*現場でスマートフォンを使って重機の施工状況を確認する様子。ICT技術の活用により、施工管理のスタイルも大きく変化しています。* 近年、建設業界で急速に注目を集めているICT建機をご存じでしょうか?ICT建機とは、GNSS(衛星測位システム)やセンサー、3次元設計データなど情報通信技術(ICT)を搭載した建設機械のことで、オペレーターの勘や経験に頼らずとも高精度な施工を可能にする次世代の重機です。国土交通省が 推進する*i-Construction*(アイ・コンストラクション)の中核にも位置付けられており、従来の工事現場が抱えていた生産性低下や人手不足、安全面の課題を解決する切り札として期待されています。もしICT建機をまだ知らなければ、それだけで業界の流れに乗り遅れて損をしてしまうかもしれません。本記事ではICT建機の概要と導入メリットを5つに分けて詳しく解説し、併せて土工分野における成功事例をご紹介します。最後には、LRTK(スマホ×小型GNSS)を用いた簡易測量というICT施工を始めるための第一歩についても触れますので、ぜひ導入検討の参考にしてください。
ICT建機とは?
ICT建機とは、情報通信技術を活用した建設機械の総称です。具体的には、ブルドーザーやショベルなどの重機に全球測位衛星システム(GNSS)やトータルステーション、レーザーセンサー、傾斜計などを搭載し、3次元の設計データと連動させて自動的または半自動的に作業できるようにしたものを指します。オペレーターは車載モニターに表示されるガイダンスに従って操作するだけで、ブレードやバケットの高さ・勾配が自動制御されるため、従来は職人の勘と経験に頼っていた難しい整形作業も高精度かつ効率的に行えるようになります。これまで丁張り(高さの基準となる杭)の設置や何度も測量をしながら進めていた施工が大きく様変わりし、「早く・正確で・ムリの少ない」施工が実現するのがICT建機の特徴です。国土交通省が2016年度から推進する<i>i-Construction</i>の旗の下、まず土工分野からICT建機の導入が進められており、生産性向上や人手不足解消の切り札として国も普及を後押ししています。
それでは、ICT建機を導入すると具体的にどのようなメリットが得られるのでしょうか。ここからは、代表的な5つのメリットについて順番に見ていきましょう。
1. 作業効率の向上(生産性アップ)
ICT建機の導入最大のメリットは作業効率の飛躍的な向上です。施工前後の測量から実際の重機作業、検査・納品まで、一連のプロセスの所要時間が軒並み短縮されます。たとえば従来は2~3人がかりで2~3日かかっていた現場測量も、ドローン空撮や3Dレーザースキャナを使えば1人が数時間で完了できるケースがあります。また重機による施工でも、ICT建機では設計データに基づきブレードやバケットを自動制御できるため、これまで必要だった丁張りの設置や中間の出来形確認作業が不要となり、手戻りや待ち時間が大幅に削減されます。その結果、工期全体の短縮につながり、実際の土工事では施工日数を平均20%以上削減できたという報告もあります。国土交通省の調査によれば、ICT土工の導入により従来工法と比べて作業時間が約3割短縮できたとのデータもあり、現場の生産性を高める効果は見逃せません。効率良く工事を終わらせることができれば、施工期間に余裕が生まれて他の業務や安全対策に時間を充てられるほか、同じ期間でより多くの工事を受注するといった経営面でのメリットも期待できます。
2. 品質の安定と精度向上
ICT建機は高品質な施工を安定して実現できる点でも優れています。3Dマシンガイダンス(MG)やマシンコントロール(MC)機能を搭載した重機であれば、オペレーターが大まかな操作を行うだけで、機械が自動的にブレードやバケットの高さ・角度を調整し、設計図通りの仕上がり形状を作り出します。これにより人為的な誤差やばらつきが大幅に低減され、勾配や法面の仕上げ精度が飛躍的に向上します。熟練度に左右されず常に均一な品質を確保できるため、出来形のばらつきが減ってやり直し回数も削減されます。特に構造物の周辺や狭い現場など、本来であれば高度な職人技が求められる作業でも、ICT建機なら安定した精度で対応可能です。例えば、GNSS搭載の重機で自位置を正確に把握しながら施工することで、過掘りや掘削不足といったミスも最小限に抑えられます。常に設計データに沿った施工を行えるため、最終的な出来形品質が向上すると同時に品質管理も容易になります。このようにICT建機の活用は、高精度施工の実現と品質の安定化につながり、発注者からの信頼向上にも寄与するでしょう。
3. 省人化(人手不足への対応)
深刻な課題である人手不足の解消にも、ICT建機は大きな威力を発揮します。ICT建機の 導入によって各工程の効率が上がることで、必要な延べ作業時間が削減され、その分少ない人員でも工事を完遂できるようになります。実際、ICT施工を取り入れれば作業員の労働時間を約3割削減できるとの報告もあり、少人数で回せる現場づくりに直結します。また、経験の浅いオペレーターでも高度な作業に対応可能になる点も見逃せません。従来は熟練技術者に任せざるを得なかった勾配整正なども、ICT建機のアシスト機能によって新人でも正確に作業できます。これによりベテランに人材が偏っていた状況が改善し、若手でも十分に戦力となる現場が実現します。技能継承の壁をテクノロジーで乗り越えることで、人材育成や世代交代もスムーズになりますし、複数の現場が重なっても人員配置で悩みにくくなるでしょう。実際にICT建機を導入した企業からは「以前は同時に複数現場があると熟練オペレーターのやりくりに苦労していたが、ICT導入後は若手でも精度の高い施工が可能になり助かった」という声も上がっています。さらに、従来2~3人がかりだった測量や丁張り設置が不要になることで一人作業が増え、作業員の省力化・省人化が進みます。国も2040年までに建設現場の省人化を3割(生産性1.5倍向上)という目標を掲げており、ICT建機の普及が担い手不足解消の鍵となっています。
4. 安全性の向上
安全管理の面でもICT建機導入は大きなメリットがあります。ICT施工では測量や出来形確認をドローンや自動化機器で行うことが多く、作業員が重機のそばや危険な斜面・掘削箇所に立ち入る機会が減ります。その結果、重機との接触事故や高所・斜面での転落事故のリスクが低減されます。例えば上記のようにドローン測量を活用すれば、足場の悪い場所を人が歩き回らずに済むため安全確保につながりますし、ICT建機であればオペレーターはキャビン内でガイダンスに従うだけなので、周辺の誘導員も最小限で済みます。また、施工全体のスピードアップにより現場の稼働日数そのものが短縮されるため、長期間の作業による事故発生確率も下がることになります。加えて、ICT技術によってヒューマンエラーが減ることでミスによる災害も防止できます。例えば従来は手作業で行っていた丁張り設置もICTでは不要になるため、「重機が誤って丁張りをなぎ倒す」「測量中に重機に気づかず接触するといったヒヤリハット」といった場面もなくなります。効率化と安全性向上を両立できる のがICT施工の強みであり、現場で働く人にとって安心して作業できる職場環境の実現につながるでしょう。結果的に、安全への配慮が行き届いた現場は労働災害の減少だけでなく、従業員のモチベーション向上や離職防止といった効果も期待できます。
5. コスト削減
一見すると高価に思えるICT建機導入も、長期的にはコスト削減につながる投資と言えます。確かに3次元測量機器や対応ソフトウェア、ICT重機本体の調達には初期費用が必要ですが、その後の人件費や工事コストの削減効果によって十分回収可能です。主なコストメリットとしては、まず人件費の削減が挙げられます。省人化メリットで述べた通り、少人数で現場を回せるようになれば人件費や残業代の圧縮につながりますし、熟練オペレーターに頼らず若手中心で現場を回せれば高額な技能者の外部手配を減らせます。次に材料費・手直し費用の削減です。ICT建機は無駄な掘削や盛土のやり直しを減らせるため、余計な埋め戻し材や追加舗装などの発生を抑え、結果的に材料コストを節約できます。また、作業 を一度で仕上げる「一発施工」に近づくことで重機の稼働時間や燃料消費も減少します。実際にあるICT施工現場では、5か月の工期を4か月に短縮すると同時に燃費を30%改善できたという例も報告されています。稼働日数の短縮はそのまま重機燃料費やレンタル費の削減、さらには仮設事務所の設置費用・警備員の人件費など間接経費の圧縮にもつながります。加えて、公共工事の分野ではICT活用工事には出来形管理費等に補正係数が適用される優遇措置があり、従来より高い請負金額が認められるケースもあります【※】。このようにICT建機は初期投資こそ必要なものの、トータルで見ればコストパフォーマンスの高い技術です。効率化と品質向上による利益率アップを考えれば、導入しない手はないと言えるでしょう。
【※制度補足】国土交通省はICT活用工事において、共通仮設費や現場管理費などの算定で一定の補正を設けるなど、施工者がICTを導入しやすい積算上の工夫を行っています。その結果、ICT施工は従来施工に比べ利益が出やすい仕組みとなっています。
ICT建機導入の成功事例
実際にICT建機を導入した現場では、上記のメリットがどのような成果をもたらしているのでしょうか。ここでは、土工分野を中心としたICT施工の成功事例をいくつかご紹介します。
• 事例1(工期短縮効果): ある道路土工現場では、ICT対応ブルドーザーと掘削機を導入することで約150日の工期を20日短縮できました。従来は丁張り設置や何度も測量をしながら進めていた工程をICT施工に置き換えた結果、効率化によって約13%の工期短縮を達成したものです。工期が短くなった分、現場管理費や重機の燃料・リース費用も削減され、トータルコストの低減につながりました。
• 事例2(生産性とコストの両立): 別の造成工事では、ICT建機のフル活用により5か月かかる予定だった工事が4か月で完了しました。さらに重機の稼働が最適化されたことで燃料消費も30%ほど削減され、経費の圧縮と環境負荷低減を両 立しています。工期短縮によって空いた1か月で次の仕事を受注できたため、結果的に売上・利益面でも大きなプラス効果が生まれました。
• 事例3(安全性向上と売上アップ): 香川県のとある建設会社では、いち早くICT建機を導入して土工に活用しました。その結果、重機周りの危険作業が減って労災ゼロを継続するとともに、施工効率アップで人手不足の中でも売上をほぼ2倍に伸ばす快挙を遂げています。安全性と生産性の向上で受注機会が増え、会社全体の成長につながった好例と言えるでしょう。
• 事例4(技能不足の克服): ある中小建設業者では、ベテランオペレーターの高齢化により現場力の維持に不安を抱えていました。そこでICT対応ショベルを導入したところ、経験の浅い若手オペレーターでも精度の高い施工が可能となり、ベテランに頼り切っていた状況を打破できました。実際に「新人でも仕上がりがきれいになり、熟練者が使えばさらに生産性が上がった」という声が聞かれ、人材不足や技能継承の問題を技術でカバーする効果を実感しています。この企業では複数の現場を同時進行できるようになり、受注拡大にもつながりました。
以上のように、ICT建機の導入によって工期短縮やコスト削減、安全性向上、そして人材活用の幅拡大といった実務上の成果が各地で報告されています。これら成功事例は、ICT施工が机上の空論ではなく現場目線で大きなメリットをもたらすことを示しています。「本当に効果があるのか?」と半信半疑の方も、実際の現場での成果を知れば導入後の具体的なイメージが湧いてくるのではないでしょうか。
ICT施工の第一歩に:スマホ×小型GNSS「LRTK」で簡易測量
*スマートフォンに装着する小型GNSS受信機「LRTK Phone」の例。このデバイスによりスマホがセンチメートル級精度の測量機器に早変わりします。* 「とはいえ、いきなり高額なICT建機を導入するのはハードルが高い…」と感じる方も多いでしょう。そこでおすすめしたいのが、スマートフォンと小型GNSS受信機を組み合わせた「LRTK」による簡易測量です。LRTK(Low-cost Real Time Kinematicの略称)は、スマホに専用の超小型GNSS端末を装着して利用する測量システムで、手のひらサイズの受信機を取り付けるだけでスマホがセンチメートル級の精度を持つ測量機器になります。専用アプリを起動すれば、現在位置の高精度測位や地形の点群計測、さらには設計図や出来形データに基づいたその場での墨出し(ARによる位置出し)までこなせる優れものです。従来は2人1組でトータルステーションを使っていた測量作業も、LRTKを使えば1人でサッと測ってクラウド共有までできてしまいます。価格も従来の測量機器に比べて非常に安価で、現場の担当者が「一人一台」スマホ測量機を持つ時代が現実味を帯びています。
このLRTKによる簡易測量は、まさにICT施工へのスモールスタートにうってつけです。まずは現場の計測や出来形確認をデジタル化してみることで、3次元データの活用やICTツールの操作に慣れることができます。小規模な現場でも手軽に導入できるため、ICT建機の本格導入前にデジタル施工のメリットを実感する良い機会となるでしょう。実際に「スマホで誰でも測量できるようになり、現場の生産性が大幅に向上した」「リアルタイムで地形データを共有でき、設計変更にも素早く対応できた 」など、LRTKを活用し始めた現場からはポジティブな声が上がっています。まずは身近なスマホから始めるICT――このアプローチならコストもリスクも抑えつつ、DX時代の施工スタイルを体験できるはずです。
いかがでしょうか。ICT建機の導入メリット5選と成功事例、そして手軽に始められる第一歩についてご紹介しました。建設業界は今、大きな技術革新の波を迎えています。「知らないと損する」ICT建機の活用は、生産性アップや人材不足解消のみならず、将来的に企業の競争力を左右する重要なポイントです。ぜひ本記事の内容を参考に、自社の現場へICT施工を取り入れる検討を始めてみてください。最初は小さな一歩でも、現場が変われば会社の未来が変わります。ICT建機を賢く活用し、これからの建設業をリードしていきましょう!
LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上
LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。
LRTKの詳細については、下記のリンクよりご覧ください。
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