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赤外線外観検査で樹脂部品の不良を探す7つの着眼点

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万能の測量機LRTKの説明

著者: LRTKチーム

目次

赤外線外観検査が樹脂部品の品質確認で注目される理由

着眼点一:表面だけでなく温度差として現れる異常を見る

着眼点二:成形ムラや肉厚変化を熱の伝わり方から捉える

着眼点三:黒色樹脂や低コントラスト品で可視光検査の限界を補う

着眼点四:異物混入や材料違いを熱応答の差として確認する

着眼点五:溶着部・接着部・嵌合部の不良を重点的に見る

着眼点六:検査環境とワーク条件をそろえて誤検出を減らす

着眼点七:判定基準を数値化し、量産ラインで再現できる形にする

赤外線外観検査を導入する前に整理したい実務ポイント

まとめ:樹脂部品の不良は「見え方」ではなく「熱の差」で捉える


赤外線外観検査が樹脂部品の品質確認で注目される理由

樹脂部品の外観検査では、キズ、汚れ、変色、ヒケ、ウェルド、欠け、バリ、異物、成形ムラ、溶着不良など、さまざまな不良を安定して見つける必要があります。従来は目視検査や可視光カメラによる画像検査が中心でしたが、樹脂部品では表面の色、光沢、透明度、形状、反射の影響を受けやすく、同じ不良でも撮像条件によって見えたり見えにくくなったりすることがあります。特に黒色樹脂、濃色樹脂、半透明樹脂、光沢のある成形品、微細な凹凸を持つ部品では、可視光だけで安定した判定を行うことが難しい場面があります。


そこで検討されるのが赤外線外観検査です。赤外線外観検査は、対象物表面からの赤外線放射を利用し、見かけの温度分布や熱応答の違いを画像として捉える検査方法です。人の目や一般的な可視光カメラでは見えにくい差を、温度差、熱の伝わり方、冷え方、温まり方の違いとして観察できる点が特徴です。多くの樹脂は金属に比べて熱伝導率が低く、材料、肉厚、内部状態、接合状態の違いが熱画像に現れる場合があります。そのため、表面の見た目だけでは判断しづらい不良を検出する手段として有効な選択肢になります。


ただし、赤外線外観検査は万能ではありません。赤外線カメラを設置すれば、すべての不良が自動的に見つかるわけではなく、検査対象となる不良がどのような熱的特徴を持つのかを理解することが重要です。赤外線画像は内部を直接透視するものではなく、内部状態や接合状態の違いが表面温度や時間変化に表れたときに検出候補として扱えます。表面温度の差として現れる不良もあれば、加熱や冷却を加えたときに初めて差が出る不良もあります。また、樹脂の種類、表面状態、放射率、厚み、形状、搬送速度、周囲温度、照明や熱源の影響によって、検査画像の見え方は変化します。


実務で赤外線外観検査を活用するには、「赤外線で何が見えるのか」だけでなく、「どの不良を、どのタイミングで、どの条件で見れば差が出るのか」を整理する必要があります。本記事では、「赤外線 外観検査」で情報を探している実務担当者に向けて、樹脂部品の不良を探すための七つの着眼点を解説します。新規導入を検討している方だけでなく、可視光検査で検出が安定しない不良に悩んでいる方、目視検査のばらつきを減らしたい方、量産ラインでの自動検査を改善したい方にも役立つ内容です。


着眼点一:表面だけでなく温度差として現れる異常を見る

赤外線外観検査で最初に意識したいのは、見た目の色や模様ではなく、温度差として異常を探すという考え方です。可視光検査では、明るさ、色、影、反射、輪郭の違いを画像処理します。一方、赤外線検査では、対象物の表面から出る赤外線をもとに、表面の見かけ温度や温度分布を可視化します。そのため、肉眼では同じ色に見える部分でも、熱の持ち方や放射の状態が異なれば、別の領域として見える可能性があります。


樹脂部品では、成形直後の冷却状態、保管中の温度変化、外部から加えた熱に対する反応などが不良検出の手がかりになります。たとえば、局所的に材料の密度が違う部分、内部に空隙がある部分、厚みが周囲と異なる部分、接合状態が不十分な部分では、熱の伝わり方が変わることがあります。その結果、周囲より温度が高く見える、低く見える、温度変化が遅れる、温度差が一定時間だけ現れるといった現象が起こります。


このとき重要なのは、赤外線画像に現れる差が必ずしも不良そのものの形状をそのまま表すわけではないという点です。熱は周囲へ拡散するため、実際の欠陥よりも広がって見えることがあります。反対に、欠陥が深い位置にある場合や熱的な差が小さい場合には、画像上の差が弱く、判定が難しくなることもあります。したがって、赤外線外観検査では、良品と不良品を同じ条件で比較し、どのような温度差が不良に対応しているのかを確認する作業が欠かせません。


特に樹脂部品では、表面の小さなキズや汚れだけでなく、外観上は目立たない内部要因が製品機能に影響することがあります。外から見ると問題がないように見える部品でも、内部に空洞がある、溶着が不十分である、成形条件のばらつきによって強度が不足している、といったケースがあります。赤外線外観検査は、こうした「見た目だけでは判断しにくい異常」に対して、熱的な差を利用して検出の可能性を広げる方法です。


一方で、温度差が見えたからといって、すぐに不良と決めつけるのは危険です。搬送中に片側だけ外気に触れていた、作業者が触れた、治具との接触で熱が逃げた、周囲の設備から熱を受けた、といった外乱でも温度差は生じます。赤外線画像は温度変化に敏感であるため、不良由来の温度差と環境由来の温度差を分けて考える必要があります。検査工程では、対象物をどの位置で撮像するか、成形後または加熱後から何秒後に撮像するか、搬送姿勢や治具接触をどう管理するかが重要です。


赤外線外観検査を成功させる第一歩は、検出したい不良を「見た目の異常」ではなく「熱的な異常」として定義し直すことです。表面の模様を探すのではなく、良品と異なる温度分布、熱応答、冷却速度を探すという視点に切り替えることで、赤外線検査の有効性を判断しやすくなります。


着眼点二:成形ムラや肉厚変化を熱の伝わり方から捉える

樹脂部品の不良でよく課題になるのが、成形ムラや肉厚変化です。射出成形や押出成形などの工程では、樹脂の流れ、金型温度、冷却条件、保圧条件、材料の乾燥状態などによって、同じ形状の部品でも内部状態に差が出ることがあります。外観上は大きな違いがない場合でも、肉厚のばらつき、ヒケ、内部空洞、樹脂の充填不足、局所的な密度差が品質に影響することがあります。


赤外線外観検査では、こうした成形状態の違いを熱の伝わり方として捉えられる場合があります。肉厚が厚い部分は温まりにくく、冷めにくい傾向があります。反対に、薄い部分は温度変化が早く現れやすくなります。また、内部に空洞があると熱が伝わりにくくなり、周囲と異なる温度パターンが発生することがあります。成形直後の部品であれば、金型から取り出された後の冷却過程を見ることで、肉厚や内部状態の違いが比較的わかりやすくなることがあります。


たとえば、同じ面の中に局所的な温度残りがある場合、その部分だけ厚みが大きい、冷却が遅い、内部に熱がこもっている、といった可能性があります。逆に、周囲より急激に冷えて見える部分では、薄肉、材料不足、接触冷却の影響などが考えられます。もちろん、赤外線画像だけで原因を断定することはできませんが、不良候補の位置を絞り込む手段として有効です。


成形ムラの検査では、撮像タイミングが非常に重要です。成形直後は温度差が大きく見える一方で、時間が経過すると温度が均一化し、不良由来の差が消えてしまうことがあります。反対に、取り出し直後は表面温度が不安定すぎて判定が難しく、一定時間経過後のほうが不良が見えやすいケースもあります。そのため、良品と不良品を用いて、取り出し直後、数秒後、十数秒後、さらに冷却後といった複数のタイミングで比較し、最も差が安定して現れる時間帯を探すことが大切です。


また、外部から加熱して検査する場合には、熱の与え方も検出性能に大きく影響します。部品全体を均一に加熱するのか、一方向から短時間だけ加熱するのか、加熱後の冷却過程を見るのかによって、見える不良が変わります。樹脂部品は熱に弱い場合もあるため、変形や品質劣化を起こさない範囲で条件を設定しなければなりません。検査そのものが製品に影響を与えないことも、量産ラインでは重要な前提です。


成形ムラや肉厚変化の検査では、単に温度が高いか低いかを見るだけでは不十分です。温度分布の形、温度差の広がり方、時間変化、良品平均との差を総合的に見る必要があります。量産現場では、良品のばらつき範囲を把握し、その範囲を超えるパターンを異常候補として扱う設計が求められます。赤外線外観検査は、条件が合えば成形条件の変動を早期に検知する工程監視にも活用できるため、不良品の流出防止だけでなく、成形工程の安定化にも役立ちます。


着眼点三:黒色樹脂や低コントラスト品で可視光検査の限界を補う

樹脂部品の外観検査で特に難しい対象の一つが、黒色樹脂や濃色樹脂です。黒色の部品は可視光画像でコントラストが出にくく、キズ、汚れ、ヒケ、凹凸、成形ムラが背景や表面模様に埋もれてしまうことがあります。また、光沢のある黒色樹脂では、照明やカメラの角度によって強い反射が発生し、不良ではない部分が白く飛んだり、逆に不良部分が反射に隠れたりします。目視検査でも作業者の疲労や照明条件によって判断がばらつきやすい領域です。


赤外線外観検査は、可視光の明暗ではなく赤外線放射や温度分布を捉えるため、色の違いに左右されにくい検査が可能になる場合があります。黒色樹脂であっても、熱的な差があれば赤外線画像上ではコントラストとして現れます。表面色が同じで可視光画像では判別しにくい部品でも、肉厚差、内部空洞、接合不良、異材混入などが熱応答の違いとして見えることがあります。


ただし、黒色樹脂なら必ず赤外線検査に向いているという単純な話ではありません。赤外線検査で重要なのは、対象物の表面がどの程度安定して赤外線を放射するか、周囲の熱反射をどの程度受けるか、検出したい不良が熱的な差を生むかどうかです。樹脂の種類や表面処理によって赤外線画像の見え方は異なります。表面が滑らかで光沢が強い場合には、可視光ほど目立たなくても、周囲の熱源や反射の影響を受けることがあります。検査装置の周辺に高温設備、人体、照明、ヒーターなどがある場合、それらの熱が画像に映り込むこともあります。


低コントラスト品の検査では、可視光検査と赤外線検査を対立するものとして考えるのではなく、役割分担することが現実的です。可視光検査は形状、印字、色ムラ、表面キズなどに強く、赤外線検査は温度差や熱応答に強みがあります。たとえば、表面キズは可視光で検査し、内部の空洞や溶着状態は赤外線で検査するというように、不良項目ごとに最適な検査方法を選ぶことが重要です。


黒色樹脂や濃色樹脂では、照明条件をいくら調整しても安定しない不良があります。角度を変えると見えるが、量産ラインの速度や設置スペースでは再現できない、というケースも少なくありません。そのような場合には、赤外線外観検査で色や反射に依存しにくい別の情報を取得できるかを確認する価値があります。特に、同じ色の部品でも不良品だけが異なる冷え方をする、加熱後に温度ムラが残る、特定部位だけ温度変化が遅れるといった現象があれば、赤外線検査の適用可能性があります。


実務では、可視光で見えない不良を赤外線で無理に見ようとするのではなく、「可視光では何が不安定なのか」「赤外線では何が安定して差として出るのか」を切り分けることが大切です。検査の目的が表面の微細キズなのか、内部状態なのか、接合状態なのかによって、赤外線検査の有効性は変わります。黒色樹脂や低コントラスト品で検査に悩んでいる場合は、良品、不良品、限度見本をそろえ、可視光画像と赤外線画像を比較することで、導入判断がしやすくなります。


着眼点四:異物混入や材料違いを熱応答の差として確認する

樹脂部品の品質問題では、異物混入や材料違いも見逃せない不良です。異物には、金属片、樹脂片、繊維、粉じん、炭化物、別材料の混入など、さまざまな種類があります。表面に露出している異物であれば可視光検査で検出できる場合がありますが、色が似ている異物、内部に埋まった異物、表面模様に紛れる異物は検出が難しくなります。また、材料違いは外観がほとんど同じでも、耐熱性、強度、絶縁性、寸法安定性などに影響するため、重要な品質課題になります。


赤外線外観検査では、異物や材料違いを熱応答の差として確認できる可能性があります。異物が母材と異なる熱伝導率や比熱を持っている場合、加熱や冷却に対する反応が周囲と変わることがあります。たとえば、周囲の樹脂より熱を早く伝える異物は、加熱時や冷却時に温度パターンとして現れることがあります。逆に、熱を伝えにくい異物や空隙に近い状態の混入物は、周囲と異なる温度残りや温度低下として見える場合があります。


材料違いについても、見た目が似ていても熱的性質が異なれば、赤外線画像に差が出ることがあります。同じ形状の部品に別の樹脂材料が混入した場合、温まり方や冷め方の違いとして識別できる可能性があります。材料ロットの違い、再生材の混入比率、添加剤のばらつき、充填材の分散状態などが熱応答に影響する場合もあります。ただし、これらの差は必ずしも大きく現れるとは限らず、検査条件を慎重に設計する必要があります。


異物混入を赤外線で見る場合、どの深さにある異物を対象にするかが重要です。表面に近い異物は比較的検出しやすい場合がありますが、深い位置にある異物は表面温度に現れにくくなります。また、異物の大きさが小さいほど、熱画像の解像度やノイズの影響を受けやすくなります。検査可能な最小サイズは、カメラの画素数、レンズ、撮像距離、温度差、搬送速度、画像処理条件によって変わります。そのため、対象とする異物サイズや許容基準を明確にし、実サンプルで確認することが不可欠です。


さらに、赤外線検査では異物と周囲の温度差を作り出す工夫が必要になる場合があります。自然状態で温度差が出ない異物でも、短時間の加熱、冷却、または成形直後の熱を利用することで差が出ることがあります。加熱方法としては、対象部品全体を均一に温める方法、特定方向から熱を与える方法、搬送中に一定時間だけ熱を与える方法などが考えられます。どの方法が適するかは、部品形状、材料、検査速度、製品への熱影響によって決まります。


異物混入や材料違いの検査では、赤外線画像に現れた差をどのように分類するかも課題です。温度差があるからといって、そのすべてが異物とは限りません。表面の汚れ、油分、搬送治具との接触、成形時の冷却ムラなども似たパターンを作ることがあります。実務では、不良サンプルの種類をできるだけ多く集め、異物由来のパターンと他の要因によるパターンを比較することが重要です。必要に応じて、可視光画像、寸法検査、重量検査、工程データと組み合わせることで、誤判定を減らしやすくなります。


着眼点五:溶着部・接着部・嵌合部の不良を重点的に見る

樹脂部品では、単体成形品だけでなく、複数部品を組み合わせた構造も多くあります。溶着、接着、圧入、嵌合、かしめ、封止などの工程では、接合部の品質が製品性能に直結します。外観上はきれいに見えても、内部で接合不足がある、密着していない、隙間がある、接着剤が不足している、溶着幅が不均一である、といった不良が発生することがあります。これらは目視や可視光カメラだけでは判断が難しい代表的な領域です。


赤外線外観検査は、接合部の熱の流れを見ることで、溶着不良や接着不良の検出に役立つ場合があります。正常に接合されている部分では、熱が部材間を比較的安定して伝わります。一方、接合が不十分な部分、隙間がある部分、接着剤が欠けている部分では、熱の伝わり方が変わります。加熱後の温度分布や冷却過程を見ると、接合不良箇所が周囲と異なる温度パターンとして現れることがあります。


たとえば、溶着部では、溶着エネルギーの不足、加圧不足、位置ずれ、異物の噛み込み、材料状態のばらつきによって、接合強度が不足することがあります。外観上は溶着痕が確認できても、内部まで十分に接合されていない場合があります。赤外線検査では、溶着直後の残熱分布や、外部加熱後の熱伝導の違いを観察することで、弱い接合部を検出できる可能性があります。


接着部では、接着剤の塗布量不足、塗布位置ずれ、気泡、硬化不良、未塗布、異物混入などが問題になります。接着剤がある部分とない部分では熱容量や熱伝導が異なるため、赤外線画像に差が出る場合があります。特に、外観から接着剤の状態が見えない構造では、赤外線による非破壊検査を検討する価値があります。ただし、接着剤の種類や厚み、母材との熱的な差が小さい場合には検出が難しいこともあります。


嵌合部や圧入部では、部品同士の密着状態がポイントになります。隙間があると熱の伝わり方が変わり、正常な嵌合部とは異なる温度分布が出ることがあります。また、組み付け時に片側だけ浮いている、奥まで入っていない、変形している、といった状態も、条件が合えば熱画像に現れる可能性があります。可視光では見える範囲が限られる構造でも、赤外線で熱の流れを見ることで、不良候補を抽出できる場合があります。


接合部の検査では、検査する方向も重要です。赤外線カメラから見える表面に熱的な差が現れなければ、内部不良は検出できません。接合面が深い位置にある場合や、表面から遠い場合には、十分な温度差が出にくくなります。したがって、部品のどちら側から撮像するか、どの方向から加熱するか、接合部に対して熱がどのように流れる条件を作るかを検討する必要があります。


溶着部、接着部、嵌合部は、製品の安全性や耐久性に関わる重要部位であることが多いため、赤外線外観検査を検討する価値が高い領域です。特に、破壊検査や抜き取り検査だけでは全数保証が難しい場合、赤外線検査によって量産ライン上で非破壊の全数検査に近づけられる可能性があります。検査対象を部品全体に広げるのではなく、まずは重要な接合部に絞って検証することで、導入効果を確認しやすくなります。


着眼点六:検査環境とワーク条件をそろえて誤検出を減らす

赤外線外観検査で安定した結果を得るには、検査環境とワーク条件の管理が欠かせません。赤外線画像は温度差に敏感であるため、不良ではない要因でも差が出ます。周囲温度、空調の風、設備からの放熱、照明の熱、作業者の接触、搬送治具の温度、ワークの姿勢、成形後の経過時間などが、検査結果に影響します。これらを管理しないまま検査を始めると、不良検出よりも誤検出への対応に追われることになります。


まず重要なのは、撮像するタイミングを一定にすることです。樹脂部品は成形後、組立後、加熱後、搬送中など、時間の経過とともに温度が変化します。あるワークは成形後五秒で撮像し、別のワークは十五秒で撮像するという状態では、良否に関係なく温度差が出てしまいます。量産ラインでは、工程のどの位置で撮像するかを固定し、前工程からの時間ばらつきを小さくすることが重要です。搬送速度が変動する場合には、その影響も考慮する必要があります。


次に、ワークの姿勢と位置を安定させることが大切です。赤外線カメラで得られる画像は、撮像角度や距離によって見え方が変わります。曲面部品や立体形状の部品では、角度によって赤外線の見かけ上の強度が変わり、同じ温度でも画像上の値が変動することがあります。また、位置ずれが大きいと、画像処理で同じ領域を比較できなくなります。治具や位置決め機構を用いて、毎回同じ姿勢で撮像できるようにすることが、誤判定を減らす基本です。


周囲からの熱反射にも注意が必要です。赤外線検査では、対象物自身の放射だけでなく、周囲の熱源が反射して映ることがあります。特に光沢のある樹脂表面では、近くにある高温部、作業者、加熱装置、モーター、照明などの影響を受ける場合があります。検査エリアの周囲を熱的に安定させる、不要な熱源を近づけない、遮蔽を設ける、カメラや加熱装置の配置を見直すといった対策が有効です。


また、ワークに触れる治具や搬送部品の温度も見落とせません。部品が治具に接触すると、その部分だけ熱が奪われたり、逆に熱を受けたりします。接触跡が赤外線画像に現れ、不良のように見えることがあります。治具の材質、接触面積、接触時間、温度管理を検討し、不良検出に影響しない構造にすることが重要です。必要に応じて、撮像前に接触していた領域を判定対象から除外することもあります。


空調の風も赤外線検査では大きな外乱になります。樹脂部品の表面に風が当たると、局所的に冷却され、温度ムラが発生します。特に薄肉部品や小型部品では、わずかな風でも温度分布が変わります。検査エリアに直接風が当たらないようにする、空調の吹き出し方向を変更する、カバーを設けるなど、環境の安定化が必要です。


赤外線外観検査では、画像処理の高度化だけで誤検出を解決しようとするのではなく、まず撮像条件を安定させることが重要です。良品なのに異常に見える原因を一つずつ取り除き、不良由来の差が最も明確に現れる条件を作ることで、判定精度は高めやすくなります。検査装置の性能だけでなく、検査環境の設計こそが、赤外線外観検査の成否を左右します。


着眼点七:判定基準を数値化し、量産ラインで再現できる形にする

赤外線外観検査を量産ラインで使うには、温度画像を見て「何となく違う」と判断するだけでは不十分です。検査担当者が見れば差がわかる状態と、自動判定で安定して良否を分けられる状態は別物です。導入時には、どの温度差を不良候補とするのか、どの範囲を検査領域とするのか、どの程度のばらつきまで良品と認めるのかを数値化する必要があります。


判定基準を作る第一歩は、良品のばらつきを把握することです。良品であっても、材料ロット、成形条件、周囲温度、測定タイミングによって温度分布は変わります。良品サンプルを少数だけ測定して基準を決めると、量産時に良品を過剰に不良判定してしまうことがあります。できるだけ実際の量産条件に近い状態で複数の良品を測定し、通常の温度範囲、温度差、パターンのばらつきを確認することが重要です。


次に、不良品や限度見本を用いて、良品との差を確認します。ここで大切なのは、明らかな重度不良だけでなく、実際に検出したい境界付近のサンプルを含めることです。重度不良だけで検証すると、検出できるように見えても、量産で問題になる軽微な不良を見逃す可能性があります。反対に、基準を厳しくしすぎると、良品まで不良扱いする過検出が増えます。量産で求められる品質レベルに合わせて、見逃しリスクと過検出リスクのバランスを取る必要があります。


赤外線画像の判定では、単純な最高温度や最低温度だけでなく、領域内の平均温度、周囲との差分、温度勾配、温度ムラの面積、形状、時間変化などを使うことがあります。たとえば、接合部の検査では、正常部と異常部の温度差だけでなく、温度差がどれだけ連続しているか、どの位置に出ているかが重要になる場合があります。成形ムラでは、特定領域の温度残りや冷却速度が判断材料になります。異物検査では、局所的な温度スポットの大きさや周囲とのコントラストが有効な指標になることがあります。


量産ラインでは、判定基準を固定するだけでなく、工程変動に対応できる仕組みも必要です。周囲温度が季節で変わる、成形機の立ち上げ時と安定時で温度が変わる、材料ロットで熱応答が変わるといった状況では、固定しきい値だけでは安定しない場合があります。そのような場合には、同一画像内の基準領域との差分を見る、ワークごとに相対的な温度差を評価する、工程状態ごとに判定条件を切り替えるなどの方法が考えられます。


また、判定基準は現場で説明できる形にしておくことが重要です。赤外線画像は見慣れない担当者にとって直感的に理解しにくい場合があります。どの部分を見ているのか、なぜその温度差を不良候補とするのか、どの程度の差なら良品なのかを明確にしておくことで、品質部門、生産技術部門、製造部門の間で認識を合わせやすくなります。導入後のトラブル対応でも、判定根拠が明確であれば原因究明がスムーズになります。


さらに、検査データを保存して工程改善に活用する視点も重要です。赤外線画像や判定値を蓄積すれば、不良発生前の傾向、成形条件の変化、設備状態の変動を把握できる可能性があります。単に良否を分けるだけでなく、温度分布の変化を工程監視に使うことで、不良の予兆検知や条件最適化につながります。赤外線外観検査を単独の検査装置としてではなく、品質データを得る工程センサーとして活用する発想が、量産現場では大きな価値を生みます。


赤外線外観検査を導入する前に整理したい実務ポイント

赤外線外観検査を樹脂部品に導入する前には、まず検査したい不良を明確にすることが重要です。キズを見たいのか、ヒケを見たいのか、内部空洞を見たいのか、溶着不良を見たいのか、異物を見たいのかによって、適した検査条件は変わります。赤外線で見える不良は、熱的な差として現れる不良です。可視光で見えないものをすべて赤外線で見られるわけではないため、対象不良の発生メカニズムと熱的特徴を結びつけて考える必要があります。


次に、検査タイミングを検討します。成形直後の残熱を利用するのか、組立後に外部から加熱するのか、冷却過程を見るのか、常温状態で撮像するのかによって、設備構成や検出できる不良が変わります。成形直後の熱を利用できる場合は、追加の加熱装置を抑えやすい反面、撮像タイミングのばらつき管理が重要になります。外部加熱を行う場合は、温度差を作りやすい反面、製品への熱影響やラインタクトへの影響を考慮しなければなりません。


検査対象の形状も大きな要素です。平面に近い部品は比較的撮像しやすい一方、曲面、深い凹凸、リブ、穴、段差、複雑な三次元形状を持つ部品では、見える面と見えない面が生じます。赤外線カメラの設置位置、撮像角度、必要な台数、ワークの回転や搬送姿勢を検討する必要があります。無理に一方向から全体を検査しようとすると、重要部位の温度差が見えにくくなることがあります。検査したい部位を優先し、必要に応じて複数方向からの撮像を考えることが現実的です。


また、必要な分解能を確認することも欠かせません。検出したい不良が小さい場合、画像上で十分な画素数を確保する必要があります。小さな異物や細い溶着不良を検出したいのに、撮像範囲を広く取りすぎると、不良が数画素にしか写らず、安定判定が難しくなります。逆に、細部を見ようとして撮像範囲を狭くしすぎると、ライン上での位置ずれや搬送ばらつきに弱くなります。画像の空間分解能だけでなく、温度差を識別できる感度、レンズ、撮像距離、ライン速度とのバランスを取ることが大切です。


導入検証では、良品だけでなく、実際の不良品を用意することが重要です。人工的に作った不良サンプルは評価の入り口として役立ちますが、実際の量産不良とは熱的な現れ方が異なる場合があります。可能であれば、過去に発生した不良品、工程条件を変えて作った限度見本、良否判定が難しい境界サンプルをそろえ、実ラインに近い条件でテストすることが望ましいです。検査対象が多品種の場合は、品種ごとの形状や材料差も確認する必要があります。


運用面では、誰が条件管理を行い、誰が判定結果を確認し、異常時にどのような対応をするのかも決めておく必要があります。赤外線外観検査は、導入して終わりではありません。量産条件の変更、材料変更、金型メンテナンス、設備移設、季節変動などに応じて、判定条件の見直しが必要になることがあります。検査条件を変更したときの承認手順、検査データの保存期間、異常画像の確認方法、保全時の点検項目を整理しておくことで、導入後の混乱を防げます。


さらに、赤外線外観検査を既存の検査や工程管理とどう組み合わせるかも重要です。可視光検査、寸法測定、重量測定、電気検査、リーク検査、破壊試験、抜き取り検査など、既存の品質確認手段にはそれぞれ役割があります。赤外線検査だけですべてを置き換えるのではなく、どの不良項目を赤外線で補完するのかを明確にすると、導入効果を説明しやすくなります。特に、目視検査の負担低減、検査ばらつきの抑制、全数検査化、不良流出防止、工程異常の早期発見といった目的に整理すると、社内での合意形成が進めやすくなります。


まとめ:樹脂部品の不良は「見え方」ではなく「熱の差」で捉える

赤外線外観検査は、樹脂部品の不良を従来とは異なる視点で捉える検査方法です。可視光検査が色、明るさ、反射、輪郭を主な手がかりにするのに対し、赤外線検査は温度分布や熱応答の違いを手がかりにします。そのため、黒色樹脂や低コントラスト品、内部状態が関わる不良、接合部の不良、異物混入、成形ムラなど、目視や可視光だけでは安定しにくい検査に対して有効な選択肢になります。


本記事で紹介した七つの着眼点は、赤外線外観検査を実務で検討する際の基本です。表面の見た目ではなく温度差を見ること、成形ムラや肉厚変化を熱の伝わり方から捉えること、黒色樹脂や低コントラスト品で可視光の限界を補うこと、異物や材料違いを熱応答の差として確認すること、溶着部や接着部など重要部位を重点的に見ること、検査環境とワーク条件をそろえること、そして判定基準を数値化して量産ラインで再現できる形にすることが重要です。


赤外線外観検査で成果を出すには、装置の性能だけでなく、不良の発生メカニズム、熱的な見え方、撮像条件、現場環境、判定基準を総合的に設計する必要があります。特に樹脂部品は、材料、色、形状、厚み、表面状態によって熱画像の出方が大きく変わります。最初からすべての不良を検出しようとするのではなく、検出したい不良を絞り、良品と不良品の差が最も安定して現れる条件を探すことが現実的です。


可視光検査で見えにくい不良に悩んでいる場合や、目視検査のばらつきを減らしたい場合、赤外線外観検査は検討する価値があります。特に、外観上は同じに見えるが機能や強度に差が出る不良、接合状態や内部状態に起因する不良、黒色樹脂で検査が安定しない不良では、熱の差を見ることで新しい解決策が見つかる可能性があります。


樹脂部品の品質課題は、現物を見なければ判断できないことも多くあります。検査したい不良、対象部品の材質や形状、ライン条件、現在困っている検査項目を整理したうえで、赤外線外観検査の適用可能性を具体的に確認することが大切です。自社の樹脂部品で赤外線外観検査が有効かを相談したい場合は、まずは対象ワーク、不良内容、現行の検査方法、ライン条件を整理し、問い合わせフォームや技術相談窓口から相談する流れが自然です。


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