目次
• 屋内で高精度な位置情報が必要となるケースと課題
• GPSが使えない屋内で用いられてきた測位方法
• RTK技術による高精度測位の仕組み
• スマートフォン×LRTKで実現する新しい屋内測位
• LRTKによる簡易測量で現場が変わる
• FAQ
屋内で高精度な位置情報が必要となるケースと課題
建設現場の屋内作業や工場・倉庫の設備管理など、現場で正確な位置情報を測りたい場面は少なくありません。例えば建物内で機械設備の設置位置を決める墨出し作業や、室内のストックヤードで在庫の配置を最適化するための動線分析など、センチメートル単位の測位が求められるケースが増えています。最近では現場のデジタル化が進み、測量データを活用した施工管理やレイアウト改善といった「見える化」による生産性向上の取り組みも一般化しつつあります。
しかし、屋内や地下空間ではGPSに代表される衛星測位がそのまま使えないという大きな課題があります。衛星からの電波は建物の壁や屋根に遮られてしまうため、室内では受信が極めて困難です。仮に微弱な信号を受け取れても、誤差は数メートルから数十メートルにも及び、とても精密な測位には使えません。このため屋内環境で正確な座標を取得するには、GPS以外の代替手段を講じる必要があります。
GPSが使えない屋内で用いられてきた測位方法
では、GPSの電波が届かない室内で位置を測るために、これまでどのような方法が用いられてきたのでしょうか。まず昔から行われているのは、建物内に基準となる位置を設定し、そこからメジャーやレーザー距離計で距離を測ったり、トランシットやトータルステーション(TS)といった光学測量機器で相対位置を求めたりする手法です。設計図に記載された基準線や既知点をもとに、一点一点の座標を人手で計算しながらマーキングしていく作業は、精度は高いものの熟練の技術と多大な労力を要します。長い室内通路や大規模な工場施設では、機器を据え直しながら何度も測り継ぐ必要があり、限られた時間内で精密な測量を行うのは容易ではありません。
このように人力や光学機器に頼る方法以外にも、屋内測位を実現するために様々な技術が研究・実用化されてきました。代表的な屋内位置測定技術には次のようなものがあります。
• BLEビーコンやWi-Fiによる電波測位: 室内に複数の発信機(BLEビーコンやWi-Fiアクセスポイント)を設置し、端末が受信する信号の強度や到達時間から距離を推定して位置を割り出す方式です。比較的低コストで導入できますが、精度は数メートル程度がせいぜいで、壁や機械などによる電波の反射・干渉で誤差が大きくなる傾向があります。
• UWB(超広帯域無線)測位: ナノ秒単位の非常に短い電波パルスを用いて距離を計測し、複数アンテナ間の到達時間差から位置を三角測量する方式です。環境によっては誤差を数十cm~10cm程度まで縮められる高精度測位が可能です。ただし専用アンテナの設置や初期調整に手間とコストがかかり、広い範囲をカバーするシステムを構築するハードルは高めです。
• 超音波・音響による測位: 天井などに超音波発信機を配置し、音波の到達時間から位置を求める方法です。電波と比べて障害物の陰になりにくく、3次元(高さ方向を含む)の位置計測が可能なシステムもあります。センチメートル級の精度を謳うものもありますが、機器の設置や定期的なキャリブレーション作業が必要で、現場への導入ハードルは決して低くありません。
• カメラやLiDARによる自己位置推定: モバイル端末やロボットに搭載したカメラ映像やLiDARセンサーで周囲の環境をスキャンし、得られた特徴から自身の位置を推定する技術です。あらかじめ室内全域の3Dマップを作成しておけば、壁や床にタグを貼らなくても位置が把握できます。ただし機材やソフトウェアが高価だったり、計測前に建物全体を詳細にスキャンする手間がかかったりする場合もあり、気軽に使える手法とは言い難い面があります。
• PDR(歩行者航法): 人が歩いた歩数や方角をスマホ内の加速度センサー・ジャイロセンサーから推計し、既知のスタート地点から相対的な位置を累積していく手法です。短時間であれば有効ですが、時間経過とともにセンサー誤差が蓄積して位置が次第にずれていく「ドリフト」問題があります。長時間・長距離の移動では数m以上の狂いが生じてしまうため、定期的に正しい位置を補正しな いと高精度を維持できません。
以上のように、屋内で位置座標を取得する従来手法にはそれぞれ長所と短所があります。特にセンチメートル単位の精度を得ようとすると、専用インフラを張り巡らせたり、高額な機器を導入したりする必要がありました。また、多くの技術は平面上(X,Y)の位置推定にとどまり、高さ方向(Z軸)の精密測位は困難です。しかし建築物内や工場では、高低差や階層といった高さの情報も重要になる場面があります。では、どうすればより手軽に屋内でセンチメートル級の測位を実現できるのでしょうか。その鍵の一つがRTK(リアルタイムキネマティック)という高精度測位技術の活用です。
RTK技術による高精度測位の仕組み
RTK(Real Time Kinematic)とは、GPSなどの衛星測位において差分補正という手法で精度を飛躍的に高める技術です。原理としては、近くに設置した基準局(位置が既知の受信機)と移動局(測りたいポイントの受信機)の2台で同時に衛星信号を受信し、基準局で求めた誤差情報をリアルタイムに移動局に送り補正することで、誤差数メートルの通常のGPS測位を一気に数センチの精度まで追い込むことができます。まさに「超高精度のリアルタイムGPS」を実現する仕組みであり、土木測量や機械施工のガイダンス、自動運転など屋外の様々な分野で古くから利用されてきました。
従来のRTK測位を行うには、基地局側から移動局側へ無線やインターネットでデータ通信を行う必要がありました。また双方の受信機が同じ衛星を複数捕捉している必要があるため、トンネル内や高層ビルの谷間など衛星信号を受けにくい環境ではRTK本来の性能を発揮しにくいという課題もあります。しかし近年、このRTK技術を小型のオールインワン端末とスマートフォンで手軽に活用できるようにしたソリューションが登場しています。それが次に紹介するスマートフォン×LRTKによる高精度測位です。

