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赤外線外観検査の波長選びで失敗しない5つの基礎

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万能の測量機LRTKの説明

著者: LRTKチーム

赤外線外観検査は、可視光だけでは見えにくい表面状態、材料層の違い、発熱や放熱の差を観察するために使われます。ただし、「赤外線を使えば何でも見える」という考えで波長を選ぶと、期待した欠陥が映らない、反射や背景の影響を欠陥と誤認する、現場で再現しないといった失敗につながります。波長選びでは、装置の性能だけでなく、検査対象の材料、見たい欠陥、照明条件、撮影距離、周囲温度、判定方法まで一体で考えることが重要です。


目次

赤外線外観検査で波長が重要になる理由

基礎1:検査目的から反射・透過・熱のどれを見るか決める

基礎2:短波長側と長波長側の見え方の違いを理解する

基礎3:材料ごとの吸収・反射・透過の差を確認する

基礎4:照明、フィルタ、カメラ感度を一体で考える

基礎5:現場条件と再現性を踏まえて波長を決める

まとめ:波長選びは見たい欠陥を安定して見える条件づくり


赤外線外観検査で波長が重要になる理由

赤外線外観検査で波長選びが重要になるのは、同じ対象物であっても、波長によって見える情報が変わるためです。可視光の外観検査では、色、明暗、形状、表面の傷、汚れなどを人の目に近い感覚で扱うことが多くなります。一方、赤外線では、人の目には見えない波長域を使うため、表面の色だけでなく、材料の吸収、反射、透過、熱放射の違いが画像に表れます。そのため、波長が合っていれば欠陥が見えやすくなる場合がありますが、波長が合っていなければ、正常品と不良品の差がほとんど出ない場合もあります。


たとえば、表面の色が似ている樹脂部品でも、赤外線では材料の違いや含水状態、コーティングの有無が明暗差として出ることがあります。逆に、可視光でははっきり見えていた色の差が、赤外線では弱くなることもあります。金属面では、赤外線の波長域によって反射の出方が変わり、周囲の熱源や照明が映り込んで、欠陥のように見えることがあります。電子部品や実装基板では、部品の発熱差を見るのか、表面のはんだ状態や異物を見たいのかによって、適した考え方が変わります。


赤外線の波長域は、実務では近赤外、短波長赤外、中波長赤外、長波長赤外といった区分で扱われることがあります。近赤外や短波長赤外は、照明を当てて反射や透過の違いを見る用途に使われることが多く、材料識別や表層の状態確認に向いている場合があります。中波長赤外や長波長赤外は、対象物自身から出る熱放射を捉える熱画像の用途で使われることが多く、温度差や放熱状態の観察に向いている場合があります。ただし、実際の境界は装置や用途によって扱いが異なり、波長名だけで一律に決められるものではありません。


失敗しやすいのは、「赤外線カメラなら発熱も異物も内部欠陥もまとめて見える」と考えてしまうケースです。赤外線外観検査は、波長、照明、検査対象、欠陥の種類が合ったときに効果を発揮します。熱を見たいのに反射画像を見ていたり、表面異物を見たいのに熱画像だけで判断したりすると、目的に対して不十分な検査になります。また、検査対象の温度が安定していない、照明の角度が変わる、表面の光沢がばらつくといった条件でも結果が大きく変わります。


波長選びは、単に装置仕様の中から数値を選ぶ作業ではありません。何を正常とし、どのような異常を検出したいのかを明確にしたうえで、その差が画像上に安定して出る波長を探す作業です。したがって、赤外線外観検査を導入する前には、対象物の材質、表面処理、厚み、温度条件、搬送状態、判定基準を整理し、候補となる波長で実物確認を行うことが欠かせません。


基礎1:検査目的から反射・透過・熱のどれを見るか決める

赤外線外観検査の波長選びで最初に決めるべきことは、反射を見るのか、透過を見るのか、熱を見るのかという検査目的です。この整理をしないまま波長を選ぶと、装置を用意した後で「画像は撮れるが、不良の差が出ない」という問題が起きやすくなります。赤外線という言葉は一つでも、観察している物理的な情報は用途によって異なります。反射画像、透過画像、熱画像では、必要な波長、照明、カメラ、判定方法が変わります。


反射を使う検査では、対象物に赤外線照明を当て、その反射光の違いを撮影します。表面の汚れ、印字の有無、コーティングの違い、異物、表面粗さ、材料差などを見たい場合に検討されます。可視光では色や模様に埋もれて見えにくい差が、赤外線では明暗差として表れることがあります。ただし、反射を使う場合は、光沢面や曲面で照明の映り込みが起こりやすく、欠陥ではない明暗差が発生することがあります。そのため、波長だけでなく、照明角度や拡散のさせ方も重要です。


透過を使う検査では、対象物を通過した赤外線を撮影します。薄い樹脂、フィルム、シート、包装材、半透明材料などで、内部に近い異物や厚みの違いを見たい場合に候補になります。可視光では透けにくい材料でも、特定の赤外線波長では透過しやすい場合があります。一方で、すべての材料が赤外線で透けるわけではありません。材料によっては赤外線を強く吸収し、ほとんど透過しないこともあります。また、厚みが増えると透過が難しくなり、画像のコントラストが低下する場合もあります。


熱を見る検査では、対象物が放射する赤外線を撮影し、温度差や熱の広がりを画像化します。電子部品の発熱、接触不良による局所的な温度上昇、断熱状態、放熱不良、加熱後の冷え方の違いなどを見たい場合に使われます。この場合、照明で反射を見る検査とは考え方が異なります。対象物自身の温度差が画像の情報源になるため、測定前の通電条件、加熱条件、待機時間、周囲温度、風の影響が重要になります。発熱していない欠陥や、温度差として表れにくい欠陥は、熱画像だけでは見えないことがあります。


この三つの整理を曖昧にすると、波長選びが感覚的になります。たとえば、基板実装の外観検査で「赤外線を使いたい」と考えた場合でも、はんだ接合部の外観差を見たいのか、部品の発熱異常を見たいのか、樹脂封止部の違いを見たいのかで方向性が変わります。はんだ部の表面状態を見たいなら反射条件を検討する必要があります。通電中の異常発熱を見たいなら熱画像としての波長域や温度分解能、放射率の扱いを考える必要があります。樹脂材料の内部に近い差を見たいなら透過や吸収の違いを確認する必要があります。


実務では、最初から一つの波長に決め打ちするのではなく、まず検査目的を文章で定義することが有効です。「何を見たいのか」「正常品と不良品はどの点が違うのか」「その違いは光の反射差なのか、透過差なのか、温度差なのか」を明確にします。この整理ができると、候補波長の絞り込みがしやすくなり、試験撮影の評価軸も明確になります。赤外線外観検査では、装置選定の前に検査原理を決めることが、波長選びの第一歩です。


基礎2:短波長側と長波長側の見え方の違いを理解する

赤外線の波長選びでは、短波長側と長波長側で画像の性質が変わることを理解しておく必要があります。一般に、可視光に近い短波長側の赤外線では、照明を当てたときの反射や透過の差を比較的扱いやすい場合があります。画像の見え方も可視光の外観検査に近く、輪郭や細かな形状を確認しやすいことがあります。一方、長波長側の赤外線では、対象物の熱放射を捉える用途が多く、表面温度や放射率の影響を受けやすくなります。


短波長側の赤外線は、表面模様、印字、異物、汚れ、材料差などを見る目的で検討されることがあります。可視光では背景の色に埋もれる欠陥が、赤外線では背景と異なる反射特性を持つため、見えやすくなる場合があります。また、樹脂やフィルムの種類によっては、可視光よりも赤外線を透過しやすい波長域があり、表面の下にある情報を得られることがあります。ただし、短波長側であっても、材料が吸収する波長では透過せず、逆に画像が暗くなることがあります。


長波長側の赤外線は、熱画像として使われる場面が多くなります。対象物の温度分布を見たい場合、可視光や短波長側の反射画像とは異なる情報が得られます。たとえば、同じ外観に見える部品でも、通電時の発熱が異なれば熱画像に差が出ることがあります。接触不良、過負荷、放熱不良、乾燥状態の違いなどは、温度差として観察できる場合があります。ただし、熱画像では表面の放射率や反射の影響を受けます。金属光沢面では周囲の熱が映り込み、実際の温度分布とは異なる見え方になることがあります。


短波長側を選ぶか長波長側を選ぶかは、単に「どちらが高性能か」という問題ではありません。短波長側は、照明条件を制御しながら表面や材料差を見る用途に向いている場合があります。長波長側は、対象物の温度分布や熱応答を見る用途に向いている場合があります。どちらにも得意不得意があり、見たい欠陥の性質に合っていなければ十分な結果は得られません。


また、波長が長くなるほど、一般的には回折の影響を受けやすくなるため、微小欠陥の見え方は光学系や画素サイズの制約を受けます。細かな傷や微小異物を見たい場合、波長域だけでなく、画素サイズ、視野、レンズ倍率、撮影距離、焦点深度を含めて確認しなければなりません。熱画像で小さな部品の発熱を見たい場合も、画面上で部品が十分な画素数を占めていなければ、温度差が平均化されて見えにくくなります。波長を選んでも、光学条件が合っていなければ検査性能は上がりません。


短波長側と長波長側の違いを理解するには、良品と不良品を並べて同じ条件で撮影し、差の出方を比較することが重要です。可視光、短波長側の赤外線、熱画像を比べると、どの画像で欠陥が安定して見えるかが分かりやすくなります。見た目に鮮明な画像が、必ずしも検査に適しているとは限りません。重要なのは、良否判定に必要な差が、ばらつきの中でも安定して出るかどうかです。


基礎3:材料ごとの吸収・反射・透過の差を確認する

赤外線外観検査では、材料ごとの吸収、反射、透過の違いが結果を大きく左右します。同じ波長でも、金属、樹脂、ガラス、ゴム、セラミック、紙、液体、塗膜では見え方が変わります。さらに、同じ樹脂であっても、色、添加剤、表面処理、厚み、含水状態、結晶性、成形条件によって赤外線の反応が変わることがあります。そのため、一般論だけで波長を決めるのではなく、実際の対象物で確認することが欠かせません。


金属は赤外線を反射しやすい場合が多く、表面状態の影響を受けやすい材料です。鏡面に近い金属面では、赤外線照明や周囲の熱源が映り込み、欠陥ではない明暗差が生じることがあります。酸化、粗さ、汚れ、油膜、加工痕があると、反射や放射の状態が変わります。熱画像で金属部品を見る場合も、表面の放射率が低いと実温度と画像上の見え方が一致しにくくなります。金属面を対象にする場合は、波長だけでなく、反射を抑える撮影角度や、表面状態のばらつきを考慮する必要があります。


樹脂は、赤外線波長によって吸収や透過が大きく変わることがあります。可視光では不透明に見える樹脂でも、特定の赤外線では内部に近い構造が見える場合があります。一方、赤外線を強く吸収する樹脂では、表面付近の情報しか得られない場合があります。黒色樹脂であっても、可視光で黒く見えることと赤外線で同じように見えることは別です。顔料や添加剤によって赤外線の反射や透過が変わるため、色名だけで判断せず、実物で確認する必要があります。


ガラスや透明材料も注意が必要です。可視光で透明だからといって、すべての赤外線を透過するわけではありません。ある波長では透過しても、別の波長では吸収が大きくなることがあります。透明カバー越しに赤外線外観検査を行う場合、カバー材が対象波長を透過するかを確認しなければなりません。熱画像では、測定窓や保護カバーが赤外線を遮ると対象物の温度分布が正しく見えません。現場では安全カバーや保護板を通して撮影したい場合がありますが、その材料が波長に合っていないと検査できないことがあります。


塗装面やコーティング面では、表面の薄い層が赤外線画像に影響します。見たいのが塗膜のムラなのか、下地の状態なのか、表面異物なのかによって適した波長は変わります。塗膜が赤外線を吸収する場合、下地の情報は見えにくくなります。逆に、特定の波長で塗膜と下地の反射差が出る場合は、可視光では分かりにくいムラを検出できる可能性があります。ただし、塗装の色や厚みが変わると画像も変わるため、量産検査では許容範囲内の材料ばらつきを含めて評価する必要があります。


水分や油分も赤外線外観検査では重要です。水分を含む部分は、波長によって周囲と異なる吸収を示すことがあります。乾燥不良、液残り、濡れ、含水のばらつきを見たい場合には、吸収差が出やすい波長を探す考え方が有効です。ただし、表面の濡れと内部の含水では見え方が異なります。油膜や汚れも、材料や厚みによって反射や吸収が変わります。汚れ検査では、汚れそのものが赤外線で見えるのか、汚れによって背景の反射が変わるのかを分けて考える必要があります。


材料ごとの差を確認する際には、良品一つだけを撮影して判断しないことが大切です。良品のばらつき、不良品の程度差、境界品、表面状態の違いを含めて評価します。検査で本当に必要なのは、きれいなサンプル画像ではなく、量産や現場のばらつきの中で安定して判定できる画像です。波長候補を選ぶときは、材料特性の一般知識を出発点にしつつ、実際のサンプルで吸収、反射、透過の差を確かめることが失敗を防ぐ近道です。


基礎4:照明、フィルタ、カメラ感度を一体で考える

赤外線外観検査の波長選びでは、波長だけを単独で考えても十分ではありません。照明、フィルタ、カメラ感度、レンズの透過特性、撮影距離、露光条件を一体で考える必要があります。対象物に適した波長を選んだつもりでも、照明の出力が不足していたり、カメラがその波長に十分な感度を持っていなかったり、レンズやカバーが赤外線を通しにくかったりすると、期待した画像は得られません。


反射や透過を使う検査では、赤外線照明の波長が重要です。照明の中心波長が検査目的に合っていても、照射範囲、光量、照射角度、均一性が不十分であれば、画像のムラが大きくなります。特に広い面を検査する場合、中央と端で明るさが変わると、欠陥による明暗差なのか照明ムラなのか分かりにくくなります。搬送ラインで検査する場合は、対象物の位置ずれや高さのばらつきによって照明条件が変わるため、実際の搬送状態に近い条件で確認する必要があります。


フィルタは、不要な波長を抑え、見たい波長の情報を取り出すために使われます。赤外線外観検査では、可視光や周辺波長の影響を受けると、狙った赤外線画像にならないことがあります。たとえば、赤外線で材料差を見たいのに、可視光の色差が画像に混ざると、判定が目的からずれる可能性があります。逆に、熱画像で周囲の反射や外乱が影響する場合もあります。フィルタを使うことで画像の安定性が高まる場合がありますが、光量が減ることもあるため、露光時間や照明出力とのバランスを確認する必要があります。


カメラ感度も見落としやすいポイントです。赤外線に対応しているカメラであっても、波長によって感度は一定ではありません。ある波長では十分な信号が得られても、別の波長ではノイズが増えたり、露光時間を長くしないと明るさが足りなかったりすることがあります。高速で流れる対象物を検査する場合、露光時間を長くするとブレが発生します。静止状態では見える欠陥が、実ラインでは見えにくくなる原因の一つです。波長候補を評価するときは、必要な処理速度や撮影タイミングも含めて確認する必要があります。


レンズや保護窓の材質も重要です。可視光用のレンズや透明カバーが、赤外線波長でも十分に使えるとは限りません。赤外線を通しにくい材料を間に入れると、画像が暗くなったり、波長特性が変わったりします。また、赤外線では焦点位置が可視光とずれる場合があります。可視光でピントを合わせたつもりでも、赤外線画像ではわずかにぼやけることがあります。微小な欠陥を見たい場合、このぼやけが判定性能に影響します。


熱画像の場合は、カメラの波長域に加えて、温度分解能、測定範囲、放射率設定、反射温度、周囲温度の扱いが重要です。外観検査として温度差の有無を見るだけであっても、表面材質が混在していると、同じ温度でも違う明るさに見えることがあります。部品ごとに材質や表面処理が異なる基板では、画像の明暗差が温度差なのか放射率差なのかを慎重に判断しなければなりません。単純に明るい部分を異常と決めると、材料差を不良と誤認するおそれがあります。


画像処理との相性も考慮が必要です。人が見て違いが分かる画像でも、自動判定では照明ムラ、位置ずれ、背景ばらつきに弱い場合があります。逆に、人の目ではわずかな差でも、波長と照明が合っていれば画像処理で安定して抽出できることがあります。波長選びの段階では、最終的な判定方法も想定し、しきい値処理、差分処理、領域判定、特徴量抽出が安定する画像かどうかを確認するとよいです。


波長、照明、フィルタ、カメラ、レンズは、どれか一つを最適化すればよいものではありません。検査目的に合う波長を選び、その波長を十分に照射または受光できる構成にし、不要な外乱を抑え、必要な速度と解像度を満たすことが重要です。赤外線外観検査で失敗しないためには、装置仕様を個別に見るのではなく、撮影系全体として成立しているかを確認する視点が必要です。


基礎5:現場条件と再現性を踏まえて波長を決める

赤外線外観検査の波長選びでは、実験室で見えたことと現場で安定して見えることを分けて考える必要があります。サンプルを静止させ、照明や周囲環境を整えた状態では欠陥が見えても、実際の現場では搬送速度、振動、温度変化、外光、作業者の動き、対象物のばらつきによって画像が変わります。波長選びの最終判断では、現場条件の中で再現性があるかを確認することが重要です。


まず確認したいのは、周囲光の影響です。赤外線外観検査では、可視光より周囲光の影響を受けにくい場合もありますが、完全に無視できるわけではありません。日射、照明器具、加熱設備、反射物、開口部からの光などが画像に影響することがあります。特に反射を使う検査では、外乱光が混ざるとコントラストが変わります。熱画像では、周囲の温かい物体が光沢面に映り込む場合があります。現場で時間帯や設備稼働状態が変わる場合は、その変動を含めて評価する必要があります。


次に、対象物の温度条件を確認します。熱画像を使う場合はもちろん、反射や透過の検査でも温度によって材料状態や表面状態が変わることがあります。樹脂の温度、乾燥状態、結露、油分の状態などが画像に影響する場合があります。通電中の基板や発熱部品を検査する場合は、電源投入から撮影までの時間、負荷条件、冷却状態をそろえなければ、良品でも温度分布が変わります。波長が適切でも、温度条件がそろっていなければ判定が安定しません。


搬送や位置決めのばらつきも重要です。赤外線外観検査では、撮影角度や距離が変わると反射や見かけの明るさが変わることがあります。光沢面、曲面、凹凸面では特に影響が大きくなります。照明とカメラの位置関係が少し変わるだけで、欠陥より大きな明暗差が出る場合があります。実ラインで使う場合は、対象物の姿勢、位置ずれ、上下変動、振動を想定し、許容できる範囲で画像が安定するかを確認します。


良品ばらつきと不良ばらつきの確認も欠かせません。波長選びの試験では、分かりやすい不良サンプルだけを使うと判断を誤りやすくなります。実際には、良品にも表面色、光沢、厚み、成形ムラ、部品ロット差があります。不良品にも軽微なものから明確なものまで程度差があります。波長候補の評価では、良品のばらつきよりも不良の差が十分に大きいかを確認する必要があります。良品と不良品の画像差が重なる場合、その波長だけで安定判定するのは難しくなります。


再現性を確認する際には、同じサンプルを複数回撮影し、日を変え、作業者を変え、設置条件を少し変えても同じ傾向が出るかを見ます。一度だけ見えた画像に基づいて波長を決めると、導入後に不安定になることがあります。赤外線外観検査では、見えるかどうかだけでなく、どの条件で見え、どの条件で見えなくなるかを把握することが重要です。限界条件を知っておくことで、運用時の管理項目を決めやすくなります。


現場条件を踏まえた波長選びでは、検査手順の標準化も必要です。照明出力、カメラ設定、撮影距離、角度、対象物の温度、通電時間、判定領域、しきい値などを記録し、誰が実施しても同じ条件になるようにします。赤外線外観検査は、条件を整えれば有効な手段になりますが、条件が曖昧なままでは判断者による差が出やすくなります。波長を決めることは、同時に検査条件を決めることでもあります。


量産や定期検査で使う場合は、保守性も考慮します。照明の劣化、レンズの汚れ、保護窓の汚れ、カメラの設定変更、周囲設備の変更によって画像が変わることがあります。波長選びの段階で、定期的な基準画像の取得、良品基準の確認、照明ムラの点検、温度条件の記録を運用に組み込むと、長期的な安定性を確保しやすくなります。検査の立ち上げ時だけでなく、運用後の変化を見込んでおくことが、現場で使える赤外線外観検査につながります。


まとめ:波長選びは見たい欠陥を安定して見える条件づくり

赤外線外観検査の波長選びで失敗しないためには、最初に検査目的を明確にすることが重要です。反射を見たいのか、透過を見たいのか、熱を見たいのかによって、選ぶべき波長や撮影条件は変わります。赤外線という言葉だけで一括りにせず、見たい欠陥がどのような物理的な差として表れるのかを整理することが、適切な波長選びの出発点になります。


短波長側の赤外線は、照明を使った反射や透過の検査で役立つ場合があります。長波長側の赤外線は、温度分布や熱応答を捉える検査で使われることが多くなります。ただし、どちらが常に優れているというものではありません。対象物の材料、厚み、表面状態、欠陥の種類、必要な分解能によって適性は変わります。波長名や装置仕様だけで判断せず、良品と不良品を実際に撮影して、判定に必要な差が安定して出るかを確認することが大切です。


材料ごとの吸収、反射、透過の違いも大きなポイントです。金属、樹脂、ガラス、塗膜、水分、油分では赤外線の見え方が変わります。同じ材料名でも、色、添加剤、表面処理、厚み、ロット差によって画像が変わることがあります。赤外線外観検査では、一般的な知識を参考にしながらも、最後は実物で確認する姿勢が欠かせません。


また、波長だけでなく、照明、フィルタ、カメラ感度、レンズ、保護窓、撮影距離、露光時間を一体で考える必要があります。狙った波長があっても、撮影系全体がその波長に対応していなければ十分な画像は得られません。画像処理で自動判定する場合は、人が見て分かりやすいだけでなく、判定しきい値や特徴量が安定する画像かどうかも確認する必要があります。


最終的には、現場条件で再現するかどうかが重要です。実験室で見えた欠陥が、量産ラインや点検現場で同じように見えるとは限りません。周囲光、温度、搬送、位置ずれ、表面ばらつき、作業条件の変化を含めて確認し、標準化できる検査条件に落とし込むことが必要です。波長選びは、単に赤外線の種類を選ぶ作業ではなく、見たい欠陥を安定して見える状態に整える作業です。


赤外線外観検査を実務で活用するには、目的設定、波長候補の比較、サンプル撮影、現場条件での再現確認、判定基準の整備を順に進めることが効果的です。波長選びに迷う場合は、まず検査対象と見たい欠陥を整理し、どの情報を画像化すべきかを明確にするところから始めるとよいです。具体的な対象物や検査条件をもとに相談する場合も、対象物、欠陥サンプル、撮影環境、判定基準をそろえておくことで、現場に合った確認手順を検討しやすくなります。


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