近年、iPhoneの「スキャン」機能(LiDARセンサー)を活用して、建設現場の出来形を手軽に3D記録できるようになりました。本記事ではiPhone スキャンを使った日々の出来形進捗管理に焦点を当て、その役割とメリット、具体的な活用方法を解説します。施工管理者や測量士の方はもちろん、現場作業員から経営層、発注者まで共有できる新しい「見える化」手法として、ぜひ参考にしてください。
出来形進捗管理の役割と現場での重要性
「出来形進捗管理」とは、施工で出来上がった構造物や地形の形状・寸法が設計どおりか日々確認し、その記録を残すプロセスです。工事現場では日次で施工箇所の出来形をチェックし、品質が基準を満たしていることを確認します。発注者(施主)が定める規格基準に対し、実際の仕上がりが合致していることをデータで証明することは、品質確保や検査合格のために欠かせません。
出来形を正確に管理することで、施工ミスの早期発見と是正が可能になります。例えばコンクリート打設前の配筋や、埋設管を埋め戻す前の深さ・勾配など、後から見えなくなる部分も施工段階で測定・記録しておく必要があります。日々の進捗段階で詳細に計測しておけば、小さなズレも早期に発見でき、後日の手直しや品質トラブルを防止できます。また測定結果は検査書類の事前準備にもなり、竣工時の出来形検査をスムーズに通過する助けとなります。
さらに出来形の進捗データは、出来高(施工数量)の把握や工程管理にも役立ちます。毎日の施工量を計測して数量を集計しておけば、月末の出来高集計や出来高管理が正確かつ効率的に行えます。現場代理人にとっては、日々の出来形進捗を把握することで工事全体の進捗状況を見える化でき、適切な段取りや発注者への報告が可能になります。このように出来形進捗管理は、品質・数量・工程の三面で現場を支える重要な業務と言えます。
iPhoneスキャンを使った進捗記録のメリットと流れ
近年登場したLiDAR搭載のiPhone(例:iPhone 12 Pro以降)を使えば、誰でも簡単に現場の3次元スキャンが行えます。専用の測量アプリ等を起動してカメラをかざすだけで、周囲の状況を瞬時に点群データとして取得可能です。手軽さとスピードが大きなメリットであり、重たい測量機材を運ぶ必要も複数人がかりで作業する必要もありません。従来は測量チームで半日かかっていた出来形計測も、iPhoneスキャンなら数分程度で完了します。日常的に測定を繰り返せるため、進捗管理の頻度と精度が飛躍的に向上します。
iPhoneスキャンによって得られる点群データは、現場の形状をありのまま3D可視化したものです。平面図や写真だけでは掴みづらい凹凸や勾配も、一目で直感的に把握できます。取得した3Dモデルはその場でスマホ画面上で確認できるため、測り忘れや記録ミスもその場でチェック可能です。また点群データはデジタル形式で保存されるため、後から何度でも見返したり追加の測定(寸法確認や断面作成など)を行える点も優れています。
iPhoneで手軽に出来形点群を取得する手順
iPhoneを用いた出来形計測の基本的な流れは以下のとおりです。
• 準備: LiDARスキャナーを搭載したiPhoneやiPadを用意します。必要に応じて3Dスキャン用のアプリをインストールし、計測したい箇所の図面や仕様を確認しておきます。測量基準点などがあれば事前に把握し、必要なら基準に合わせてスマホの位置を合わせます。
• スキャン実施: iPhoneのカメラを向けて現場を歩き回り、計測対象の範囲をスキャンします。操作はビデオ撮影のように直感的で、カメラ越しに見える範囲の点群がリアルタイムに生成されていきます。法面や舗装であれば表面全体を、掘削であれば掘削した底面や法肩まで、スマホをかざしながら隅々まで撮影しましょう。LiDARセンサーが毎秒数十万点もの測距点を取得し、数分歩くだけで現況形状がほぼ漏れなく記録されます。
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