建設業界でもデジタル技術を活用した生産性向上の波が押し寄せています。最近よく耳にするようになった「ICT施工」という言葉をご存知でしょうか?これは簡単に言えば、情報通信技術(ICT)を現場の建設作業に取り入れて業務を効率化する取り組みです。「なんだか難しそう…」「大企業だけの話では?」と感じる初心者の方もいるかもしれません。しかし実は、スマートフォンのような身近なツールから、低コストで現場のDX(デジタルトランスフォーメーション)を始めることができるのです。本記事では、ICT施工の基本から導入のメリット、そしてスマホを使った手軽な実践方法まで、やさしく解説します。
ICT施工とは?基礎をやさしく解説
ICT施工とは、Information and Communication Technology(情報通信技術)を活用して、測量や施工管理など建設現場の作業をデジタル化・効率化する手法のことです。従来は人の手や紙で行っていた作業を、コンピューターやセンサー、クラウドサービスなどを用いて行うイメージです。例えば、ドローンを飛ばして上空から地形を測量したり、重機にGPSや3D設計データを搭載して自動で整地したり、タブレットで図面や進捗を共有したりすることもICT施工の一例です。日本では国土交通省が「i-Construction(アイ・コンストラクション)」と呼ばれる施策で、このICT施工の普及を強力に推進しています。つまりICT施工は、単なる流行ではなく建設業の新しい当たり前になりつつあるのです。
なぜ今、ICT施工が必要なのか
では、なぜ今ICT施工がこれほど注目され、必要とされているのでしょうか?背景には、建設業界が抱えるさまざまな課題があります。
• 人手不足と高齢化: 長年、建設現場で働く人手が慢性的に不足しています。技能者の平均年齢は50代半ばに達し、ベテランの引退が相次ぐ一方で若い担い手が減少しています。このままでは現場を支える労働力が足りなくなる深刻な状況です。ICT施工は、少人数でも効率よく作業できる環境を整え、人手不足の解消に寄与します。
• 作業の非効率と長時間労働: 従来の手作業中心の施工では、測量に数日かかったり、図面の確認や報告に膨大な時間を要したりすることがありました。また現場とオフィス間で情報伝達に手間取り、ミスや手戻りが発生することもしばしばです。ICT技術を使えば、測量データを即座にデジタル化して共有したり、施工の進み具合をリアルタイムで把握できるため、作業のムダを省いて工期短縮や残業削減が期待できます。
• 紙図面や書類管理の限界: 紙の図面や書類での管理は、紛失・劣化のリスクや、最新版への差し替え漏れなどの問題があります。特に現場では図面が汚れたり破れたりすることも日常茶飯事でしょう。電子化された図面やクラウド上のデータ管理に切り替えれば、常に最新情報を全員が共有でき、図面の持ち運びも不要になります。
• 安全性と品質への要求: 高所や危険箇所での作業、ベテランの勘に頼った品質管理には、常に事故やばらつきのリスクが伴います。ICT施工であれば、ドローンで危険な場所を遠隔測量したり、機械が正確に施工することで、ヒューマンエラーや事故のリスクを減らせます。品質もデジタルデータに基づいて均一化しやすくなります。
こうした課題への対応策として、今まさにICT施工が求められているのです。国も2025年までに主要な公共工事でICT施工を原則化する目標を掲げており、今後はICTを活用できないと受注すら難しくなる可能性もあります。今のうちにデジタル技術に慣れておくことは、将来の必須スキルへの先行投資とも言えるでしょう。
ICT施工の導入で現場はどう変わる?
実際にICTを導入すると、現場にはどのような変化やメリットがあるのでしょうか。主なポイントをまとめてみます。
• 作業効率の大幅アップ: 測量や出来形(完成した構造物の形状)の計測が従来より格段にスピーデ ィーになります。例えばドローンや3Dスキャンを用いれば、広い造成地でも短時間で大量の測量データを取得可能です。人力で何日もかけていた測量が数時間で終わるケースもあり、工期短縮に直結します。
• 品質・精度の向上: デジタルな3D設計データに基づく施工により、仕上がりの精度が均一化します。職人の熟練度によるばらつきが減り、「勘や経験」に頼らない再現性の高い仕事が可能です。またICT機器はミリ単位の測位も可能なため、人の目視や手作業より誤差を大幅に減らせます。
• 安全性の向上: 危険を伴う作業ほどICTの威力を発揮します。例えば、急斜面の法面測量を人が行うのは危険ですが、ICTならドローンで安全に測量できます。重機オペレーターもマシンガイダンスにより暗闇や悪天候でも安全に作業でき、作業員の危険箇所への立ち入りを減らせます。結果として労働災害のリスク低減につながります。
• 少人数で施工可能: 機械化・自動化が進むことで、一つの現場に必要な人員を減らせます。例えば、ICT対応のブルドーザーならオペレーター1人で精密な造成ができ、補助作業員が不要になる場合もあります。測量も1人でドローンを飛ばし 、データ処理までこなせるため、「人手が足りないから仕事を受注できない」という状況を減らせます。
• 情報共有がスムーズ: 現場の進捗状況や測量データをクラウド経由で即時に共有できるため、離れたオフィスからでも状況を把握できます。現場代理人が逐一電話やFAXで報告しなくても、関係者全員が同じ最新情報をリアルタイムに閲覧可能です。認識のズレによるミスや手戻りが減り、チームのコミュニケーションも円滑になります。
スマホで広がるICT施工の可能性
ICT施工というと「ドローンや特殊な機械が必要なのでは?」と思うかもしれません。しかし最近では、現場で誰もが持っているスマートフォンが、ICTの強力な武器になりつつあります。スマホとアプリの組み合わせ、あるいは小型デバイスの活用で、次のようなことが可能です。
• スマホで測量: スマートフォンに搭載されたGPSや加速度センサー、カメラを活用すれば、簡 易的な測量や距離測定が行えます。専用のアプリを使えば、地図上でポイントの座標を取得したり、カメラをかざしておおよその寸法を計測したりすることも可能です。さらに、スマホに取り付ける小型の測位デバイスを使えば、従来の測量機器に匹敵するセンチメートル精度で位置を測定でき、重い三脚や複雑な機器なしで1人で測量を完結できます。
• スマホで出来形管理: スマホのカメラや3Dスキャン機能(近年のスマホにはLiDAR搭載モデルもあります)を使って、施工後の構造物や地形を撮影・記録し、出来形の確認に活用できます。例えば、掘削した土量をスマホでスキャンして体積を算出したり、舗装した道路の傾斜をセンサーでチェックしたりと、従来は職人の勘や手作業に頼っていた検測作業もデジタルにこなせます。データはスマホ内に保存されるので、写真台帳や出来形図もその場で自動生成され、後で書類をまとめ直す手間も省けます。
• スマホで進捗共有: スマートフォンはコミュニケーションツールとしても大活躍します。現場で撮影した写真や動画をクラウドの共有フォルダやチャットアプリにアップすれば、オフィスや別現場のメンバーともリアルタイムに状況を共有できます。口頭やメールだけでは伝わりにくい情報も、画像や映像があれば一目瞭然です。最近では施工管理用のモバイルアプリも登場しており、スマホから日報を送信したり、図面上に電子的に報告事項を書き込んだりすることで、現場とオフィスが一体となってプロジェクトを進められます。
おわりに:スマホ測量で手軽に始めるICT施工
最後に、ICT施工をぐっと身近にする具体的なソリューションとして、スマホで始められる高精度測量ツール「LRTK」をご紹介します。LRTKは東京工業大学発のスタートアップ企業が開発したポケットサイズのデバイスで、iPhoneやiPadなどに装着して使用します。これ1台をスマホに取り付けるだけで、スマホがセンチメートル級の精度を持つ万能測量機に早変わりします。現場で測りたいポイントにスマホをかざしてボタンを押せば、緯度・経度・高さといった位置情報を即座に記録できますし、連続測定して地形の3Dスキャンを行うことも可能です。取得したデータはリアルタイムでクラウドに共有できるため、現場で測ったそばからオフィスで結果を確認するといった使い方もできます。
従来の測量機器と比べて驚くほど手軽でありながら、その精度は本格的な測量に匹敵します 。重量はわずか数百グラム程度と軽量で、専用のポール(一脚)を使えば一人で楽に測量作業が行えます。ポケットに入れて持ち歩けるので、必要なときにさっと取り出して使える「1人1台」の現場ツールとして設計されています。価格も数十万円程度と従来の高価な測量機に比べ非常に導入しやすく、これなら中小企業や現場の試験導入にも最適でしょう。
LRTKのようなスマホ測量ツールを活用すれば、「ICT施工は難しそう」「機器が高いからウチには無理」といった不安をお持ちの方でも、自分のスマホから気軽にデジタル技術を使い始めることができます。まずは身近な業務の一部からデジタル化してみて、その便利さや効率アップを実感してみてください。一度ICT施工のメリットを体験すれば、今後の現場運営の考え方が大きく変わるはずです。スマートフォン片手に、ぜひ今日から低コスト現場DXを始めてみましょう!
LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上
LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。
LRTKの詳細については、下記のリンクよりご覧ください。
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