近年、測量や建設の現場では人手不足が深刻な課題となっています。熟練した測量技術者の高齢化と若手不足により、限られた人員で効率よく作業を進める必要性が高まっています。このような状況で注目を集めているのが、レーザーを活用した LiDAR(ライダー)技術による測量の省力化です。本記事では、LiDARセンサーの原理と測量への応用を平易に解説し、従来手法との違いや利点を紹介します。さらに、スマートフォン搭載LiDARと高精度GNSS(RTK補正)の組み合わせによる新しいワークフローが、測量技能者不足の課題をどのように解決しうるかを探ります。最後に、点群データ取得の自動化や一人測量による法面管理など多彩なユースケースを示し、公共測量への適用可能性や精度要件との適合性にも触れます。省力化と高精度化を両立する最新ソリューションとして、スマホに装着するGNSS受信機「LRTK」がどのように貢献できるかを見ていきましょう。
LiDARセンサーの仕組みと測量への応用
LiDAR(Light Detection and Ranging) は、レーザー光を用いて対象物までの距離を測定し、空間の形状を3次元的に捉えるセンシング技術です。基本的な原理はシンプルで、レーザーを対象に照射し、その反射光が戻ってくるまでの時間を計測することで距離を算出します(Time of Flight法)。例えば、地上のLiDAR機器では毎秒数十万~数百万発のレーザーパルスを周囲に照射し、返ってきた光から点群データと呼ばれる多数の測距点を取得します。これにより、建物や地形の起伏など目に見えない距離情報を高密度に収集し、立体的な地図やモデルを作成できるのです。
測量分野においてLiDARの活用が広がっている背景には、その非接触で高速な計測能力があります。従来の測量では、トータルステーションとスタッフ(標尺)を用いて一地点ずつ距離や高さを測るのが一般的でした。この方法では測定点ごとに2人以上の作業者が必要で、広い範囲をカバーするには多大な手間と時間を要しました。それに対し、LiDARは装置を据え付けてレーザー走査するだけで周囲の地形を面として一度に測定できます。人が立ち入れない急斜面や危険な場所でも、遠隔から安全にデータ取得できる点も大きな強みです。
従来手法との違いとLiDAR測量のメリット
LiDAR測量が注目されるのは、従来手法にはない様々なメリットがあるためです。以下に主な利点をまとめます。
• 面的な詳細計測: 従来の測量は離れた点の集合で地形を推定していましたが、LiDARなら面を覆う高密度の 点群として地形や構造物を詳細に記録できます。地表や構造物の凹凸、微妙な変化まで捉えられるため、出来形(施工後の形状)確認や体積計算の精度向上に寄与します。
• 省力化とスピード: 一度に大量のデータを取得できるため、測点を一つ一つ測る作業と比べ圧倒的に効率的です。熟練の測量士が不足する現場でも、比較的短時間で必要な測量が完了します。人手を減らしつつ測量待ちの時間も削減でき、工程全体の効率化につながります。
• 安全性の向上: LiDARは非接触で遠距離から計測できるため、危険箇所の測量に最適です。崖や法面の上に人が登らなくても下からレーザーで形状を取得でき、作業員のリスク低減と安全確保に大きく貢献します。また重機稼働中の現場でも、離れた位置から周囲をスキャンすれば接触事故のリスクを抑えつつ状況把握が可能です。
• データの多目的活用: 得られた点群データは後から任意の断面を切り出したり、図面作成や3Dモデル化に転用できます。一度の計測で地形図作成・出来形管理・変位モニタリングなど複数の目的に活用できるため、重複測量を減らして業務を効率化できます。
以上のように、LiDAR測量は広範囲を短時間でカバーし、人員を削減しながら高密度の情報を取得できる点で、現場の省力化ソリューションとして非常に魅力的です。ただし、専用の地上型レーザースキャナー(TLS)は機器が高価で操作にも専門知識が必要でした。そこで近年は、これらの利点をもっと手軽に活かすためにスマートフォンに搭載された小型LiDARセンサーが活躍し始めています。
スマホLiDARとRTK GNSSがもたらす新しい測量ワークフロー
最新のスマートフォンやタブレットの中には、背面に小型のLiDARセンサーを内蔵した高性能モデルがあります。これを使えば、特別な測量機を用意しなくてもスマホをかざすだけで周囲の3Dスキャンが可能です。しかし、スマホ単体のLiDAR計測にはいくつか課題もあります。まず、取得できる点群データは範囲や精度が限定的で、プロ用のレーザースキャナーに比べれば点群の密度が粗く、誤差も数センチ程 度生じます。またスマホの内蔵GPSでは測位誤差が数メートルと大きく、せっかく点群を取得しても正確な位置(座標)に結び付けることができません。これでは測量データとして扱うには不十分です。
そこで登場したのが、スマホ搭載LiDAR + 高精度GNSS という組み合わせによる新しいワークフローです。GNSSとは人工衛星を使った測位システム全般を指し、なかでもRTK(Real-Time Kinematic)方式のGNSS測位は、基準局からの補正情報を用いて測位誤差を数センチ以下に抑えられる技術です。スマートフォンに後付けできる小型のRTK-GNSS受信機(まさに LRTK のようなデバイス)を装着すると、スマホでもリアルタイムにセンチメートル級の位置座標を取得できるようになります。
このスマホLiDAR + RTK GNSSのワークフローでは、スマホが「3Dスキャナ」と「高精度GPS測量機」を一体化した存在になります。具体的には、現場でスマホのLiDARスキャンアプリを起動しつつ、LRTKのような受信機でRTK測位を行います。ユーザーはスマホを持って現場を歩き回るだけで、LiDARセンサーが周囲の点群を取得し、同時にRTK-GNSSがスマホの軌跡や各点群ブロックの位置を高精度に記録します。結果として、取得した点群データは最初から公共座標系など実空間の正確な座標に紐づけられるのです。
この手法が革新的なのは、測量の専門技能がそれほどなくても扱える点です。従来であれば、得られた点群を後処理で既知の基準点にあわせて合成したり、別途GPSで測った点と統合したりと高度な作業が必要でした。スマホとLRTKの組み合わせなら、その場で自動的に点群に位置情報が付与されるため、データ処理の手間が大幅に軽減されます。一人の作業者がスマホ片手に現場を回るだけで完結し、「測量は2人1組」というこれまでの常識を覆すワークフローが実現します。これは人材不足に悩む現場にとって大きな福音でしょう。
さらに、RTKにより座標精度が確保されることで、スマホLiDARの弱点であった精度面の不安もある程度カバーできます。スマホLiDAR自体の測距誤差は数cmありますが、例えば壁や地面といった平面を点群から抽出して平均化すれば精度を高めることができます。RTK-GNSSで位置基準がしっかり合っていれば、複数地点からスキャンしたデータもずれることなく重ね合わせられます。要は「形状はLiDAR、位置はRTK」で補い合うことで、手軽さと精度を両立した測量が可能になるのです。
このような新技術のおかげで、経験の浅い人でもスマホを使って高精度な現況測量が行える時代になりつつあります。ベテラン測量士の減少を補う戦力として、現場の誰もが扱えるスマホ測量は非常に有望です。それでは実際に、スマホLiDAR+GNSSによってどのような現場業務が効率化できるのか、具体的なユースケースを見てみましょう。
現場で活用できるユースケース
スマホLiDARとRTK測位を活用すれば、様々な測量・計測業務を省力化できます。以下に主なユースケースと、その効果を紹介します。
• 点群取得の自動化による効率化: これまで人手で測点を選んでいた作業を、デバイス任せで自動的に3Dスキャンできるようになります。一度スマホをかざせば、複雑な地形や構造物でも一面丸ごとの 点群データを短時間で取得可能です。例えば舗装工事前の現況地形をスキャンしておけば、後から必要な断面や高低差を自在に分析できます。計測漏れや取り忘れもなく、追加の測り直し作業が減る点でも効率的です。
• 一人測量で実現する法面管理: 従来、急斜面や盛土・切土の法面を測量するには複数人で危険を伴う作業が必要でした。スマホLiDARなら作業員は斜面の安全な位置からスキャンするだけで、斜面全体の形状データが取得できます。斜面の勾配や崩壊箇所の有無を一人で把握できるため、頻繁な巡回点検や施工後の法面出来形管理が飛躍的に効率化します。人員が限られる現場でも、一人で複数箇所の法面を短時間に巡回測量でき、異常の早期発見や補修計画立案に役立ちます。
• 構造物の出来形記録と検査: トンネルや橋梁、ダムといった大型構造物でも、スマホLiDARで表面形状をくまなく記録できます。施工完了後の出来形(設計形状とのずれ)を確認する際、従来は定点ごとの計測値を図面と照合していました。点群データがあれば構造物全体をデジタルな完成モデルとして残せるため、どの地点でも設計値との差を検証可能です。一人で隅々まで スキャンしておけば、後からオフィスで詳細な出来形検査を行え、検査資料作成の効率も向上します。また改修前後の形状比較やひび割れ検出などにも活用でき、構造物維持管理のDX推進につながります。
• 災害現場での応急対応測量: 土砂崩れや地震による崩壊現場では、迅速かつ安全な状況把握が求められます。スマホLiDARなら被災現場に人が長時間立ち入らずとも、遠巻きにスキャンするだけで崩落土量の概算や被害範囲の立体図を得られます。災害直後の不安定な地形でも一人で短時間に測量でき、二次災害のリスクを低減しつつ応急復旧計画に必要なデータを提供します。例えば崩壊した斜面の3Dモデルを即座に作成し、どこに土砂が堆積しているか、危険なオーバーハングはないかなどを関係者で共有できます。これにより初動対応の判断が早まり、人命救助や復旧工事を迅速に進められます。
• インフラ維持管理への対応: 道路や河川、上下水道などインフラ施設の維持管理でも、点群データは強力なツールです。スマホLiDARを使えば、道路の陥没や河川堤防の変形、トンネル内面の劣化状況といった点検項目を定量的な3次元データで記録できます。従来は目視や2次元の計測で判断していたものが、点群により正確な変位量として把握できるようになります。定期点検のたびに同じ箇所をスキャンしておけば、経年的な変化を比較して劣化の進行度を数値で示すことも容易です。人手不足で頻繁に巡回できない場合でも、一度に広範囲のデータを取得しておけば重要箇所の異常兆候を見逃しにくくなります。結果として、予防保全や計画的な修繕の精度向上に寄与します。
• ARナビゲーションとの組み合わせ: スマホで取得した点群データは、そのまま現場のAR(拡張現実)アプリケーションと連携させることも可能です。たとえば、点群から生成した3Dモデルをスマホ画面上に実景と重ね合わせることで、「見えないものを見える化」できます。地下埋設物の位置をAR表示して掘削作業を支援したり、設計BIMモデルと現況を重ねて施工管理に役立てたりと、活用の幅が広がります。高精度な位置情報(RTK)とリアルタイムの点群があるからこそ、ARによる現場ナビゲーションが実用レベルで実現します。これにより、作業員への指示や出来形確認が直感的になり、コミュニケーションロスの削減や施工ミスの防止といった効率化効果も期待できます。
以上のように、スマホLiDARとGNSSの融合技術は、単なる測量作業の省力化に留まらず、建設現場のデジタル化全般を後押しするポテンシャルを秘めています。では、この手法は公共事業などの正式な測量業務にも適用できるのでしょうか?次に、精度要件や制度面での位置づけについて確認します。
公共測量への適用と精度に関する考察
国土交通省も推進する「i-Construction」の流れの中で、現場へのICT導入が加速しています。スマホLiDARによる簡易3D計測もその一環として注目され、近年では小規模なICT施工現場での出来形管理手法として採用する動きが見られます。実際、2020年代には国土交通省のガイドラインにおいて「携帯端末搭載LiDARを用いた出来形計測」が事例として取り上げられ、現場試行も行われています。これは、従来高価なレーザースキャナーやドローンが必要だった3次元測量を、中小建設業者でも扱える低コストな機器で補おうという取り組みです。
もっとも、公共測量(地籍測量や設計用の測量等の公式な測量業務)にスマホLiDARを全面的に適用するには、現時点では慎重な検証と条件付きの運用が必要でしょう。日本の公共測量で は「作業規程の準則」に基づき機器や手法ごとの精度基準が定められています。スマホLiDARは新しい手法であるため、そのままでは既存の規程に当てはまりません。運用するには、規程第17条の特例に従って独自の作業マニュアルを作成し、精度検証を経て認められる必要があります。
では実際の精度はどの程度なのでしょうか。スマホ搭載LiDARの測距精度は高性能とはいえレーザースキャナーには劣り、一般には数センチメートル単位の誤差を含むとされています。ある検証では、市販のスマートフォン/タブレット搭載LiDARで取得した点群からモデリングした場合、約±5cm程度の誤差が生じたと報告されています(対して高精度TLSでは±数mm程度)。一方で、室内環境で数メートル規模の対象をスキャンしたケースでは、実測値との差が数センチ未満に収まった例もあり、環境や対象によってばらつきがあります。少なくとも、ミリ単位の厳密な精度を要求される用途には現状では不向きで、あくまで概略形状を短時間で把握するための技術と割り切るのが現実的です。
しかし 、RTK-GNSSによる位置補正と併用することで、絶対座標の精度は飛躍的に向上します。スマホLiDAR単独では点群全体がどこにあるか不確かでも、RTKで測位すれば初期座標のズレを抑え、複数回のスキャンデータを正しく統合できます。これにより、例えば小規模な現場の現況測量であれば、実用上支障のない精度(数cm程度の誤差範囲)で3次元データを取得できることが実証されつつあります。現に、一部の県や自治体ではタブレット型LiDARを用いた出来形計測の試行結果が公開されており、「十分実用に耐える精度が得られた」との声も出ています。
ただし、現場で使う上での現実的な制約も把握しておく必要があります。まず、スマホLiDARの有効範囲は5m前後と限定的で、広大な現場を一度に計測するのは苦手です。屋外で直射日光下ではセンサーがうまく動作しない場合もあり、基本的には日陰や夕方以降、あるいは曇天下での運用が望ましいでしょう。また、取得した点群はノイズが多く、このままでは図面作成に使いにくいので、ソフト上で不要点を除去したり平面・線を近似する後処理が必要になるケースもあります。測定の際も、スマホを早く振りすぎると点が粗くなったり形状が歪む恐れがあるため、一定の慣れやコツも要求されます。これらの点を踏まえ、公共測量への本格導入にあたっては、用途を限定して段階的に進めるのが現実的です。例えば、路面や構造物の出来形確認といった精度許容度の高い目的では活用し、逆に精密さが求められる基準点測量や境界確定には従来手法を併用する、といった使い分けが考えられます。
おわりに:LRTKで誰でもスマホ高精度測量を実現
人手不足が叫ばれる測量・建設の現場において、LiDAR技術は作業の省力化と安全性向上に大きく寄与します。特にスマートフォンのLiDARセンサーとRTK-GNSSを組み合わせた最新ソリューションは、誰でも簡単に高精度測量ができる時代を切り拓きつつあります。スマホに装着する小型GNSS受信機LRTKを導入すれば、従来は専門機器と技術者が必要だったセンチ精度の測位がスマホ一台で可能となり、その場で点群データを取得できます。これにより、ベテランの減少をカバーしつつ一人ひとりの生産性を高め、慢性的な人材不足の解消に繋がります。
さらに、こうした手軽な3次元計測の普及はi-Construction(アイ・コンストラクション)の推進にも合致しています。現場のデジタル化・効率化を図るi-Constructionでは、ICTを活用した出来形管理や施工管理が重視されていますが、スマホ+LRTKによる点群測量はまさにその理念を体現するものです。高精度な現況データを誰もが取得できれば、測量待ちによる工事の停滞も減り、設計・施工・検査の全プロセスがシームレスにつながります。
今後はスマホLiDARとGNSSの技術進歩により、精度や適用範囲はさらに向上していくでしょう。現場の技術者が直感的に使えるツールとして、LRTKのようなソリューションを活用すれば、「測量がボトルネックだった」時代は過去のものになるかもしれません。省力化と高精度化の両立を実現するスマホ測量を導入し、誰もがデータに基づいて判断できるスマートな現場づくりを進めていきましょう。これこそが、人手不足時代の建設業における新たなスタンダードとなり、現場DXと生産性向上の鍵となるはずです。
LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上
LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。
LRTKの詳細については、下記のリンクよりご覧ください。
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