ICT施工義務化直前！スマホRTKで備える2025年の現場革新

2025年度から公共工事を中心にICT施工の活用が原則化（事実上の義務化）されます。これまで施工者の任意だった小規模工事でも、原則としてICT技術を用いた施工管理が求められる時代が目前です。「うちは関係ない」と思っていた現場技術者の方も、この流れに対応する必要があります。では具体的に何が変わり、どんな準備が必要なのでしょうか。本記事ではICT施工義務化の背景と新たに必要となる施工管理のポイントを整理し、その上でスマートフォン＋RTKによる現場測量（特にLRTKの活用）が2025年の現場革新にどう役立つか解説します。義務化に備えた実践的なソリューションとして、スマホRTKの導入メリットや費用感、事例まで紹介します。

2025年度からICT施工が原則化：背景と適用範囲

国土交通省は建設業の生産性向上策として、i-Constructionの取り組みを2016年頃から推進してきました。測量から設計、施工、検査に至るまで建設プロセス全般へICTを導入し、生産性を 2025年度までに2割向上 させる目標が掲げられています。その一環として、近年はBIM/CIM（3次元モデル活用）の原則適用も進み、3Dデータ活用が公共事業で標準になりつつあります。

こうした中、2025年度から直轄土木工事の一部（例えば土工や河川浚渫工）ではICT施工が原則適用となります。従来は施工者希望でICT技術の有無を選択できた小規模工事でも、発注者指定により3次元測量やICT建機の活用が基本となる見通しです。つまり今後は「ICTを使って施工するのが当たり前」となり、使わなければ工事成績の減点こそないものの、競争力を失いかねません。特に公共工事においては、ICT未対応の企業は受注機会が減る恐れも指摘されています。

適用範囲も年々拡大しています。当初は土工・浚渫といった土木工事の一部でしたが、将来的には法面工（のりめんこう）や舗装、構造物工事など他の工種にもICT施工の原則化が広がる可能性があります。また2023年度からはほぼ全ての国発注工事でBIM/CIMが必須化され、地方自治体や民間工事にも波及し始めています。つまり2025年は建設業界全体でデジタル施工への転換点となる年なのです。

ICT施工で求められる新しい施工管理とは？

ICT施工が原則となる現場では、従来とは異なるデジタル施工管理が求められます。具体的には以下のような取り組みが必要です。

• 3次元設計データの活用: まず設計段階から3Dモデル（CIMモデル等）を用意し、これを元に施工を行います。図面ではなくデジタルな設計データが現場の共通言語になります。

• ICT建機による施工（マシンガイダンス/コントロール）: ブルドーザーやバックホウ等にGPS/GNSSと3D設計データ連動のシステムを搭載し、自動制御や誘導で施工します。これにより従来必須だった丁張（おおよその位置・高さを示す杭や水糸）を省略でき、オペレーターは機内モニターで設計面を確認しながら作業できます。重機の自動化で生産性向上とヒューマンエラー低減が期待できます。

• 出来形管理の高度化（点群計測と3D照合）: 施工後の出来形測定もデジタル化します。従来は巻尺やスタッフを用いた断面測定が主流でしたが、ICT施工ではドローン写真測量やレーザースキャナ等で現場の3次元点群データを取得し、出来形（出来上がり形状）を面的に把握します。そして取得した点群を設計3Dデータと重ね合わせ、仕上がりの誤差を色分け表示したり数値検証する手法が一般化しつつあります。これによりミスや手戻りを素早く発見でき、品質管理の精度が飛躍的に向上します。

• デジタル納品（書類の簡素化）: 点群や3D設計を用いた管理手法では、監督・検査の進め方も変わります。デジタルデータで完了検査を実施することで、これまで提出していた精度確認試験結果や出来形管理図表などの書類が一部不要になりつつあります。その分、現場でタブレット画面を使って検査官と出来形データを確認する、といった新たな運用も始まっています。

このように、ICT施工では「データに基づく施工管理」がキーワードです。大量の計測点からなる点群や3Dモデルを駆使して、従来は見えなかった現場の状況を見える化し、品質と効率を同時に高める取り組みといえます。現場技術者にとっては測量・ICT機器の扱いやデータ処理スキルも求められますが、これらは避けて通れない時代の要請といえるでしょう。

RTK-GNSSで実現する測量精度：公共仕様とスマホRTKの有効性

こうしたデジタル施工管理の要となるのが測位・計測の高精度化です。3次元データを活用するには、現場で取得する点群や座標が高い精度であることが不可欠です。そこで活躍するのがRTK-GNSS（リアルタイムキネマティック測位）という技術になります。

RTK-GNSSを使うと、GPSなど衛星測位の誤差をリアルタイムで補正し、位置をセンチメートル級の精度で測定できます。通常の単独GPS測位では誤差が数m生じますが、RTKでは専用の基準局データや補正情報を用いて誤差要因を打ち消すため、平面位置で±1～2cm程度、高さ方向でも±2～3cm程度の精度を得ることが可能です。例えば基準局から数km以内であれば、ほぼ誤差数cm以内に収まるため、一般的な土木測量には十分な精度といえます。この精度は公共工事の出来形管理で要求される許容誤差（数cmオーダー）と合致しており、国土地理院が認定する民間電子基準点（A級・B級）など適切な補正源を使えば公共測量の基準にも適合する測位が可能です。

実際、国土交通省の施工管理要領でも「出来形測定はRTK-GNSSやTS（トータルステーション）による断面測定を標準」と明記されており、さらにドローンやモバイル端末による面計測（点群スキャン）も許容されています。これはRTK-GNSS測量の精度が公的に認められている証拠です。高度なレーザースキャナを使わずとも、RTK対応機器で地形を細かく測れば充分に施工管理へ活用できるわけです。

スマホ＋RTK（スマホRTK）の強み: 近年、このRTK-GNSS高精度測位をスマートフォンで手軽に活用できるソリューションが登場しています。例えばスタートアップ企業レフィクシア社の LRTK は、スマホに装着できる重さ約125gの小型RTK-GNSS受信機です。これをスマートフォン（iPhone/iPad等）に取り付けるだけで、誰でも手持ちのスマホをセンチ精度の万能測量機に変えることができます。国の衛星補強サービス（みちびきのCLAS信号）やVRS方式のネットワークRTKに対応しており、通信圏外でもLRTK単体で補正情報を受信して数cm精度を安定的に維持できます。専門の測量機器がなくても、スマホさえあれば現場で必要な精密測位がすぐ可能になる点が大きな魅力です。

さらにスマホアプリ上で測位データを平均化することで、固定設置時には水平方向で1cm未満の精度も実現しています。つまり従来は高額なGNSS機や光学測量でしか得られなかったレベルの測位が、手のひらサイズのスマホRTKで達成できるのです。この技術革新により、現場の測量・計測がより身近で柔軟なものになりつつあります。

スマホRTKの活用シーン：出来形測定、丁張レス施工、基準点測設、日常測量

スマホRTKを導入することで、現場の様々な場面で省力化と高度化を同時に実現できます。ここでは工程別・用途別に、スマホRTK（特にLRTK）の具体的な活用例と効果を紹介します。

• 出来形測定（3次元出来形管理）: 施工完了後の出来形測量にスマホRTKが威力を発揮します。LRTKを装着したスマホで現場を歩き回りながらスキャンすれば、数百万点規模の点群データを数分で取得可能です。取得点群には世界座標のXYZ値（絶対座標）が付与されるため、設計3Dモデルとの照合や盛土・掘削量の算出もボタン一つで行えます。従来は2人1組で半日がかりだった複数断面の測量が、スマホ1台で現場全体の面を網羅できるため測定漏れが無く作業時間も大幅短縮できます。ある現場では点群活用により出来形検査の所要時間を従来比70%以上短縮した例もあり、結果的に出来形図書の作成負担も減らせます。スマホRTKで取得した点群は国交省の出来形管理要領に則った精度検証（標定点による誤差チェック等）を経て納品成果に利用でき、高精度なデジタル出来形管理を少人数で実現できます。

• 丁張レス施工（測量省力化と生産性向上）: ICT建機を導入しても、要所の確認や細部の測量にはこれまで人手の丁張・墨出し作業が伴いました。スマホRTKはその最後の一手間も解決します。例えばLRTKなら、あらかじめ登録した設計ラインや高さをAR表示して現地に重ねることで、杭を打たずとも仕上がり高さを確認できます。重機オペレーターがスマホ画面でリアルタイムに設計面との差を把握することも可能です。また、どうしても物理的なマーキングが必要な場合でも、スマホRTKの誘導機能を使えば指定座標まで数cmの精度でナビゲートしてくれるため、従来のように測点を出すのに熟練の測量手を要しません。ある中小建設会社では丁張を一切設置せず施工した結果、現場作業量が従来の5分の1以下（80%以上の省力化）に激減し、高品質な施工管理も両立できたと報告されています。スマホRTKは誰でも使えるデジタル測量助手として、丁張レスの現場を支えます。

• 基準点の測設・測量:現場の基準点設置や水準測量にもスマホRTKは有用です。新規工事でまず行う既知点確認や仮設基準点の設置作業は、従来なら測量会社に依頼したりTSとスタッフで時間をかけたりする必要がありました。スマホRTKを使えば、自社の技術者がその場で迅速に基準点測量を行えます。例えばLRTKを三脚に据えて一定時間測位すれば、平均化機能で高精度な座標値を取得できます。測位結果は平面直角座標系やジオイド高にも自動変換されるため、公共座標系での基準点票作成も容易です。草木や積雪に隠れた既存杭も、スマホRTKの誘導でピンポイントに探し当てることができます。結果として、基準点測設にかかる日数が半減し、測量コストの削減にもつながります。日々の高さ基準出しや構造物の通り芯出しなども、一人で正確に行えるため作業の待ち時間がありません。

• 日常測量・出来高管理: 現場では小まめな測量・計測業務が発生します。たとえば埋設物の深さ確認、毎日の出来高報告用の体積測定、安全管理のための離角確認など、多岐にわたります。スマホRTKが1人1台あれば、こうした日常測量をいつでも即座に実施できます。測りたい時にすぐ高精度測位ができるため、「測量班の手配待ちで工事が中断」といったロスがなくなります。さらにLRTKでは測位写真の機能も充実しており、スマホで撮影した現場写真に高精度な位置・方位情報を自動記録できます。これをクラウドにアップロードすれば、オフィスにいながら現地の状況を正確な座標付きで把握することが可能です。例えば危険個所の記録写真から距離・面積を後で測ったり、進捗状況を遠隔確認するといったデータ共有による効率化も図れます。日常業務レベルでのスマホRTK活用は、現場監督や職長の「ちょっと測りたい」に応える新常態となり、ムダな待機ややり直しを減らす効果が期待できます。

以上のように、スマホRTKは測量の専門家でなくても使える手軽さと建設現場で必要十分な精度を兼ね備え、あらゆる工程で活躍することが分かります。とりわけ中小企業や現場経験の浅い技術者にとって、スマホという身近なデバイスでDXを体感できることは大きな利点です。初めてICT施工に挑戦する現場でも抵抗感が少なく、「とりあえずやってみる」ハードルを下げる役割を果たしてくれるでしょう。

LRTK導入事例と費用感：義務化前にスマホRTKで備える

スマホRTKソリューションの中でも先進的なLRTKは、すでに現場の実務者の間で静かなブームとなりつつあります。実際に導入した企業からは、「測量器を持ち歩く感覚で常時ポケットに入れて活用している」「若手でも数日で使いこなせ、生産性が飛躍的に上がった」といった声が聞かれます。ある現場監督はLRTKで取得した点群をクラウド共有し、「出張せず本社から出来形データをチェックできた」と遠隔臨場の効果を実感しています。このように小型・安価で現場にフィットするスマホRTKは、DX導入の現実解として注目されています。

気になる導入コストも、非常に魅力的です。従来のICT建機や3Dレーザースキャナは数百万円～数千万円規模の投資でしたが、スマホRTKデバイスなら数十万円程度で1セット導入可能です（スマートフォンは既にお持ちのものを活用）。例えばLRTKなら専用受信機とアプリ利用込みで50万円前後から始められ、月額料金が不要のCLAS利用でランニングコストも抑えられます。1人1台配備しても大きな負担とならない価格帯のため、社員への貸与や複数台導入による全体最適もしやすいでしょう。初期費用を設備投資補助金などで賄えば、さらに導入ハードルは低くなります。

2025年のICT施工義務化を目前に控え、「何から手を付ければ良いか」と悩む現場も多いでしょう。そうした中で、スマホRTKの導入は手軽かつ効果の高い一手となります。大掛かりなICT建機の更新や社内システム整備に先立ち、まずは現場スタッフにスマホRTKを持たせてみる。これだけでも出来形管理や測量のデジタル化が即実践でき、現場の意識改革にもつながります。 使ってみるとその利便性から「もう従来には戻れない」と実感するはずです。ICT施工の本格運用に向けて、小さく始めて大きな効果を得られるスマホRTKは、義務化前の今こそ導入検討すべきソリューションと言えるでしょう。

最後に、ICT施工の波は「やらされる」のではなく「活用して得をする」時代へ突入します。スマホRTK（LRTK）のような技術を味方につければ、省人化と高度化で現場は確実に革新できます。2025年を目前にした今、ぜひ前向きにスマホRTKの導入を検討し、ICT施工への備えを万全に整えてください。現場の未来はすぐそこまで来ています。義務化をチャンスに変え、スマホRTKで次世代の現場づくりを始めましょう！