目次
• i-Constructionが省人化の文脈で注目される理由
• i-Constructionで省人化が進む仕組み
• 導入効果1 測量作業の省人化
• 導入効果2 施工計画と準備業務の省人化
• 導入効果3 施工段階の省人化
• 導入効果4 出来形管理と検査対応の省人化
• 導入効果5 情報共有と書類業務の省人化
• 導入効果6 維持管理を見据えた省人化
• i-Constructionで省人化を進める際の注意点
• 省人化を成果につなげるために重要な考え方
• まとめ
i-Constructionが省人化の文脈で注目される理由
建設業の現場では、以前から人手不足が大きな課題として語られてきました。現場作業に必要な人数を確保しにくいだけでなく、経験者の高齢化や若手不足、受注量の変動への対応、現場ごとに異なる条件への適応など、単純に人数を増やすだけでは解決しにくい問題が重なっています。こうした背景の中で注目されているのが、i-Constructionによる省人化です。
ここでいう省人化は、単に人を減らすという意味ではありません。必要な品質や安全性を保ちながら、従来より少ない人数で業務を回せる体制をつくることです。建設業では、人数を減らした結果として品質低下や手戻り増加が起きてしまっては意味がありません。そのため、本当に求められているのは、人の仕事を雑に減らすことではなく、作業のやり方そのものを見直して、少人数でも成立する生産体制をつくることです。
i-Constructionは、この考え方と非常に相性がよい取り組みです。調査や測量、設計、施工、検査、維持管理といった一連の流れの中で、デジタルデータを活用しながら業務をつなげていくことで、重複作業や無駄な確認、紙中心のやり取り、属人的な判断に依存しすぎた進め方 を見直しやすくなります。つまり、省人化の本質は、作業者の気合いや残業で乗り切ることではなく、現場全体の流れを合理化することにあります。
実務担当者の感覚としては、省人化という言葉に対して、現場の負担が増えるのではないか、結局は新しい機器や運用を覚える手間が増えるだけではないか、と感じることもあるはずです。実際、導入初期には一時的な学習コストや運用調整が必要です。しかし、従来のやり方を前提にしたまま人数不足に対応しようとすると、一人あたりの負担が高まり、施工管理、測量、出来形確認、写真管理、報告書作成などのあらゆる工程で無理が生じやすくなります。そこでi-Constructionを導入し、作業の流れそのものを再設計することで、少人数でも安定して現場を回しやすくなります。
また、省人化は現場作業だけの話ではありません。現場に行く前の準備、現場での判断、現場後の整理や報告、関係者間の共有まで含めて考える必要があります。建設業では、現場に立つ人数ばかりが注目されがちですが、実際には後方支援や管理業務の効率化も大きな意味を持ちます。i-Constructionの導入効果を正しく理解するには、単純に作業員数の削減だけを見るのではなく、業務全体のつながりを見て 評価することが重要です。
この記事では、i-Constructionによってなぜ省人化が進みやすくなるのかを整理したうえで、導入効果を6つに分けてわかりやすく解説します。現場の実務担当者が、自社や自分の現場でどこから改善に着手できるかをイメージしやすいように、できるだけ実務目線で掘り下げていきます。
i-Constructionで省人化が進む仕組み
i-Constructionによる省人化を理解するうえで、まず押さえたいのは、人数を減らす直接的な魔法の仕組みがあるわけではないという点です。省人化が進むのは、データ化、可視化、共有、標準化、自動化が組み合わさり、これまで人手で埋めていた隙間が減っていくからです。
従来の現場では、測量結果を手作業で整理し、施工計画に反映し、現場で再確認し、出来形を別の手順で確認し、さらに報告書類に転記するというように、同じ情報を何度も扱うことが少なくあり ませんでした。この流れでは、作業者の経験や注意力に頼る部分が多く、確認者の人数も必要になります。しかも、情報の受け渡しで認識のズレが起きると、手戻りや再測、再施工、再提出が発生し、結果としてさらに人手が必要になります。
一方で、i-Constructionの考え方に沿ってデータを整備すると、最初に取得した情報を後工程でも活用しやすくなります。たとえば、現況の把握で得た情報が、計画、施工、出来形確認、記録作成に連続して使えるようになると、各工程ごとにゼロから測り直す、確認し直す、描き直すといった重複が減ります。これが、少人数でも仕事が回りやすくなる大きな理由です。
もう一つ重要なのは、現場の判断がしやすくなることです。省人化に失敗する現場では、必要な情報が必要なタイミングで手元にないため、作業を進められず、確認待ちや指示待ちが増えます。その結果、人数がいても手が止まる時間が長くなります。i-Constructionでは、位置情報や形状情報、進捗状況などを整理して扱えるようにすることで、現場判断を早め、作業者の移動や待機の無駄を減らしやすくなります。
さらに、省人化は標準化とも深く関係しています。担当者ごとにやり方が異なり、ベテランしかできない工程が多い現場では、人が足りなくなったときにすぐ行き詰まります。反対に、測る方法、記録する方法、共有する方法、確認する方法がある程度そろっていれば、引き継ぎや応援対応もしやすくなります。i-Constructionは、単なる機器導入ではなく、データを軸に作業手順を整えることに意味があります。その結果として、業務が特定の人に集中しにくくなり、少人数でも運営しやすくなるのです。
省人化の成否は、何をどこまでデジタル化したかだけでは決まりません。重要なのは、現場のどこに人手がかかっているのかを分解し、重複、待ち、探す手間、転記、再確認、再測定、再提出といった非効率を減らせているかどうかです。ここを見誤ると、機器やソフトの導入だけで満足してしまい、現場の実感としては何も楽にならない状態になりかねません。i-Constructionを省人化につなげるには、工程全体のつながりを意識して運用を組み立てることが前提になります。
導入効果1 測量作業の省人化
i-Constructionの省人化効果がもっともわかりやすく表れやすいのが測量作業です。建設現場では、着工前の現況把握、施工中の位置確認、出来形確認、管理用の記録取得など、さまざまな場面で測量が必要になります。従来は複数人で器械を設置し、視通を確保しながら位置を確認し、記録を整理するという流れが一般的でした。そのため、測量は少人数化しにくい工程のひとつと見られてきました。
しかし、i-Constructionの考え方に沿って測量を見直すと、まず現況把握の段階で得た情報の使い回しがしやすくなります。これまでであれば、現況確認のための測量、施工計画のための確認、現場段取りのための追加確認といったように、似たような作業を何度も行っていた現場も少なくありませんでした。データを一元的に扱えるようになると、同じ場所を何度も測りに行く回数を減らしやすくなります。これは単純な作業時間の短縮だけでなく、測量担当者の拘束時間削減にもつながります。
また、測量結果がそのまま次工程の検討材料として活用しやすくなると、現場と内業の往復も減ります。従来は、現場で取ったデータを持ち帰って整理し、足りない情報に気づいて再度現場へ行くという流れが発生しがちでした。この再訪は、一見すると小さなロスに見えても、積み重なると大きな人件の負担になります。i-Constructionの導入により、必要な情報の取得項目や活用目的が事前に整理されていれば、最初の段階で必要十分なデータを押さえやすくなり、再測の頻度を抑えられます。
さらに、測量作業の省人化では、位置情報を扱う精度とスピードの両立も重要です。現場では、単に位置がわかればよいわけではなく、どの程度の精度で、どの工程に使えるのかが問われます。i-Constructionでは、この位置情報を現場の流れの中で活かしやすくすることで、測るだけで終わらない価値を生み出します。必要な場面で必要な位置確認ができるようになると、段取りのために別の担当者を呼ぶ回数や、確認のために作業を止める時間も減ります。
測量の省人化で見落とされやすいのは、現場側の安心感です。少人数で測量を進めるには、作業者が今の方法で本当に大丈夫だと感じられることが欠かせません。データが見やすく整理され、必要な座標や位置がすぐ確認でき、後工程でも同じ情報が使われるとわかっていれば、現場は余計な予備作業を減らせます。逆に、情報がつながっていないと、念のための二 重確認が増え、省人化どころか手間が増えることになります。
このように、測量作業の省人化は、単に器械の性能向上だけで成立するものではありません。取得した位置情報をどう次工程につなぐか、再測をどう減らすか、内業と現場の往復をどう抑えるかまで含めて設計することで、はじめて効果が大きくなります。i-Constructionは、その全体設計を進めやすくする点に大きな価値があります。
導入効果2 施工計画と準備業務の省人化
省人化というと現場施工そのものに目が向きがちですが、実際には施工前の計画や準備で多くの人手が使われています。現況確認、施工範囲の把握、数量の概算、段取り確認、関係者との調整、施工手順の整理など、着工前には多数の確認業務があり、ここが曖昧なまま現場に入ると、施工中に何度も立ち止まることになります。i-Constructionは、この準備業務を効率化することで、結果的に現場全体の省人化を後押しします。
準備段階で大きな効果が出やすいのは、情報の見える化です。従来は、図面、写真、現場メモ、測量結果、過去資料などが別々に存在し、必要な情報を集めるだけでも手間がかかることがありました。この状態では、担当者の頭の中で情報をつなぐ必要があり、経験者ほど対応できる一方で、担当者が限られます。i-Constructionの考え方で情報を整理すると、形状や位置、対象範囲などを統一的に把握しやすくなり、準備段階での認識合わせが進みます。
認識合わせが進むと、打合せの回数や時間も適正化しやすくなります。もちろん、関係者間の協議そのものは必要ですが、資料の前提がばらばらなまま進む打合せは、確認のための確認に終わりがちです。事前に共有する情報の質が高まれば、会議の時間を減らすというより、会議の中身を具体化できます。結果として、何人も集まらなければ意思決定できない状態から、必要な人が必要な情報をもって判断できる体制に近づきます。
また、施工準備の省人化では、段取り替えの減少も重要です。現場では、作業を始めてから障害物や地形条件、施工範囲の認識違いが見つかり、やり方を変更せざるを得ないことがあります。このとき、準備不足の現場ほど余計な人手がかかります。追加確認のために人を呼び、再測し、手順を修正し、関係者へ連絡し直すからです。i-Constructionを前提に初期段階で現場条件を把握しやすくしておけば、こうした段取り替えを減らせる可能性が高まります。
さらに、準備業務の省人化は、教育負担の平準化にもつながります。属人的な準備は、担当者が変わると一気に効率が落ちます。反対に、情報の整理方法や確認手順が一定化していれば、新任者や応援者でも仕事に入りやすくなります。これはすぐに人数削減につながる話ではありませんが、限られた人員の中で柔軟に配置を変えられる状態をつくるという意味で、非常に大きな省人化効果です。
施工計画と準備業務は、目に見える成果が出にくいため軽視されがちですが、ここが整うかどうかで現場施工の効率は大きく変わります。i-Constructionの導入効果を正しく評価するなら、施工当日の作業人数だけでなく、現場に入る前にどれだけ無駄な確認や再調整を減らせたかにも目を向ける必要があります。
導入効果3 施工段階の省人化
i-Constructionの導入効果として多くの人が最も期待するのが、施工段階そのものの省人化です。実際、施工中は段取り、位置出し、進捗確認、安全確認、出来形意識、関係者連携など、多数の判断と作業が同時並行で動いています。このため、少しでも無駄があると人手が膨らみやすく、逆に流れが整えば人数の最適化が進みやすい工程でもあります。
施工段階の省人化でまず大きいのは、手戻りの減少です。現場で人手が足りないと感じる原因の多くは、実際には単なる人数不足ではなく、やり直しの発生にあります。位置の認識違い、施工範囲の取り違え、出来形のばらつき、作業順序の乱れなどが起きると、修正のために余計な人手と時間が必要になります。i-Constructionによって事前のデータ整備と現場での確認がつながると、施工時の判断精度が上がり、結果としてやり直しに割く人数を抑えやすくなります。
次に重要なのが、作業者の移動と待機の削減です。広い現場では、確認のために何度も行き来したり、指示待ちで手が止まったりする時間が積み重なります 。これらは人が働いているように見えて、実際には生産的な時間ではありません。必要な位置情報や施工条件、進捗情報が現場で把握しやすくなると、確認のための移動や待機を減らしやすくなります。その結果、同じ人数でも処理できる作業量が増え、実質的な省人化につながります。
また、施工段階では、熟練者の負担軽減も大きなテーマです。従来の現場では、経験のある担当者が現場の要所を見続けなければならず、その人が複数現場を抱えると全体が回らなくなることがありました。i-Constructionによって情報が整理され、判断材料が共有しやすくなると、ベテランしか把握できない状態を少しずつ減らせます。これにより、少人数でも現場を回しやすくなり、特定の人への依存を緩和できます。
さらに、施工段階の省人化は安全性とも両立しやすい点が重要です。人を減らすと危険になるのではないかという懸念は当然ありますが、本来の省人化は危険な場所にむやみに人を立ち入らせないことにもつながります。必要以上の人員配置を避け、必要な確認を効率よく行えるようにすることで、現場の混雑や接触リスクを抑えやすくなります。安全のために人数を増やすのではなく、安全を保ちながら適正な人数で運営する という発想に変わっていくことが、i-Constructionの大きな意義です。
ただし、施工段階の省人化は、現場任せにすると失敗しやすい面もあります。データはあるのに現場で見づらい、更新ルールが曖昧、誰が最終判断するか不明確、従来手順と新手順が二重に残っている、といった状態では、かえって作業が煩雑になります。そのため、施工段階で成果を出すには、導入前に何を減らしたいのかを明確にし、現場の判断に使える形で運用を落とし込むことが欠かせません。
導入効果4 出来形管理と検査対応の省人化
現場で意外に大きな負担となるのが、出来形管理と検査対応です。施工そのものが終わっても、出来形の確認、記録の整理、検査のための資料作成、説明対応などに多くの時間と人手がかかります。しかも、この工程は期限が明確で、抜け漏れが許されにくいため、繁忙期には担当者の負担が集中しやすい部分でもあります。i-Constructionは、この工程でも省人化に効果を発揮します。
従来の出来形管理では、現場で測った内容を整理し、帳票や図面に反映し、写真や説明資料とひも付けながらまとめる必要がありました。この作業は、現場を知る担当者と書類をまとめる担当者の両方が関わることも多く、確認の往復が発生しがちです。さらに、記録方法が現場ごとにばらつくと、後から見直したときに整合が取りにくくなり、確認者を増やさざるを得なくなります。
i-Constructionの導入により、施工中の情報と出来形確認に使う情報がつながりやすくなると、記録のためだけに別作業を増やす必要が減ります。これは非常に大きな意味があります。なぜなら、出来形管理で人手がかかる理由の多くは、施工実態と記録資料が別々に作られていることにあるからです。現場の流れの中で取得した情報をそのまま活用しやすくなれば、後追いで資料を作る負担を抑えられます。
検査対応でも同様です。検査時に説明が難しい現場は、たいてい情報が散在しています。どの場所をどう施工し、どの確認を行い、どの結果が出たのかが一貫して示しにくいと、説明者の負担が大きくなります。逆に、情報が整理され、必要な内容を必要な形で示しや すければ、少人数でも検査対応を進めやすくなります。これは単なる事務効率化ではなく、検査前の準備時間や確認の差し戻しを減らすという意味で、実務上かなり大きな効果です。
また、出来形管理の省人化は、品質確保と両立しやすい点も重要です。人を減らすと確認が甘くなるのではないかと思われがちですが、実際には確認項目が整理され、データが見やすくなることで、必要な確認に集中しやすくなります。人海戦術で何とかするよりも、確認の根拠がそろった状態で業務を回す方が、品質の安定にもつながります。
この工程で省人化を実現するためには、現場での記録取得方法、データの保存ルール、確認タイミング、帳票化の流れを早い段階で設計しておく必要があります。施工後に慌てて整理しようとすると、結局は従来どおり多人数で乗り切るしかなくなります。i-Constructionを導入するなら、施工中だけでなく、出来形管理と検査対応まで含めて設計してこそ、本当の省人化につながります。
導入効果5 情報共有と書類業務の省人化
現場の省人化を考えるとき、見逃されやすいのが情報共有と書類業務です。実際には、現場を回すうえで多くの担当者が時間を使っているのが、資料探し、最新版確認、メールや電話での照会、写真整理、日報や報告書の作成、関係者への説明用資料づくりといった周辺業務です。これらは直接施工している時間ではないため軽く見られがちですが、現場全体の人手を圧迫する大きな要因です。
i-Constructionの効果は、この見えにくい負担を減らせる点にもあります。まず、情報共有の基盤が整うと、誰が何を見ればよいかが明確になります。従来は、必要な資料が担当者の手元や個別の保存先に分散し、確認のたびに探す時間が発生していました。こうした探す時間は一回ごとは短くても、現場全体ではかなりの負担になります。情報が整理され、位置や工程と結びついた形で共有しやすくなると、探す時間そのものを減らせます。
また、書類業務の省人化では、転記作業の削減が大きなテーマです。建設業の実務では、同じ内容を複数の様式に書き写したり、現場メモを後から整理して正式資料にしたりする場面が少なくありません。この転記は、単に時間がかかるだけでなく、入力ミスや抜け漏れの原因にもなります。i-Constructionの考え方で情報の起点を明確にし、後工程で再利用しやすくしておけば、資料作成のためだけに人を張り付ける必要を減らせます。
さらに、情報共有が進むと、問い合わせ対応も減ります。現場では、図面の最新版はどれか、どこまで施工済みか、この数値は確定か、写真はどこにあるかなど、小さな確認が日常的に発生します。こうした問い合わせは一件ごとには小さく見えても、受ける側は作業を中断され、答える側も毎回確認が必要になるため、全体として大きなロスになります。必要な情報が整理されていれば、現場担当者が自分で確認しやすくなり、問い合わせ件数そのものを減らせます。
書類業務の省人化で重要なのは、資料を減らすことではなく、必要な資料を無理なく作れる状態にすることです。建設業では記録や説明責任が重要であり、書類そのものが不要になるわけではありません。だからこそ、資料作成のたびに人海戦術に頼るのではなく、現場で生まれた情報が自然に記録へつながる流れをつくることが大切です。
この視点を持つと、省人化は現場人数だけの話ではなくなります。測量担当、施工管理担当、事務担当、責任者がそれぞれ抱える見えない作業を減らし、同じ人数でもより本質的な仕事に時間を使えるようにすることが、本当の意味での導入効果です。i-Constructionは、そのための土台づくりとしても非常に有効です。
導入効果6 維持管理を見据えた省人化
i-Constructionは施工段階で語られることが多いものの、本来はその先の維持管理まで含めて考える価値があります。建設業では、造って終わりではなく、その後の点検、補修、更新まで見据える必要があります。施工時点で情報が十分に整理されていないと、維持管理段階で過去の状況を追えず、確認のたびに余計な手間と人手が発生します。逆に、施工時から情報を残しやすい仕組みを整えておけば、将来の業務負担を軽減できます。
維持管理を見据えた省人化のポイントは、情報の引き継ぎです。現場で苦労して得た位 置情報や形状情報、施工履歴、管理記録が後工程で活用できなければ、その時点では効率化できても、将来また同じ確認をやり直すことになります。これは非常にもったいない構造です。i-Constructionの発想では、施工中の情報をその場限りのものにせず、後の管理にも生かしやすい形で扱うことが重視されます。
たとえば、補修や更新が必要になったとき、対象箇所の位置や過去の施工状況がすぐ把握できれば、現地確認の人数や回数を抑えやすくなります。点検計画を立てる際にも、情報が整理されていれば準備時間を短縮できます。こうした効果は、今すぐ人数を減らすような派手さはないかもしれませんが、長期的には非常に大きな省人化効果を生みます。
また、維持管理を見据える視点を持つと、施工段階での記録の質も変わります。後で誰が見ても理解しやすい形で情報を残すことを意識すると、記録の取り方や整理方法がより実務的になります。これは結果として、施工中の情報共有にも好影響を与えます。つまり、維持管理を見据えた取り組みは、将来のためだけでなく、今の現場運営を整えることにもつながっています。
人手不足が続く時代には、施工時点の効率だけでなく、将来の業務負担をどう減らすかも重要です。毎回ゼロから確認し直す前提では、どれだけ採用を頑張っても現場の負担は減りません。i-Constructionは、今の現場を効率化するだけでなく、将来の維持管理まで含めた省人化の土台をつくるという点でも、大きな意味を持っています。
i-Constructionで省人化を進める際の注意点
ここまで導入効果を見てきましたが、i-Constructionを入れれば自動的に省人化が進むわけではありません。むしろ、考え方を誤ると、現場の負担が増えたり、二重運用が残ったりして、期待した成果が出ないこともあります。そこで、実務担当者が押さえておきたい注意点を整理します。
最初の注意点は、導入目的を曖昧にしないことです。省人化といっても、測量人数を減らしたいのか、施工管理者の負担を減らしたいのか、書類整理の時間を減らしたいのかで、見るべき改善点は変わります。目的が曖昧なまま導入すると、機器やデータだけ増えて、現場は何も楽にならないという結果になりやすいです。まずは、どの工程の何が重いのかを具体的に洗い出すことが出発点になります。
次に、従来手順をそのまま残しすぎないことも重要です。新しいやり方を入れても、念のため従来の紙管理や口頭確認をすべて残してしまうと、現場は単純に作業が増えます。もちろん、移行期には慎重さが必要ですが、いつまでに何を切り替えるかを決めないと、省人化どころか多重管理になります。
また、現場が使いこなせる運用であることも不可欠です。どれだけ考え方が立派でも、現場で見づらい、操作しにくい、更新ルールが複雑という状態では定着しません。省人化のための仕組みは、現場が自然に使えるものでなければ意味がありません。実務担当者が無理なく扱える粒度に落とし込むことが大切です。
さらに、教育と引き継ぎの設計も必要です。省人化は特定の人が詳しくなることではなく、少人数でも回せる体制をつくることです。そのためには、担当者が変わ っても回る仕組みでなければなりません。使い方の共有、データの置き方、確認手順の共通化などを後回しにすると、結局は一部の担当者に負担が集中します。
最後に、導入効果を人数だけで判断しないことも重要です。現場によっては、すぐに人数が減るわけではなくても、残業時間の減少、再測の減少、問い合わせ件数の減少、手戻りの減少といった形で効果が表れることがあります。こうした改善が積み重なって、はじめて安定した省人化につながります。短期的に人数だけを見て失敗と判断するのではなく、業務全体の負担がどう変わったかを見る視点が必要です。
省人化を成果につなげるために重要な考え方
i-Constructionで省人化を進めるうえでは、単なる効率化ではなく、現場運営の考え方を変えることが欠かせません。特に重要なのは、工程単体ではなく流れ全体で見ること、データを使う目的を明確にすること、小さく始めて確実に定着させることの3つです。
まず、工程単体ではなく流れ全体で見ることです。たとえば測量だけ早くなっても、その後の整理や共有で時間がかかれば、全体としては省人化になりません。逆に、ひとつひとつの工程の改善幅が大きくなくても、現場から内業、施工から検査までがつながると、全体の負担は大きく減ります。実務担当者は、目の前の作業だけでなく、その情報が次にどう使われるかまで意識することで、導入効果を高めやすくなります。
次に、データを使う目的を明確にすることです。データを取ること自体が目的になると、現場は疲弊します。何のために取得し、誰が使い、どの判断に結びつくのかをはっきりさせることで、必要なデータと不要なデータの区別がつきます。これにより、現場での取得負担を抑えつつ、後工程で本当に使える情報を残せるようになります。
そして、小さく始めて確実に定着させることも大切です。最初からすべての工程を一気に変えようとすると、運用が複雑になり、かえって現場が混乱します。まずは再測が多い工程、確認待ちが多い工程、書類整理が重い工程など、効果が見えやすい部分から取り組む方が現実的です。成功体験ができると、現場の理解も進み、次の改善につなげやすくなります。
省人化は、人数削減の話ではなく、限られた人員で品質と安全を守りながら仕事を回すための再設計です。この視点を持つと、i-Constructionは単なる制度対応でも流行対応でもなく、これからの現場運営に必要な土台づくりだとわかります。
まとめ
i-Constructionによる省人化は、単純に現場の人数を減らす話ではありません。測量、準備、施工、出来形管理、情報共有、維持管理といった一連の流れを見直し、重複、待ち、探す手間、転記、再確認、手戻りを減らすことで、少人数でも安定して現場を回せる体制をつくることに本質があります。
特に建設業では、人手不足への対応を急ぐあまり、現場の負担を一人ひとりに押しつけてしまうと長続きしません。必要なのは、現場の努力に依存する運営から、情報がつながり、判断しやすく、やり直しが起きにく い運営へ切り替えることです。i-Constructionは、そのための考え方と実践の土台になります。
省人化の効果は、測量人数の削減のように目に見えやすいものだけではありません。準備の手戻り減少、施工中の待機時間削減、出来形管理の効率化、書類業務の軽減、将来の維持管理負担の抑制など、さまざまな形で現れます。これらを積み上げることで、結果として現場全体の生産性が高まり、少ない人数でも品質と安全を両立しやすくなります。
そのうえで、現場の省人化をさらに前に進めるには、位置情報を正確かつ素早く扱える環境づくりも重要です。測る、記録する、共有するという流れを現場で無理なく回したい場合には、LRTKのようなiPhone装着型GNSS高精度測位デバイスを活用することで、位置情報の取得と運用をより実務に落とし込みやすくなります。i-Constructionを現場で具体的な成果につなげたいなら、こうした道具も含めて、少人数でも回る仕組みを整えていくことが大切です。
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