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ICT施工の内製化でつまずく5つの壁と対策

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万能の測量機LRTKの説明

著者: LRTKチーム

ICT施工を外部任せにせず、自社で扱える範囲を広げたいと考える会社は増えています。測量、3D設計データ、マシンガイダンス、マシンコントロール、出来形管理、電子納品に関わるデータ整理までを社内で回せるようになれば、工程の待ち時間を減らし、現場判断の速度を上げやすくなります。一方で、ICT施工の内製化は、機器を導入すれば自然に進むものではありません。人材、データ、現場運用、品質管理、費用対効果の見方がかみ合わないと、担当者だけが忙しくなり、現場全体には定着しないことがあります。


目次

ICT施工の内製化は何を自社で担うことなのか

壁1 人材が限られ担当者依存から抜け出せない

壁2 3D設計データと現場条件の差を吸収できない

壁3 測量と位置確認の精度管理があいまいになる

壁4 現場運用に落とし込めず従来作業と二重管理になる

壁5 成果物と記録の品質を安定させにくい

ICT施工の内製化を段階的に進める考え方

まとめ 内製化は全部を抱え込むことではなく判断力を社内に残すこと


ICT施工の内製化は何を自社で担うことなのか

ICT施工の内製化という言葉は、会社や現場によって意味が少しずつ異なります。ある会社では3D設計データの作成までを内製化と呼び、別の会社では現場での測量、建機用データの確認、出来形管理資料の整理までを含めて考えることがあります。まず大切なのは、自社でどこまで担うのかを曖昧にしないことです。内製化を「全部を自社で行うこと」と捉えると、最初から負荷が大きくなり、担当者の育成も設備投資も追いつきにくくなります。


ICT施工には、起工測量、設計照査、3D設計データ作成、施工計画、建機へのデータ搭載、日々の位置確認、出来形計測、帳票作成、発注者への説明、データ保管など、複数の工程があります。これらを一気に内製化しようとすると、どこでミスが起きたのかを追いにくくなります。最初は、外部に任せる部分と自社で確認する部分を分けるほうが現実的です。たとえば、3D設計データの作成は外部の支援を受けながら、自社では座標系、基準点、施工範囲、日々の出来形確認を重点的に見るという進め方があります。


内製化の本質は、作業をすべて社内に抱えることではなく、現場判断に必要な情報を自社で理解し、必要なタイミングで確認できる状態をつくることです。外部に依頼する場合でも、成果物を受け取って終わりではなく、現場の条件と合っているか、施工範囲が正しいか、基準点が使える状態か、出来形の確認方法に無理がないかを自社で判断できれば、ICT施工の主導権を保ちやすくなります。


特につまずきやすいのは、内製化の目的が「外注費を減らすこと」だけになってしまう場合です。費用を意識することは重要ですが、ICT施工では工程短縮、手戻り削減、若手への技術継承、現場説明のしやすさ、データの再利用性といった効果も含めて考える必要があります。目先の作業単価だけで判断すると、必要な教育や確認時間が削られ、結果として施工中の修正や再測定が増えることがあります。


内製化を進める前には、自社が困っている場面を具体化しておくことが大切です。3Dデータの修正待ちが多いのか、現場で座標確認に時間がかかるのか、出来形管理資料の整理が遅いのか、担当者が不在だとICT建機を使いにくいのかによって、優先して内製化すべき部分は変わります。課題を分けずに「ICT施工を内製化する」とだけ決めると、機器やソフトをそろえたのに現場の困りごとが残る状態になりやすいです。


壁1 人材が限られ担当者依存から抜け出せない

ICT施工の内製化で最初にぶつかりやすい壁は、人材の問題です。現場には測量に詳しい人、施工計画に強い人、建機の扱いに慣れた人、書類整理が得意な人がいますが、そのすべてを一人で担える人は多くありません。それにもかかわらず、内製化を始めると「ICTに詳しい担当者」に作業が集中しがちです。3D設計データの確認、座標変換、機器設定、現場説明、出来形資料の整理までが一人に集まると、その人が不在のときに現場のICT施工が進みにくくなることがあります。


担当者依存が強い現場では、周囲の人がICT施工を「専門担当者の仕事」と見てしまいます。すると、施工班はデータの中身を確認せず、職長は建機画面の表示だけを頼りにし、管理者は出来上がった帳票だけを見るという分断が起こります。この状態では、内製化しているように見えても、実際には社内の一部に作業が集中しているだけです。担当者が異動したり退職したりすると、ノウハウが残らず、次の現場でまた外部支援に戻ってしまうこともあります。


対策としては、まず業務を分解して、担当者一人にしかできない作業を減らすことが重要です。3D設計データを作る人、座標と基準点を確認する人、建機用データを現場条件と照合する人、出来形資料を整理する人を完全に分ける必要はありませんが、それぞれの確認観点を複数人が理解しておく必要があります。特に、座標系、基準点、施工範囲、測定日、データ更新履歴は、ICT担当者だけでなく現場代理人や主任技術者も確認できる状態にしておきたい部分です。


教育も、一度の講習で終わらせないほうがよいです。ICT施工は、座学だけでは身につきにくい分野です。現場で実際に測る、データを入れる、建機画面と現地を照合する、出来形結果を見て判断するという流れを何度も経験して、初めて自分の仕事として定着します。社内教育では、専門用語を覚えるよりも、どこを間違えると施工に影響するのかを理解することが大切です。たとえば、座標系の取り違え、基準点の選定ミス、設計面の範囲不足、古いデータの使用、測定対象と写真対象の不一致などは、現場で実害につながりやすいポイントです。


また、ICT施工の内製化では、若手だけに任せすぎないことも重要です。若手はデジタル機器への抵抗が少ない一方で、現場の納まりや施工手順の経験が浅い場合があります。逆に、ベテランは現場条件の読み取りに強くても、データ操作に苦手意識を持つことがあります。内製化を進めるなら、若手が機器やデータを扱い、ベテランが施工条件や現場判断を補う形が効果的です。双方の知識をつなげることで、単なるデータ操作ではなく、施工に使えるICT活用に近づきます。


標準手順書を作ることも有効ですが、分厚いマニュアルを作るだけでは使われにくいです。現場で必要なのは、作業前に見る確認項目、データ更新時に残す記録、測定前後に確認する基準点、エラーが出たときの初動対応など、実務に直結する短いルールです。誰が見ても同じ判断ができるように、ファイル名、保存場所、更新日、承認者、使用機器、測定条件をそろえておくと、担当者が変わっても引き継ぎやすくなります。


人材の壁を越えるには、ICTに詳しい一人を育てるだけでなく、現場全体の最低限の理解を底上げすることが欠かせません。内製化のゴールは、担当者の能力を極限まで高めることではなく、担当者が一人で抱え込まなくても現場が回る状態にすることです。


壁2 3D設計データと現場条件の差を吸収できない

ICT施工の内製化では、3D設計データを扱う場面でつまずくことが多くあります。設計図面をもとに3D化しても、現場でそのまま使えるとは限りません。図面上ではきれいにつながっている線形や横断でも、現地には既設構造物、仮設物、施工済み部分、地盤の変化、排水勾配、施工ヤードの制約があります。内製化を進めると、この「設計データと現場条件の差」を自社で見つけ、調整する力が求められます。


よくある失敗は、3D設計データを作ること自体が目的になってしまうことです。きれいな面データや線形データができても、施工範囲が現地と合っていなかったり、構造物との取り合いが抜けていたり、段階施工の切り替えが反映されていなかったりすると、現場では使いにくくなります。ICT建機にデータを入れてから気づくと、施工を止めてデータ修正を待つことになり、内製化によるスピード向上どころか、かえって工程を圧迫することがあります。


対策は、3D設計データを作成する前に、現場で使う目的を明確にすることです。建機の誘導に使うのか、出来形管理に使うのか、施工手順の確認に使うのか、発注者との協議に使うのかによって、必要な精度や作り込みの範囲は変わります。すべての情報を細かく作り込むことが正解ではありません。施工に必要な範囲、確認すべき高さ、管理する境界、注意すべき変化点を優先して整えることが大切です。


3D設計データの確認では、平面位置、高さ、勾配、施工範囲、既設物との取り合いを分けて見る必要があります。平面位置が合っていても高さが違えば施工には使えませんし、高さが合っていても施工範囲が古いままでは掘削や盛土の数量判断を誤ることがあります。特に、設計変更や施工範囲変更が発生した現場では、どのデータが最新版なのかを明確にしておく必要があります。古いデータを建機や測量機器に入れたまま施工すると、現地で大きな手戻りにつながる可能性があります。


内製化を進めるなら、データ作成者と現場担当者の確認会を早い段階で行うことが有効です。画面上で3Dデータを見るだけでなく、現地の写真、既設構造物、仮設計画、施工順序と照らし合わせながら確認します。現場担当者は、重機が入れるか、測量できる場所があるか、排水経路をふさがないか、段差や擦り付けに無理がないかを見ます。データ作成者は、座標系、線形、横断、面のつながり、欠けや重複を見ます。この二つの視点を合わせることで、施工前の修正がしやすくなります。


また、3D設計データは一度作って終わりではありません。現場では、設計変更、施工順序の変更、仮設計画の変更、出来形結果を踏まえた補正などが起こります。そのたびにデータを更新するなら、更新日、変更内容、変更理由、承認状況、使用開始日を残しておく必要があります。ファイル名だけで最新版を判断する運用は避けるべきです。似た名前のデータが複数あると、現場で誤って古いデータを使うことがあります。


3D設計データの壁は、専用操作の難しさだけではありません。現場で使えるデータかどうかを判断する力が問われます。内製化するなら、データ作成技術と同じくらい、現場照査の流れを整えることが重要です。


壁3 測量と位置確認の精度管理があいまいになる

ICT施工では、位置情報が施工品質の土台になります。どれだけ3D設計データを整えても、現場で使う基準点や測位条件が不安定であれば、施工結果にも影響します。内製化を進めると、外部に任せていた測量や位置確認の一部を自社で行うことになります。そのときに、精度管理の考え方が曖昧なままだと、見た目にはICT施工ができているようでも、出来形や施工位置に不安が残ります。


よくあるつまずきは、機器が示す数値をそのまま信用してしまうことです。測量機器や衛星測位機器は便利ですが、現場条件によって結果が変わることがあります。周囲の建物、樹木、法面、鉄骨、架空線、重機、仮囲いなどが影響する場合もあります。測定した点が正しいかどうかは、機器の画面だけでなく、既知点との照合、複数回の確認、周辺地物との関係、施工前後の変化を合わせて判断する必要があります。


基準点の扱いも重要です。工事で使う基準点が動いていないか、視通や測位環境が確保できるか、日々の作業で破損や埋没のリスクがないかを確認しなければなりません。特に、盛土、掘削、仮設道路、重機の旋回範囲に近い点は注意が必要です。基準点が不安定なまま測定を続けると、データ全体が同じ方向にずれてしまい、後から原因を追いにくくなります。


内製化の対策としては、測定前の確認と測定後の確認をルール化することです。測定前には、使用する基準点、座標系、機器設定、測定対象、測定者、天候や周辺条件を確認します。測定後には、既知点への戻り確認、前回測定値との比較、設計値との差、写真やメモとの整合を確認します。重要なのは、単に測った結果を保存するだけでなく、どの条件で測ったのかを残すことです。後から見返したときに、結果の妥当性を説明できる状態にしておく必要があります。


また、精度管理では、すべての作業に同じ精度を求めないことも大切です。施工の目安として使う位置確認と、出来形管理として提出する測定では、求められる確認の厳しさが異なります。内製化を始めたばかりの段階では、この区別が曖昧になりやすいです。現場の段取り確認、日常の進捗確認、重要な構造物の位置確認、完成時の出来形確認を同じ感覚で扱うと、必要以上に手間が増えたり、逆に重要な場面で確認不足になったりします。


測量と位置確認を内製化する場合、記録の取り方も現場で統一しておきたい部分です。測点名、測定日時、測定者、使用した基準点、測定方法、対象物の説明、写真との対応がばらばらだと、後から帳票を作るときに苦労します。特に、位置情報付き写真を使う場合は、写真を撮った位置と写っている対象物の位置が必ずしも同じではないことに注意が必要です。撮影位置の座標なのか、対象物の座標なのかを混同すると、説明資料として誤解を招くことがあります。


精度管理の壁を越えるには、機器を使える人を増やすだけでは不十分です。測定結果を疑い、照合し、説明できる流れを現場に組み込む必要があります。ICT施工の内製化では、測る技術と同じくらい、測った結果を管理する技術が重要です。


壁4 現場運用に落とし込めず従来作業と二重管理になる

ICT施工の内製化で多い悩みが、従来作業との二重管理です。ICT建機や3Dデータを使っているのに、結局は従来の丁張、紙図面、手書きメモ、別管理の写真台帳も残り、作業が増えたように感じる現場があります。内製化の目的は効率化のはずなのに、現場では「ICT施工のための仕事」が追加され、担当者の負担が増えることがあります。


二重管理が起きる原因は、ICT施工を現場の作業手順に組み込めていないことです。従来の施工管理の流れに、後から3Dデータや測定記録を追加すると、同じ情報を複数の場所に入力することになります。たとえば、施工範囲を紙図面で確認し、別に3Dデータで確認し、さらに日報に手入力し、写真台帳にも同じ内容を書くような運用です。これではICT施工が便利な道具ではなく、追加業務になってしまいます。


対策は、現場の一日の流れにICT施工の確認点を入れ込むことです。朝礼前に当日の施工範囲と使用データを確認し、作業前に基準点や測位状態を確認し、施工中に変化点を記録し、作業後に出来形や進捗データを整理するというように、既存の流れと結びつけます。ICT施工の確認を特別な作業にせず、通常の施工管理の一部として扱うことで、二重管理を減らしやすくなります。


現場で使う情報の置き場所も重要です。3D設計データ、施工範囲図、測量記録、写真、出来形結果、変更指示、協議記録がばらばらに保存されていると、探す時間が増えます。内製化では、データを作ることよりも、現場の誰がどこを見ればよいかを決めることが大切です。最新版のデータ、作業中のデータ、提出済みのデータ、参考資料を分けて保管し、現場で誤って古い情報を使わないようにします。


また、ICT施工の運用では、職長やオペレーターへの伝え方が大きなポイントになります。管理者だけが3Dデータを理解していても、実際に施工する人が使い方を理解していなければ、現場では定着しません。建機画面に表示される高さや位置が何を意味するのか、どの範囲はデータに従い、どの範囲は現地確認を優先するのか、異常値が出たときに誰へ連絡するのかを共有しておく必要があります。特に、設計面の端部、既設構造物との取り合い、施工範囲の境界、仮設物周辺は判断が必要になりやすい部分です。


二重管理を避けるには、紙をすべてなくすことを目的にしないほうがよいです。現場では、紙図面や手書きメモが有効な場面もあります。大切なのは、同じ情報を意味なく複数回入力しないことです。紙で確認した内容を最終的にどのデータに反映するのか、現場メモをどの記録に残すのか、写真と測点をどのように結びつけるのかを決めておけば、紙とデジタルを併用しても混乱は少なくなります。


内製化は、現場の仕事を置き換える取り組みではなく、現場判断を早くするための仕組みづくりです。従来作業を否定するのではなく、どの作業を残し、どの作業をデジタルに置き換え、どの作業を簡略化するのかを現場ごとに見直すことが必要です。


壁5 成果物と記録の品質を安定させにくい

ICT施工を内製化すると、最終的には成果物の品質が問われます。施工中に便利に使えたとしても、出来形管理資料、測量記録、写真、変更履歴、電子納品用データが整理されていなければ、検査や社内確認で苦労します。外部に任せていたときは成果物だけを受け取っていた会社でも、内製化すると作成過程の管理まで自社で担うことになります。


つまずきやすいのは、施工中の記録と提出用の成果物がつながっていないことです。現場では日々測定し、写真を撮り、データを更新しているのに、最後に帳票を作る段階で必要な情報が不足していることがあります。測定条件が残っていない、写真の対象が分からない、設計変更前後のデータが混ざっている、測点名が統一されていない、使用した基準点が不明といった状態です。こうなると、最後に担当者が記憶を頼りに整理することになり、品質が安定しません。


対策としては、最終成果物から逆算して記録項目を決めることが重要です。検査や協議で説明が必要になる情報を先に洗い出し、施工中に自然に残る形にしておきます。出来形の測定結果だけでなく、測定日、測定者、測定対象、設計値、実測値、差分、写真、使用データ、基準点、確認者を紐付けておくと、後で説明しやすくなります。特に、施工中に是正や再施工が発生した場合は、是正前、是正内容、是正後の確認を分けて残すことが大切です。


ファイル管理も成果物品質に直結します。ICT施工では、設計データ、測量データ、点群データ、写真、帳票、協議資料など、多くのファイルが発生します。保存場所や命名ルールが曖昧だと、似たようなファイルが増え、どれが正式な成果物なのか分からなくなります。内製化を進めるなら、現場開始時点でフォルダ構成、ファイル名、更新履歴、提出済みデータの扱いを決めておくと運用しやすくなります。後から整理するより、最初から整理しやすい形で保存するほうが負担は小さくなります。


品質を安定させるには、社内チェックのタイミングも必要です。完成時にまとめて確認するのではなく、起工測量後、3D設計データ作成後、施工開始前、主要な出来形測定後、設計変更後、完成前というように、節目で確認します。特に、施工開始前のデータ確認と、出来形測定直後の記録確認は重要です。ここで不備を見つけられれば、現場で再確認しやすく、後から原因を追う負担を減らせます。


発注者や監督員への説明も、成果物品質の一部です。ICT施工では、数値やデータを示せる反面、説明の流れが整理されていないと相手に伝わりにくくなります。どのデータを基準にしたのか、どの範囲を測定したのか、どのような条件で取得したのか、結果をどう判断したのかを、現場の言葉で説明できるようにしておく必要があります。画面や帳票の数値を見せるだけでなく、施工管理上の意味を説明できることが大切です。


内製化初期の段階では、すべてを完璧にしようとすると負担が大きくなります。まずは、ミスが起きると影響が大きい部分から標準化するのが現実的です。座標系、基準点、最新版データ、施工範囲、出来形測定結果、写真との紐付け、変更履歴は優先して整えたい項目です。これらが安定すれば、成果物の品質も大きく崩れにくくなります。


ICT施工の内製化を段階的に進める考え方

ICT施工の内製化は、段階的に進めるほうが定着しやすいです。最初から全工程を自社で行おうとすると、担当者の負担が大きくなり、現場の協力も得にくくなります。まずは、社内で効果を実感しやすい部分から始めることが大切です。たとえば、現場の位置確認、簡易な出来形確認、施工範囲の共有、写真と座標の整理などは、比較的始めやすい領域です。ここで成功体験を作ると、次の現場で3Dデータ確認や建機連携にも広げやすくなります。


段階化の第一歩は、現場の見える化です。現在、どの作業を外部に依頼しているのか、どの作業を社内で行っているのか、どこで待ち時間や手戻りが発生しているのかを整理します。内製化の対象を決めるときは、作業量だけでなく、現場判断への影響を見ます。たとえば、3D設計データの細かな作成は外部支援を受けても、日々の位置確認や施工範囲の照合を社内でできるようにするだけで、現場判断は早くなることがあります。


次に、社内で共通の確認ルールを作ります。ICT施工では、現場ごとに条件が違うため、すべてを一つの手順に固定することは難しいです。しかし、確認する観点は共通化できます。座標系は合っているか、基準点は使える状態か、データは最新版か、施工範囲は現地と合っているか、測定結果は写真や記録と紐付いているかという確認は、多くの現場で必要になります。共通の観点を持っておけば、現場条件が変わっても応用しやすくなります。


小規模な試行も有効です。いきなり大きな工区全体で内製化するのではなく、限られた範囲や工程で試します。たとえば、一部の盛土範囲、仮設道路、排水構造物周辺、施工前後の比較測定など、範囲を絞ってICT施工の流れを確認します。小さく試すことで、機器設定、データ管理、測定記録、現場説明のどこに負担があるのかが見えます。試行で得た課題を次の工程に反映すれば、無理なく範囲を広げられます。


外部支援との付き合い方も見直す必要があります。内製化は外部支援を使わないことではありません。むしろ、初期段階では外部の知見を活用しながら、自社で判断すべき部分を増やすほうが安全です。重要なのは、外部に丸投げしないことです。成果物を受け取るだけでなく、作成条件、使用データ、確認方法、変更点を説明してもらい、自社側で理解する時間を確保します。これを繰り返すことで、次回以降に自社で対応できる範囲が広がります。


また、内製化の成果は、単に作業時間や費用だけで評価しないほうがよいです。施工前の確認が早くなった、現場での手戻りが減った、発注者への説明がしやすくなった、若手が座標や出来形を理解しやすくなった、データを次の現場に活かせるようになった、といった効果も重要です。ICT施工は、現場管理の質を上げる取り組みでもあります。数字にしにくい効果も、社内で共有しておくことで継続しやすくなります。


段階的に進めるうえでは、現場ごとの振り返りが欠かせません。うまくいった点、つまずいた点、次回から標準化する点、外部支援が必要な点を整理します。振り返りを担当者の感想で終わらせず、チェックリストや手順に反映すると、内製化の経験が会社の資産になります。現場が終わるたびに少しずつ改善していくことで、ICT施工は特別な取り組みではなく、通常の施工管理の一部になっていきます。


まとめ 内製化は全部を抱え込むことではなく判断力を社内に残すこと

ICT施工の内製化でつまずく壁は、人材不足、3D設計データと現場条件の差、測量と位置確認の精度管理、従来作業との二重管理、成果物品質の安定化に集約されます。どれも機器やソフトを導入するだけでは解決しません。現場で誰が確認し、どのデータを使い、どの条件で測定し、どのように記録し、どのタイミングで判断するのかを決めておく必要があります。


内製化を成功させるためには、最初から全工程を自社で完結させようとしないことが大切です。外部支援を活用しながら、自社で理解すべき部分、自社で確認すべき部分、自社で判断すべき部分を少しずつ増やします。特に、座標系、基準点、施工範囲、最新版データ、出来形結果、写真記録、変更履歴は、社内で説明できる状態にしておきたい項目です。ここが押さえられていれば、外部に依頼する範囲が残っていても、現場の主導権は保ちやすくなります。


ICT施工は、デジタル技術を使う取り組みであると同時に、現場の確認力を高める取り組みです。3Dデータや測位結果をただ受け取るのではなく、現地と照合し、施工手順に落とし込み、記録として残すことで、手戻りを減らしやすくなります。内製化の価値は、担当者が高度な操作を覚えることだけではなく、現場全体がデータを見て判断できるようになることにあります。


これからICT施工の内製化を進めるなら、まずは日々の位置確認や基準点確認、写真と座標の整理など、現場で効果を感じやすい部分から始めるのが現実的です。スマートフォンを活用したRTK測位や位置情報付きの記録を組み合わせれば、現場での確認作業を身近なものにしやすくなります。ICT施工を特別な専門作業で終わらせず、現場の誰もが位置と出来形を確認しやすい環境づくりへ進めるなら、スマートフォンを使った手軽な位置確認から検討してみるとよいです。


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