i-Construction 2.0という言葉を見て、「結局これまでのICT活用と何が違うのか」「現場では何を変えればいいのか」と感じている実務担当者は少なくありません。実際、i-Construction 2.0は単なる言い換えではなく、従来の“ICTで作業を助ける”発想から一歩進み、建設現場全体をオートメーション化していく方向へ舵を切った政策です。国土交通省は、2040年度までに少なくとも省人化3割、すなわち生産性1.5倍の実現を目標に掲げ、施工、データ連携、施工管理の3つを柱として取組を進めています。
一方で、従来のi-Constructionが成果を出してこなかったわけではありません。国土交通省の整理では、ICT施工は2022年度時点で実施可能な直轄土木工事の87%で活用され、2015年度比で平均約21%の作業時間短縮効果も確認されています。ただ、その延長線だけでは今後の担い手不足に対応しきれないため、より抜本的な省人化へ進む必要がある、というのがi-Construction 2.0の出発点です。
目次
• i-Construction 2.0の全体像
• 変化1 施工が「支援」から「オートメーション化」へ
• 変化2 データが部門ごと管理から前後工程でつながる
• 変化3 施工管理が現場常駐前提からリモート・オフサイト前提へ
• 変化4 検査・出来形確認が書類中心からデジタル確認中 心へ
• 変化5 現場担当者に求められる役割が変わる
• i-Construction 2.0に現場がどう備えるか
• まとめ
i-Construction 2.0の全体像
i-Construction 2.0を理解するうえでまず押さえたいのは、対象が単なる施工機械の高度化ではないという点です。国土交通省は、背景として2040年度に生産年齢人口が約2割減少する見通しや、災害の激甚化・頻発化、インフラ老朽化への対応増を示したうえで、建設現場全体のオートメーション化を進める必要があると整理しています。そのうえで、施工のオートメーション化、データ連携のオートメーション化、施工管理のオートメーション化の3本柱を設定しました。
ここで重要なのは、i-Construction 2.0が「現場だけ」の話ではないことです。国土交通省の本文では、建設現場という言葉を、調査・測量、設計、施工、検査、維持管理・更新までの各段階を含む広い意味で使っています。つまり、2.0対応とは重機の自動化だけではなく、設計データの扱い方、測量成果のつなぎ方、監督検査のやり方、維持管理へ渡す情報の整え方まで含めて変わる、ということです。
また、従来のi-Constructionが「ICTの活用による支援」を中心にしていたのに対し、i-Construction 2.0は「自動化・省人化」を前面に出しています。この違いは現場感覚に引き直すと分かりやすく、これまでは人が主役でデジタルが補助でしたが、これからはデジタルと機械が一定部分を担い、人は判断、監理、例外対応、全体最適化に比重を移していく流れだと言えます。
変化1 施工が「支援」から「オートメーション化」へ
1つ目の変化は、施工の考え方そのものです。国土交通省は、現在の建設現場を「経験豊富な技術者の指揮の下で施工計画を作成し、オペレータが建設機械に搭乗して操作する」形として整理したうえで、今後は各種センサーで現場情報を取得し、AIなどを活用して自動的に作成された施工計画に基づき、一人のオペレータが複数の建設機械の動作を管理する方向を示し ています。つまり、施工は人がすべてを直接動かす仕事から、人が自動化された施工を管理する仕事へ変わっていきます。
ただし、これは「明日から全面無人化する」という意味ではありません。国土交通省のロードマップでは、短期目標を「現場取得データをリアルタイムに活用する施工の実現」、中期目標を「大規模土工等の一定の工種・条件下での自動施工の標準化」、長期目標を「大規模現場での自動施工・最適施工の実現」としています。現場実務では、まず測量データ、出来形データ、機械稼働データ、進捗データをその場で使えるようにし、その積み上げで自動化の度合いが高まっていくと理解するのが実態に合っています。
さらに、施工の省人化ロードマップ案では、ICT施工について2025年度に土工・河川浚渫工の発注者指定で原則化し、その後、舗装工や地盤改良工などへ順次拡大する方向が示されています。ここから読み取れるのは、ICT施工が一部の先進現場だけの選択肢ではなく、標準的な施工方式に近づいていくということです。現場担当者にとっては、「対応できれば加点になる」段階から、「対応していないと仕事の進め方そのものが合わなくなる」段階へ移っていくと考えたほうがよいでしょう。
この変化の本質は、重機を最新化することだけではありません。施工条件、地形、進捗、出来形、安全情報をデータとして捉え、施工判断に即時反映できる体制をつくることが本丸です。機械が新しくても、現場のデータ取得や共有が遅ければ、2.0の効果は出ません。逆に言えば、いきなり完全自動化に届かなくても、リアルタイムに現場を見える化できる体制をつくるだけで、2.0対応はすでに始まっています。
変化2 データが部門ごと管理から前後工程でつながる
2つ目の変化は、データの扱い方です。i-Construction 2.0では、調査・測量、設計、施工、維持管理といった建設生産プロセス全体をデジタル化・3次元化し、必要な情報を必要なときに加工できる形式で容易に取得できる環境を整えることが重視されています。国土交通省は、このデータ連携により、同じデータを繰り返し手入力することをなくし、不要な調査や問い合わせ、復元作業、資料を探す手間や待ち時間の削減を進めるとしています。
これは実務でいえば、測量成果を設計に渡し、設計情報を施工に渡し、施工で得た出来形や進捗を検査や維持管理に渡すときに、毎回人が読み替えたり、打ち直したり、紙に起こし直したりする仕事を減らすことです。これまで現場では、図面は図面、測量は測量、写真は写真、出来形は出来形で管理され、同じ場所の情報でも表現形式が違うために再入力や照合作業が発生しがちでした。i-Construction 2.0は、その分断を縮める方向にあります。
この流れを支えるのがBIM/CIMです。国土交通白書では、令和5年度からすべての直轄土木業務・工事(小規模なもの等を除く)にBIM/CIMを原則適用し、令和6年度には「3次元設計」「BIM/CIM積算」「デジタルデータを活用した監督・検査」の試行を開始したと整理しています。つまり、3次元モデルを作ること自体が目的なのではなく、設計から施工、積算、監督検査へとデータをつなげて使うための基盤としてBIM/CIMが位置づけられているわけです。
さらに2025年度の取組予定では、3次元モデルと2次元図面の連動を原則化するための取組、3次元モデルを工事契約図書として活用するためのロードマップ作成・公表、属性情報の標準化を進めるBIM/CIM積算の試行拡大などが示されています。現場目線で見れば、これから大事になるのは「データを作ったかどうか」ではなく、「後工程でそのまま使えるデータになっているかどうか」です。座標の整合、属性の付け方、命名ルール、更新履歴、モデルと図面の関係が曖昧だと、データ連携はすぐに止まります。
したがって、i-Construction 2.0対応では、現場担当者もデータ品質の入口を意識する必要があります。たとえば、同じ構造物を複数人が別々のルールで記録していたり、測量成果と設計モデルの基準がずれていたり、写真や点群に必要な属性が付いていなかったりすると、後工程で使えません。2.0で求められるのは、データ量の多さではなく、現場から維持管理まで通用する一貫性です。
変化3 施工管理が現場常駐前提からリモート・オフサイト前提へ
3つ目の変化は、施工管理の前提条件です。i-Construction 2.0では、施工管理のオートメーション化を「リモート化・オフサイト化」と明記しています。国土交通省は、2022年3月に遠隔臨場に関する実施要領を策定し、2022年度から原則すべての直轄土木工事に適用してきました。さらに2024年3月には遠隔臨場による工事検査に関する要領も策定し、2024年度から原則すべての直轄土木工事の検査へ適用しています。
この意味は大きく、これまで「確認のために現場へ行く」が前提だった仕事の一部が、「現場から適切にデータを取り、離れた場所で確認する」に置き換わり始めているということです。現場での立会、段階確認、検査のすべてがゼロになるわけではありませんが、誰が、どのタイミングで、何を、どう確認するかの設計が変わります。管理者の価値は、現場に長くいることそのものではなく、必要な確認を適切な形で実施し、異常を見逃さず、意思決定を早めることへと移っていきます。
2025年度の取組予定を見ると、この流れはさらに強まっています。施工管理、監督・検査のリモート化に加え、高速ネットワーク整備やデータセンター整備、3次元計測技術の活用などが示されており、大容量データを前提としたオフサイト型の仕事環境づくりが進められています。これは単なる通信環境の話ではなく、3次元モデル、点群、映像などを日常的に扱う施工管理体制への移行を意味します。
さらに遠隔施工も、災害復旧など限られた場面だけのものではなくなりつつあります。国土交通省資料では、2025年度は国土交通省発注 工事で36件の工事において遠隔施工を実施し、前年度の21件から増加しました。しかも工種は砂防だけでなく、河川、道路、ダム、海岸へと広がっています。つまり、リモート化は特殊現場の例外対応ではなく、通常工事にも拡大している実務テーマだと理解すべきです。
現場担当者として押さえるべきなのは、リモート化は「人が楽をするための仕組み」ではなく、「確認の質を落とさずに、移動・待機・立会の無駄を減らすための仕組み」だという点です。したがって、映像が見えれば十分なのではなく、撮影位置、時刻、対象、測定値、関係書類、通信状態、保存方法まで含めて再現性のある運用が必要です。現地での作業とオフィスでの判断が切り離されるからこそ、ルールの曖昧さはむしろ大きなリスクになります。
変化4 検査・出来形確認が書類中心からデジタル確認中心へ
4つ目の変化は、検査や出来形確認の考え方です。i-Construction 2.0ではペーパーレス化が単独で語られているのではなく、データを可視化し、分析や判断ができる状態にすることが重視されています。2025年度の取組予定では、デジタルデータを活用した監督・検査について 、令和6年度の試行結果を踏まえ、出来型面管理データを現地で重ね合わせて監督・検査を実施した場合、出来形管理図表の作成・提出を不要とするよう要領を改訂したと示されています。これは、紙をデジタルに置き換えるだけでなく、確認方法そのものを変える動きです。
また、BIM/CIM推進委員会の資料では、3次元モデルやAR等のデジタル技術を活用した監督・検査の試行事例が整理されており、道路土工や河川土工、コンクリート構造物などで、ヒートマップや3次元モデルを現地に重ね合わせて出来形を視覚的に確認し、従来の図表作成を省略する方向が示されています。現場にとってこれは、検査資料づくりの負担軽減だけでなく、その場で良否を把握しやすくなり、手戻りを早期に防ぎやすくなるという意味を持ちます。
さらに、国土交通省は画像解析による配筋確認の省力化や、生コンクリート受入時の品質試験の一部省人化にも取り組んでいます。配筋ではデジタルカメラ画像から間隔や本数、径、かぶりを確認する方向が示され、生コンでは画像解析を活用して現場受入時の品質試験を代替する試行が進められています。ここから分かるのは、検査は今後ますます「書類を整える仕事」ではなく、「元データを正しく取得し、信頼できる形で確認可能にする仕 事」へ変わるということです。
この変化に対応するためには、現場での記録品質がこれまで以上に重要になります。撮影位置が曖昧、計測タイミングが不明、座標基準がずれている、モデル更新が反映されていない、といった状態では、あとからどれだけ見栄えのよい帳票を作っても信頼性は担保できません。i-Construction 2.0では、帳票の完成度よりも、元データの整合性と再利用性が問われるようになります。
変化5 現場担当者に求められる役割が変わる
5つ目の変化は、人の役割です。i-Construction 2.0というと「人が要らなくなるのではないか」と受け取られがちですが、国土交通省は2025年度の取組予定の中で、オートメーション化を進めてもなお建設現場に人の介在は不可欠であり、働き方改革の推進が必須だと明記しています。つまり、現場担当者が不要になるのではなく、現場担当者に求められる仕事の中身が変わるのです。
施工のオートメーション化のロードマップでも 、人材育成として自動施工コーディネーターや遠隔施工オペレータの育成が示されています。これは、今後の現場では、単に機械を動かせることよりも、複数の施工データを理解し、異常時に介入し、遠隔でも安全と品質を保てる人材が重要になることを示しています。経験が不要になるのではなく、経験の使い方が「手を動かす」から「判断を設計する」へ変わるのです。
この流れから考えると、これからの実務担当者には、3次元モデルを読み解く力、座標や属性情報の意味を理解する力、遠隔での確認手順を設計する力、データの抜けや矛盾を見つける力がより強く求められます。加えて、施工・設計・測量・検査の境界で何がつながっていないのかを見抜き、必要なルールを決められる人が現場で重宝されるようになります。これは国土交通省が進めるデータ連携、BIM/CIM、リモート施工管理の方向性から見ても自然な流れです。
ここで誤解してはいけないのは、すべての現場がいきなり高度な自動施工に進まなければならないわけではない、ということです。中小規模の現場でも、測量成果の扱いを統一する、写真や出来形データを後工程で使いやすくする、遠隔で確認できる作業を整理する、といった実務改善はすぐに始められます。i-Construction 2.0対応とは、大規 模な技術導入だけでなく、現場運営をデータ前提に組み替えていくことでもあります。
i-Construction 2.0に現場がどう備えるか
i-Construction 2.0に備えるうえで大切なのは、最初からすべてを変えようとしないことです。まずは、調査・測量、設計、施工、検査のどこで同じ情報を繰り返し入力しているのか、どこで図面と現場がずれているのか、どこで確認のためだけに移動しているのかを洗い出すことが出発点になります。i-Construction 2.0は、機器導入の話である前に、ムダな手戻りと再入力を減らす仕事の再設計です。
次に、1本の業務フローを決めて、そこでデータをつなぐ練習をすることが有効です。たとえば、起工測量から施工管理、出来形確認、検査までで、同じ座標系、同じ命名ルール、同じ構造物単位でデータを扱うようにするだけでも、情報の断絶はかなり減ります。BIM/CIMや3次元モデルを本格的に使う場合も、最初に必要なのは高価な仕組みを増やすことではなく、現場で取得するデータの基準を揃えることです。
また、リモート化に向く確認業務と、どうしても現地で見るべき確認業務を分けて考えることも重要です。遠隔臨場やデジタル検査は万能ではありませんが、対象、画角、記録方式、保存ルール、通信条件を決めておけば、大きな効果を出せます。逆に、その前提を決めないまま試すと、「やはり現場に行ったほうが早い」という結論になりやすく、せっかくの2.0対応が定着しません。
そして、最後に見落とされがちなのが、現場で最初に取得する位置情報や計測データの重要性です。施工の自動化でも、データ連携でも、リモート施工管理でも、入口となる現場データが不安定だと後工程がすべて苦しくなります。だからこそ、日々の測位、現況把握、位置付き写真、出来形確認の精度と扱いやすさを底上げすることが、i-Construction 2.0への最短ルートになります。
まとめ
i-Construction 2.0で変わることを実務目線でまとめると、施工は支援からオートメーション化へ進み、データは部門内の資料ではなく前後工程をつなぐ資産になり、施工管理は現場常駐前提からリモート・オフサイト前 提へ移り、検査は書類中心からデジタル確認中心へ変わり、現場担当者には機械操作以上にデータと判断をつなぐ役割が求められるようになります。これらは別々の変化ではなく、すべてが「少ない人数で安全に、生産性高く現場を回す」という同じ方向につながっています。
そのため、i-Construction 2.0対応を考えるときは、何か1つの新技術を導入して終わりではなく、現場で取得したデータを後工程まで使い回せる形で残せるかどうかが重要です。現場の測位や記録の入口を整えたいなら、iPhone装着型GNSS高精度測位デバイスであるLRTKのように、日々の位置情報取得、写真記録、簡易測量を実務に乗せやすい手段から見直すのは、無理のない始め方です。i-Construction 2.0は大きな政策ですが、実務としての第一歩は、現場で取るデータを正しく、速く、次工程につなげられる状態にすることから始まります。
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