセンチ級測位の課題
• LRTK Phoneとは?
• センチメートル級測位を可能にする技術
• LRTK Phoneの主な特長
• スマホ一台で変わる現場測量
• LRTKによる簡易測量
• FAQ
従来の測量とセンチ級測位の課題
工事現場の位置出し(墨出し)や土地境界の確認、出来形管理など、センチメートル級の測位精度が求められる場面は少なくありません。例えば構造物を設計通りの位置に施工するには、数センチの誤差も許されない精度が必要です。しかし、従来この精度を現場で実現するには熟練の測量技術者と高価な機材が不可欠でした。トータルステーションなどの光学式測量機器を使う場合、大型で重量があるため通常は2人1組での作業となり、機材の運搬や設置にも手間がかかります。また年次の校正や調整といったメンテナンスにもコストが掛かり、小規模事業者や自治体にとって導入は容易ではありませんでした。
一方で、スマートフォンやハンディGPS端末のような手軽な機器では、単独測位の場合誤差が5~10m程度と大きく、地図アプリの現在地表示には十分でも、現場の測量には到底使えません。建物の位置出しや境界測定に数メートルものズレがあっては実用にならないため、結局のところセンチ級の精度が必要な作業では従来どおり専門の測量機器に頼らざるを得ない状況でした。
このように、現場での高精度測位には人手と費用がかかるという課題が長年存在してきました。さらに近年は建設業界で人手不足やベテランの減少が深刻化しており、「簡単に正確な測量ができる方法はないか」というニーズが高まっています。誰でも気軽にセンチメートル単位の測位ができれば、測量作業の省力化と効率化につながり、生産性向上の大きな助けとなるでしょう。
LRTK Phoneとは?
こうしたニーズに応えるべく登場したのが、ス マートフォンを高精度な測量機器に変身させる革新的デバイス「LRTK Phone」です。東京工業大学発のスタートアップ企業・レフィクシアが開発したこのシステムは、iPhoneやiPadと組み合わせて使用する超小型のRTK-GNSS受信機から成ります。専用のスマホケースやアタッチメントを介してスマートフォンに装着し、専用アプリを起動するだけで、従来は専門機器が必要だったセンチメートル級の測位を実現します。重量はわずか100数十グラム、厚さ1cm程度というポケットサイズの受信機で、いつでも現場に持ち出して必要なときにすぐ測れる手軽さが特徴です。
LRTK Phoneをスマホに取り付けると、スマホがそのまま「万能測量機」になります。衛星測位による高精度な現在位置の取得はもちろん、スマホ内蔵のカメラやLiDARセンサーも活用して、3次元の点群計測(スキャン)や杭打ち位置の誘導、拡張現実(AR)による設計データの重ね合わせ表示まで、1台のスマホで完結します。これまで複数の機器や人手を要していた測量作業を、スマートフォンひとつでこなせる時代が到来したと言えるでしょう。現場の技術者それぞれが自分専用の測量デバイスをポケットに携帯し、必要なときにすぐ使える——そんな「一人1台」のモバイル測量機が現実のものとなりつつあります。
センチメートル級測位を可能にする技術
スマホを測量機器に変える鍵となっているのが、RTK(リアルタイムキネマティック)測位技術です。通常のGPS(GNSS)測位では先述のとおり5~10m程度の誤差が避けられませんが、RTKでは基地局と移動局の2点で同時に受信した衛星データを使い、共通誤差を差し引くことで測位精度を飛躍的に高めます。LRTK PhoneはこのRTK方式を採用し、iPhone用の小型デバイスながらも水平位置で±1~2cm、高さ方向で±3cm程度という、本格的な測量機器に匹敵する精度を実現しています。実際に高精度GNSSの1級機と比較したテストでも、平均誤差が5mm以下に収まったという結果が出ており、その測位精度の高さが裏付けられています。
LRTK Phoneの受信機は、複数周波数に対応した高性能GNSSアンテナを内蔵しており、アメリカGPSやロシアGLONASS、欧州Galileo、そして日本の準天頂衛星システム「みちびき」など、利用可能な衛星からの信号を余すところなく捉えます。特 に日本のみちびき(QZSS)が提供するセンチメータ級補強サービス(CLAS)に対応しているのが大きな特徴です。CLAS対応により、携帯電話の電波が届かない山間部や海上といったインターネット圏外の現場でも、みちびきからの補正情報を直接受信してリアルタイムにセンチ級測位が可能となります。また携帯通信が使える環境では、国土地理院の電子基準点ネットワークなどを利用したネットワーク型RTK(Ntrip方式)による補正にも対応しており、日本全国どこでも高精度測位を維持できます。
さらに、LRTKの専用アプリには平均化測位の機能も搭載されています。静止した状態で数秒間連続して位置を測定し、その平均値を計算することで、単発測位よりも誤差を抑えることができます。条件が整えば、数十回の測定を平均することで1cm未満の精度にまで高めることも可能です。このようにハードウェアとソフトウェアの組み合わせで、スマホとは思えないレベルの測位精度を実現しているのがLRTK Phoneの技術的な強みです。もちろん、従来スマホでは難しかった高さ(標高)の測定もRTKにより正確に行えるため、土木測量や建設現場のあらゆる場面で活用できます。
LRTK Phoneの主な特長
LRTK Phoneは、その携帯性と高精度測位技術によって現場測量のハードルを大きく下げる様々な特長を備えています。主なポイントを挙げると次のとおりです。
• 超小型・軽量設計: デバイス本体は約165gと非常に軽く、厚さも約1cm程度しかありません。スマホの背面に装着して携帯できるコンパクトさで、ポケットに入れて常に持ち歩けます。現場で使いたいときにさっと取り出して装着し、手軽に持ち運べるため、重い三脚や測量機を運ぶ必要がありません。
• バッテリー内蔵で長時間動作: デバイスにはバッテリーを内蔵し、約6時間の連続動作が可能です。充電はUSB Type-C経由で行い、現場ではモバイルバッテリーから給電することもできます。電源を確保しにくい屋外でも長時間安心して測量を続けられます。
• ワンタッチ装着と簡単接続: 専用スマホケースや磁気アタッチメントを用いて、ワンタッチでiPhone/iPadに着脱可能です。使うときだけ素早く取り付け、不要なときは外しておけます。スマホとはBluetoothやLightning接続でペアリングし、アプリを起動するだけで即座に高精度測位が始まります。煩雑な初期設定や特別な操作は必要ありません。
• センチ級の高精度測位: 上述したRTK技術と高性能アンテナにより、水平±2cm程度、垂直方向も数cmの精度で現在位置を測定できます。これだけの精度があれば、建設現場の墨出しからインフラ点検まで幅広い測量ニーズに対応可能です。スマホ内蔵GPSでは得られなかった精密な高さ情報も取得でき、測量成果としてそのまま利用できます。
• みちびきCLAS対応・圏外でも安心: 日本の衛星「みちびき」から配信される高精度補強信号CLASを受信できるため、通信圏外の現場でもセンチ級測位を維持できます。山奥の工事現場や災害で基地局がダウンした地域でも、衛星さえ見通せれば高精度な位置測定が行えます。(もちろん通信可能な場所ではNtrip方式のネットワークRTKも利用できます。)
• 一人でできる測量作業: LRTKデバイスはオプションの一脚(モノポッド)や先端に石突を付けたポールに取り付けることもできます。これにスマホをセットすれば、従来は2人がかりだった杭打ち作業や単点の測量も一人で正確に実施できます。アプリ上で高さオフセット(機器の地上高)もボタン一つで設定でき、気泡管で水平を取れば片手でも精密な測位が可能です。
• 多彩な測量機能: 専用のLRTKアプリにより、スマホ1台で以下のような幅広い機能を利用できます。
- 高精度な単点測位: ワンタップで現在地の緯度・経度・高さを測定し記録。日本の平面直角座標系にも対応しており、ジオイド高も自動計算されるため、取得した座標をそのまま設計や報告に活用できます。
- 連続測位・平均測位: 連続モードでは移動しながら最大1秒間に10点の高精度な位置データを取得して軌跡を記録できます。平均モードでは指定秒数測った位置の平均座標を算出可能です。複数回測ることで精度向上を図れます。
- 3D点群スキャン: iPhone/iPadのカメラやLiDARスキャナーで 周囲を撮影しつつ、LRTKの高精度座標データをリアルタイムに付与することで、絶対座標付きの3次元点群を簡単に生成できます。特別なレーザースキャナーがなくても、歩き回るだけで広範囲の地形を立体計測できる画期的な機能です。
- 座標ナビゲーション(誘導): あらかじめ設定した目標点の座標に向けて、スマホ画面上に矢印と距離で誘導します。地図と方位を見ながら指示通りに進むだけで目標地点にたどり着けるので、杭打ち位置のマーキングや埋設物の位置特定なども容易です。ARによる誘導表示で感覚的に場所をつかめます。
- ARによる設計データ重ね合わせ: BIM/CIMなどの3D設計モデルや図面データをアプリに取り込んでおけば、現場のカメラ映像にAR表示して重ね合わせることが可能です。絶対座標で位置合わせされたモデルを実景に投影できるため、施工物が設計通りの位置・高さに収まっているか一目で確認できます。マーカー不要でズレないAR表示は、関係者間の合意形成にも役立ちます。
- 測位写真: LRTKで測位しながら撮影した写真には、その撮影位置の緯度・経度・高さとカメラの向き(方位)が自動でタグ付けされます。撮影日時やメモとともに保存されるため、後で見返した際に「どこからどの方向を撮った写真か」がすぐ分かります。従来のように地図に書き込みをしたり写真ごとに整理する手間がなく、点検記録や経年変化の比較が飛躍的に効率化されます。
- 各種計測: 取得した点群データ上で任意の2点間の距離や、指定範囲の面積・体積を計測することも可能です。例えば盛土や掘削の体積をその場で求めたり、点群から任意の断面図を生成したりできます。これまでは専用ソフトで行っていた解析処理を現場で手軽に実施できるのも大きなメリットです。
• クラウドサービスとの連携: 現場で取得したデータはワンタップでLRTKクラウドにアップロード・同期できます。クラウド上のWebマップ画面で、測位点や軌跡がプロットされ、各点の座標値や写真・メモを一覧できます。共有用のURLを発行して関係者に送れば、受け取った人は専用アプリ無しでもブラウザ上で測量結果を確認できます。データはCSVやSIMA形式でダウンロードでき、CADやGISへの取り込みもスムーズです。逆に設計図の座標データや境界点リストをクラウドにアップロードしておき、現場のスマホと同期すれば、指定した地点まで座標ナビで誘導してもらうこともできます。現場⇔オフィス間の情報共有がシームレスになり、測量結果のとりまとめやチェックにかかる日数も大幅に短縮されます。
スマホ一台で変わる現場測量
上記のような機能と特長により、LRTK Phoneは現場測量のあり方を大きく変えつつあります。まずその手軽さと迅速さは、これまでの測量作業の常識を覆すものです。ポケットからスマホと小型デバイスを取り出して数分で高精度測位が始められるため、「測量のための準備」に時間を取られることがありません。思い立ったその場で測りたいポイントの座標を取得できるため、現地調査や出来形管理のフットワークが格段に向上します。
現場スタッフひとりでも測量が完結するようになった意義も大きいでしょう。従来、杭打ちや丁張りといった作業は測量の専門技術者や補助者が複数人必要でしたが、LRTK Phoneがあれば施工管理の担当者自身が単独で位置出しまでこなせます。測量の専門スキルがない方でも、スマホ画面の案内に従って移動したりボタンを押したりするだけで正確な測定ができるため、人手不足の対策としても注目されています。また一人作業になれば、人が機材を支える必要がなくなるので、危険な場所での測量も安全に行えるようになります。
リアルタイムな情報共有による効率化も見逃せません。LRTKクラウドを活用すれば、現場で測ったデータを即座にオフィスのチームと共有できます。例えば測定した点の座標や写真をクラウドに上げておけば、事務所に戻る前に関係者がその情報を確認できます。これにより、測量結果のチェックや図面反映がスピーディーになり、作業の待ち時間が減少します。現場からクラウド経由で新たな指示点の座標を送信し、別の担当者がすぐその場所を測りに行く——といった双方向の連携もリアルタイムで可能です。デジタル化とクラウド連携によって、従来は日数がかかっていた測量データの処理や承認フローが大幅に短縮されるため、現場全体の生産性が飛躍的に向上します。
さらに、LRTK Phoneは過酷な環境下での測量にも対応できる点が実証されつつあります。ベテラン測量技術者の報告によれば、通常は衛星測位が難しい森林の中や山間部でも、LRTKを用いることで高精度な測位が維持できたとのことです。複数周波数で安定して測位できる性能により、従来のGPS機器では5m以上ずれてしまうような条件下でも精度を保ちやすくなっています。このような測位信頼性の高さは、従来GNSS測量が敬遠されていた場面でも積極的に活用していける可能性を示しています。
一人1台のスマホ測量というスタイルは、将来的に現場業務の新たな当たり前になるかもしれません。実際、LRTK Phoneは各種メディアでも先端技術として取り上げられ始めており、現場での導入事例も着実に増えています。ある土木工事現場では、LRTK導入後に杭打ち測量の所要時間が従来の半分以下に短縮された例も報告されています。携帯性と即応性に優れたスマホ測量が広がれば、現場の作業効率と品質管理はさらなる向上が期待できるでしょう。
LRTKによる簡易測量
LRTK Phoneが実現するのは、専門技術者でなくとも簡易に測量ができる新しいワークフローです。スマホと小さな受信機だけで済むため、「今日は測量班が来ていないから作業が止まる」といった事態も減らせます。たとえば地方自治体では、測量の専任部署がなくても各担当職員が自分のスマホ で測量を行えるようになるため、インフラ点検や災害対応のスピードアップに役立つと期待されています。実際、福井市では2023年にこのスマホ測量システム(LRTK)をいち早く災害復旧の現場に導入しました。被災箇所を発見した職員がその場ですぐ高精度の測定を行えるようになり、現場と役所の往復を減らすことで対応の迅速化とコスト削減に成功したと報じられています。限られた人員でも被災状況を速やかに記録でき、復旧計画の立案も効率化されたとのことです。このようにLRTKによるスマホ測量は、緊急時の簡易測量手段としても大きな価値を発揮しています。
従来は専門家に任せるしかなかった測量作業を、現場の誰もが手軽に行えるようになる——そのインパクトは計り知れません。LRTK Phoneによる簡易測量を取り入れれば、これまで測量の手配にかかっていた時間と手間を省き、自律的で柔軟な現場対応が可能になります。精度と効率を両立するこの新しい測量ソリューションは、今後ますます多くの現場で活用されていくでしょう。現場の測量作業に課題を感じている方は、ぜひLRTK Phoneがもたらす新しい簡易測量の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
FAQ
Q: LRTK Phoneを利用するには何が必要ですか? A: 基本的にはiPhoneまたはiPadとLRTKデバイス、および専用のLRTKアプリが必要です。対応するiOSデバイスに専用ケースを装着し、LRTK受信機を取り付けてアプリを起動するだけで利用できます。初回のペアリング設定以外に特別な機器や複雑な設定は不要です。
Q: 測位の精度はどの程度出ますか? A: 条件にもよりますが、一般的な環境で水平位置は約1~2cm、垂直方向で約3cm程度の誤差に収まります。静止状態で数秒間測定して平均化すれば1cmを切る精度も達成可能です。これは従来の高級GNSS測量機に匹敵する精度です。
Q: 携帯の電波が届かない場所でも使えますか? A: はい。LRTK Phone は日本の衛星測位システム「みちびき」の高精度補強サービスCLASに対応しており、スマホの通信圏外でもセンチ級測位が可能です。山間部や災害現場など基地局からのインターネット通信ができない場所でも、衛星から補正情報を直接受け取って高精度を維持できます。
Q: 一人でも杭打ちや測量をこなせるとありますが、本当に可能ですか? A: 可能です。LRTK Phoneは一脚やポールに取り付けて使えるため、従来は2名以上で行っていた測量作業を一人で実施できます。実際の操作もアプリ上でガイドされるので、指示に従ってスマホを所定の位置に持って行きボタンを押すだけです。画面上に矢印で誘導が表示される杭打ち作業支援機能もあり、経験の浅い方でも迷わず目標点を特定できます。
Q: 計測データはどのように活用できますか? A: 測位結果や点群データ、写真などはクラウド上に保存・共有できます。クラウドからCSVやSIMA形式でダウンロードしてCADソフトに取り込んだり、関係者とデータを共有したりも簡単です。また、クラウド上で座標変換や距離・体積の計算を行うこともでき、そのまま報告書作成や図面修正に役立てることができます。
Q: ビルの谷間や樹木の下などGPS信号が遮られる場所ではどうなりますか? A: 衛星信号が極端に弱い場所ではリアルタイムのRTK測位が難しくなります。しかしLRTKアプリには屋内測位モードが用意されており、一時的に衛星を見失ってもスマホのカメラ映像や慣性センサーを用いて短時間であれば測位を継続できます。例えば橋の下に潜り込んだ場合でも、その直前に空が開けた場所で位置を補足しておけば、完全に衛星を再捕捉するまでの間は自律的に現在位置を推定して記録し続けます。長時間になると誤差は蓄積しますが、従来は測れなかった場所で途切れずデータ取得できるのは大きな利点です。
LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上
LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。
LRTKの詳細については、下記のリンクよりご覧ください。
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