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赤外線検査を省エネ診断に活かす6つのポイント

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万能の測量機LRTKの説明

著者: LRTKチーム

赤外線検査は、建物や設備の表面温度の分布を可視化し、目視だけでは分かりにくい熱の偏りを把握するための有効な手段です。省エネ診断では、空調負荷の増大、断熱性能のばらつき、設備の発熱、外気の侵入、配管やダクトまわりの熱損失など、エネルギーの無駄につながる要因を総合的に確認する必要があります。赤外線検査を適切に組み込むことで、現場のどこを重点的に調べるべきかを絞り込みやすくなり、改善提案にも説得力を持たせやすくなります。


目次

赤外線検査を省エネ診断に使う目的を明確にする

外壁や開口部の熱の偏りを読み取る

断熱欠損や気密不良の可能性を見極める

空調設備や配管まわりの熱損失を確認する

撮影条件と測定結果の限界を整理する

改善提案につながる記録として活用する

まとめ


赤外線検査を省エネ診断に使う目的を明確にする

赤外線検査を省エネ診断に活かすためには、まず何を確認するために撮影するのかを明確にしておくことが重要です。赤外線画像は、建物や設備の表面温度の違いを色や濃淡で表示するため、熱の流れや温度ムラを直感的に把握しやすい特徴があります。しかし、赤外線画像に写った温度差が、そのまま省エネ上の問題を意味するとは限りません。日射、風、室内外の温度差、材料の違い、表面の反射、湿り気、設備の運転状況など、多くの条件が画像に影響します。そのため、省エネ診断で赤外線検査を行う場合は、単に温度が高い場所や低い場所を探すのではなく、エネルギーの損失や負荷増大につながる可能性がある箇所を仮説として確認する姿勢が求められます。


たとえば、建物の外皮性能を確認したい場合は、外壁、屋根、窓、出入口、天井裏に接する部分など、室内外の熱の出入りが起こりやすい箇所を中心に撮影します。空調効率を確認したい場合は、吹出口、吸込口、ダクト、配管、機械室、室外機周辺などを重点的に確認します。電気設備や生産設備の発熱が空調負荷に影響している可能性を見る場合は、分電盤、制御盤、照明、モーター、ポンプ、熱源機器の周囲などを確認対象にします。このように、診断の目的によって見るべき場所は変わります。


省エネ診断では、エネルギー使用量のデータ、設備仕様、運転時間、室内環境、利用状況、建物の築年数、改修履歴などを確認したうえで、赤外線検査を補助的に組み合わせると効果的です。赤外線画像だけで原因を断定するのではなく、事前情報と現地観察をつなぐための材料として扱うことで、調査の精度を高めやすくなります。たとえば、ある部屋だけ冷暖房の効きが悪いという聞き取り結果があれば、その部屋の外壁、窓まわり、天井、床、空調吹出口などを撮影し、他の部屋との違いを比較できます。電気使用量が大きい時間帯が分かっていれば、その時間帯に稼働している設備の発熱状況を確認することで、負荷の偏りを把握しやすくなります。


また、赤外線検査の目的を明確にしておくことは、報告書や改善提案の分かりやすさにもつながります。画像を多く並べるだけでは、読者はどこに注目すべきか判断しにくくなります。省エネ診断では、この温度差は断熱性能の確認に関係する可能性がある、この発熱は設備運転の見直しにつながる可能性がある、この部分は追加確認が必要であるといった形で、撮影結果と診断目的を結び付けることが大切です。目的が整理されていれば、撮影範囲の漏れも減り、現場での調査時間を有効に使えます。


赤外線検査は、建物全体を一度に評価する万能な方法ではありません。むしろ、温度差という分かりやすい手掛かりを使って、問題が起きている可能性のある場所を見つけるための方法です。省エネ診断に活用する際は、建物のどこで熱が逃げている可能性があるのか、どの設備が余分な熱を出している可能性があるのか、どの部分で空調効率が落ちている可能性があるのかを確認するための入口として位置づけると、実務で使いやすくなります。


外壁や開口部の熱の偏りを読み取る

省エネ診断で赤外線検査を行う際、外壁や開口部は重要な確認対象です。建物の外皮は、室内と外気を隔てる部分であり、冷暖房負荷に大きく関係します。外壁、屋根、窓、サッシ、出入口、シャッター、庇まわり、柱や梁の取り合い部などでは、熱の出入りが局所的に起こりやすく、赤外線画像にも温度差として表れることがあります。特に冬季の暖房時や夏季の冷房時など、室内外の温度差が一定程度ある条件では、外皮の熱的な弱点を比較しやすくなります。


外壁を確認する場合は、同じ面の中で温度の高い部分と低い部分がどのように分布しているかを見ることが大切です。外壁材の種類や厚み、下地の位置、断熱材の有無、内部空間の使われ方によって表面温度は変わります。たとえば、柱や梁などの構造体が熱を伝えやすい場合、周囲と異なる温度帯として見えることがあります。これは熱橋と呼ばれる現象に関係する可能性があり、冷暖房エネルギーの損失や結露リスクの検討につながります。ただし、外壁表面の温度差は日射の影響を強く受けるため、撮影時間や方位を考慮しないまま判断すると誤解が生じます。日中に日射を受けた外壁は、断熱性能とは別の理由で表面温度が上がることがあります。そのため、外壁面ごとの比較を行う場合は、日射の履歴、陰影、風の当たり方、外壁材の色や仕上げの違いを踏まえて読む必要があります。


開口部は、建物の中でも熱の出入りが大きくなりやすい箇所です。窓ガラス、サッシ枠、建具の隙間、出入口の下端、換気口まわりなどは、室内外の温度差が赤外線画像に反映されやすい部分です。冬季に室内側から撮影すると、断熱性が低い窓まわりや冷気が侵入している部分が周囲より低温に見えることがあります。夏季に外側から撮影する場合は、冷房された室内からの影響や日射の影響を分けて考える必要があります。窓まわりの温度ムラは、窓そのものの性能だけでなく、カーテン、ブラインド、家具の配置、空調気流、室内の利用状況にも左右されます。そのため、赤外線画像で気になる箇所が見つかった場合は、実際の隙間風、結露跡、汚れ、建具の開閉状態なども合わせて確認します。


省エネ診断では、外壁や開口部を単体で見るだけでなく、室内環境との関係を読み取ることも重要です。同じ空調設定でも、窓際だけ寒い、壁際だけ暑い、特定の席だけ不快感があるといった状況は、外皮の熱性能や気流の問題が関係している可能性があります。赤外線検査によって温度分布を可視化すると、利用者の体感と建物の状態を結び付けやすくなります。これは、単にエネルギー使用量を削減するだけでなく、快適性を保ちながら省エネを進めるうえでも役立ちます。


外壁や開口部の調査で注意したいのは、赤外線画像が示すのはあくまで表面温度であるという点です。壁の内部にどのような断熱材が入っているか、隙間の位置が正確にどこか、内部結露が発生しているかといったことは、赤外線画像だけで確定できるものではありません。必要に応じて、図面、仕様書、目視点検、室内温湿度の確認、気密測定、部分的な詳細調査などと組み合わせることが大切です。赤外線検査は、外皮の弱点を探るための有効な入口になりますが、最終的な判断は複数の情報を重ねて行う必要があります。


断熱欠損や気密不良の可能性を見極める

赤外線検査は、断熱欠損や気密不良の可能性を見極める場面でも活用できます。断熱欠損とは、断熱材が入っていない、ずれている、厚みが不足している、施工時に隙間が生じているなど、断熱性能が局所的に低くなっている状態を指します。気密不良は、建物の隙間から外気が入り込んだり、室内の空気が漏れたりする状態です。どちらも冷暖房負荷を増やし、室内の温度ムラや結露の原因になることがあります。


断熱欠損が疑われる箇所では、周囲と異なる温度の帯や点状のムラが現れることがあります。たとえば、壁の一部だけ冬に冷たく見える、天井の一部だけ夏に熱く見える、柱や梁の位置に沿って温度差が出るといった状況です。これらは断熱材の欠損や熱橋の影響を示している可能性があります。ただし、同じような温度ムラでも、内部の配管、配線、下地材、空調気流、家具の影、日射の蓄熱などが原因になっていることもあります。そのため、赤外線画像だけで断熱欠損と断定せず、建物の構造や内装の状態を確認しながら判断する必要があります。


気密不良の確認では、隙間風が入りやすい部分に注目します。窓や扉の周囲、床と壁の取り合い、天井点検口、配管貫通部、換気設備の周辺、シャッターまわりなどは、空気の出入りが発生しやすい箇所です。冬季に冷たい外気が侵入している場合、室内側の赤外線画像ではその周辺が低温に見えることがあります。夏季には、外からの熱気や屋根裏からの熱の影響が見えることもあります。気密不良は、冷暖房した空気を逃がすだけでなく、空調制御の不安定化や湿気の侵入にもつながるため、省エネ診断では見逃せない要素です。


省エネの観点では、断熱と気密を別々に見るのではなく、両者の関係を考えることが大切です。断熱性能が高くても隙間が多ければ、外気の侵入によって空調負荷は増えます。気密性が高くても断熱が弱ければ、壁や窓から熱が伝わりやすくなります。赤外線検査では、表面温度の分布を通じて、こうした弱点の候補を見つけることができます。特に、同じ用途の部屋や同じ方位の外壁を比較すると、通常のばらつきとは異なる温度ムラに気づきやすくなります。比較対象を設けることで、単独の画像だけでは判断しにくい差を把握しやすくなります。


断熱欠損や気密不良の可能性を見つけた場合は、改善の優先順位を考える必要があります。すべての温度ムラをすぐに改修するのではなく、エネルギー使用量への影響、居住者や利用者の不快感、結露やカビのリスク、工事のしやすさ、建物の運用状況などを総合して判断します。たとえば、常時使用している執務室の窓まわりに大きな冷気侵入がある場合と、ほとんど使わない倉庫の壁に小さな温度ムラがある場合では、改善の優先度は異なります。赤外線検査は、その優先順位を説明するための視覚的な根拠として役立ちます。


また、改修前後の比較にも赤外線検査は有効です。断熱補強、気密処理、建具調整、隙間対策などを行った後に同じような条件で再撮影すれば、温度ムラの変化を確認できます。省エネ診断では、提案して終わりではなく、対策の効果を確認することも重要です。赤外線画像は、関係者に改善効果を伝えやすい資料になります。ただし、比較する際は、外気温、室温、撮影時刻、空調の運転状況などができるだけ近い条件になるように調整する必要があります。条件が大きく異なると、対策の効果なのか外部環境の違いなのか判断しにくくなります。


空調設備や配管まわりの熱損失を確認する

省エネ診断では、建物の外皮だけでなく、空調設備や配管まわりの確認も重要です。空調は建物のエネルギー使用量に大きく関係するため、機器の運転状態、熱源の効率、ダクトや配管の断熱状態、吹出口や吸込口の配置、室内の気流などを把握する必要があります。赤外線検査を使うと、設備まわりの温度分布を視覚的に確認でき、熱損失や運転の偏りを見つける手掛かりになります。


配管まわりでは、保温材の劣化、欠損、継ぎ目の隙間、バルブやフランジ部分の露出などによって、熱が逃げやすくなることがあります。温水配管や蒸気配管では、保温が不十分な部分が周囲より高温に見えることがあります。冷水配管や冷媒配管では、表面温度の低い部分や結露の発生しやすい箇所が確認されることがあります。こうした箇所は、エネルギー損失だけでなく、周辺環境への熱影響、結露水による劣化、作業者の安全性にも関係します。赤外線画像で温度差を確認することで、近接点検や補修の必要性を検討する前段階の情報を得やすくなります。ただし、高温部や稼働中の設備に近づく場合は、赤外線画像の有無にかかわらず、安全手順を守る必要があります。


ダクトについても、断熱材の欠損、接続部の漏れ、風量の偏り、空調していない空間を通る経路での熱損失などが問題になることがあります。天井裏や機械室、倉庫、廊下などを通るダクトは、見落とされやすい一方で、省エネ上の改善余地が残っている場合があります。赤外線検査では、ダクト表面の温度ムラや周辺空間との温度差を確認し、断熱補修や経路見直しの必要性を検討できます。ただし、ダクト内部の風量や漏気量を赤外線画像だけで定量的に把握することは難しいため、必要に応じて風量測定や設備図面の確認と組み合わせます。


室内側では、吹出口と吸込口の温度差や、室内の温度ムラに注目します。吹出口から出る冷風や温風が適切に室内へ届いていない場合、特定の場所だけ過冷却や過加熱になり、別の場所では空調不足が起こることがあります。その結果、利用者が設定温度を下げ過ぎたり上げ過ぎたりして、エネルギー使用量が増えることがあります。赤外線画像で天井、壁、床、家具、窓際、出入口付近の温度分布を見ると、空調気流の偏りや外皮からの熱影響を把握しやすくなります。特に、同じ部屋の中で温度差が大きい場合は、設備容量だけでなく、気流、日射、断熱、利用状況を含めて検討する必要があります。


機械室や設備スペースでは、機器の発熱状態を確認することも省エネ診断に役立ちます。ポンプ、ファン、モーター、制御盤、変圧器、照明、熱源機器などは、稼働状況によって発熱します。発熱そのものは正常な運転に伴う場合もありますが、過剰な発熱、局所的な温度上昇、周囲への熱だまりは、エネルギー効率や保守管理の観点から確認すべき要素です。赤外線検査によって発熱箇所を把握すると、換気改善、不要運転の見直し、保守点検、機器更新の検討につなげやすくなります。


ただし、設備診断で赤外線検査を使う場合も、表面温度だけで異常を断定しないことが大切です。機器は運転条件によって温度が変わります。負荷が高い時間帯、起動直後、停止直後、外気温が高い日、フィルターが目詰まりしている状態など、さまざまな要因が影響します。省エネ診断では、赤外線画像とともに、運転時間、設定温度、電流値、流量、圧力、点検履歴、清掃状況などを確認することで、より実態に近い判断ができます。赤外線検査は、設備の状態を直感的に把握するための有効な手段ですが、定量データと合わせて読むことで価値が高まります。


撮影条件と測定結果の限界を整理する

赤外線検査を省エネ診断に活かすうえで、撮影条件の整理は非常に重要です。赤外線画像は見た目に分かりやすいため、温度差があるとすぐに原因を判断したくなります。しかし、赤外線検査は表面から放射される赤外線をもとに温度分布を推定する方法であり、撮影環境や対象物の性質に大きく影響されます。省エネ診断で信頼性のある資料として使うためには、画像だけでなく、撮影時の条件も記録しておく必要があります。


まず重要なのは、室内外の温度差です。断熱や気密の状態を確認したい場合、室内と外気の温度差が小さいと、温度ムラが画像に表れにくくなります。暖房時に外気が冷たい、冷房時に外気が暑いといった条件では、熱の出入りが確認しやすくなります。一方で、温度差が十分でない日や、空調を停止してから時間が経っている状態では、赤外線画像から省エネ上の問題を読み取るのが難しくなることがあります。そのため、撮影前には空調の運転状況や室温、外気温を確認し、診断目的に合ったタイミングを選ぶことが望ましいです。


次に、日射の影響を考慮する必要があります。外壁や屋根、窓まわりは日射を受けると表面温度が大きく変化します。日射を受けた面は、断熱性能とは関係なく高温に見えることがあります。また、日が当たっていた時間帯の影響が残り、日陰になった後もしばらく温度が高く見えることがあります。省エネ診断で外皮の比較を行う場合は、方位ごとに条件が異なることを前提に、撮影時刻や天候、直前の日射状況を記録しておくことが重要です。晴天時と曇天時では得られる画像の意味が変わるため、比較の際には注意が必要です。


風や雨の影響も見逃せません。風が強いと外壁表面の温度が変化し、熱の分布が分かりにくくなることがあります。雨で表面が濡れている場合は、蒸発や水分の影響で温度分布が通常と異なることがあります。濡れた外壁や屋根は、断熱や漏水の確認に関係する情報を含む場合もありますが、省エネ診断の熱損失評価としては条件が複雑になります。撮影結果を後から見直す際に誤解しないためにも、天候や表面状態の記録は欠かせません。


対象物の表面性状も結果に影響します。金属やガラスのように反射しやすい素材では、周囲の熱源や空の影響が映り込み、実際の表面温度とは異なる表示になることがあります。光沢のある仕上げ、濡れた面、黒色や白色の表面、粗い素材と滑らかな素材では、赤外線画像の見え方が変わります。省エネ診断では、温度の数値を過度に絶対視するのではなく、同じ素材、同じ条件、同じ撮影角度で比較することが大切です。異なる素材をまたいで温度差を見る場合は、その差が熱性能によるものか、表面性状によるものかを慎重に考える必要があります。


また、赤外線検査では内部の状態を直接見ることはできません。壁の中の断熱材、配管の内部、ダクトの漏気量、空調機の効率、電力消費量などは、赤外線画像だけでは定量的に判断できません。画像はあくまで表面温度の分布を示すものであり、原因の候補を絞り込むための情報です。したがって、報告書では、断熱欠損があると断定するのではなく、断熱欠損や熱橋の影響が疑われる温度ムラが確認された、気密不良の可能性があるため追加確認が望ましいといった表現にする方が安全です。確定には追加調査が必要であることを明記すれば、過度な断定を避けながら実務に役立つ診断になります。


撮影条件と限界を整理することは、赤外線検査の価値を下げるものではありません。むしろ、条件を明確にすることで、画像の信頼性が高まり、関係者が結果を正しく理解しやすくなります。省エネ診断では、分かりやすい画像ほど誤解も生みやすいため、撮影条件、確認範囲、判断の前提、追加確認の必要性をセットで記録することが重要です。


改善提案につながる記録として活用する

赤外線検査を省エネ診断に活かす最終的な目的は、現状把握だけでなく、改善提案につなげることです。温度ムラや発熱箇所を見つけても、それが具体的な対策に結び付かなければ、診断結果としての価値は十分に発揮されません。現場で撮影した赤外線画像は、改善の優先順位を説明し、関係者の理解を得るための有効な資料になります。そのためには、画像の撮り方、整理の仕方、コメントの付け方を工夫する必要があります。


まず、赤外線画像は可視画像や現場メモとセットで残すことが大切です。赤外線画像だけを見ると、どの壁のどの部分を撮影したのか、どの設備のどの位置なのかが分からなくなることがあります。省エネ診断では、後から関係者が見ても位置を特定できるように、通常の写真、平面図、部屋名、方位、撮影方向、撮影時刻、空調運転状態などを合わせて記録します。同じ場所を継続的に確認する可能性がある場合は、撮影位置と角度をできるだけ再現できるようにしておくと、改修前後の比較にも使いやすくなります。


次に、温度ムラの意味を整理して記録します。単に温度が高い、温度が低いと書くだけでは、省エネ上の判断につながりにくくなります。たとえば、窓下部に低温域が確認され、外気侵入や断熱性能の影響が疑われる、配管の保温材欠損部に周囲より高い温度域が確認され、熱損失の可能性がある、天井面に局所的な温度差があり、上部空間からの熱影響を追加確認する必要があるといった形で、所見と次の確認事項をつなげます。こうすることで、赤外線画像が単なる記録ではなく、改善判断の材料になります。


改善提案では、対策の種類と期待される効果を整理することも重要です。外皮の温度ムラに対しては、断熱補強、隙間処理、建具の調整、遮熱対策、日射制御、カーテンや内装材の運用見直しなどが考えられます。設備まわりの熱損失に対しては、保温材の補修、配管経路の見直し、空調設定の適正化、フィルター清掃、不要運転の削減、換気量の確認、ダクト断熱の改善などが候補になります。ただし、すべての対策を一律に勧めるのではなく、現場の利用状況や費用対効果、施工のしやすさ、業務への影響を踏まえて優先順位を付ける必要があります。価格そのものを提示しなくても、短期的に運用で改善できるもの、中期的に補修を検討するもの、長期的な改修計画に組み込むものといった整理は可能です。


赤外線画像は、関係者との合意形成にも役立ちます。省エネ対策は、設備担当者だけで完結しないことが多く、経営層、施設管理者、利用部門、施工業者など、複数の関係者が関わります。温度ムラや熱損失を画像で示すことで、問題箇所を共有しやすくなり、対策の必要性を説明しやすくなります。特に、利用者が感じている暑さや寒さと赤外線画像の結果が一致する場合は、快適性と省エネを両立する提案につなげやすくなります。


さらに、赤外線検査の記録は、継続的な省エネ管理にも活用できます。省エネ診断は一度きりのイベントではなく、建物や設備の状態を定期的に確認し、運用改善を積み重ねる取り組みです。赤外線画像を定期的に記録しておけば、経年劣化、設備更新後の変化、改修効果、季節ごとの傾向を把握しやすくなります。特に、同じ撮影条件を意識して記録を蓄積すれば、過去との比較がしやすくなり、異常の早期発見にもつながります。


報告書にまとめる際は、赤外線画像、通常写真、所見、想定される要因、追加確認、改善の方向性を一連の流れで示すと分かりやすくなります。重要なのは、赤外線検査の結果を単独で結論にするのではなく、省エネ診断全体の中で位置づけることです。エネルギー使用量の分析、設備運用の確認、現場ヒアリング、図面確認、温湿度測定などと組み合わせることで、実効性のある改善提案につながります。


まとめ

赤外線検査は、省エネ診断において熱の偏りや温度ムラを可視化し、改善すべき箇所を見つけるための有効な手段です。外壁や開口部では、熱の出入りが大きい場所や断熱性能のばらつきを確認する手掛かりになります。断熱欠損や気密不良の可能性を把握する場面では、目視だけでは分かりにくい局所的な温度差を確認できます。空調設備や配管まわりでは、保温材の欠損、発熱、熱だまり、気流の偏りなど、省エネ改善につながる要素を見つけやすくなります。


一方で、赤外線検査は万能な診断方法ではありません。表面温度の分布を示すものであり、内部の状態やエネルギー損失量を直接確定するものではありません。日射、風、雨、室内外の温度差、設備の運転状況、素材の反射など、多くの要因が結果に影響します。そのため、省エネ診断で活用する際は、撮影条件を丁寧に記録し、画像の見え方だけで原因を断定しない姿勢が大切です。必要に応じて、図面確認、目視点検、温湿度測定、設備データ、利用者への聞き取りなどと組み合わせることで、より信頼性の高い判断ができます。


実務では、赤外線検査を問題を断定する道具としてではなく、改善の候補を見つけ、関係者に分かりやすく伝える道具として使うと効果的です。温度ムラを可視化できるため、現場担当者、施設管理者、利用部門、経営層が同じ画像を見ながら課題を共有できます。省エネ対策は、断熱改修や設備更新のような大きな取り組みだけでなく、運用改善、保温材の補修、隙間対策、空調設定の見直しなど、小さな改善の積み重ねでも進められます。赤外線検査は、その優先順位を考えるための分かりやすい材料になります。


これから省エネ診断に赤外線検査を取り入れる場合は、まず診断目的を整理し、外皮、開口部、設備、配管、室内環境のどこを確認するのかを決めることが大切です。そのうえで、撮影条件をそろえ、通常写真や現場メモと合わせて記録し、改善提案まで一貫して整理します。現場で手早く温度分布を確認し、関係者が判断しやすい形で記録を残せれば、省エネ診断の質を高めやすくなります。赤外線検査を単独の結論として扱うのではなく、エネルギーデータや現地確認と組み合わせて活用することで、実効性のある省エネ改善につなげやすくなります。


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