道路工事において、キロ程(キロテイ)の測定・管理は工事位置の把握や品質管理の要となります。従来はキロ程を現場で把握するために人力による距離測定や測量機器を用いた位置出しが必要で、時間と手間がかかっていました。しかし近年、RTK-GNSS技術をスマートフォンと組み合わせた「LRTK」の登場により、現場で誰もがセンチメートル級の精度でキロ程を即時に取得できるようになっています。本記事では、まずキロ程とは何か、その重要性について説明し、次に従来の測 量方法の課題を整理します。そしてRTK-GNSSとスマホ連携によるリアルタイム測位の利点や、LRTKを活用した現地測量・記録の流れ、さらに点群計測・AR・クラウド連携による位置情報共有の展望について解説します。最後に、これら技術を導入することで得られるメリットについてまとめます。
キロ程とは?道路工事における位置管理の重要性
道路に設置されたキロ程標識(キロポスト)の例。標識の「175.1」は起点から175.1km地点であることを示している。道路や鉄道の分野では、起点からの距離を示すキロ程という表示が広く使われています。道路には100mまたは1kmごとに「キロポスト」と呼ばれる距離標が設置され、例えば「12.5」の表示ならその道路の起点から12.5km地点であることを示します。キロ程はしばしば「道路の住所」とも呼ばれ【道路の起点からの距離=住所】、道路上の特定地点を表す共通の基準となっています。工事現場でもキロ程管理は極めて重要です。設計図面にはインターチェンジや交差点、橋梁・トンネルなどの構造物の始点・終点がキロ程で示されており、「◯◯橋は起点から15.2km~15.8kmに位置する」などの形で記載されます。施工中も、「○○交差点はキロ程12.500に設置」「排水構造物の設置位 置はキロ程5.250」など、あらゆる出来事や構造物の位置がキロ程で管理・報告されます。完成後の出来形管理(出来高や出来形を確認する検査)でも、「設計通りのキロ程に収まっているか」「所定の区間ごとの施工が正しい位置で行われたか」を検証する必要があります。このように、キロ程は道路工事における位置基準の軸であり、関係者間で正確な位置情報を共有するためになくてはならないものです。
しかし、長大な道路工事現場でキロ程を正確に把握するのは容易ではありません。測点間隔が長い場合、現場では距離標や測量杭が見当たらないこともあり、作業員は自身のいる場所や施工箇所のキロ程を推定するのに苦労することがあります。例えば高速道路の改修現場では、路肩のキロポスト表示を頼りに現在地を把握しますが、一般道工事ではそもそもキロポストがない場合もあります。そのため、キロ程を迅速かつ正確に測定する技術は現場の効率化と品質確保に直結する重要な要素となっています。
従来のキロ程測量方法とその課題
従来、道路現場でキロ程を測るには人力や専用測量機器による距離測定が主流でした。一般的な方法としては、工事の基準となる起点や既知点から巻尺や測量用チェーンテープを用いて距離を測る、あるいは路面に車輪型の距離計(キロメーターメーター)を転がして測定する、といった手段が取られてきました。長い区間では50mや100mごとに測量杭を打ち、杭にキロ程表示を記入しておくことで、現場でおおよその位置を把握する工夫もなされています。しかしこれらの作業は多くの人手を要し、長距離になればなるほど距離測定の累積誤差も無視できません。特に曲線や高低差のある区間では、平面距離と地表の距離差、傾斜の補正などに注意が必要で、整準(水平出し)や傾斜地での補正作業にも手間がかかりました。
トータルステーション(光波測距儀)やレベルといった測量機器を使う方法もあります。例えば、測量士がトータルステーションを据えて既知点との距離と角度から測点の座標を割り出し、そこから図面上のキロ程に換算するといった作業です。しかし高精度な機器を現場に持ち込む場合、本体や三脚は大型かつ重量があり、据え付け・整準だけでも時間を要します。通常2人以上の班で、1人が機器操作、もう1人がスタッフ(プリズム)を持って測点に立つ必要があり、人員 コストの負担も大きいものでした。また、こうした専用機器は高価で精密なため、定期的な校正やメンテナンスが必要であり、測量のたびに機材の手配や準備に手間取るケースも少なくありません。
人力中心の測量では作業時間も長引きやすく、天候や現場状況によっては計画通りに進められないこともありました。例えば雨天時には巻尺での測定が困難になり、視距離が悪ければ測量機器での観測精度も落ちます。さらに、手作業で測定値をノートに書き写したり、後で表計算ソフトに入力し直したりするプロセスでは、記録ミスや転記ミスが発生するリスクもあります。以上のように、従来のキロ程測定は「人手がかかる」「手順が煩雑」「時間がかかる」「誤差やミスのリスクがある」といった課題に直面していました。
RTK-GNSSとスマホ連携によるリアルタイムのキロ程測定
こうした測量作業の課題を解決するために登場したのが、RTK-GNSS(リアルタイムキネマティックGNSS)とスマートフォンを連携した新技術です。RTK-GNSSとは、人工衛星を利用した測位システム(GPSやGLONASS、みちびき等)において、基地局からの補正情報を用いて測位精度を飛躍的に高める手法です。通常、スマホ内蔵のGPSでは誤差が数メートル生じますが、RTK方式では誤差数センチ程度まで精度を向上させることが可能です。具体的には、既知の位置に置いた基地局(固定局)と移動局(測量者側)が同時に衛星信号を受信し、その位相差から高精度な相対位置を求めます。この処理をリアルタイムで行うことで、移動局は瞬時に自分の正確な座標を得ることができます。
RTK-GNSSを活用すれば、道路工事の現場においてもセンチメートル級の位置座標が即座に取得できます。これをキロ程管理に応用すれば、起点からの距離(キロ程)を直接計算することも可能になります。例えば、道路設計時に起点の座標とルートの測線データ(線形情報)が分かっていれば、測位した現在位置の座標から起点までの距離を演算することで、リアルタイムに「ここは起点から何km何mの地点か」を表示できるのです。従来は図面上で距離を計算したり現場でチェーンを引いて確認していた作業が、GNSSで測った座標から即座に算出されるため、測定のスピードと正確さが飛躍的に向上しま す。
このRTK測位を現場で手軽に活用できるようにしたのが、スマートフォンと組み合わせるアプローチです。スマホ自体が日常的な通信端末であり、各種アプリによる直感的な操作が可能なプラットフォームです。ここに小型のRTK-GNSS受信機を連携させることで、スマホがそのまま高精度測量機になる時代が到来しました。スマホのモバイル通信を利用してインターネット経由で基準局データ(補正情報)を受信すれば、専用の大型機器を置かなくとも高精度測位が実現できます。また、日本では「みちびき(準天頂衛星)」によるセンチメータ級測位補強サービス(CLAS)も整備されており、対応受信機であれば携帯圏外でも衛星から直接補正情報を得ることも可能です。これにより山間部などインターネットが届かない現場でもRTK測位を継続できるため、どんな場所でも精度の高いキロ程測定が可能となります。
RTK-GNSSとスマホを組み合わせたシステムでは、位置情報の取得だけでなくデータ処理や共有もリアルタイムで行える点が画期的です。測位結果はスマホ画面上に数値や地図上のポイントとして表示されるため、自分 の位置がすぐに視覚化されます。例えば、ある測点で「緯度経度および平面直角座標系のX,Y」が得られれば、それに基づくキロ程(起点からの距離)もアプリ内で自動計算・表示できますし、そのデータをクラウドに送信して事務所のスタッフと即時に共有することもできます。まさに、現場の誰もが手にできる高精度測位ツールとして、スマホ+RTKの組み合わせは道路工事の測量スタイルを大きく変えつつあります。
LRTKを活用した現場での測量・記録フロー
では、実際にスマホ連携型RTK-GNSSデバイスであるLRTKを使うと、現場の作業フローはどのように変わるのでしょうか。LRTKはポケットに入る程の小型受信機で、スマートフォンに装着して使用します。準備としては、スマホに専用のアプリをインストールし、LRTK端末の電源を入れてBluetoothなどでスマホと接続するだけです。煩雑な配線は不要で、従来機器のような長い初期化時間もかかりません。アプリ上でボタンをタップすれば、瞬時にRTK測位の設定が行われ、衛星からの信号受信と補正情報の取得が開始されます。数十秒程度で「固定解(Fix解)」が得られ、測位が安定してセンチ精度になったら準備完了です。
LRTK Phoneデバイスを一脚(モノポッド)に装着した様子。先端の石突きを地面に当て、スマホ画面のボタンを押すだけで測点の座標を記録できる。LRTKは軽量なため手持ちでの測定も可能ですが、写真のように市販の一脚ポールに取り付ければ安定した測定が行えます。専用アタッチメントでスマホと受信機をポールに固定し、ポールの石突きを測りたい地点(地面や構造物上)に当ててボタン操作するだけで、その地点の正確な座標が取得できます。高さオフセット(地面から端末までの高さ)はアプリ側で事前に設定しておけば、自動で補正計算されるため、ポールを垂直に立てるだけで高さ情報まで含めた3次元座標が即座に得られます。測定したい場所ごとに移動してはボタンを押すだけなので、1人で連続して多数のポイント測量が可能です。
測位結果はリアルタイムにスマホ画面上で確認できます。例えば「現在地:東経XXX度、北緯YYY度、楕円体高ZZZm(ジオイド高△△m)、平面直角座標(X=...,Y=..., H=...)」といった情報が表示され、RTKの固定解かどうか、衛星を何個捕捉しているかといった状態も一目でわかるようになっています。各測点には自動的に通し番号や時刻が記録されるほか、ユーザーが任意に「交差点開始点」「橋脚設置位置」などのタイトルやメモを付けることもできます。紙の野帳にメモを書き込む代わりに、スマホ上でデジタル野帳として管理できるイメージです。記録したデータはアプリ内に保存されるだけでなく、ボタン一つでクラウドに即時アップロードすることもできます。アップロードされたデータは、オフィスのPCからウェブブラウザで閲覧できるため、現場と事務所間でUSBメモリや紙を受け渡す必要もなくなります。
LRTKを使ったフローでは、測量作業の段取りそのものが簡素化されます。従来は専門の測量技術者を呼んで機材を設置し…という手順が必要でしたが、LRTKなら施工管理担当者や作業員自身が必要なときにさっとポケットから取り出して測れるため、「測りたいときにすぐ測る」ことが可能です。例えば工事中に設計図とのズレが疑われる箇所が出ても、すぐその場で高精度に位置を確認できます。これにより、発注者や上位者への報告資料作成もその場で正確な数値を取得して記録でき、後から「あの位置のキロ程はいくつだったか」と図面を広げて計算し直す手間もありません。もちろん、丁張りの位置出しや出来形測定など杭打ち・測量全般にもLRTKは活用できます。設計図面上の座標値(基準点や構造物位置など)をアプリに登録しておけば、画面上で目標地点まで の方向と距離がナビゲートされ、所定の位置に来れば「ここが目的の座標です」と知らせてくれる機能もあります。これにより、キロ程○○の位置に設置すべき標識や構造物を、迷わず正確に位置決めすることができます。
点群計測・AR・クラウド連携による位置情報の共有と活用
LRTKは単に点の位置を測るだけでなく、連続測位やAR(拡張現実)、クラウド連携といった機能によって、現場の状況を立体的かつ共有しやすい形で記録・活用できます。例えば、LRTKアプリの連続測位機能を使うと、ユーザーが移動しながら1秒間に最大10点という高頻度で座標を自動取得することができます。これを利用して道路の中心線に沿って歩けば、その軌跡データをもとに道路線形の実測点群を取得できます。取得した多数のポイント群は、クラウド上の地図にプロットして3次元点群データとして確認できます。平面的に見ればそのまま平面図上の測線になり、縦方向に見れば縦断面(断面図)のように形状を把握することも可能です。例えば法面や階段状の構造物であれば、連続測位データから断面形状を描画し、設計断面との比較を現場で即座に行うといった使い方もできます。 従来なら高価な3Dレーザースキャナーやドローン空撮が必要だった3次元の出来形計測も、LRTKとスマホを持って歩くだけで完結できる場面が増えてきました。
また、スマホならではの機能として写真撮影やARによる可視化も挙げられます。LRTKアプリで写真を撮ると、その写真に撮影場所の高精度な位置座標とカメラの向き(方位)が自動的にタグ付けされます。これにより「どの地点からどの方向を撮影した写真か」が正確に記録され、クラウド上の地図で写真アイコンをクリックすれば現場の様子を把握できます。橋梁の下のように直接GPS電波が届かない場所でも、一旦入口で現在地を特定して屋内測位モードに切り替えれば、中に入ってからの写真にも正確な位置情報を添付できるため、暗い橋梁内部やトンネル内の点検結果も地図上に紐付けて共有できます。
AR機能を使えば、設計データや目標物を仮想オブジェクトとしてスマホのカメラ映像に重ねて表示することができます。例えば道路上に下水管の埋設位置を示す線や、完成予定の構造物モデルをその場に投影することで、現地での直感的な位置確認や関係者への説明が容易になります。LRTKの高精度な測位により、AR表示されるモデルの位置ずれが起きにくく、現 実空間にピタリと重なった状態で表示できます。これは、施工前の段取り検討や出来形検査時の確認において非常に有用です。従来は図上や2Dの写真で想像するしかなかった完成形を、その場で実寸大に見られることで、ミスの防止や認識の共有につながります。
クラウド連携によって、これらの現地で取得したデータは即座に関係者みんなで共有できます。LRTKクラウド上にアップロードされた測位データや写真・点群は、発注者や協力会社とURLを通じて共有することができます。特別なソフトを持っていなくても、ブラウザでリンクを開くだけで地図上にプロットされたポイントや写真を確認できるため、報告資料を作成してメール送付…といった手間が省けます。必要に応じてCSVやPDFでダウンロードし、CAD図面に読み込んだり、出来形管理の書式に転記したりすることも可能です。クラウド上でデータが一元管理されることで、「最新の測量情報はどれか」「誰がいつどこを測ったか」といった履歴も追いやすくなり、現場と事務所、発注者間での情報伝達ロスが最小化されます。
このように、LRTKを活用すれば単点のキロ程測定のみならず、現場の状況を丸ごとデジタル化して共有することができます。まさに建設業界で進めら れているDX(デジタルトランスフォーメーション)や国土交通省のi-Constructionの流れに合致した技術であり、将来的な施工管理のスタンダードになりつつあると言えるでしょう。人手不足が懸念される中でも、現場の省力化と見える化によって安全で効率的なインフラ管理が期待できます。
まとめ:LRTK導入による簡易測量ツールとしてのメリット
道路工事におけるキロ程測量の重要性と、従来方法の課題、そして最新技術LRTKによる解決策を見てきました。LRTKの導入メリットを改めて整理すると、次のようになります。
• 効率化・省力化:一人で手軽に測量ができ、従来のように測量班を編成したり重い機材を運搬・設置したりする必要がありません。空いた人員を他作業に充てることができ、全体の生産性向上につながります。
• 高精度:RTK-GNSSにより常にセンチメートル級の測位が可能なため、キロ程のずれや測定誤差を最小限に抑えられます。品質管理の観点でも安心して位置決めや出来形確認が行え、手戻りの削減や出来形検査の確実な合格に寄与します。
• 即時性・リアルタイム共有:測ったその場でデータがデジタル化され、クラウド経由でオフィスや発注者と共有可能です。報告や指示を待つタイムラグが減り、迅速な意思決定や是正措置が取れます。紙の書類を介さないためヒューマンエラーも減少します。
• 多機能性:キロ程と座標の取得だけでなく、点群スキャンによる地形・構造物の3D記録、ARによる直感的な可視化、写真やメモを組み合わせた調査記録など、1台で多目的に使える万能測量ツールです。これにより様々な計測機器を揃えるコストも抑えられます。
• 操作の簡便さ:スマートフォンの馴染みある操作性で専門家でなくても扱いやすく、現場担当者自身が能動的に測量・チェックを行えます。新人技術者でも直感的に使えるため、技能伝承の側面でもメリットがあります。
このように、LRTKを現場に取り入れることは、道路工事の測量・施工管理手法を大きく前進させるものです。起点からの距離を示すキロ程という基本情報を、これまで以上に正確かつ手軽に活用できるようになることで、現場の見える化と意思疎通が飛躍的に改善します。従来の重作業から解放され、「いつでもどこでも測れる」環境が整えば、必要な測定を後回しにすることも減り、結果的に品質と安全性の向上につながります。キロ程測量に限らず幅広い用途で活躍するLRTKは、これからのインフラ現場における簡易測量ツールの新定番と言えるでしょう。ぜひ現場で試して、その効率化効果と精度向上を実感してみてください。
LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上
LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。
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