測量技術の革新が、施工管理の常識を変えようとしています。 建設現場のデジタル化が進む中、特に注目を集めている技術がLiDAR(ライダー)です。LiDARは「Light Detection and Ranging」の略称です。レーザー光を対象物に照射し、その反射光の戻り時間から距離を割り出すことで、周囲の形状を3次元データとして取得するセンサー技術です。このLiDAR技術の登場によって、従来は多くの時間と人手を要していた現場測量が劇的に効率化されつつあります。近年、国土交通省が推進するi-Constructionを皮切りに、施工管理で3次元点群データを活用する動きが急速に拡大しています。なぜなら、3Dの現況データによって現場の出来形や地形を高精度に把握することで、施工の品質と効率を飛躍的に向上できるからです。
LiDARを用いた3Dスキャンには、以下のような主なメリットがあります。
• 短時間で広範囲を測定: 遠距離からレーザーで一度に広い範囲をスキャンできるため、従来は数日かかった測量作業もわずか数時間で完了します。
• 高密度で詳細な点群データ: 1秒間に数十万~数百万点もの測距点を取得でき、地形や構造物の微細な形状まで捉えた詳細な3Dデータを得ることができます。
• 非接触で安全な計測: レーザー光による非接触測定のため、人が立ち入れない場所や急傾斜の法面でも遠隔から安全に計測できます。足場を組んだり高所に登ったりする必要が 減り、作業員の安全確保と効率化に繋がります。
• 省人化・作業効率の向上: 重量機材を運搬したり多数の人員を割いたりせずとも、LiDAR機器とタブレットなどがあれば一人でも測量が可能です。人手不足の現場で大きな効果を発揮し、測量作業の省力化に貢献します。
• デジタルデータの高度活用: 得られた点群データは、設計モデルとの照合や断面図作成、土量計算などに幅広く利用できます。現場の状況を丸ごとデジタル記録できるため、後から必要な情報を抽出したり関係者と共有したりしやすく、施工管理の品質向上に寄与します。
このようにLiDARの導入によって、現場状況の把握は飛躍的に効率化され、施工管理に革命的な変化が起きつつあります。次に、施工管理の具体的な業務でLiDAR点群がどのように活用され、どんな効果を発揮するのかを見ていきましょう。
施工管 理における点群活用の実例
出来形管理、法面測量、構造物の計測、路面検査、埋設物の記録、災害対応、インフラ維持管理、さらにはARによる可視化など、多岐にわたる場面でLiDAR点群データは力を発揮しています。ここでは、それぞれの実例とLiDAR活用による精度・効率面のメリットを順に解説します。
出来形管理への活用
土木工事や造成工事では、完成した地形や構造物が設計通りに仕上がっているか確認する出来形管理が欠かせません。従来は基準点に沿って要所の高さや寸法をスタッフと測量機器で測り、図面と照合していましたが、この方法では測点間の形状変化を見落とすリスクがありました。
LiDARで現場全体をスキャンすれば、地盤や構造物の形状を余すところなく点群データとして取得できます。例えば、盛土や掘削の完了地形を3Dモデル化して設計の予定面と重ね合わせれば、わずかな過不足もひと目で把握可能です。点群から自動で横断面図や出来形管理図を作成できるため、検測作業は従来より迅速 かつ正確に行えます。一度のスキャンで多数のポイントを取得できるので、測定時間は大幅に短縮され、検測に必要な人員も削減できます。LiDARの導入により、出来形管理の測定精度と作業効率は飛躍的に向上しました。
法面計測への活用
切土や盛土で形成される法面(のりめん)の形状管理にもLiDARは有効です。急斜面や崩落の危険がある箇所で人が斜面に立ち入って測量するのは困難で、離れた場所からごく限られた点を測定するのが精一杯でした。これでは斜面全体の状態を把握しきれず、安全管理上も課題がありました。
LiDARを用いれば法面全体を遠隔から短時間で計測でき、斜面表面の細かな凹凸まで含めた正確な3D形状が得られます。設計図に示された勾配とのズレや局所的な膨らみ・くぼみも、取得した点群データから容易に見つけることができます。また、点群データから任意の断面を作成して勾配角度を確認したり、法面の表面積や土量を算出したりすることも可能です。人力では難しい高所の測定を安全に行えるため、作業員の負担軽減と測量結果の信頼性向上の両面で大きなメリットがあります。
構造物の3D計測への活用
建築物や土木構造物そのものの出来形検査にも、LiDARによる点群計測が活用されています。建物の躯体や橋梁、トンネルといった構造物をスキャンすれば、形状全体をデータ化して設計モデルや図面と詳細に比較できます。従来は要所要所の寸法を測って確認するしかなく、計測点の間で生じるわずかな歪みを見逃す可能性がありました。しかし点群データがあれば、構造物の全表面について寸法や位置のずれをチェックできるため、見落としがほぼ解消されます。
例えば、コンクリート構造物の直角度や平面度、トンネル断面のゆがみ具合なども、取得した点群を解析することで定量的に評価可能です。複雑な曲面形状や入り組んだ構造でも、LiDARなら短時間で形状を余すところなく捉えられます。これにより施工精度の検証がスピーディーになり、問題箇所を早期に発見して是正するといった品質管理の向上に繋がっています。
路面計測・検査への活用
道路や舗装面の出来形検査にも3D点群データが力を発揮します。舗装直後の路面の平坦性やクロソイド曲線に沿った勾配を点群で取得すれば、広範囲にわたり路面の品質を詳細に評価できます。従来は路面に定規を当てて局所的に凹凸を調べたり、数メートルおきに高さを測ったりする程度でしたが、点群を用いることで路面全体のわずかな高低差まで可視化することが可能です。
例えば、舗装前後の地盤と仕上がり面をスキャンして比較すれば、敷き均し厚さの均一性を検証できます。また、供用後のわだち掘れ(車両通行による轍)の深さや分布を把握する際も、面的な点群データが有効です。一度の走行で道路面を連続的に計測できるため、夜間施工後に素早く品質チェックを完了するといった運用も可能となります。路面管理にLiDARを活用することで、検査精度の向上と作業時間の短縮が同時に実現します。
埋設物の記録・管理への活用
インフラ工事などで地中に埋設する構造物の位置記録にも、LiDAR の活用が始まっています。埋戻し前の開削溝や設置した配管・ケーブル類をスキャンしておけば、地下に埋めた要素の正確な3D位置データを保存することが可能です。
従来は施工後に巻尺や測量機で埋設物の深さや離れを測り、紙の図面に記録していました。この方法では記録精度が担当者の技量に左右される上、記録漏れのリスクもありました。LiDARで取得した点群データがあれば、配管全体を網羅的に計測でき、後から任意の箇所の深度や勾配を正確に確認できます。また、データは電子化されているため将来の改修工事や維持管理にすぐ活用でき、埋設位置の探索や確認作業が格段に効率化します。LiDARによる埋設物の記録は、工事履歴の精度を高め、将来の現場作業の安全性と効率を向上させる新しい手法と言えるでしょう。
災害状況の把握への活用
土砂崩れや地すべり、河川の氾濫といった災害発生時にも、3D点群は状況把握の強力なツールになります。被災現場をLiDARでスキャンすれば、崩落した土砂の量や被害範囲を短時間で把握でき、即座の対応判断に役立ちます。
人が立ち入れない危険地域でも、ドローン搭載LiDARや遠隔操作型のレーザースキャナーを使えば安全に計測可能です。例えば、大規模な土砂崩れ現場では、崩壊前後の地形データを比較して正確な土砂流出量を算出できます。また、崩壊した斜面の傾斜角を点群解析することで、二次災害のリスク評価に役立てることもできます。従来は現地踏査や一部の測量データから状況を推測していた場面でも、点群データを用いれば客観的で高精度な判断が可能です。災害対応へのLiDAR活用により、被害状況の把握と復旧計画策定のスピード・精度が飛躍的に向上しています。
インフラ維持管理への活用
橋梁やトンネル、道路といった社会インフラの維持管理にも、LiDARによる点群計測が活用されています。定期点検の際に構造物を3Dスキャンしておけば、経年による変形や損傷の進行を定量的に追跡できます。
従来は目視や一部断面の計測で健全性を判断していましたが、点群データを時系列で比較することで構造物全体の挙動をミリ単位で捉えられます。例えば、トンネル内壁の変位量や道路路面の沈下傾向を複数時点の点群から算出すれば、劣化状況を定量的に評価できます。LiDARなら短時間で広範囲を計測できるため、点検に伴う通行止めや作業時間も最小限で済みます。こうした3Dデータの蓄積は、インフラの予防保全や補修計画の高度化に直結します。LiDARを活用した維持管理によって、インフラ点検の精度向上と効率化が同時に実現できるのです。
ARによる現場可視化への活用
拡張現実(AR)技術と点群データの組み合わせも、次世代の施工管理手法として注目されています。タブレット端末などの画面を通じて、現場映像に設計の3Dモデルや取得済みの点群を重ねて表示すれば、完成イメージや施工途中の出来形をその場で直感的に把握できます。
例えば、施工途中の構造物に対して設計モデルをAR表示で重ね合わせれば、現状と設計とのわずかなズレも現地で一目瞭然です。図面だけでは気付きにくいミスや手直し箇所も、AR上で実物とデジタル情報を比較することで容易に発見できます。また、竣工後の完成イメージを事前に現場に投影して関係 者で共有すれば、発注者との合意形成や施工計画の打ち合わせがスムーズになります。ARと点群を組み合わせることで、コミュニケーションの効率と施工精度が飛躍的に向上し、現場管理のあり方が大きく進化しつつあります。
GNSS(RTK)による高精度測位とLRTKの融合
いくら詳細な点群データを取得できても、それが正確な位置座標に合致していなければ実務には活かせません。そのため、LiDARによる点群測量では取得データを地図座標系に結び付ける高精度な位置合わせが重要です。ここで鍵となるのがGNSS測位、中でもRTK(リアルタイムキネマティック)方式の活用です。
GNSSはGPSに代表される全地球測位システムの総称で、人工衛星からの信号をもとに地球上の位置を測定します。しかし通常の単独測位では誤差が数メートル生じるため、精密な測量にはそのままでは使えません。RTKは基準局からの補正情報をリアルタイムに利用することで、測位誤差を数センチメートルまで縮減できる技術です。専用の基地局を現場に設置する方法や、イ ンターネット経由の補正サービスを利用するネットワーク型などがありますが、いずれにせよRTKを使えば衛星測位でセンチ級の高精度座標が取得可能となります。
LiDAR計測とRTK測位を組み合わせれば、高精度な点群の位置合わせを簡便に行うことができます。従来はレーザースキャナーで取得した点群を後処理で既知の基準点に合わせ込む必要がありましたが、RTK対応のGNSSを併用すれば計測と同時に点群に正確な位置座標を付与できます。例えば、LiDARセンサー搭載機器にRTK-GNSS受信機を取り付けておけば、現場をスキャンする際に取得する点群がそのまま測地系の座標値を持つようになります。こうしたLiDAR+RTKのアプローチを、ここではLRTKと呼んでいます。LRTKを活用すれば、特殊な大型機材を用いずとも、手軽に高精度の3D測量が可能となります。
近年ではスマートフォンやタブレットにLiDARセンサーが搭載されており、これに小型のRTK受信機を連携させることで、手のひらサイズの点群測量システムを構築することもできます。スマホ内蔵LiDARの取得できる点群密度・精度は、一般的な施工管理用途に十分実用に耐えるレベルに達しています。ただしスマホ内蔵のGPSでは測位誤差が大きいため、RTKで補正して絶対精度を確保することが不可欠です。LRTK技術により、スマホという身近なデバイスで取得した点群データにもセンチ単位の正確な座標を与えることができるのです。
LRTKによるスマホ点群測量なら、広い現場を歩き回りながら必要な箇所を次々と3Dスキャンし、そのデータを即座に図面やBIMモデルと重ね合わせて確認するといったことも容易に実現できます。機動性が高くワイヤレスで計測できるため、障害物の多い現場や室内空間でも自在に測りたい地点へアクセス可能です。高度な測量技術を持たない作業員でも直感的に扱えるシステムを構築できる点も利点で、これまで専門技術者に頼っていた測量作業を現場の担当者自身が手軽にこなせるようになります。LiDARとRTKの融合によって、点群測量はより身近で迅速なものへと進化しているのです。
おわりに
LiDARを活用した3次元計測は、建設施工管理にこれまでにない精度と効率をもたらしつつあります。出来形や法面の検測からインフラ点検、災害対応に至るまで、点群データの活用によって施工の品質と安全性が向上し、作業の省力化が実現されています。
さらに、GNSS/RTKとLiDARを組み合わせたLRTK技術により、こうしたメリットを誰もが手軽に享受できる時代が到来しました。スマートフォンを用いた点群測量という形で、少人数で高精度な施工管理が可能となり、これはまさにi-Constructionが目指す生産性革命を現場で体現する取り組みと言えます。
LRTKによるスマホ点群測量は、省人化と精度向上を両立し、i-Constructionにも資する未来型の施工管理手段です。最先端のテクノロジーを現場業務に取り入れ、効率と品質を兼ね備えた新時代の施工管理を実現していきましょう。
LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上
LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。
LRTKの詳細については、下記のリンクよりご覧ください。
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