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ICT施工次の一手:ドローン×スマホ測位で広がる施工の可能性

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万能の測量機LRTKの説明

建設現場のDX(デジタルトランスフォーメーション)が加速する中、ICT施工(i-Construction)の活用は今や当たり前の光景になりつつあります。中でもドローンを用いた写真測量や点群データ取得は、短時間で広範囲の現況を把握できる手法として多くの現場で導入されています。一方で、ドローンによる三次元計測だけではカバーしきれない領域や課題も見えてきました。そこで注目されているのが、スマートフォン+高精度測位(RTK)を組み合わせた新しい現場計測スタイルです。従来のドローン測量の強みを活かしつつ、スマホ測位の機動力と手軽さを加えることで、施工管理の幅をさらに広げることが可能になります。


本記事では、まずドローン写真測量や出来形点群計測のメリットと限界を整理し、その補完となるスマホRTK測位の有効性を解説します。さらに、スマホを活用した点群データ補完杭位置のAR誘導地形変化のトラッキング精度補強といった具体的な活用事例を紹介します。その上で、ドローンとスマホRTKを連携させることで、施工管理・工程管理・出来形管理・安全確認・維持管理に至るまで現場DXを包括的に推進できるモデルを提案します。BIM/CIMや点群クラウド、AR表示、位置情報付き写真記録などデジタルツールとの連動によって広がる次世代の業務フロー例にも触れ、最後にスマホ高精度測量ソリューションLRTKの導入実例(初期費用は数十万円程度)の紹介を交えながら、ドローン×スマホが切り拓く施工の新たな可能性について考察します。


ドローン写真測量による3D計測の現状と限界

現在、多くのICT施工現場でドローンを使った写真測量によって出来形(施工後)点群が取得され、土量計算や形状確認に活用されています。ドローン写真測量は上空から面的にデータを取得できるため、人力では何日もかかる広範囲の測量を短時間で安全に完了できるという大きなメリットがあります。また、取得画像から構築される点群やオルソ写真は地形を忠実に反映しており、従来法に匹敵する精度での出来形管理が可能です。しかし、その一方でドローン計測には以下のような限界や課題も指摘されています。


点群密度と細部表現の限界: 写真測量で生成される点群は、撮影高度やカメラ解像度に依存するため、地上の微細な起伏や構造物の細部まで高密度に計測するには限界があります。上空からは捉えにくい垂直面の形状や、樹木の下・架構物の裏側などドローンでは死角となる部分は十分な点群が得られません。高精度な設計照査のためには一部で点群の欠落や粗密の差が生じることがあり、必要に応じて地上からの追加計測で補う必要が出てきます。

データ更新頻度の制約: ドローンによる3D計測は準備・飛行・画像処理の工程を伴うため、毎日やリアルタイムで気軽に実施できるものではありません。通常、出来形計測は工事の節目(週次や工程切替時など)にまとめて行われますが、その間に生じた地形変化や進捗の小さなズレを即座に把握することは困難です。例えば豪雨による土砂崩れや突発的な設計変更が発生した際にも、次回のドローン飛行まで詳細な現況把握を待たねばならず、測量データの空白期間が生じてしまいます。

空撮条件・運用上の制約: ドローンは飛行バッテリーに限りがあるため、広い現場を撮影する際は何度も離着陸と電池交換が必要です。また強風・降雨時は飛行自体が危険または不可となり、天候条件に大きく左右されます。周囲に高層物や樹木があるとGNSS信号が遮られ測位精度が低下しがちな点や、夜間や市街地上空での飛行には規制上の制約がある点も課題です。日本では2022年末より第三者上空飛行や夜間飛行にライセンス取得が義務化され、申請手続きや機体認証にも手間がかかります。つまり「誰でもいつでも簡単に飛ばせる」というわけにはいかず、小規模現場では初期投資や手間に見合わないケースも含め、ドローン測量単独では万能ではないのが現状です。


スマホRTK測位がもたらす新たな現場計測ワークフロー

上記の課題を解決する切り札として登場したのが、スマートフォンによる高精度測位です。近年のスマホ(特にiPhoneのProモデルなど)は、高性能カメラやLiDARセンサーを搭載し、AR(拡張現実)表示にも対応する非常にリッチなデバイスです。ここにRTK方式のGNSS受信機を組み合わせることで、スマホ1台がセンチメートル級の測量機器へと変身します。専用の小型RTKレシーバーをスマホに装着しアプリを起動すれば、数cm精度で現在位置を測定したり点群スキャンを行ったりでき、従来は専門機器と熟練技術者が必要だった作業を誰でも片手で実施可能にします。その手軽さ・機動力から、ドローンの運用が難しい場面や細部計測にスマホRTKが威力を発揮し、ドローン測量では得られない情報を地上から補完することができます。


スマホ+RTK測位の具体的な活用例として、現場では次のような取り組みが可能です。


現況点群データの補完・高密度化: スマホの搭載LiDARやカメラを用いて、構造物の細部や狭所の3Dスキャンを行い、高精度座標付きの点群データを取得できます。ドローン点群では十分捉えられなかった欠測エリアの補完や、より高密度で詳細な現況データの追加取得にスマホが役立ちます。例えば橋桁の下面やトンネル坑口付近など上空から死角となる部分も、地上からスマホでスキャンして点群化すれば、ドローンで取得した広域点群と統合して隙間のない完全な現場モデルを構築できます。スマホ点群にはRTKによる絶対座標が付与されているため、ドローン点群と位置合わせする手間もなくクラウド上でスムーズにデータ融合が可能です。

杭位置出し・丁張り作業のAR誘導: 設計図上の基準点や構造物の仕上がり位置を、スマホの画面越しにARで現地表示することで、杭打ちや墨出し作業を直感的に行えます。スマホのGNSS測位によって自分の現在位置と目標座標との差がリアルタイムに表示されるため、従来は測量チームで行っていた杭位置出しも1人でスマホを見ながら正確に誘導できます。例えば盛土の法肩ラインや構造物の据付位置に沿って、スマホ画面上に仮想的なラインやポイントを投影し、それに従って杭や丁張りを設置すれば、図面通りの位置出しが誰でも可能です。熟練を要する墨出し作業が簡素化され、人為ミスも減少します。また、安全面でも効果があります。重機稼働エリアで人が近づかずに済むため、測量員が重機に接触するリスクを低減できます。実際、急斜面の補強工事ではスマホのAR機能で示した杭位置を目印に、遠隔操作のドローンから塗料を噴射してマーキングする試みも行われています。人力では困難だった斜面上での杭位置マーキングを無人で安全に短時間で済ませることに成功した好例です。

地形変化の継続トラッキング: スマホ測位は必要なときに即座に計測を行えるため、工事の進捗や地形の変化を高頻度でモニタリングすることができます。例えば毎日の作業終了後にスマホで造成地を歩いて主要箇所の標高を測定しておけば、盛土・掘削の進行状況を日単位で数値管理できます。ドローン測量の間隔が空く場合でも、スマホで細かな地形変化を捉えておくことで、次回のドローン飛行時にどこがどれだけ変わったかを把握しやすくなります。また、大雨後に小規模な土砂崩れが発生した際なども、すぐにスマホで被災個所を測量して変状箇所の範囲や体積を記録できます。こうした継続的なトラッキングにより、工程管理の精度向上や異常発生時の即応体制強化が図れます。

精度検証・測量精度の補強: スマホRTKは従来の基準点測量や出来形検査の場面でも精度補強ツールとして活用できます。ドローン写真測量を行う際、事前にスマホで数点の既知点座標を測定しておけば、後処理時に点群の座標を補正するコントロールポイントとして機能します。また、出来形点群の品質を担保するために、スマホで計測した現場の要所数点の座標と点群データ上の対応点を照合し、誤差をクロスチェックするといった精度検証も簡便に行えます。誤差が大きければ即座に追加計測や再飛行の判断ができ、信頼性の高い測量成果を得ることにつながります。さらにスマホで取得した高精度座標は、そのまま機械施工の検証や他の測量機器の較正にも役立てることができます。例えばモーターグレーダーのブレード高さをスマホで独自に測って確認する、といった使い方をすれば、重機搭載GPSの精度確認にもなります。このようにスマホRTKを併用することで、ドローン測量データの精度を底上げしつつ安心して活用できるのです。


ドローン×スマホで広がる統合的な現場DXモデル

空中のドローン計測と地上のスマホ計測を組み合わせることで、施工プロジェクト全体を通じた統合的なデータ活用が可能になります。上空から俯瞰したマクロな視点のデータと、地上から得られるミクロな視点のデータを融合することで、現場のデジタルツイン(仮想空間上の現場再現モデル)を常に最新の状態にアップデートし続けることができます。このモデルにより、以下のように各種管理業務のDXが実現します。


施工管理(品質・出来高管理): ドローンとスマホで取得した点群データや高精度写真をクラウド上で一元管理することで、現場の出来高や品質をリアルタイムに把握可能です。例えば、日々更新される3D点群から埋め戻し土量を即座に算出して出来高管理に反映したり、ARを使って施工中の構造物に設計モデルを重ねて表示し仕上がりをその場で検証するといったことが誰でも行えます。これにより、手戻りややり直しを最小化し、常に設計基準を満たした施工品質を確保できます。

工程管理(進捗・スケジュール管理): ドローンによる定期的な全体測量と、スマホによる随時の部分測量を組み合わせることで、工事の進捗を定量的なデータに基づいて管理できます。毎週のドローン点群データを累積比較すれば、盛土・掘削が計画通り進んでいるかを視覚的に把握でき、遅れがあれば早期に手を打てます。さらに日々のスマホ測量データを工程表と照らし合わせることで、「どの作業が予定より進んでいる/遅れているか」を即座に把握し、柔軟な工程見直しが可能です。進捗状況を数値と3Dモデルで共有することで、発注者や関係者とのコミュニケーションも円滑になり、合意形成のスピードも向上します。

出来形管理(出来形検査・報告): 従来、工事完了後に行っていた出来形検査も、ドローン×スマホの連携で随時・並行的に実施できます。施工直後にスマホで必要箇所を測定し、そのデータをその日のうちに設計寸法と比較すれば、問題箇所は即日是正が可能です。出来形箇所に問題がなければそのまま記録として点群や数値を蓄積していき、最終的な検査時には既に十分なエビデンスデータが揃っている状態にできます。完成後にはドローンで現場全体の高密度点群を取得し、スマホ取得データと統合して詳細な出来形モデルを構築すれば、電子納品用の図書作成も効率的に行えます。点群データをもとに自動で横断図や出来形寸法表を生成する仕組みも整いつつあり、出来形管理の完全デジタル化が現実味を帯びています。

安全管理(安全確認・リスク低減): ドローンとスマホの活用は、安全管理の面でも大きな効果があります。危険箇所の事前調査はドローンで遠隔実施し、人が立ち入る前に崩落の兆候や不安定な地盤を把握できます。また、スマホのAR機能で立入禁止区域や地下埋設物の位置を現場に可視化すれば、作業員が誤って危険エリアに侵入したり、重機が埋設管を損傷するリスクを低減できます。高精度な位置情報付き写真を使えばヒヤリハット事例の共有も正確に行え、例えば「●●地点で落石あり」といった情報を地図上にピン留めして全員に注意喚起することが可能です。さらに災害発生時には、被災状況をドローンで空撮しつつスマホで詳細な現地記録を取ることで、二次災害の危険に晒されることなく状況把握と初動対応計画の立案が行えます。

維持管理(完成後の維持管理・点検): 施工完了後も、このドローン×スマホで構築した現場のデジタルデータは維持管理フェーズで貴重な財産となります。完成時の点群データや写真はそのまま電子納品の成果品となるだけでなく、将来の定期点検や補修計画のベースラインとして活用できます。例えば竣工後数年してから道路の沈下や構造物の変位が疑われる場合でも、過去の点群モデルと最新のスマホ測量データを比較すれば微小な変化を検知できます。点検員はスマホを携行して現場を巡回し、異常箇所の写真を撮影すればその位置が正確に記録されるため、事務所に戻ってから図面上で「どの地点だったか」を探す手間もありません。また、スマホのARで竣工図や埋設物モデルを現地投影すれば、掘削作業時に見えない構造物を可視化して損傷を防ぐこともできます。このように施工から維持管理まで一貫してデジタルデータを活用することで、ライフサイクル全体の効率化と高度化が期待できます。


BIM/CIMやクラウド活用で拡張するデータ連携

ドローン×スマホで取得したデータ基盤は、既存の様々なデジタルツールと連携させることでさらなる価値を生み出します。現場とオフィスを繋ぐデータハブとして機能し、関係者全員が同じ最新情報を共有できる環境を整えられます。主な連携例としては次の通りです。


BIM/CIMデータとの統合: 設計段階で作成されたBIM/CIMの3Dモデルと、施工中に取得した点群データや写真を重ね合わせて利用できます。統一座標系の下で設計モデルと出来形点群を突合せることで、施工精度を詳細に検証したり、設計変更時に現況データを取り込んで即座にモデルを更新したりできます。出来形管理要領にも基づき、点群と設計データの比較によって出来形の合否判定を行う仕組みが整備されており、BIM/CIM活用と3次元測量データは表裏一体の関係になりつつあります。

点群クラウドサービスの活用: 現場で取得した大量の点群データや写真測量成果は、クラウド上の共有プラットフォームで一元管理するのが効果的です。点群専用のクラウドサービス(プラウザ上で点群や3Dモデルを表示・計測できるもの)にデータをアップロードすれば、重いソフトをインストールしなくとも発注者や協力会社と3Dデータを共有できます。関係者はオフィスや遠隔地からでもウェブブラウザで現場の最新点群を閲覧し、高さや距離を測ったり断面を確認したりできます。URLリンク一つで情報共有が可能になるため、現場情報の伝達スピードが飛躍的に向上します。また、クラウド上で常に最新のデータが見られることで、図面や版数管理のミスも減らせます。

ARによる情報可視化: スマホやタブレットを使ったAR表示は、設計データや点群データを現場で直感的に活用する切り札です。例えば完成イメージの3Dモデルを現地に投影すれば、出来形の出来上がり像を発注者と現地で共有して認識齟齬を防げます。地中埋設物の位置情報をAR表示して見えない配管を透視するように表示すれば、掘削時のヒット事故を未然に防止できます。また、施工中に設計ラインをARマーカーとして地面に表示しながら作業すれば、図面を何度も見返す手間なく正確に施工位置・高さを合わせることができます。ARでデジタル情報を現実空間に重ねることで、現場作業のわかりやすさと確実性が格段に向上します。

高精度位置付き写真記録: スマホRTKを活用すると、現場で撮影する写真すべてにセンチ精度の位置座標タグを付与できます。これにより、撮りためた施工記録写真を地図や図面上にプロットして管理することが容易になります。「どの場所の写真か分からない」「あとで位置を思い出せない」という心配がなく、写真をクリックすればその撮影地点が地図上でハイライトされます。各写真には撮影方位も記録されるため、「どの方向を向いて撮ったか」まで含めて現場状況を再現可能です。この位置情報付き写真は、出来形提出書類の根拠資料や、工事進捗の視覚的な記録、さらには将来的な点検時の比較資料としても活躍します。写真という定性的情報に正確な座標という定量的要素が加わることで、現場記録の信頼性と活用度が飛躍的に高まります。


導入実例と今後の展望

こうしたスマホ高精度測位は既に現場への実装が始まっています。例えば、ある自治体(福井市)ではスマホRTKシステム「LRTK」を災害復旧の測量に活用し、従来よりも早期に復旧計画を立案して工期短縮とコスト削減の成果を上げました。LRTK(エルアールティーケー)は東京工業大学発ベンチャーが開発した超小型RTK-GNSS受信機とスマホアプリからなるソリューションで、iPhoneに装着するわずか約165gのデバイスで測量機器級の精度を実現します。その初期導入費用も数十万円程度と比較的低く抑えられており、専用の測量ドローンや3Dスキャナーを新規購入するより格段に安価です。このため中小の建設会社でも採用が進みつつあり、「自社で高精度な出来形測量を内製化して外注費を削減できた」「半日かかっていた出来形検測が1時間程度で完了した」など現場からは効果を実感する声が聞かれます。また、国土交通省の定める出来形管理要領(点群編)にもスマホやドローンを用いた点群計測の活用が明記されており、精度要件を満たせば正式な出来形計測手法として認められています。実際に国発注工事でスマホ点群データが出来形管理に採用された事例も報告されており、新技術もしっかりルールに沿って運用すれば問題なく公式成果として通用します。


ドローン×スマホRTKの組み合わせは、このように低コストかつ高精度で現場DXを推進できる次世代のソリューションとして注目されています。今後さらにデバイスやアプリが進化すれば、測量・施工管理の手法が大きく変革し、ますますスマートかつ安全な現場運営が可能になるでしょう。ICT施工の「次の一手」として、ドローンとスマホという身近なテクノロジーをフル活用し、是非皆様の現場にも新たなワークフローを取り入れてみてください。従来の常識を覆すような効率化と品質向上が、きっと実現できるはずです。


LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上

LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。

LRTKの詳細については、下記のリンクよりご覧ください。

 

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