近年、建設現場では熟練作業員の高齢化と若手入職者の減少により深刻な人手不足が続いています。さらに2024年から建設業にも時間外労働の上限規制が適用される「2024年問題」により、人員不足の悪化や工期遅延が一層懸念されています。人手不足は施工管理の視点で様々な課題を生み出し、必要な人数を確保できないことで工期の遅延や品質低下のリスクが高まるほか、少ない人員で無理に作業を進めれば安全面にも悪影響が及びます。現場監督や施工管理者も一人で複数の業務を抱えざるを得ず、長時間労働や業務負担の増大に直結しています。
こうした現状を打破する鍵として注目されているのが、ICT(情報通信技術)を活用した施工のデジタル化です。国土 交通省は2016年からi-Constructionを推進し、測量・設計から施工・検査に至る建設プロセス全体へのICT導入によって生産性向上と省人化を図っています。例えば、ある実証ではICT土工を活用することで必要作業人員の削減・施工日数の短縮・施工精度の向上といった成果が報告されています。デジタル技術により人力に頼った作業や手戻りが減り、経験や勘に頼らなくても誰もが効率的かつ高精度な施工を行える環境が整いつつあるのです。
中でもスマートフォンの活用は、ICT施工を身近に実現できる有力な手段です。近年スマホに後付けする高精度GNSS受信機(RTK)や3Dスキャンアプリが登場し、誰でもスマホを使って測量・出来形計測・墨出し(位置出し)などを行えるようになってきました。普段使い慣れたスマホを現場で活用すれば、高価な専用機器や高度な専門技能がなくとも、少人数で多くの施工業務をこなすことが可能となります。本記事では、人手不足によって生じる現場課題を整理した上で、ICT施工の導入により測量・施工・出来形管理

